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ソリッドモデルの製作

Fw190D-9 製作記 (ソリッドモデル 1/50)

製作  福田 和 (彩雲会)
編集 webmodelers編集部

 主に「木」を材料に使ったフルスクラッチモデルは 古くから「ソリッドモデル」と呼ばれ、日本でも 昭和30年代ころから盛んに製作されてきました。
  機種選定もスケールも自由自在ですが、「木」が材料ゆえ、その製作には高い特別な技術が要求されます。
 そのソリッドモデルも最近はマルチマテリアル化しており、その製作技術の中には、プラモデラーでも参考になる技術も多いようです。

 1960年代は航空ファン誌上で、ソリッドモデルの製作記事が連載されましたので、胸をときめかせた オールドプラモデラーも多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人です。
 
 「ソリッドモデル」のクラブも各地にありますが、新しく取り組む若い人が減ったこともあり、最近では 「ソリッドモデラー」も高齢化し、クラブメンバーも減少しているのが悩みだとのことです。

 再び、ソリッドモデルに新しい息吹を吹き込めないかと考える 各地のソリッドモデルクラブと協力し、webmodelersでは、そのソリッドモデルの先達の製作過程と技術を紹介する連載製作記事を企画しました。

 東京、名古屋、大阪、福岡に大きなソリッドモデルクラブがあるので、興味のある方は、一度 そのサイトページを覗いてみてはいかがでしょうか。   プラモデルではまず発売されない機種や、工作のヒントなどが多く掲載されています。

          (webmodelers編集部 記)

クラブ名 ホームページアドレス
TSMC 東京ソリッドモデル クラブ http://www.ne.jp/asahi/tsmc/net/
名古屋3点クラブ http://a011w.broada.jp/3ten/
大阪彩雲会 http://saiunkai.s261.xrea.com/
FARC 福岡エアロレプリカ・ソリッドモデルクラブ http://park12.wakwak.com/~dikiya/


 第2回は、大阪のソリッドモデルクラブ「彩雲会」の主要メンバーで 2009年に惜しくもなくなられた 福田 和 さんの Fw190D-9の製作記事を 「彩雲会ホームページ」から再編集し 皆様にお届けいたします。   その工程は木の材料どりのため、まずは図面を入手し、型紙を作り、糸のこぎりで材料取りをする所から始まります。 材料には「朴」の木を使うことが多いようです。

Fw190D-9





Fw190D-9 実機について
 D型はA型の性能向上型として大戦末期に登場しましたので、殆どが本土防空部隊で使用されており実機の写真があまり残っていません。野原茂氏のエアロディテールにある現存実機の写真が大変参考になります。
D-9の最大の特徴は、エンジンの液冷化による環状ラジエターの搭載と重心バランスをとる為、胴体後部に長さ50cmの延長材を組み込んでいる点です。

木取り

 写真は各ブロックの材料取りの状態を示しています。
胴体後部は一旦A型と同じに材料取りしてから所定位置で切り離して延長部材(スペーサー)を入れます。
 (編集部注 :胴体は2枚の厚板を貼り合わせて製作していますが、これは中心面を最後までわかりやすく残すためです。写真で色が変わっているところが中心面です。)

胴体

 粗取りした胴体の材料ブロックを環状ラジエターの付くカウリング部、胴体中央部そして延長部材を入れる尾部の3ブロックに分割します。長さ1cmの延長部材も準備します。


 胴体各ブロックをナイフ、ヤスリ、ペーパーを使って成形します。なお延長部材は垂直尾翼側に仮付けしておきます。
特にMG131機銃カバーの微妙な膨らみや意外に角ばった断面の後部胴体は写真を見ながら慎重に成形します


 胴体上部にあるMG131機銃の発射口に取り掛かります。
先ず正確に位置を罫書きピンバイスで孔をあけます。
ドリルは先ず0.7mm径を使用して下孔を作り、次にドリルを1.5mm径に変えてくり広げます。


 そして細い丸ヤスリを使って孔をくり広げて行きます。
所定の真鍮パイプが差し込める孔径になるまで慎重に作業を進めます。


 パイプが完全に接着固定されたらヤスリを使って上半分を削っていきます。
すなわち胴体表面のカーブに沿うようになるまで慎重にヤスリをかけて行きます。
これでMG131から発射された銃弾の通り道が出来上がりです。
 次に操縦席部分の孔をあけます。胴体上面と下面の両方から彫刻刀を使って慎重に掘っていきます。


