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誌上個展

Fujimi 1/72 F-86F-40製作記

by Kiyoshi Iwama


                                       F-86F-40 (1/72) Fujimi Box Art より

はじめに

 ノースアメリカンF-86F”セイバー“は朝鮮戦争でデビューし、MiGキラーとして一躍有名になった戦闘機です。ソ連が朝鮮戦争に送り出した、後退角の主翼を備えた高速の新型ジェット戦闘機は国連軍に衝撃を与えました。この戦闘機、MiG-15には国連軍側のジェット戦闘機も歯が立たず、B-29をはじめ、多くの機体がその餌食となったのです。しかしそこに立ちはだかったのが、米国が送り出した新鋭機、ノースアメリカン F-86セイバーでした。 結果的には、F-86はMiG-15に対し10倍以上の撃墜率を示し、国連軍の救世主となりました。上昇率や加速率ではMiG-15がF-86を上回ったにも拘らず、F-86が優勢となった大きな理由は、その操縦安定性とA-ICMガンサイトにあったと言われています。その操縦安定性は今日でもパイロット達の語り草となっていますが、F-15イーグルが出現するまで、制空戦闘機のトップの座に君臨していたと言っても、過言ではないでしょう。


 そうしたことからこのF-86セイバーは、各国で使用されましたが、創設間もない我が航空自衛隊でも主力戦闘機として本機の導入を決定、1955年12月1日には米空軍からの供与された最初の7機を受領、浜松基地で最初の部隊が編成されました。米空軍からは合計180機のF-86Fが供与されましたが、訓練用に供与された28機は、翼幅が11.32mの境界層板付の-25/-30という形式でしたが、後に供与された機体は翼幅を11.92mに延長した、前縁スラット付の-40でした。 このF-86F-40の機体は、1956年から1961年の5年間にわたり、300機が三菱重工業でライセンス生産されています。また前述の米軍供与の-25や-35の古いタイプの機体は、後年主翼を-40タイプに取り換え、RF-86Fに改造されました。


 航空自衛隊では、F-86Fの装備進展に伴い、全国の基地に配備し、第1航空団(浜松基地)、第2航空団(浜松基地、後千歳基地へ移動)、第4航空団(松島基地)、第5航空団(松島基地、後新田原基地へ移動)、第6航空団(小松基地)、第7航空団(松島基地、その後、入間基地、百里基地と移動)、第8航空団(築城基地)にF-86Fの飛行隊が編成されていきます。 またアクロバット・チーム“ブルー・インパルス”でも長年使用され、東京オリンピックで青空に五輪の輪を描いたのも、このF-86ブルー・インパルスでした。


 さてプラモですが、有名な機体のため、これまでも各社からいろんなスケールのキットが販売されています。今では1/48や、少し古いですが1/32のスケールではハセガワの決定版がありますが、1/72スケールではフジミのこのキットが発売されるまでは、それぞれ特徴あるものの、決定版と言われるキットは無かった様に思われます。 最近ではエアーフィックスから1/72スケールで美しいモールドのキットが発売されました。特にエアーフィックスのキットは、価格が上昇する一方のプラモの中で、費用対効果抜群のキットのように思います。

製作

 今回の製作にあたっては、フジミキットのほかに、プラッツから発売されているカルトグラフ製のJASDF F-86F Collectionデカールを使用しました。本当はキットのデカールを使用して箱絵の機体を作る予定でしたが、デカールが行方不明となり、別売デカールに切り替えた次第です。 またシートベルトにはファインモールドから発売されている航空自衛隊用シートベルトセット1(AA-12 1/72)を使用しました。


1.仮組

 まず主要部品の仮組から始めます。フジミのF-86Fの場合は、インテーク・ダクトがフルにキット化されており、後端にはJ47エンジンのフロント・フェース部が取りつく構造となっています。このインテーク・ダクトを胴体に取り付けた後、前方からインテーク・リップを被せ、外形部形状は胴体のラインと、そして内側のラインはインテーク・ダクトの内面と合わせこまなければなりません。(簡単に書きましたが、逃げがないので大変です)
しかもダクトの上部にコクピットがモールドされており、インテーク・ダクトの位置決めは理論的にもなかなか難しいということになります。仮組をしてもなかなかうまく位置が決まらず、ここは組み立てながら修正していくことにしました。次に胴体と主翼を仮組してみましたが、主翼上面と胴体側面とはほぼぴったり合いますが、胴体下面と主翼下面との接合部は、段差ができることが分かり、ここは本組後、パテで修正することにしました。


