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誌上個展

三菱キ-67 4式重爆撃機 飛竜 (LS 1/72)の製作

by 田口博通 Hiromichi Taguchi




 皆様の「心に残る傑作キット」とはどんなものでしょうか?
 筆者の場合、そのうちの一つがLS72飛竜でした。この旧LS(現在はアリイから現役で発売中)の傑作キットとして古くから名高い「飛竜」は 今回通算3機目の製作となりました。(実は正確には完成したのは2機)

 1機目の記憶は高校生の時で、暗緑色をレベルプロスプレー(我が家にはまだ後生大事に残っています。)で吹いたもの。語るも恥ずかしい出来で、とりあえず完成しました、という程度でした。
 可動の爆撃庫扉が動くはずが一度開けると閉められず。フラップも途中までしか引き出せず、下がらない。脚扉はガタガタで可動ピンが折れ 修理不可能に。エルロンはだらっと下がったまま。 マスキングが不足であったため、暗緑色のスプレーが内部に吹き込んで、機首の透明部品を汚してしまい、とさんざんな出来具合でした。動かすうちにあちこちが壊れ、部品を紛失し、結局、転居の際に どこかに行ってしまったようで証拠隠滅となりました。 
 2機目は20年ほど前で、手を入れ過ぎて、コクピットで挫折、完成しませんでした。今回、再開しようと探したのですが、部品があちこちに散逸してしまったのか、主翼部品をどうしても見つけ出せませんでした。 

 3機目が 今回作ったもので、意を決して新規にアリイ版をアマゾンで購入。なんとか見事 完成に漕ぎ着けました。
 製作を開始したのは、webmodelers2月号のLS特集に間に合わせようと、秋も深まった11月初旬です。しかし、可動部の調整と透明部品の塗装に手間取り、1月末には完成できず、結局完成したのは 3月末となりました。

 さて、製作に際し、参考にしようとMA誌をひっくり返しましたが、製作記事を見つけることが出来ませんでした。このLSの飛竜は 発売初出が1966年ですから、MA誌が刊行される前の話。登場の機会が遂に無かったのかもしれません。
 
 それならばという訳で、今回は製作記事として書くこととしました。 




 古いキットを また作るのも、これまた大変楽しいものです。走馬灯のような懐かしさもさることながら、長年の胸のつかえが下りたようでスキッとすることもあります。
 大多数のモデラーはおそらく完成する数よりも 購入する数が多いと思います。私もお仲間で、人生を重ねるにつれ、いつのまにか貯まったキットが、数えてみると1000近くという状況になっています。どう考えても 死ぬまでに全部作ることはできません。それどころか、毎月、いくつかニューキットを購入しており、在庫が減るどころか増えている一方ですから。 

 それで、「時間ができたら成仏するまでに作りたいキット」という在庫キットリストを5年くらい前に作りました。(最近の流行語では「終活」というそうで、、)
 その中には 少年時代から憬れたプラモデル、箱を時々取り出して眺めるだけで満足している傑作キット、情報過多のため、どう作ろうか迷ってしまった迷子キット。手を入れ過ぎて? 途中で中断したキットなどもあります。
別名「心残り リベンジ・リスト」とでも呼べば良いでしょうか。
この「心残りリベンジリスト」には レベルの32トリオ、レベルファイターシリーズ、モノグラムの48NAVY、タミヤの古い50、72航空機、アカデミーのヘリコプター、そしてLS72シリーズ等等がリストアップされています。 
 時々、そのリストを見ながら、少しづつ完成したものに桜花(もちろん撃墜マーク)をつけて、「やったね!」と ひそかに ほくそえんでいます。 

12月号に掲載のため やっと完成した「タミヤ透明彩雲」もその一つでした。  完成させずに墓場まで持って行っても、ただのプラゴミ。こちらが成仏する前に、素組でもいいから 出来る限り、完成させて キットを成仏させてやりたいものですね。 