 尾輪収納部は実感をだすために胴体を木型にしてプラ板でヒートプレスして作ります。
プラ板の厚みを考慮して実際より尾端に近い側を木型にします。
 


 尾輪収納部のヒートプレスガ出来たら所定位置を切り欠きます。
そしてプラ板で型取ったものを接着します。
 


 主脚収納部の中央部はエンジンの後下部の直後にあるのでエンジンの一部や配管、配線類が見えます。
これをそれらしく再現するためにエンジンの一部及び付属部品を取り付けます。
そのための穴を操縦席部と同じ要領で掘っておきます。

環状ラジエター


 ラジエター用         スピンナー用
  機首カウリングの外形加工が終わったら環状ラジエターの制作にかかります。
先ずラジエターの中心部材を作ります。
この部材はスピンナーの材料と一緒に作ります。
角ブロックを正確に削りだします。
 角材ブロックをナイフで荒削りした後、ヤスリとサンドペパーで丸棒に仕上げてスピンナー用とラジエター用に分割します。

 次に不要になったカレンダーの紙を巾10mmの短冊状にに切ります。
これをラジエター用丸棒にぐるぐる巻きつけていきます。

  胴体ブロックと一緒に外形部を成形しておいた機首カウリグに環状ラジエターを取り付けるための穴くりをします。
丸ノミで粗加工した後、丸棒(彫刻刀の柄を利用しました)にサンドペーパーを巻き付たもので 最終仕上げします。
 先に出来上がっているカウリングに
収まる寸法になるまで短冊状に切った紙を巻きつけて
最後の部分を外れないように接着します。

  次にラジエター前面に0.3mmの洋白線を18本取り付けます。
中央の丸棒の表に出ている側面にピンバイスで正確に0.3mmの孔をあけて洋白線を差込みます。
 そして上下2箇所にプラ板で補強部材らしきものを取り付けるとラジエターらしくなります。
 ラジエターをカウリングに仮に入れた状態です。
Fw190D-9の特徴のひとつがそれらしく出来ました。

過給機空気取り入れ口

 過給器空気取入口は小さい部品のため 加工がやり難いので、不要になった筆の柄に瞬間接着剤で固定して削り、加工とペーパーかけを行います

 成形が終わったら吸入口に真鍮パイプを差込んで瞬間接着剤で固定し、胴体への取付用に真鍮線を差込んで固定します。
そして胴体の所定位置に取付用の孔をあけて仮取り合いしてみます。

カウルフラップ

 環状ラジエターのカウリングにカウルフラップが11枚取付けられています。先に仕上げてあるカウリングにカウルフラップ取付用の溝をデザインナイフで慎重に加工します。
 フラップは0.3mm厚さのプラ板を4mm幅の短冊状に切ります。
 これをカウリングに加工した溝に当てて見て、現物合わせで全周の長さを決定し、それを11等分して切ります。
 11等分して罫書いたプラ板を1枚ずつ切り離します。これを筆などの柄にぐりぐり押し当ててR曲げします。そして右上から順番に5枚取付けます。取り付けは瞬間接着剤を使います。
 次に左上から同様にして5枚取付ます。
最下面の1枚が残りますが微妙な寸法誤差が出ますので最後にこの位置のフラップで長さを調整して取付けます。すなわち長すぎたら切ればよいし、短い場合は1枚作り直せばよい訳です。

主翼


 胴体の加工が一段落したので主翼の制作に取り掛かります。
実機の写真を見ると主翼下面の脚収納部から主桁のリブなどが良く見えるのでそれらしく加工します。
主脚収納部はプラ板でヒートプレスして作りますので、まず前縁のみ成形してそれを木型にします。この時点では上半角なしです。


 前縁の成形が終われば万力で後縁側を挟んでしっかり固定します。
この時点では上半角なしです。
万力で挟んでない側から1mm厚さのプラ板でヒートプレスします。
片側が終われば反対側に挟み変えて同じように作業します。


 プラ板をヒートプレスした主翼前縁部品に主脚を収納するための穴を切り抜いた状態です。  後縁部を削りますが、完全に仕上げずに調整削り代を残しておきます。
次に翼中央部に鋸で慎重に切り込みを付け、そしてデザインナイフで楔形断面の溝を作ります。


