Home  >MV-22B オスプレイ (ハセガワ 1/72)


MV-22B オスプレイ (ハセガワ 1/72)

by 田口博通 Hiromcihi Taguchi
 


 垂直離着陸輸送機オスプレイは日増しに話題が盛り上がっているが、ハセガワから7月20日に待望の1/72 オスプレイ量産型が新金型で海兵隊型MV-22Bとして発売された。23日に購入して、さっそく作ってみたので NEW KIT レビューで紹介しよう。

 
  オスプレイはずいぶん前にイタレリから48と72スケールの試作型が発売されていた。2006年から量産型がやっと部隊配備され始め、日本でも海兵隊機の沖縄普天間配備で話題になった昨年あたりから、タミヤイタレリブランドで沖縄配備部隊のデカール付で再発売されていた。しかし、いかんせん、フライング好き、珍しモノ好きのイタレリ製はやはりの試作型で、コクピットや荷室内部も実感たっぷりに再現され、荷室後部のカーゴドアは開閉選択式だったものの、実際の量産型とは細部で違うところが多かった。  今回ハセガワから かっちりとした量産型が発売されたことは大歓迎だ。 
 ハセガワでは、当初、4,000円弱での発売を予定したようだが、発売直前に3,570円に値下げされ発売された。新金型とはいえ、1/72なのにタミヤイタレリの1/48 3,990円よりも高くなるのはまずいよね という賢明な判断だったのだろう。

ハセガワの新キットではティルトローターや後部カーゴドアなどのギミック、 胴体内装のディテールがどこまで再現されるか、期待が高まっていたのだが・・・



 さて、組み立てた印象だが キットの出来は いつものハセガワスタンダードで、形状はしっかりと出ている。実機の写真と見比べても破綻がないのは良い。 
 期待のギミックはティルトローターのエンジンナセルがお約束どおり回転可動する。しかし、可動部は、それだけ。後部カーゴドアは別部品になっているのだが閉状態のみ。胴体内などのディテールは再現されていない。 (コンビニで売られているエフトイズのヘリボーンコレクション1/144の塗装済み半完成モデルすら、エンジンナセルはもちろん、後部貨物ドアが可動になっているので、1/72のハセガワ新キットには期待はしたのだが。)
  オスプレイの実機は 高速で作戦地域に飛行し、ティルトローターを上に向けて狭い空き地に垂直降下着陸。暗闇の中で後部カーゴドアが静かに開けられ、屈強な海兵隊兵士がさっと展開するといった用途の輸送機なのだが、ハセガワキットではその輸送機の本質的な特徴が表現されているわけではなく、外形だけのスタイルモデルといった趣である。




1.キットは

 このハセガワのキットは まずは海兵隊のMV-22Bとして発売されたが、部品分割を見ると将来は空軍型CV-22もバージョン替えで発売される可能性がある。
 マーキングデカールは普天間のVMM-265 の隊長機 赤竜ダブルナッツと 箱絵のミラマー基地のVMM-165の隊長機の2種が付属している。とすると箱絵バックの海岸線はサンディエゴの少し北あたりか?
 デカールは大判なもので、細かいコーションの他、胴体主翼上の大きな歩行可能区域の大型デカールなどが含まれている。

 オスプレイの最大の特徴のティルトローターエンジンナセルは ポリキャップを使って、回転可動するような仕組みになっている。また、キットには透明スタンドが付属していて 飛行モードでも飾ることができる。大型プロップローターは展張位置だけで折り畳みはできないが、付け根裏が別部品になっている。 
 最近のニュースで岩国に増派のオスプレイを輸送船から積み下ろす際の映像が放映されていたが、実機は主翼を胴体上で90度時計周りに回転させ胴体に重ね、ローターも折りたため、非常にコンパクトに収納できるようになっている。滑走路でたたんだ主翼とローターを同時にウイーンと展張する時の映像を見た方も多いと思うが、まさに映画のトランスフォーマーでカッコいいの一言。
 
 ハセガワキットは この主翼は回転可動はできないものの別部品コンポーネント化はされていて、腕しだいで 収納位置にも改造可能なようだ。
 後縁フラップは別部品となっていてフラップダウン状態も選択でき、フラップを下した場合の隙間板が3角棒形状でついているのは 駐機状態を作る際に大変ありがたい。

胴体後部の荷物積み下ろしランプは残念ながら閉状態に組めない。また、胴体内部も再現されていないので、もし、荷物ドアを開けたい場合は、胴体内部も全て自作する必要がある。 
箱絵


デカール


透明部品
胴体部品

主翼部品

透明スタンドが付属していて 飛行モードでも飾ることができる。



2.実機について

 MV-22Bオスプレイは ベル・ヘリコプター社とボーイング・バートル(現ボーイング・ロータークラフト・システムズ)社が共同で開発したアメリカ海兵隊用輸送機である。
オスプレイは、主翼が固定され、ローターエンジンナセルを回転してプロップローターの方向を変えるティルトローター方式を採用した垂直離着陸機である。飛行特性としては、大ペイロードで固定翼機の高速性と航続距離の長さを持ち、ヘリコプターの垂直離着陸特性を併せ持った輸送機である。

