Home  >「海牛(ゼ-キュ-エ)」

誌上個展

「海牛(ゼ-キュ-エ)」

by オンケル・ハイニ

まいど、オンケル・ハイニでおます。
今回はニチモの「U-Ⅸb」の洋上ディオラマ『海牛(ゼ-キュ-エ)』を投稿させて頂きます。





かって「陸のタミヤ」、「空のハセガワ」、と並び「海のニチモ」と称された、日本模型株式会社の技術の最高潮の時期に発売されたキットで、少ない部品点数で、最高のモ-ルドでまだ資料の少ない時代によくこれだけのリサ-チが出来たものと感心します。





U-Ⅸ型は旧ナチスドイツ海軍の主力U-ⅦC型が約770t程度であったものを1,051tと大型化し航続距離を伸ばした物で、船体が大きくなった分運動性や急速潜航時間が延びてしまい「海牛(ゼ-キュ-エ)」と呼ばれたと言われています。





私は艦船模型を作る際には、出来るだけ洋上ディオラマにするようにしているのですが、1,000tそこそこの潜水艦とは言え1/200では40㎝弱と、かなり大きなキットですのでなかなか厳しいところもあります。
1/700のキットですと、お手軽にアルミホイルを利用するのですが、さすがにこのスケールではイメ-ジを壊すのと、荒れた海を作りたかったので粘土「フォルモ」を使用しました。





最初は艦体の下部を切り取ってベ-スに固定し、その周りに海を作る事を考えていたのですが、その方法だと制作しながらの調整がやりにくいと感じたので、当初用意した平らなベ-ス(以前作っていたもの)に立上げ部を追加し、発砲スチロ-ルに大体の位置を切り抜き、紙粘土で粗々の形を作り、艦体を出し入れできるようにしておいて、キットの作製にかかります。





キットは1970年代に発売されたとは思えないほど完成度の高いものですので、制作自体には何の問題もありません、が、さすがに手摺等は真鍮線に置き換えます。
艦橋部の手摺はキットのパーツを参考に一部省略部を追加しています。
艦体の手摺は様々なタイプがありますが、今回はキットのモノと同じタイプにしています。後は艦橋後部両脇の梯子も真鍮線に置き換えています、時間があればジャッキステー等も手を入れたかったのですが、今回はパスしました。





後は潜望鏡を0.7mmの真鍮線の先端をヤスリで削ったモノに置き換えました。
その他、主砲や機銃(インストでは後部の37mm砲を機関砲としていますが、実際は単装砲ですので、砲上後方の装填部は削り取ります)に手を入れていますが自己満足の世界ですので、まあ、ほどほどに…。





キットの追加工作の方は張線を張る程度です。
後はキットのですが、手摺の工作にかかる前に基本塗装は済ませておきます。
ナチスドイツ海軍の艦艇の側面はかなり明るいグレーで、白に近い明灰色です。
甲板は濃いグレーで、旧海軍の軍艦色に少量のライトグレ-を加えたものを基本色とし、小型のハッチ類を明るいグレーで、大型のハッチ類を暗いグレーで塗り分け、凹部に墨入れを施し、錆を入れてやると、多少はメリハリが付くと思います。





後はベースの工作ですが、細かい部品を付ける前に、ベースに乗せて位置決めし、海面の工作にかかります(この段階では、ベースと艦体は接着しません)。
まず海面の大まかな形を作り、大波小波を、バランスを見ながら盛り上げていきます。
大体 形になってきたら艦体とのに多少の隙間があっても、一旦艦体を外して、海面の基本塗装にかかります。





海面の塗装には絵画用のアクリル塗料を使いました。
アクリル塗料はあまり艶が無いので艶出し剤としてブレンデッド・ファイバーを混ぜて筆塗りしています。全体を藍色で塗り、青と白を適宜混色しつつ波の頂部を白く底部にゆく程濃い青になる様重ね塗りして行きます。





ある程度“絵”になったところで、大体完成させた艦体をベースに固定し、艦と海との間をフォルモで埋めます、この辺は白波が立っているので、表面部分は爪楊枝などで荒らしておきます。
また、艦首付近の海面には艦首波をフォルモで作り取り付けます。
追加したフォルモの表面は白か明るいブルーを塗っておきます。





そして、今回最も力を入れたのが、波と排水の表現です。
これにはレジンサンドと言う、絵画用の盛り上げ材を使用しました。
レジンサンドは粒子状のレジンで、通常は固めの溶きパテと言った感じで、乾くと半透明の塊になります。
ただ、半透明と言っても、くすんだ灰色がかっているので、そのままではあまり綺麗とは言えませので、着色して使うか、最後に表面を塗装して使うのが良いでしょう。
着色には水性塗料が使えますが、ラッカー系の塗料はアウトです。
エナメルとタミヤ・アクリルは試していないので使えるかどうかは判りません。
今回私はレジンサンドに透明水彩(普通の絵の具)を使用しています、使い方は簡単で、何かの容器にレジンサンドとブレンデッド・ファイバーを適量とごく少量の絵の具を加えて混ぜ合わせ波立つ部分に盛り付けてゆきます。





さて、潜水艦は水上艦艇と違って艦首波とウエーキのみではなく注排水口や水抜穴からの排水を表現してやる必要があります。
手間ではありますが、見せ場としては非常に面白く、やり甲斐のあるものでもあります。
まず艦体の両サイドにずらりと並んだ注排水口にレジンサンドとブレンデッド・ファイバーを混ぜたものを細筆や竹串等で少しずつ盛り上げてゆき、上面に白を加えたレジンとファイバーを塗るようにして仕上げます。
最後に、艦首魚雷発射管の水抜き口から糸を引くように排出される海水を作ります。
これは、透明ランナーをライターで炙って伸ばしランナーを作り、曲げ癖をつけて水抜き口に接着し着色したレジンとファイバーを塗りつけます。


完成した作品を前にすると、このスケールと技術でU-ⅦC型のキットを作るメーカーが出ないものかと、かなわぬ夢を見ています。
U-ⅦCは現在1/72と1/144で発売されていますが、日本の住宅事情からは大きすぎるように思います。
同じ潜水艦で、同じ1/200でも伊-19潛は大きすぎ、1/350の方が適しているし、戦艦や空母は1/350より1/500か1/700の方が適していると思います。
艦船模型はスケールに合わせてキットを作るのではなく、その船に合ったスケールでキットを作るのが良いのではないかと思っています。


  Home>「海牛(ゼ-キュ-エ)」

Vol 60 2013 October.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
  無断転載を禁ず  リンクフリー
「webモデラーズ について」

特集2


TOTAL PAGE