 上半角チエック用のゲージです。主翼下面に当てて角度をチエックします。

 静かに折り曲げるようにして上半角を付けます。
次に示す簡単な上半角ゲージを使用してチエックします。
 そして溝にエポキシ系の接着剤を入れ上半角が決まれば、溝に直角に橋を架けるように小さな木片を瞬間接着剤で固定して、エポキシ系接着剤が固化するのを待ちます。この木片は仮の補強のようなもので後ほど削りとります。
 上半角が決まればフィレット部の制作に入ります。
フィレット取付のための主翼中央後縁部の切り欠きとフィレットブロックの状態です。


 フィレットブロックを切り込み部に嵌めて 接着します。そして フィレットの微妙な曲面をナイフで慎重に削り、サンドペーパーで加工しますが、完全に加工せず、調整仕上げ代を残しておく必要があります。  フィレット部の粗加工が終わったら、いよいよ前縁の主脚収納部の工作に掛かります。
先にヒートプレスしたプラ板製の主脚収納部ブロックを 取付けるための罫書きを行います。


  主脚収納部は主桁の直ぐ前の空間に作られていますので、主翼下面の主脚収納穴から覗けば、エンジン後下部とその各種配管配線類、主桁やリブ、MG151機関砲基部、主脚引込み回転基部や引込みアーム基部などがよく見えますので、これを出来るだけそれらしく再現します。
そこで先ず主翼前縁を 主桁の位置に沿って切り欠きます。
 厚さ0.5mmのプラ板を切って 主桁位置に瞬間接着剤で貼り付けます。リブもプラ板を細く切って瞬間接着剤で取付けます。
そして先にプラ板でヒートプレスしてある前縁ブロック取り付けのため、ノリ代に相当する部分をデザインナイフで慎重に加工しておきます。
主桁に4個の孔をあけますが、中央寄りの2個はMG151/20mm機関砲基部取付用で 外寄りの2個は主脚回転基部取付用のものです。この回転基部には次に示す主脚差込式のソケットを取付ます。


半田付けが終わった主脚回転基部ソケットを主桁の孔に差し込んでおきます。MG151機関砲基部や引込みモーター回転部も取付けます。
 そして先にプラ板でヒートプレスしてある主翼前縁部品の内側(主脚が収納される部分)に、リブや補強部材をプラ板でそれらしく作り 瞬間接着剤で取付ます。
 主桁部分と その付属品 および 主翼前縁部品の内側(主脚収納部)の塗装をしておきます。
塗装色はRLM02(機内色)です。

 プラ板でヒートプレスした主翼前縁ブロックを 主翼本体に取付けて、瞬間接着剤で接着し、ポリパテで隙間部を埋めます。
主翼表面と多少の段差が出来ますが、プラ板は1mm厚さがあるので パテが乾燥したら思い切ってヤスリとペーパーで削り込み 継ぎ目を滑らかに仕上げます。あまりペーパをかけすぎると 厚みがなくなるので注意が必要です。
これで主翼ブロックは一応出来たので、次は胴体ブロックとの接合になりますが その前に胴体ブロックにエンジン関係の部品の取り付けをします。

尾翼

 実機では水平尾翼は左右一体構造になっており、取付角度が調整できるようになっています。モデルでは左右一体で成形してから2分割して胴体に真鍮棒を差し込み、両側から胴体を挟むようにして取り付けます。
胴体取付部にあるフェアリングは0.3mmのプラ板でそれらしく作りました。
写真は胴体へ仮取付した状態です。
胴体への正式取付は塗装完了後に行いますので この時点では接着はしません。


 補助翼、方向舵、昇降舵に固定タブを取付けます。
写真は昇降舵の固定タブの取付を示します。タブは0.1mm真鍮板を使用します。(ビールの空き缶でも良いでしょう)
 デザインナイフを使って後縁を慎重に削って ノリ代部分を作り、そこに真鍮板を瞬間接着剤で取付けます。右側はタブ取付前の状態で 左側は取付けた状態です。
接着後ポリパテを薄く盛り付けて 滑らかに加工します。
補助翼、方向舵も同じ要領でタブを取付ます。


モックアップの組み立て

 主脚収納部から見えるエンジン関係部品の点火用発電機、冷却液ポンプ、制御装置、潤滑油タンク、エンジン支持架、各種配管配線などは 写真を参照してそれらしく作り、焼鉄色、艶消し黒色、グレーなどで塗装して 胴体下部にある孔に配置取付します。
そして次はいよいよ主翼ブロックと胴体ブロックの接合になります。
 排気管取付部の孔を加工しました。排気管は胴体側面両側に6本出ています。
 操縦席右前方の胴体に信号弾の発射口がありますので、真鍮パイプを差込んで 瞬間接着剤で固定後、ヤスリで成形しました。


