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誌上個展

P-51D ムスタング (ハセガワ旧版 1/72)

by 田口博通 Hiromichi Taguchi



ハセガワのムスタングは新版(モデルアート1999年11月号拙稿参照)に変わりましたが、私はどちらかというと 旧版の方が好きです。
形も破たんが無く、モールドもスムーズでした。
発売当時はキャノピーの形の良さに感動したもので、価格も安く、都合10機在庫してしまい、少しずつ塗装を変えて作り続けています。
 最近、タミヤ、イタレリなど新キットが発売される度に付属デカールも余るので、また それらを有効に活用した塗装をするのも楽しみの一つです。



 製作したのは有名なOLD CROW オリーブドラブの機体で、塗装にはMrカラーを使っています。
先に下面のニュートラルを筆塗りし、次に上面のオリーブドラブを塗っています。白黒のストライプもマスキングテープを使った筆塗としました。
デカールを貼った後、周囲をカミソリで切り抜き、落ち着いた後、デカールの保護を兼ねて、艶消しクリアを クリアとNo30艶消し剤を混ぜて作り、吹き付けています。
これで 全く 筆ムラは気にならなくなります。(少なくとも私てきには)
アンテナ柱はシンチュウ棒を削って、根本を少し太目のものに変えてみました。



ハセガワについて
 72スケールは、細かいことを言わず、たくさん作って塗装のバリエーションを楽しむには最適のスケールです。
1/72の大戦機とジェット機プラモデルの普及にハセガワが1960年代から1980年代に果たした役割は大きく、それは評価して良いのではないでしょうか。
 できれば、ハセガワには安い価格帯の72商品を発売続行してもらって、塗装バリエーションコレクション作りを楽しませてもらいたいところですが もうかなわぬご時世なのでしょうか。
1機1500円以上の72プラモでは さすがに 数を揃えて楽しむことはできません。

 ましてや、最近とみにひどくなった同一機体を2機コンボにして 販売単価を上げる営業手法は なりふりかまわないといった感じでメーカーさんの観点ではよいのでしょうが、我々購買者の足を遠のかせるだけでなく、模型店の在庫金額の負担も増します。ますます 経営難に陥る弱小模型店が多くなることでしょう。

 この点、近年のイギリスエアフィックスの72新金型リニューアル攻勢は、組み立てやすくなり、価格も安く設定してあり、非常にパフォーマンスの高いものであることが実感でき、あちこちで話題になっています。 ブランドの再活性化だけでなく 新たに72スケールに取り組む新興国のユーザー層の開拓も目的にしたらしく、新金型費用を投資するにあたって、しっかりした投資ファンドがエアフィックスの今後の商品戦略を練ったと漏れ聞きます。 日本でも、模型店で久しくみなかったエアフィックス製品が棚のど真ん中に並ぶようになり、リニューアル投入によるエアフィックスブランドの再活性化は成功したといえるのではないでしょうか。
 ハセガワのムスタングは旧版でも形状に不満はなく、リニューアル新版が発売された時にパネルラインが凹彫りになったものの、他に目立った改良点も見えず、なぜ、これで値段が5倍になるのだろうと納得がいかなかったことがありました。
 対してエアフィックスの2012年に発売したリニューアル版P51Dムスタングは旧版と全く別物と抜群に良くなり、かつ価格は低く抑えてあり、1999年発売ハセガワ新版の半額で買うことができます。これは何の差でしょうか? コストの差とは思えず、プラモデルというコモデティ商品に対する戦略の違いなのでしょう。
 
 日本のメーカーでは一社バンダイが購買し作る層をよくリサーチし、そのセグメントにあわせた商品設計や、企画が緻密に行われており、キャラクタープラモではありますが、箱をあける度に驚嘆することが度々あります。 幼少年向けプラモは色プラで接着剤も塗装もいらず、ランナーからもぎとるだけでしっかり完成するように配慮されて設計されています。、一方 マニア向けの商品はかなり凝った作りがされています。ゲートの位置やパーツの勘合はいずれもハイレベルです。

 ハセガワだけでなく日本のスケールモデルのプラモメーカーは32、48、72とスケール毎の商品価格帯やターゲット客層など 企画のあり方とセグメントマーケティングを真剣に見直すべきでしょう。
最近はユーザーをわくわくさせるような+アルファを持ったプラモデルが登場していません。
旧態依然とした精密路線と金型償却費だけから価格設定する思考停止路線から抜け出す努力をしなければ、鉄道模型と同様の衰退の一途をたどることになると思いますが、 いかがでしょうか。




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Vol 56 2013 June.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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