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連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第21回)

 SMER(エレール)1/72「I-153チャイカ」

by 鳥巣 Torisu           /    


 

<実機解説>

 1936年に勃発したスペイン市民戦争にソビエトは左派である人民背線側に多くの軍事支援や航空機部隊の派遣をしており当時の主力戦闘機であるI―15の派遣もその一つであった。
 派遣されたI-15は反政府側のHe-51やCR-42に圧倒的な強さを誇り航空戦を有利に導いたがフランコ革命軍側にドイツからBf-109の初期型が派遣されるとその優位性は崩れ去り空中戦は複葉機の得意とする格闘戦から一撃離脱を主とする戦いへと変貌した。
空中戦の変貌を感じ取ったポリカルポフ設計局ではI-15の格闘性能を維持しながらさらなる速度性能の向上を図る為引っ込み脚を採用したI-153を開発した。
 800~900馬力程度のエンジンで単葉の引っ込み脚の戦闘機を必死になって開発していた日本やイタリアに比べると1000馬力のエンジンを持ち複葉引っ込み脚を持つI-153の開発は当時のソビエト空軍がまだ複葉戦闘機の優位を信じている証拠でもあろう。
1938年に生産を始められ逐次配備されていったI-153では有ったが1939年に起きたノモンハン事変では軽量で運動性の良い日本陸軍の95式戦や97式戦に劣勢を強い入れられ複葉戦闘機の時代は終わった。
時代にそぐわない旧式機となりながらも僚機であるI-16と共に配備され続けられた。
1941年の独ソ戦開始時では多くの機体が開戦当日に地上で撃破されたが残った機体は退却する赤軍援護の為の地上攻撃や絶望的な独逸の爆撃機への迎撃に投入された。
視界を確保する為にガルウイングタイプの上翼を採用したのでチャイカ(カモメ)と言う愛称で親しまれた。

<性能>
全幅・10.00m
全長・6.17m
全高・2.80m
最大重量・1859kg
エンジン・M-63 1.100馬力
最大速度・450km
航続距離・900km
上昇限度・9,000m
武装・  7,62mm機銃×4
爆弾・  100kg



<キット解説>

チエコのSMER社の物ですが中はエレール製品のOEMです。フランスのMS機やドボアティーヌシリーズ等も数多く発売されていています。
本家であるエレールが休止している商品もあるのでフランス機好きな方はチエックをした方が宜しいかもしれません。
WW2以外の機体ではソビエトのジエット機やイタリアの複葉機など珍しい機体も発売されています
日本には年に1回定期的に入ってくるので外国製品を扱っているお店では入手可能です。


箱絵


胴体パーツ

制作

<コクピット>

 床と座席とスティックそして計器類がモールドされている計器盤の4点で構成されています。胴体を張り合わせると殆ど見えないのでこれで良いでしょう
コクピット内部をクレオスのガンダムカラー「グリーン4(ザクの明るい緑)」で塗り、座席はシルバー、スティツクはジャーマングレーで塗りエナメルのクロームシルバーでドライブラシを施しメリハリを付けました。

<胴体と翼の取り付け>

コクピットの組み立てが終わったら胴体を張り合わせます。貼り合わせで生じた接着剤のはみ出しをデザインナイフで削れば胴体の整形は終わりです。
 翼は先ず下翼を取りつけます。
下翼と胴体前後のすり合わせを行ってから取りつけましょう。すり合わせが終ったら胴体側面と下翼の間に出来た隙間をタミヤプラパテで埋めます。
上翼と支柱の取りつけ
このチャイカは上翼が胴体に取り付けられるので他の複葉機に比べて翼の上下を支える支柱が左右に一本づつと少なく上翼の取り付けは容易です。
胴体と上翼のすり合わせをして少量の接着剤で仮止めを行います。仮止めをしている間に支柱を付けて位置を合わせた後胴体と上翼の間に流し込み接着剤を流し固定します。



<パテの処理>

翼が固定したら胴体と下翼の間の隙間に盛ったパテを細く切った紙ヤスリの#400・800・1000・1500と番数を上げて削り整形します。



<カウリングの取りつけ>

胴体の基本工作が終了したらエンジンカウリングを取りつけます
実はこのキットにはエンジンが付いていません
実機もカウリングの前面に取りつけているシャッターを閉じている場合が多いのでメーカーはエンジンは不要と思い入れ無かったのかもしれません。
今回の作例では付けませんでした。
ジャンクパーツから適当な空冷エンジンを探してカウリングの隙間からチラリと見える細工を施しても面白いですね
カウリングのモールドが少々イビツなのでナイフで削り落して紙ヤスリで整形しました。






<塗装>

<ウオッシング>

工作が終ったらコクピットをマスキングテープで保護してクレオスの缶サフ・グレー#1200を吹き機体全体を整えます。
1晩乾燥させた後キズ等が無いかを確認して塗装に入ります
(さて困った)
ソビエト機はお国柄か塗装が派手な機体は(大きなスローガンを書いたものは多い)あまり無く緑一色か茶色と緑の迷彩に白をオーバースプレーした塗装が主流です。
あのダークグリーンの塗装は趣味ではないので今回は
胴体下・翼下面はMrカラーNo20「ライトブルー」
胴体上・上翼面はMrカラー「ロシアングリーン1」にグランプリホワイトを
    4割ほど足して明るくしたオリジナルのグリーンの2色で塗装しました
アクセントとして方向舵を黄色く塗り分け単調な色の飛行機にならないようにし
ました。

緑1色の単調な塗装なのでエナメルのセミグロスブラックとレットブラウンをブ
レンドした物で機体全体に汚しを施しました。




<張線作業>

複葉機を作るにあたり避けては通れないのが翼の上下間に張られた張線の取り付けです。
手軽にできる方法は無いかと考えた結果
 翼の支柱の前後と胴体側面に張線を通す穴をピンバイスで開口します
 開口したら翼の上から斜め下に向けてご極小のナイロンテグスを通します
 翼上面の穴に瞬間接着剤を流しテグスを固定します
 固定したら胴体と下翼斜め下の穴に通したテグスを引っ張りピン!とテンションを付けます。
 テンションを張った時点で瞬間接着剤を流し込み固定します
この作業の繰り返しを30分ぐらいで行い主要な張線の取る付け作業は終わりました。



<脚の取り付け>

<マーキング>

ココクピットフロアーの裏面のダボ穴に主脚を取りつけます
左右の足が同じ高さになるように仮組みをしながら行ってください
車輪も同じように左右が均等になるよう調整して取りつけます
脚と車輪の高さが決まり完全に固定したら主脚カバーを取りつけて終わりです
基本的に大小のレッドスターと機体番号しか有りません
キットに付属されていたデカールは経年劣化で黄色くなっていて使えなかったのでジャンクデカールから星と白い番号をチョイスしました。

プロペラを最後に付けて半光沢クリアーを吹いて完成です



<参考資料>

華麗なる前作であるI-15のスペイン内乱デビューから旧式機と言われながらも独ソ戦初期まで奮闘した悲運の名機であるI-153を製作する機会を与えて下さった編集部に感謝です

文林堂・第二次大戦イタリア・フランス・ソ連軍用機
インターネット・ウイキペディアより参考資料を抜粋




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Vol.29 2011 May    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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