LS飛竜キットについて

 このLSの飛竜は1960年代プラモ黎明期の発売で、製図版とマニュアル金型工具による力作です。部品の合いの一部はよくありませんので、多少のパテ修正は必要です。
 しかし、さすが LSで、全体フォルムには定評があり、上手に作れば ki-67 4式重爆飛竜の姿そのままが再現できる傑作キットであるということは、先達の作品が証明しています。 高校生の時でしたか、郷里のプラモ展示会で飛竜と96陸攻の素晴らしい作品が展示されていて 食い入るように見つめた記憶が鮮明に残っています。 それが筆者にとっての「心に残る傑作キット」の原点なのかもしれません。
 この飛竜は1960年代という時代を反映して可動部満載で フラップ、エルロン、主脚、尾輪、爆弾格納庫、前後機銃が可動するなど、現代のキットには見られない オール可動 遊び心満載のキットです。
 現代はハセガワの1/72飛竜も発売されていますので、可動部を全固定にして スケールモデルを狙った所で 意味が有りません。
 それで 製作方針は キットのオリジナルの可動部を全て生かし、さらに 尾翼方向舵、昇降舵も可動に改造し、現在の持てる技能で オール可動を実現するということにおきました。

機体部品

 (写真) キットの主要な部品群。可動のため、部品点数が150点の力作で、少年時代はまぶしく映ったものです。

主翼、 可動部が多く、エルロン、フラップなどが別部品化されている。


エンジン、プロペラ、爆弾、魚雷部品
胴体と透明部品
 
[

組み立て説明書

 組み立て開始前に 組み立て説明書は アリイ現行版(最終LS版)の組み立て説明書は簡易的になってしまっているので、 お持ちならば、できるだけ初期の旧LS版の説明書を引っ張り出してみてください。
 変な話ですが、旧LS版でも初期になるほど詳しく書かれていて 使いやすくなっています。可動部の調整、組み立て順序など 疑問点が氷解します。また、初期LS版には カラー塗装図も付属していました。
 ところで、説明書を軽視するとロクなことは無いと感じているのは筆者だけでしょうか? フロッグは図だけの非常に簡単な説明書きでしたが 早々と消滅しています。LSが1992年に倒産した一因は、説明書を軽視した時期と重なり、 リピーターが減り、ビジネスがしぼんだのでは? と推測しています。
 次危ないプラモメーカーは?

(写真)初期LS版の組み立て説明書 (注意点が細かく記載されています。)


現行アリイ版(最終LS版)の組み立て説明書 
(この図情報だけで、オール可動のキットを完成させるには 相当の力量が必要。)


初期LS版のカラー塗装図

胴体の組み立て

(写真) 内部部品を組み込んだ胴体


 胴体部品の合いは今一つなので、接着面と可動部には丁寧な調整が必要です。
細いやすりの他、かまぼこ板に耐水ペーパーを貼りつけたものを用意しておいて、胴体の接着面を平らにします。

 内部部品を塗装して、胴体に組み込んでいきますが、最も難度の高いのは、爆弾槽扉の開閉調整です。扉開閉レールの形状を観察すればわかりますが、このレール形状では 一度開けると胴体の下に潜り込んでしまい、2度と閉めることはできなくなります。ガタガタになってもかまわないので、レールのスリットをナイフで広げ、もっと遊びを大きくとる必要があります。
組み立てた 床と爆弾槽のブロック


 搭乗員は前後機銃座のみキットオリジナルを使い、パイロットは他キットからトレードしてきました。

 服装は国防色で丁寧に塗装し、旧日本軍パイロットのトレードマーク、お約束の白いマフラーを巻かせてあげます。
 上部機銃座は胴体左右接着前に組み込む必要があるので、先に塗装を済ませます。銃座の人形は そのままでは搭乗できません。下半身をチョンパします。

