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月光 (レベル1/72)

by 加藤 寛之



  レベルといっても、当時提携していたグンゼ産業が日本で開発した日本製キット。『航空ファン』や『航空情報』の1974年5月号にキット評が掲載されている。その当時の『航空ファン』のキット評は、今日では考えられないほど厳しいものであったが、巷の評価もやや期待はずれといった感じだったと記憶している。
 
まあ、それだけ期待も大きかったということだろう。私自身は、双発機のプラモデルは高くて買えなかったので、いつも小さな単発機ばかり買っていたのだが、月光のボーっとした形が好きでなかったこともあって購買意欲はわかなかった。それなのに、先日、在庫からこれを出してきた。


購買意欲がないと言っておきながらなぜ持っているか、いつ入手したかの記憶は全くない。一方、持っていたはずのハセガワ・フロッグのブラックウィドーが見つからない。まあ、どちらでもよいのだから、作ることにした。

 
 何故どちらでもよいのかといえば、私が所属する模型サークルS.L.B.の数人が「次回の展示会テーマを“夜間飛行”にしよう」と話し合って内輪で決めたからである。もちろん私もそこに入っている(以前に作ったB29の下面が黒いのも、実はこの企画のためである)。



さて、組み始める。厚い主翼の感じや断面形、翼端の処理も上手く、いい雰囲気である。垂直尾翼や水平尾翼も断面形状によく配慮してある。反面、カウリングは直線的で、昔の批評表現でいえばポリバケツ。実機とは大違い。エンジンは茸が生えているみたいな造形で、とてもサイドパネルを開けて見せるような出来ではない。よくみれば、主翼だってテーパーがやや強く、水平尾翼に至ってはあまりにも先細りが強い。操縦席や機首の透明部品の成型は厚くレンズ状に見える。さらに見ていくと…と、そんなことが分かったところで改修するわけでもないので、気にせずに組んでいく。
 
さすがに太い棒のようなプロペラは我慢できず、無理しない範囲で削りなおした。
さて本物の月光は強い上反角が特徴なのだが、キットの上反角はそうならない。そこで胴体幅をわずかに絞り、その分だけ上反角を強く組んだ。まだ角度不足なのだが、もうこれでOKとした。あとはそこそこ丁寧に組めば、それなりのものになる。「レベルの月光」を作っているのだから、それで良いのである。



塗装はキットの指示を無視し、最近の考証を尊重した。キット全体が黒いプラだったので、地色を感じさせる程度の薄塗りとした(写真は明るく撮ってあり、実際の完成品はずっと暗い色)。主翼前縁の黄色は塗装が面倒だったので黄色のデカールを貼り、その上からムラに赤っぽい色を重ねた。 きれいに塗ると単調でつまらないと思うし、“ムラでOK”の方が滑らかに塗るよりもはるかに簡単である。手抜き、と言われればそんな気もする。こんな感じで完成に至った。出来上がったが、私には何の感動もない形である。新発売時に購買意欲がわかなかっただけのことはある。



 こんな気怠い記事では申し訳ないので、少し書く。
実機の月光はなかなか制式になれず、「Gのナナバケ」と悪口されるほど改造を重ねたと資料本に書かれている。だがこれは、飛行機としての素質が優れていたからだという。
月光(初期)設計者中村勝治氏は『丸』昭和33年4月号で、「戦闘機としての実用性なしと判定されたのだが、」「速度は早いし、航続距離は長いし、強度はあり余っているのだから、他の機種へなら、偵察機にだって、爆撃機にだって、何にでも使えそうな気がした」と述懐している。…なるほど。



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Vol 36 2011December.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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