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懐かしのB級キット(第9回)
飛燕2型改
サニー(マルサン) 1/100

by 加藤 寛之

  玩具から始まったプラモデルが ギミック路線か、それとも 全く動かないけれども精密なモデルの方向に行くか メーカーによって多様性に溢れていたのが 1960年台でした。
 当時から、精密というには?がつくけれども ギミックが面白いプラモデルを日本メーカーが多く発売していました。エルロン、方向舵可動は当たり前、というか それが当たり前のトレンドの時代だったともいえます。
 学校前の文具店でプラモデルが売られていることも多く、箱絵が魅力的でショーウインドーに釘付けになり、学校帰りに店の前の道路で座り込んで、プラモを作った経験のある読者も多いはず。小学生の遊びの一部として当たり前にプラモデルがあり、今からは想像も出来ないプラモ黄金時代だったと思います。

 
 金型精度が追いつかず、可動部がガタガタで、細かいディテールは?が二つくらいつくが、デッサンはなんとなく実機の雰囲気を再現しているという今でも捨てがたいキットが多くありました。既に絶版になっているものが多いのですが、幸い、その中には今でも生き残って現役のプラモキットもあります。

 このシリーズは そんな 懐かしいB級キットを取り上げて行こうという連載です。形状とか デイテールを求めるならば、後発の決定版を購入すればいいわけで、ディテールの修正などをせず、オリジナルの雰囲気を壊さず、完成を目指そうという目論見です。

 
 さて、今回は 加藤寛之さんの サニー(マルサン)の往年のB-29の続編 飛燕2型改です。



 サニーのB-29とセットで販売された飛燕がこれ。私は子供の頃、このマルサン1/100シリーズを2つしか作った記憶がない。おもちゃとしてプラモデルを買っていたころは50円が高額で、買うならば30円の三共ピーナッツシリ-ズだったからだ。それ故にマルサン1/100シリーズは作ってみたかった。サニーのB-29を購入した理由は、実はこの飛燕を一括入手するためでもあった。
 



さて、どんなキットか。
 胴体は左右分割、主翼は上下一体であるが胴体の中心線で左右分割の2パーツ、水平尾翼は2パーツ、これに小物が付く。1/100シリーズ単発機の標準的な分割である。座席パーツが別にあるのは立派。パネルラインが凹線なのにはビックリ。頑張ってよい製品を造ろうとしたマルサンの意欲が感じられる。そうはいっても入手したキットの金型の痛みは相当なもので、表面には無数の傷や崩れがあり、金型の歪みであろう大きな窪みも数か所ある。押し出しピンによる成形の欠損もある。
もともとの金型がその時代の精度であるところにこの疲労だから、ムリはしないで作ってみることにする。



 当然、リベットもそのままに「マルサン1/100らしいままで、きれいに組む」という方針とした。「きれいに組む」ために、ある程度は表面を均し、窪みも軽く埋めてみた。それでも、キットのスピンナーは玉ねぎに長さの違う3枚の葉っぱが横に生えたような形だったので、これは大整形をした。プロペラをいったん切り落とし、円錐形に削りなおした。プロペラは長すぎる1枚を短縮して中くらいの1枚に近づけ、形もそれらしく整えた。短い1枚は胴体への取り付け時に下位置にすることで、寸法不足を目立たせないよう工夫した。あとは胴体機銃の溝を掘ったこと、省略されているタイヤカバーをプラバンで、ピトー管を真鍮線で作ったことくらいのもの。素組みとはいわないが、キットの味わいはそのままである。
 



 塗装指定はない。というよりも、本来は屠龍のキットが付くはずだったので塗装図もデカールもそれ用になっており、キットだけ飛燕なので何もないのである。2型改だからといって現存機がそうであったような無塗装では、表面ガタガタのこのキットには耐えられない。ここは標準的な迷彩にする。上側面にはクレオスの「濃緑色(川崎系)」で塗ってみた。おそらくこの時期の実機はずっと茶色っぽいのであろうが、まあ良い。下面は、適当に灰色を塗った。川崎製は、たとえば主翼前縁をみると上下色の塗り分けがクッキリしているが、ここは模型なので軽くボカして“空気感”を出しておいた。上側面の日の丸は白フチ付きが標準。手持ちのデカールから見つけて貼り、縁を塗りこんでおいた。
 さて、完成した。“こんなキットだったのか”。そう思ったくらいで感慨に浸ることもなく、次のキットに手を伸ばした。



 オマケ:この時期の飛燕の色について
飛燕2型改の上側面色がどんな色かについてだが、実質的に同じ本体をもつ五式戦で検討したい。理由は、五式戦にはカラー写真を印刷したものがあるからだ。それは『世界の傑作機』(青版№36、1973年4月号)で、表紙とカラーページにそれがある。ともに青みがかったこげ茶色。『航空ファン』1966年11月号にもその一部があり、ここには2枚載っている。これは、やや青みが強い。カラー印刷をもって色を細かく論じる意味はないが、どうやら上側面色は青みがあるこげ茶色、ということのようだ。この色は学研[歴史群像]太平洋戦史シリーズVol.46『四式戦闘機疾風』で解説された緑色1-1であろう。これは茶系のオリーブドラブ、といった色である。ソリッドモデラーであり『航空ファン』誌でも活躍した長谷川一郎氏も五式戦の色について書き遺しており、「5式戦は元来無塗装で、上側面を茶の強い暗緑色に塗装することが多かった。アンテナ柱や各舵面は下地として、一応銀塗装してある」としている。
ところで茶色と青みや緑色の関係なのだが、こんな例はどうだろう。鉄道模型に興味ある人ならば周知のことであるが、茶色く見える国鉄時代の電気機関車や客車の色は「ぶどう色2号」あり、近づいてみると本当に青紫の葡萄色である。茶色であるとか、茶の強い暗緑色というかは、これに似た現象なのかもしれない。近年はプラモデルでも、この時期の日本陸軍機には「カーキ色」を塗ることが多くなったが、個人的にはこれに少しだけ緑か青を加えたい。
では「5式戦は元来無塗装」の見解はどうだろうか。飛燕2型改の数少ない写真を見る限り、迷彩塗装をした機体は上側面の日の丸に白フチを付けている。さて製造現場では、日の丸は一般的に下地を丁寧につくって塗るようであり、そのためにほとんどハゲない。つまり、日の丸は特別に塗装をする部分である。機体の基本が無塗装であれば日の丸に白フチは不要であるから、これらの飛燕は迷彩塗装を基本として塗装されたものだといえる。では五式戦はというと、日の丸の白フチの、あるもの・ないもの共にある。白フチがない後者であれば、「5式戦は元来無塗装」という長谷川一郎氏の見解もありえないことではないと思う。


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Vol31 2011July.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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