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懐かしのB級キット(第8回)
零戦52型 (ニチモ 1/35)

by 田口博通 
  玩具から始まったプラモデルが ギミック路線か、それとも 全く動かないけれども精密なモデルの方向に行くか メーカーによって多様性に溢れていたのが 1960年台でした。
 当時から、精密というには?がつくけれども ギミックが面白いプラモデルを日本メーカーが多く発売していました。エルロン、方向舵可動は当たり前、というか それが当たり前のトレンドの時代だったともいえます。
 学校前の文具店でプラモデルが売られていることも多く、箱絵が魅力的でショーウインドーに釘付けになり、学校帰りに店の前の道路で座り込んで、プラモを作った経験のある読者も多いはず。小学生の遊びの一部として当たり前にプラモデルがあり、今からは想像も出来ないプラモ黄金時代だったと思います。

 
 金型精度が追いつかず、可動部がガタガタで、細かいディテールは?が二つくらいつくが、デッサンはなんとなく実機の雰囲気を再現しているという今でも捨てがたいキットが多くありました。既に絶版になっているものが多いのですが、幸い、その中には今でも生き残って現役のプラモキットもあります。

 このシリーズは そんな 懐かしいB級キットを取り上げて行こうという連載です。形状とか デイテールを求めるならば、後発の決定版を購入すればいいわけで、ディテールの修正などをせず、オリジナルの雰囲気を壊さず、完成を目指したいと思います。




 この連載 ずっと1/72クラスを取り上げてきましたので、この辺りで 大型 スケールの、ニチモの 1/35 零戦52型 にチャレンジしたいと思います。

 このニチモキットの発売は、1960年代初頭。 1/32 のレベル、ハセガワ 零戦が発売されるまでの間、 1/35スケールながら、ビッグキットとしては最良のものとされていた時期がありました。 それゆえ、B級キットといってしまうには、いさかか 失礼かもしれませんが、お許しください。
 このキットの売りはなんといってもプロペラがモーターライズで回転すること。発売当初は マブチNo12だったそうですが、入手したものはミニベビーモーター使用に設計変更されておりました。 ビッグスケールの零戦として、”零戦はやと”にかぶれた少年には 憧れのキットでしたが、450円は少年には高価な金額で、手が届かなかったような思い出があります。
 
 カウリングにはエンジン前面が一体成型されており、ミニベビーモーターと電池がその後ろに組み込まれるため、コクピットの造作は全く無く、上げ底の上に上半身だけのパイロットを接着する構造になっています。
その他は、主脚が折りたたみ可動。胴体側の車輪カバーも連動ポストで一緒に閉まる様は感動ものです。
エルロン、フラップ、ラダー、エレベーターが可動なのはお約束。、中央キャノピーも可動となっています。これこそ、当時の流行の「オール可動」というものでありました。
 これだけの可動部にもかかわらず、デッサンに破綻はなく、きちんと作ってみると端正そのもの。
 組み立てを大変楽しめる大型キットで、現在も 模型店の棚では現役で活躍しています。
 


キットについて

 大型スケールを生かした、精密キットというわけではありません。しかしデッサンはそれなりに良好。 総部品点数 50点で 簡単に組め、なおかつ この大きさを生かして オール可動を実現した記念碑的なキットでした。
 
 欠点とされている箇所は、プロペラが少し幅広いことで これは削ってあげれば簡単に修正可能。 カウリングはカウルフラップと排気管が一体になっていて、荒い部分もあるのですが、長さ、形状とも、最良とはいえないまでも、良く特徴を捉えているといえます。
 箱絵はB29の下面から一撃射を挑み、高速で離脱するところといった風情でしょうか。
 モーターライズにはミニベビー付属の電池一体金具を利用する合理的な設計になっており、配線の必要が無く、快調にプロペラを回転することができました。
箱絵

       ミニベビーモーターライズ組み込み部の説明書
 
説明書

カウリングとプロペラ部。
 

製作 

 現代は 模型店か通販で、細いヤスリから、ピンバイス、モーターツール、シンチュウパイプまでなんでもそろう時代ですので、説明書どおりに 各部を注意深く接着し、可動部の勘合など慎重に工作すれば 確実に可動を生かしたまま、形になります。
 フラップは可動ピンを念入りに整形しすぎると、ダラッと下がったままになりますので、ちょっとひっかかる程度で止めておいた方がいいでしょう。
 エンジンはつやけし黒に銀でドライブラシするだけにして、さらっと済ませておきましょう。
 
 コクピットの中は何もありません。大昔のプラモガイドには「大型キットの特徴を生かして、座席周りも自作して正確に作りたい」などと書かれておりまして、よし、ガンバッテミルカ!、などとついその気になって、すぐ挫折した遠い記憶がありますが、今考えてみると若気の至りというものでありました。
 いい大人になった今は、不埒な邪念を出さず、そのままにして つやけし黒でフタを塗っておけば 充分でしょう。
 翼のねじり下げは 翼部品の上下を接着する際に若干力を入れて、ねじっておきますと、それらしくなるようです。
 表面モールドは出現時代からして、当然、スジボリではありませんので、ぜひそれを生かしましょう。接着部のペーパー整形時に キット表面のリベットモールドを削らないように、マスキングテープで 保護しておくとよいと思います。
 主翼端灯の透明部品が付属していますので、接着後、丁寧に整形しておくと映えます。
 

塗装

 いずれも Mrカラーを使い、下面はNo.35 明灰色。
上面は No.15 濃緑色の標準塗装でエアブラシしました。上面は若干退色した感じを出すため、濃緑色にバフ色を混ぜて薄く吹いています。
日の丸と主翼前縁は塗装。垂直尾翼 654空の文字だけデカールを使いました。白枠を少し広めにした方が、可動おもちゃっぽい雰囲気を出せるのではないかと思います。
脚庫内部とフラップ内側はおなじみ青竹色としてみました。
 
 脚はつやあり黒、脚カバー重量標識は上から 赤、黄色、青です。
 大スケールですので、小物を金属などで置き換えておくと、シャープになるだけでなく、長い保管期間にも耐えると思い、機銃をシンチュウパイプで自作しました。先端をライターであぶって焼きなました後、釘をつっこんでグリグリと廻し、先端を少し広げておきました。ついでにアンテナ支柱もシンチュウ角棒を削っておきかえてあります。
 



完成

 零戦52型のオーラがバリバリと周辺に発散されます。視線を下げて 後方から眺めた時、フラップを下げ エルロンをバタバタさせながら、出撃に向かおうとする零戦の雰囲気を存分に味わえます。そして、ブーンと口ずさみながら離陸、脚をたたむ。 快感です。   キットを在庫にお持ちの方は、ぜひ 全可動でお作りください。完成後の楽しみが倍増です。
 
またまた B級キットコレクションに一機加わりました。
おつきあいいただき ありがとうございました。



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Vol.23 2011 November.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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