 主脚収納部の出来上がった主翼ブロックと
エンジン関係後下部の出来上がった胴体ブロックの接合前の状態です。


 主翼ブロックと胴体ブロックを接合し、隙間をポリパテで修正しました。

 排気管はプラモのランナーを曲げてヤスリとペーパーで加工しました。先に加工してある取付孔に排気管を仮に取付けて見た状態です。
機首右上にあるコックピット内空気取入口もランナーを加工しました。過給器空気取入口は先に作ってあるものを仮取付しました。
主翼付け根にあるMG151機関砲点検ハッチ用のふくらみは プラ板をヒートプレスして作り、ポリパテで取付け部の隙間は修正しました。
 排気管を取り合いして 主翼下面側から見た状態です。主翼付け根にあるMG151機関砲の空薬莢排出口は デザインナイフで加工しました。
 主翼中心線上に見える2個の孔はETC504ラック取付用のもので、向こう側の薬莢排口近くに見える孔は モラーネアンテナ取付用のものです。
 主脚収納部からエンジン用の配管や配線類が見えています。そして収納部の両端には 脚柱差込取付用のソケットも見えています。


 脚まわりが一段落したので本体へ戻り、補助翼、方向舵、昇降舵、フラップ、胴体上部MG131点検パネルの筋彫りを デザインナイフを使用して行いました。
外板の継ぎ目や小さい点検パネルなどは サーフェーサーを塗装研磨後に、罫書き針で筋目をつけます。

 ガーラント・ハウベ用の防弾鋼板支持架を 所定の位置に仮置きした状態です。
 支持架は人工木材を加工して作りました。防弾鋼板は0.3mmのプラ板を切っています。頭当てはプラモのランナーを薄く切ってプラ板に接着しました。
 防弾鋼板支持架の上にガーラント・ハウベを仮に取り合いした状態です。

 すべての部品の制作が終わりましたので、全体の感じをつかむ為に仮組立を行いました。
長鼻のドーラはA型とは感じが違っています。
この後、サーフェーサー塗装にかかります。


タイヤ&ホイール

 タイヤとホイールは人工木材を使用して加工します。
左端は主車輪ホイール、中2個は主車輪タイヤ、右端は尾輪タイヤの材料です。
尾輪のホイールは小さいのでプラモのランナーで作ります。

 タイヤとホイールを加工しました。タイヤは先ず角材のコーナーをナイフで落とし大体の円形にして、次にヤスリで丸みを付けて、最後にサンドペーパーで仕上げます。トレッドは目立てヤスリで加工しました。
 ホイールはスピンナーや環状ラジエターと同じ要領で 円柱に加工して 真鍮パイプ、洋白線で それらしく部品を取付けます。
 右端は尾輪タイヤとホイールです。
タイヤとホイールは別々に塗装してから タイヤにホイールを嵌めこみます。
 タイヤにホイールを仮に嵌めこんだ状態です。この後ばらして別々に塗装します。
最後に正式にホイールをタイヤに嵌めこんで固定します。


 主脚収納部を仕上げるために主脚柱回転基部ソケットを制作します。
左側にあるのが回転基部ソケットで 真鍮パイプにピンバイスで孔をあけて 回転軸になる真鍮棒を差込んで半田付けします。
右側にあるのが主脚柱で 真鍮丸棒にピンバイスで孔をあけ 車輪軸になる細い真鍮パイプを差込んで半田付けします。
 なお、ソケットに脚柱がぴったり差込めるように、真鍮丸棒の先部をヤスリで削って直径を修正しておく必要があります。
 本体関係の大きなところが出来たので。次は脚まわりに取り掛かります。
 主脚柱は脚収納部の制作の関係で 回転基部のソケットと一緒に先に材料を加工してありますので、車輪軸と引込みアーム取付基部を半田付けします。
 次に脚カバー取付ボルト8本が主脚柱に取り付きますので、写真に示すような冶具を作って、真鍮パイプに0.4mm真鍮線を入れて冶具にセットして、脚柱と半田付けします。
 半田付け完了後はみ出した余分な半田は デザインナイフで削ってヤスリで仕上げます。


 主脚柱と引込みアーム そして尾脚柱の半田付けが終わりましたので、メタルプライマーを塗装しておきます。


 脚カバーは脚柱に8本のボルトで固定される上部カバー(脚柱カバー)と、車輪軸近くのブラケットに固定される下部カバー(タイヤカバー)の2個に分かれています。
そして脚柱のオレオの伸縮に連動して 上部カバーは下部カバーの内側の溝の中をスライドするするようです。
 カバーの材料は外面が0.1mmのプラ板で、内側は0.5mmのプラ板です。
脚柱に半田付けした8本の0.4mm洋白線を上部カバーの内側にあけた孔に差込んで、固定します。