 オスプレイの開発型V-22は1989年に初飛行し、1994年に量産開始と決定されたものの、ティルトローター方式の機構が複雑なため 事故があいつぎ、信頼性確保に10年以上の改良期間を費やして、長く険しい開発となった。このため、実際に海兵隊作戦部隊に配備が始まったのは、10年以上後の、2006年となってしまった。
 
 海兵隊ではCH-46の機種転換部隊VMMT-204が 2000年3月に量産配備1号機(Bu.No.165437)を受領して,訓練活動に入った。しかし、2000年に2件の墜落事故を起こし、12月にはMV-22Bの飛行停止処置となった。その後、機体に多くの改良が追加されて、VMMT-204がやっと飛行活動を再開したのは、2005年のことであった。
 初飛行から2012年6月までに7件の墜落事故を起こし、36名が死亡、25名が負傷しており、「危険な航空機」というイメージが強いが、特殊戦輸送ミッションには不可欠で そのため粘り強く改良が続けられた。軍用機としての実際の事故率はCH-46並みといわれている。
 オスプレイの作戦用兵としては、大型ヘリが使われる一般輸送任務ではなく、高速と航続距離の長さを生かした海兵隊部隊の戦術侵入、強襲揚陸作戦や 空軍型CV-22Bでは特殊戦部隊の長距離侵入輸送、脱出、物資補給作戦などが想定されている。
 海兵隊では360機の装備を予定し、既にオスプレイMV-22Bの実戦部隊が ニューリバーのMAG-29/MAW-2に7部隊、ミラマーのMAG-16/MAW-3)に4部隊が編制されている。
 
 愛称オスプレイ(Osprey)は猛禽類のタカの一種である「ミサゴ」の英語名である。

 なお、日本でも自衛隊が離島防衛などの用途でオスプレイの装備を計画しているという話もあり、実際、護衛艦「ひゅうが」型、新造護衛艦「いずも」型などはオスプレイを余裕をもって収納可能な前提でエレベーターや格納庫天井高さなどが設計されている。
最近の日米合同演習では輸送艦「しもきた」、護衛艦「ひゅうが」にオスプレイが着艦、「ひゅうが」に収納されるなど実質的な運用訓練も進んでいて話題となっている。今後、離島奪還作戦訓練などでその運用真価が問われることになろう。


3.製作 注意点と補足

1 胴体と主翼

 胴体は左右の脚庫が一体となった大きな部品が中心に配置され、強度補強の役目をしている。
 カーゴドアは閉状態しか選べないので、荷室内部のモールドは全く無いが、全く見えなくなる荷室の隔壁にドア部品C2が別部品となっている不思議な構成だ。透明窓ガラスは外側から接着できる構造だが、小さい窓ガラスが内部に落ち込めばやっかいなので、左右胴体接着前に接着してしまう方がいいだろう。
 コクピットもシートと計器板があるのみで、簡素なもの。グレーと艶消し黒で塗り分けておこう。実機のコクピットはグラス計器とはいえ、雰囲気はヘリであり、ごちゃごちゃとしているから、天井からコイル状のヘッドセットコードをたらすなどで雰囲気アップをすると面白いかもしれない。 

 胴体にコクピットと隔壁を組み込み左右胴体を接着するのだが、その前にシリモチ対策で安全をみて、機首におもりを入れておこう。
 胴体上の主翼固定部に四角いブロックがある。上手に改造すれば、これを利用して主翼を胴体上に時計周りに90度回転した収納状態に改造できるのかもしれない。腕に自信のある剣豪の方はぜひトライしてみていただきたい。 構造から察するにキットの企画段階では、主翼回転も計画し、結局なんらかの理由で放棄したのかもしれない。


 主翼はフラップが別部品となっているので、左右翼端にナセル回転機構部を組み込んで、上下を接着すれば、ユニットとして完成する。 通常の駐機状態ではフラップダウンとなるので、隙間板B10もこの状態で接着してしまうとよい。
境界層板は塗装前に接着すれば充分。

 水平尾翼は上下貼り合わせ式で、胴体最後部と一体になっている。合いはよいが、垂直尾翼接着面は垂直になるようにやすりで整形をしておこう。 胴体に主翼、尾翼、カーゴドアを接着すれば胴体基本形は完成する。タミヤの流し込み接着剤を使うと便利だ。合いは良いが、胴体上下面に平らな部分が多いので 接着面の線は耐水ペーパーで綺麗に消しておこう。
尾翼 (写真は尾翼下面から撮ったもの)

2 エンジンナセル

 エンジンナセルの形状はGOOD。 回転用の6角ポリキャップを仕込んで 左右接着する。エアインテークは別部品になっているので、奥になる部分を艶消し黒で塗っておくことをお忘れなく。
エンジンナセルの部品
 

 主翼翼端のロッドにエンジンナセルをはめこんでみて、回転の固さを確認しよう。
胴体下面の中心の穴は飾り台用の穴で飾り台を使わない場合の蓋部品も付属しているので、ご心配なく。
胴体下面

