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飛燕Ⅱ型改 (ニチモ 1/70) 

by 加藤 寛之



  古い、ふるいキットである。しかし評価は高い。もちろん、その当時に、ということである。先ごろ飛燕や五式戦の72スケールキットを調べることがあり、その途中で偶然にも500円で譲ってもらった。このキットは小学校4年生のときに作ったことがあるものの、あまり良い記憶はない。そのためプラモデルを趣味にしてからも評価が高いことが信じられず、そのまま40年以上を過ごしてしまった。
キットは小さな箱にパラパラっとパーツが入っているだけだが、これで飛燕が1機出来上がるはずだ。プロペラとタイヤの回転のほかに、主脚、エルロン、ラダーが可動である。組立図をみると各パーツの名称が書き込んであった。今日の多くのキットが部品番号だけであることに対して教材的な要素があって、楽しいそうだ。今さらまったく無意味とは承知しているが、キット評を試みたい。




さあ、組んでみよう。まず、各部品の合いを確かめる。板に貼ったサンドペーパーで接着面を平らにしてから主翼や胴体を仮合わせしてみると、これが結構よく出来ている。最近の簡易インジェクションキットと同等である。特に胴体下面の冷却器は、胴体と主翼下面との複雑な分割にもかかわらず、問題なく位置が決まる。見事というほかはない。コックピットはお人形さんと座席を一体成形した1パーツのみで、この部品分割のために背部の穴あき板が小さくなっている。これはプラバンで大きめに作りかえる。前述のパーツを使わないと本当に何もないコックピットには、プラバンをL字に組んだだけの椅子を入れておいた。脚は可動をやめる。上側パーツの脚取り付け部分にプラパイプを切って貼り付け、脚柱の取り付け部とする。大きすぎる機銃口は一旦埋め、やや上側に開口させた。 エルロンは本来可動なので左右の隙間が大きい。ここはプラバンを接着して寸法を合わせる。主翼の表面にはカッターで筋彫りを数本追加し、翼端もちょっと削って形を修正しておく。フィレットの造形は、今日のキットとは考え方が違っていた。主翼上面にフィレットがモールドされ、胴体側が平らになっていた。ここには少し隙間が生じたので、瞬間接着剤を数回流し込んで埋めた。水平尾翼は胴体にある穴に突っ込む構造なのでフィレットは省略されているが、これは気にはならない。ラダーも固定して垂直尾翼全体の形を整える。プロペラはしゃもじみたいな形をしているので、それらしく削っておく。文字で書くとかなり修正したように感じるが、このキットが現役だったころは「可動は固定して整形する」「気に入らないところは自分で手を加える」のがモデラーの常識だった。パーツの基本はそのままなのだから、これでも普通の組み方の範囲である。




 塗装は銀色にした。パネルで色を変えれば実感もあろうが、面倒になってしまい銀を塗ってオシマイにした。主翼上面の赤線はフリーハンドで描いたのでややふらついているが、まあOKだ。 デカールはさすがに使えず、ハセガワデカール(←これも骨董モノだ)の日の丸を6枚と、何だかわからない数字を調達し、試験段階であるかのような雰囲気に貼っておいた。着陸灯はいつものように描いてオシマイ。他には特に書くようなことはない。



 出来あがって眺めると、Ⅱ型改の特徴である長い機首に表現不足を感じるが、全体的には実にうまく飛燕を表現している。これがおよそ半世紀前の製品なのだから、ハッキリ言って良すぎる。本当に良すぎる。しかもパーツは少なく、子供にも作れるように考えてあるのだから凄い。 スケールモデルとしても、商品としてのプラモデルとしても良く出来ており、高い評価を与えられたことは当然である。このキットを造り上げたニチモとその関係者を賞賛し、そしてこのキットを高く評価した当時の雑誌作例作者の方々に深く敬意を表したいと思う。




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Vol 47 2012 November.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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