2.インテーク・ダクトとコクピット

 さて、最初の工作はインテーク・ダクトです。まずダクトを上下に接着してダクト内部を整形、内部を銀塗装しました。その後、ダクト上面にモールドされているコクピットを塗装します。主計器盤はデカール表現、サイドコンソールはモールドを生かして塗装で仕上げることにしました。写真1がサイドコンソールを塗装した状態です。コクピット内はエアクラフト・グレーを塗っています。 そして金属色に塗装したエンジンのフロント・フェース部(写真2)をインテーク・ダクトの後端に、デカールを貼った主計器盤、塗装したスティックをコクピット内に接着するとインテーク・アセンブリーが完成です。(写真3)このとき、座席も製作しておきますが、コクピットへの取り付けは最後の工程で行います。写真4が塗装を終え、エッチングパーツのシートベルトを付け、完成した座席です。


写真1 コクピット内サイドコンソール


写真2 エンジン・フロントフェース


写真3 インテークダクト・アセンブリー


写真4 座席


3.胴体と主翼

 次にこのインテーク・アセンブリーを胴体に組み込みます。コクピットは写真5のような感じとなります。1/72スケールだと主計器盤もデカールで十分なようです。次に左右胴体を接着し、正面から見たのが写真6です。胴体の真ん中にインテーク・ダクトが見えます。これにインテーク・リップをダクトの内面に合わせて接着し、外形を整形します。正面から見た角度がずれないよう、注意が必要です。 機銃パネルもぴったりフィットします。銃口をピンバイスで整形してから胴体に接着しました。次に主翼を取り付けます。主翼は上下貼り合わせですが、貼り付けたままですと翼の後縁が少し厚くなるので、削ってやり、浅くなったパネルラインを彫りなおします。先に書いたように胴体下面の接合部にできる段差をパテで埋め整形します。(写真7: 塗装後整形が悪く、やり直した際の写真) そして水平尾翼を接着すれば、メインの加工が終了です。


写真5 前部胴体に組み込んだインテークダクト・アセンブリー


写真6 インテーク・リップ接着前の状態(奥に光っているのがエンジン・フロントフェース)


写真6 胴体と主翼の接合部(緑色の部分がパテ盛り部)


4.塗装

 次に垂直尾翼の先端前縁にあるアンテナレドームをエアクラフト・グレーで塗装し、このレドーム部とコクピットをマスキングし、銀塗装(Mr.カラー8番)を全体に吹き付けます。 その後少しアクセントをつける意味で、8番と焼鉄色との混合色を2種類作り、主翼、垂直尾翼、機銃パネル、エンジン排気口回りなどを塗り分けました。(写真7)


写真7 銀塗装の状態

銀塗装が終わると、脚収納部とエアーブレーキ収納部をインテリア・グリーンで、機首の測距レーダ用レドームをレッド・ブラウンで塗装します。(写真8、9、10、11)



 写真8 前脚収納部

 写真9 主脚収納部



写真10 エアーブレーキ収納部

写真11 機首部


 またウィンドシールドとキャノピーフレームも塗装し、機体に載せてみました。(写真12)  キャノピー内部後方のラジオコンパス用ループアンテナはクリアーパーツのランナーを加工し作り直しました。


写真12 キャノピーとウィンドシールドのフィッティング


5.デカールの貼り付け

 次はデカール貼りです。作品完成度を決める重要な工程です。使用した別売デカールは細かなコーションデータまで綺麗に印刷されています。老眼の目には少しきついですが、小さな注意書きも写真を見ながら丁寧に貼り付けていきます。これで随分イメージアップが図れるはずです。 デカールは上質で比較的綺麗に貼れました。また幸いにもシルバリングがほとんど発生しませんでした。しかし、写真14に示した、エアーブレーキ部にかかる胴体の日の丸の貼り付けには苦労しました。マーキングは松島基地にいた第4航空団第7飛行隊のものを選でいます。(写真13、14)


写真13 機首部に貼り付けたデカール


写真14 後胴部に貼り付けたデカール


6.仕上げ

 デカールを貼りが終えると仕上げです。まずデカール保護のためクリア塗料をオーバーコートします。クリア塗料が乾燥した後は、パネルラインへの墨入れと若干の汚しを行います。私はあまり汚さない方ですので、黒や茶色のコンテを粉にし、それを面相筆の先に付けて舵面のヒンジ部周辺のオイル汚れや排気口の汚れなどを表現していきます。
そして最後に、作っておいた主脚、前脚、各カバー、燃料タンク、機首上部のTACANアンテナ、座席、ウィンドシールド、そしてキャノピーなどを取り付け、完成です。(写真15、16、17)写真にはありませんが、機首下面のランディング・ライトには、ウェーブ・オプションシステムのHアイズ3ミニのクリアーパーツを流用し、実感を高めました。

いろいろ苦労もありましたが、ほぼイメージ通りのF-86F戦闘機を手にすることができました。






写真15、16、17 F-86F-40の完成です


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Vol 59 2013 September.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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