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イギリス博物館めぐり(その15)
ボービントン戦車博物館

小柳 篤司    コヤナギアツシ       . 

今月のイギリス博物館めぐり(その15)は、戦車博物館のリポートです。

 2010年夏のイギリス旅行で、7/14(水)にAFVマニアの聖地ボービントンの戦車博物館に行きました。ボービントン戦車博物館と表記されますが、正式な名称は単に戦車博物館(Tank Museum)です。http://www.tankmuseum.org/世界各国の戦車が展示されていますが、今回はイギリスAFV特集に合わせてイギリス戦車を紹介します。

同館の所在地はイングランド南西部のドーセット州、ボービントンの陸軍基地内です。
 最寄のウール駅までの所要時間は、ロンドンのウオータールー駅からウエィマス行きの列車に乗って2時間45分です。ロンドンから日帰りも出来ますが、今夏はサウサンプトンに宿を取ったので、サウサンプトン・セントラル駅から午前8時発のウエィマス行きに乗り、所要時間1時間15分で午前9時15分にウール駅に着きました。ウール駅を降りて踏切を渡ったら現地の人から「戦車博物館に行くのか?」と聞かれました。
駅前には住宅以外に何も無い所なので、この地に来る観光客は戦車博物館に行く軍事マニアだけでしょう。戦車博物館に行くバスは無いのでタクシーを勧められました。
駅に戻ったらタクシーは駅前に停まっていました。料金は片道6ポンド、戦車博物館迄の所要時間は約5分です。駅まで徒歩で40分掛かるそうなので、運転手に閉館時間の17:00に来てくれる様に頼んだ所、名刺を渡され博物館から電話して貰う様勧められました。要するに旅行者用の英会話の定番、不定冠詞のaを付けて"Call me a taxi."です。
午前9時半過ぎに戦車博物館に着きましたが、開館時間の午前10時まで時間が有ったので、ミュージアム・ショップを見て回りました。1/35スケールのAFVモデルも売っていましたが、売り場にはトランペッターやAFVクラブの製品ばかりでタミヤ製品は皆無唯一のタミヤ製品は古い1/25スケールのセンチュリオンがガラスケース内に鎮座しているだけでした。
 開館時間から順路通りに廻ったので、最初に入った展示棟はタンクストーリーです。
同棟内には第一次大戦から現代に至るまでの、世界各国の代表的な戦車が展示されています。
 タンクストーリーの展示車両を片っ端から写真に撮っていたら、アッと言う間に午後2時を回りました。時間が無いので冷戦期の車両は見送り、第一次大戦の塹壕を実物大のジオラマで再現した展示、トレンチ・エキスペリエンス行きました。
 1914年6月ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボに響いた銃声は、ドイツ帝国、オーストリア・ハンガリー帝国を中心とする同盟国と、イギリス・フランス・ロシアを中心とする連合国の両陣営間のヨーロッパ全土を戦場とした第一次世界大戦に発展した。
 開戦当初はクリスマス迄に終結すると楽観的な見通しだったが、兵器の発達で防御の為に塹壕に立て篭もり、ドイツとフランス間の西部戦線ではスイス国境からイギリス海峡に至る塹壕陣地が構築された。戦線は膠着状態に陥り、生産力の増大は果てしない消耗戦となり、泥地獄の戦況を打開する為に戦車が開発された。戦車の世界最初の実戦参加は1916年9月のソンム会戦で、イギリス陸軍はタンク・マークIを60台投入したが、故障の為に突撃したのは9台、最後まで動いたのは僅か3台、後の戦車運用の嚆矢となったが、戦況を覆すには至らなかった。

 戦車が開発された経緯を体感させる為に実物大で再現した塹壕を歩いて行くと、頭上に菱形戦車タンク・マーク1の姿が見えます。トレンチ・エキスペリエンスの次には、第一次大戦の戦車と大戦間の戦車が展示されています。
 第二次大戦中の戦車が展示されているディスカバリー・センターに入った頃は、既に午後3時を回っていました。タミヤのプラモデルで御馴染みの、パンター、タイガーII等の有名な車両が多数展示されていますが、狭いショーケースにプラモデルを押し込んだ様な状況なので写真撮影には不向きです。冷戦期の車両を展示したタミヤホールに来たのは午後4時半、閉館時間まで僅かなので素通りしただけでした。
 
名刺の番号に携帯で電話を掛けましたが、戦車博物館は携帯の圏外です。運転手から電話を掛けるなら博物館の職員に依頼する様に勧められたのは、それなりの理由が有ったのです。博物館の受付に名刺を渡したら、手慣れた様子で直に応対して貰えました。
午後5時の閉館後に外のベンチで待っていたら、タクシーは直ぐに来ました。

写真(1) タンク・マークII (Tank Mark II)
訓連用の戦車で装甲も車体後端部の尾輪も有りません。



写真(2) マークII中戦車 (Tank Medium, Mark II)
両大戦間の1923年から1935年迄使われたイギリスの主力戦車です。



写真(3) マークIII巡航戦車 (Tank Cruiser Mark III A13)
速度を重視した巡航戦車で、クリスティ式サスペンションを採用しました。



写真(4) マークVIb軽戦車 (Light tank, Vickers MkVIb)
第二次大戦前にイギリス初の大量生産された戦車です。



写真(5) マチルダII歩兵戦車 (Tank Infantry Mark II A12, Matilda II)
速度より防御力を重視した歩兵戦車で、北アフリカでは砂漠の女王と呼ばれました。



写真(6) チャーチル・クロコダイル (Mark VII Churchill Crocodile)
チャーチル歩兵戦車に火炎放射器を載せた型です。



写真(7) M3グラント中戦車 (M3 Medium Tank Grant)
アメリカから供与されたM3の車体にイギリス製の砲塔を載せた型です。



写真(8) チーフテンMBT (Chieftain Main Battle Tank Mark 11C)
第2次大戦後にイギリスが開発した戦後第2世代の戦車で、防御力を重視しました。



写真(9) チャレンジャーMBT (Challenger 2 V5)
イギリス陸軍の現用戦車ですが、展示車両はプロトタイプです。



写真(10)泥まみれの塹壕



写真(11) タンク・マークI (Mark I male tank)
世界最初の戦車マークIの唯一の生き残りです。大砲を装備した型を雄(male)、機関銃
を装備した型を雌(female)と呼びました。車体上部の枠に手榴弾よけの金網が張られています。
操縦には運転手の他、シフトレバー操作の為に2名を要しました。



写真(12) タンク・マークV (Tank, Mark V Male)
菱形戦車の系列でマークIと同じ様な姿ですが、操向装置が改良され1人で操縦可能になりました。



写真(13) A1E1インデペンデント多砲塔戦車 (Tank A1E1, Independent)
第二次大戦前にイギリスで開発された多砲塔戦車で、まるで宮崎駿が描いたコミックに
登場する「悪役1号」の様な姿です。原型は1926年に完成しましたが実用化されずに終わりました。



写真(14) クルセーダー・マークIII巡航戦車 (Tank Cruiser Mark VI A15, Crusader III)
速度を重視した巡航戦車で、第2次大戦で活躍しました。



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