可動主脚の組み立て

 主翼の発動機ナセルですが、ここも難度の高い部分です。”キモ”は主脚扉のピンを丁寧に整形することと、ピン押さえ A46,47の位置調整です。 主脚のピンにはグリス(タミヤミニ4駆用が手に入りやすい)をつけて、上げ下げ可動と、扉の開閉調整を充分に繰り返して、スムーズに動くようにしましょう。
 
主脚下げ、扉開
主脚上げ、扉閉め

可動翼

 まず、主翼の上半角ですが、初期版説明書によりますと後桁下面の線で7度と明記されています。感覚的には相当の角度がついているという印象で丁度です。
 フラップの機構はA41可動レールの軸に接着剤が付かないように、グリスを塗っておけば、楽勝です。フラップ操作は可動レールを引き出してから、下へ45度下げます。
 尾翼昇降舵と方向舵はカッターナイフで丁寧に切り取りました。平衡錘はうまく切り取るのは至難の業なので プラ板で作り直した方が簡単です。

 可動翼の機構には現代の技術を適用し、 ガンダム用の1mm径スプリング線を10mmくらいの長さにして、使うと簡単です。 
 下写真は 方向舵にスプリング線を仕込んだもの。
胴体や翼の同じ位置に1mm径の孔を開けて、差し込めば、中立を保持する可動翼になります。

 黒く見える部分がスプリング線。平衡錘は胴体からきれいに切り取るのは難しいのでプラ板で作り直した。 下は 可動翼に使用したコトブキヤのスプリング線
径は 0.5mm,1.0mm,1.5mmと3種あるので、機体の大きさに応じて使い分けます。 今回は1.0mm径を使用。

塗装

 好みから茶系の塗装としました。
上面 Mrカラー特色No.132 土草色
下面 同No.128 灰緑色
で筆塗りしています。
 この爆撃機の大きさでも筆塗りした理由は、昔、中にスプレー飛沫が入ってしまい、透明部品を汚し、失敗した経験があるからです。
 土草色を塗装した時は明るく感じますが、乾燥後、ローアンバーの油彩でウォッシングすると少し暗い茶系になります。主翼前縁警戒黄色、日の丸、尾翼マークもマスキングテープでマスキングして 手書きとしました。


透明部品

 透明部品の塗装は、枠が多いので手間がかかります。マスキングテープを全面に貼り、カミソリで丁寧に窓枠を切り取り、筆塗りしました。面倒でも機体内部色で下塗りし、上面色を塗ると、透けず具合がいいようです。

 胴体側銃座には ガンナーを搭乗させましょう。
塗装が完了した透明部品

 機首透明部品下部には、爆撃照準器を搭載します。
爆撃機の存在意義は この爆撃照準器と爆弾を敵地上空まで運ぶことにあり、爆撃機の最重要兵器です。
完成真近の飛竜

 完成

 エンジンを組み込み、カウリングをかぶせ、プロペラをつければ、完成です。 高校生の時に見た先達の作品にはかなわないかもしれませんが、自分的には まごうことなく傑作です。
 このLSの飛竜キットは製作を進めるうちに傑作と言われた所以に納得が行きます。外形にも、完成した飛竜の内部構成にも 旧日本軍の爆撃機の本質がよく表現されています。
 外形フォルムも素晴らしいものがありますが、爆撃機の本質を表現するのは外形だけではありません。どうやってその本質をプラモデルキットの中に表現するかLSの設計者達は熟慮したに違いありません。それが当時の持てる技術を注ぎ込んだ 内部構造や可動部だったのではないかと推測しています。
 これだけの傑作キットが日本のプラモデル黎明期の1960年代に設計されたことは、本当に凄いことです。






ki-67 飛竜  実機諸元

諸元
エンジン ハ-104 空冷星形18気筒 1900馬力
       双発
爆弾 800kg 又は 魚雷 800~1070kg

全幅 22.5m
全長 18.7m
搭乗員 6~8名

最高速度 538km/h
航続距離 3800km
実用上昇限度 9470m
試作1号機 完成 昭和17年12月
生産機数 697機
製作会社 三菱


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Vol.68 2014 April.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved / 
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