 右側にあるのは右脚用の部品です。上部カバーは脚柱に半田付けしてある8本の0.4mm洋白線をカバーの孔に差込みます。
下部カバーは車輪軸の両側に2箇所ある取付金具の0.4mm洋白線を カバーの孔に差込みます。
左側にあるのは左脚で上部、下部カバーを脚柱に仮取付した状態です。
この後分解して、それぞれの部品を塗装してから 正式に組立します。


プロペラとスピンナー

 スピンナーは 環状ラジエターの中心部と同時に丸棒に加工したものを成形します。写真は丸棒に加工する前の角材ブロックです。
 正確に直角を出し、中心線を罫書き、両端面からピンバイスで慎重に回転軸孔をあけます。
 そして角材を丸棒に加工して2分割し、一方はラジエター用にします。
 出来た丸棒を 不要になった彫刻刀の柄に瞬間接着剤で固定します。そして、鉛筆を削る要領で 小刀を使って慎重に粗加工します。
 最後に彫刻刀の柄を持ってくるくる回転させながら、ヤスリとサンドペーパーで砲弾型に仕上げます。

 加工できたスピンナーと回転軸です。
左端にあるのが回転軸で直径1.0mmの真鍮線の端に ごく細い銅線をコイルばね状に巻きつけて、半田付けして抜け止めを作ります。
 その横が回転軸を差込む内径1.1mm外径1.3mmの真鍮パイプです。このパイプに回転軸を差込んで軸の端をスピンナーの軸孔に差込みます。パイプを持って スピンナーをまわすと軽く回転します。
 右にあるのは鞘の役目をする内径1.4mmの真鍮パイプで、環状ラジエターの中心に取付けるものです。
 プロペラはドイツ機独特の木製広幅ブレードのユンカースVS111型です。
先ず正面形でブロックを成形します。4個分作れるようにしています。(1個はスペアです)
次に4個分に切ります。


 プロペラのひねり加工が出来た状態です。
材料は4個分作りましたが 失敗なしで出来たので、1個分は不要になりました。
 ひねり加工は非常に神経を使う作業で、写真を見ながら小刀で慎重に荒削ります。そしてサンドペーパーで仕上げ加工します。
何回も失敗を重ねた経験がものを言うようです。
 出来上がったブレードをスピンナーに仮取り合いして見ました。
先に作ってある回転軸も仮にセットして見ました。
 回転軸の外にあるパイプを持ってブレードをふーと吹いて見ると軽く回転しますのでOKです。


キャノピーとコクピット

 Fw190D-9後期生産型のキャノピーは ふくらみのあるガーラント・ハウベになっています。
キャノピーのヒートプレス用木型と、塩ビ板をヒートプレスして作ったキャノピーです。
窓枠フレームを残し透明部はセロテープでマスキングしておきます。


 コックピット内部の装備品の制作にかかりました。
座席シートはプラ板をヒートプレスしました。
計器パネルも薄いプラ板に孔をあけました。
操縦桿は真鍮線を半田付けしました。
座席左右のコンソールは人工木材に真鍮板を半田付けしたレバーやスイッチ類を取り付けました。
風防スライド装置のハンドルはランナーに真鍮線を半田付けしたレバーを取付ました。
この後、座席ベルト関係に取り掛かります。
 座席ベルトはちょっと手間をかけて作りました。左側にある2本は腰ベルトで 右側の2本は肩ベルトです。
ベルトはトレーシングペーパーを使いました。バックルや金具類は0.1mmのエナメル線を曲げて半田付けしました。
それとなく感じが出ています。

増加タンクとETC504ラック

 胴体下面にETC504ラックを仮取付して、上下2分割成形型の300ℓ入増槽を仮取り合いしました。
ラックは2mm厚さの薄板で成形しました。振れ止めは真鍮板を細く切って作りました。
 
 増槽はスピンナーと同じ要領で加工します。
先ず正確に角ブロックを作り、次に両端面に最大直径円を罫書き丸棒に仕上げます。
そして鉛筆を削る要領で 慎重にナイフを使って砲弾型と円錐型に粗成形し、最後にサンドペーパーで仕上げます。
まだ表面の最終仕上げをしていないので少し粗い感じになっています。上下の分割ラインは罫書き針による筋彫りです。