3 塗装とデカール

 まずサフェーサーで下塗りをしておこう。その上に 海兵隊ロービジの3色迷彩を行う。
 説明書の塗装指示図通り、GSIクレオス Mrカラー特色
下面 308 (グレーFS36375)
中間 307 (グレーFS36320)
上面 337 (グレイッシュブルーFS35237)
を使いマスキングせずにエアブラシを直吹きした。
ぼーっとしたロービジなので2色迷彩のように見えるが、本当は3色迷彩になっている。

主翼前縁のゴムブーツ部はテープでマスキングして、艶消し黒に若干のグレーを混ぜて彩度を落としたものを塗装したが こういう場所は筆塗でも充分可能だ。
ロービジ3色迷彩をエアブラシで行い、主翼前縁の氷結防止ゴムブーツ部を黒艶消しで塗装

  垂直尾翼はVMM-265の隊長機のみ 赤となっている。(俗にいう赤竜)
デカールでも赤一面で付属しているが、貼るのが難しいため、若干艶を消した赤で塗装した。 
ロービジ仕上げの果てしなく地味な中に尾翼の赤が良いアクセントになっている。胴体上の歩行区域デカールは大きくて貼りにくいので、適当な場所で分割した方が貼りやすい。
 実機写真をみると上面色と歩行区域とは ほとんど色差がなく目立たないので、歩行区域のデカールを貼らなくてもよいのかもしれない。、
デカールが落ち着いたら、デカール保護を兼ねて、艶消しクリアでオーバーコートして 艶を統一化する。
 ところで、ずいぶん以前にMA誌に「塗装の成功を決するのは、最後の一筆タッチアップ」と書かれていたが同感。はみだしなども 面相筆で丁寧に修正すればわからなくなる。実は筆者の作品は遠目ではわかりづらいが修正タッチアップのオンパレードである。


4 キャノピー 

 最終段階でキャノピーを合わせようとしたら、写真のように下端が開いていて 2㎜くらい合わず、あせった。透明部品がこれだけ合わないと左右から圧力をかけながら接着することもできない。
経年変化で後日クラックが入ったりするからだ。
 原因はメーカーの設計ミスではなく どうも 透明部品の事後変形らしかった。

 webmodelers掲示板でアドバイスをいただき、意を決してハセガワのアフターサービスに連絡したら、「お買い上げ頂きました製品固有のエラーではないかと考えられます。」とのことで、 すぐ代替部品を無料で送ってきてくれたのは、ありがたかった。
 下写真の手前(オレンジ色のマスキングコート中)が届いた代替部品、奥側が購入した製品についていたキャノピー部品である。キャノピー部品の厚み以上に下端が開いていることがわかる。

 こういう不良品も時にはあるようなので、もし、購入した キャノピー部品の下端が開いていて合わなかったら、ハセガワのアフターサービスに連絡して良品と無料交換してもらおう。
 電話の他、ハセガワのサイトから「サポート」→「お問い合わせ」に入り、メールお問い合わせフォームに 不良症状を記入して代替部品を希望すればよい。折り返し 連絡が来るはずだ。 
 プラモデルは完成させてこそ 意味がある。あわず困った部品は不良品かもしれないから、代替部品をもらって ぜひ完成に持ち込もう。きっと アフターサービスの係では親切に対応してもらえるはずだ。

4 完成へ

 脚柱とタイヤは一般的な出来だが、脚カバーは飛行状態も選択できるようになっている。
 プロップローターのスピンナーにつくバランサー?は小さい部品なのでなくさないようにしよう。ピンセットから飛ばしてしまうと、見つけることは至難だ。
機体のあちらこちらに林立する小さいアンテナをつけて、完成となる。

完成した姿は、オスプレイのデイスプレィモデルそのものだ。
 
 








 余談だが、筆者の住む神奈川湘南地域は残念ながら模型店が全滅しているため、購入するために7月23日にわざわざ県央本厚木のポストホビーまで行ってみた。オスプレィは話題の新製品ということで、10個くらいドンと積まれていたのはうれしかった。オスプレイは良くも悪くも話題の飛行機なので、プラモデルファンでなくても たくさんの一般人が購入して作ろうとするだろう。だから、一プラモデルファンとして、初めて作る人にも プラモデルを作る楽しさを感じて欲しい。
オスプレイは初めて作る人もたくさんいる、そういう位置づけにある商品ではないだろうか? 初めてプラモデルを作る人でも プラモデルを作る楽しさを感じる商品になっているだろうか?
 近くに模型店がないので、最近はNET通販か、ヤフオクで探すことが結果的に多くなっているのだが、やはり模型店で棚のプラモを実際にあれやこれや手に取ってショッピングするのも久々に楽しかった。この楽しみをずっと絶やしたくないものだ。







  Home>MV-22B オスプレイ (ハセガワ 1/72)

Vol 58 2013 August.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
  無断転載を禁ず  リンクフリー
「webモデラーズ について」

製作記事


TOTAL PAGE


NEW KITレビュー