塗装

 付属品にコンパスや烏口の針を差込んでサーフェイサーを吹きつけ 塗装しました。手前から過給器エアーインテーク、防弾鋼板支持架、カウリング、ETC504ラック、300ℓ増槽、ラジエター、水平尾翼です。  余った材料にキリで孔をあけ、プロペラとスピンナーを差込んで固定してサーフェイサーを吹きつけ塗装します。下塗り塗料はMr.サーフェイサー1000(グレータイプ)を使用しました。

脚まわり部品です。


 コックピット内装品を塗装して仕上げました。
左端から照準器、計器パネル、風防スライド用ハンドル、フットバー、操縦桿、左右のコンソール、シートと腰ベルト、肩ベルトです。


 ガーラントハウベと防弾鋼板支持架を塗装して 仕上げました。  本体上面塗装乾燥の間に、プロペラまわりを仕上げました。スピンナーの渦巻は 鉛筆で下書きをして 手書きで黒色を塗りました。


 補助翼、昇降舵、方向舵はアルミ合金フレームに羽布張りの構造をしています。この感じを出す為に少し工夫をしました。
 昇降舵を例にして説明します。
サーフェーイサー塗装が乾燥したら800番の水ペーパーで研磨して、次に2000番の水ペーパーで仕上げ研磨します。 
 そして、舵面にフレーム部分を正確に罫書き、その上にセロテープを貼り付け、デザインナイフで慎重にフレーム部分を切り取ります。つまり羽布部分をマスキングするようになります。これは風防を塗装する際にガラス部分をマスキングして フレーム部分を塗装しますが あれに似ています。
写真はマスキングした状態です。
 次にサーフェーイサーを3回吹きつけします。


 サーフェーイサーが乾燥したら、マスキングしていたセロテープを慎重に剥がします。この後もう一度サーフェーイサーを軽く吹き付けると フレームの角が丸みを帯びて感じが良くなります。
補助翼、方向舵も同じ要領で加工します。
 サーフェーイサーが乾燥したら、マスキングしていたセロテープを慎重に剥がします。この後もう一度 サーフェーイサーを軽く吹き付けると、フレームの角が丸みを帯びて感じが良くなります。
補助翼、方向舵も同じ要領で加工します。


 機首にキリを差込んでキリの柄を左手で持ちサーフェーサーを吹きつけました。
塗料はMr.サーフェーサー1000(グレータイプ)を使用しました。


 胴体、主翼ブロックもサーフェイサーが乾燥したので、800番の水ペーパーで研磨し、2000番の水ペーパーで仕上げ研磨しました。
そして 昇降舵と同じ要領で 補助翼と方向舵の羽布張り部の工作をしました。
 
 キャビン前方の胴体側面には 左右2枚ずつ補強板が取り付けられています。これもセロテープを貼り付けて 補強板の部分をデザインナイフで慎重に切り抜き、サーフェイサーを4回吹きつけ、乾燥後テープを剥がせば、補強板を貼り付けたような感じに仕上がります。
 写真はちょっと見にくいようですが、羽布張り部と胴体補強板が写っています。

パネルラインのスジ彫り

 胴体や翼面に多数の小さな点検ハッチがあり、円、楕円、四角、三角とさまざまな形状をしています。
 サーフェーサー塗装する前に、これらの点検ハッチ筋彫り用のテンプレートを作りました。材料はスポーツシャツなどを買った時に 襟元の形状を保つ為にセットされている薄い塩ビ板(0.1~0.2mm厚)を使用します。
 これを図面に乗せて 油性ペンで必要な形状を罫書き、デザインナイフで慎重に切り抜きます。必要に応じて水ペーパーで修正加工します。

 先ず外板の継ぎ目や各種点検用のハッチの位置を 正確に鉛筆で罫書きます。
そして 点検用ハッチやフィレットは 先に作っておいたテンプレートを罫書き針で慎重になぞって筋彫りします。外板の継ぎ目は直線ですから 直定規を使って筋彫りします。最後にデザインナイフで筋の上をなぞって行くと、筋彫りがシャープになります。

マーキング塗装


 D型は大戦末期の混乱期に登場したので、A型のようにカラフルな部隊マークや垂直尾翼の撃墜スコアデコレーションを画いた機体が見当たりません。その代わりに本土防空部隊の派手な識別帯(RVGバンド)を巻いてスピンナーに渦巻模様を画いた機体があります。
 今回は第6戦闘航空団(JG6)の司令官バルクホルン少佐搭乗機の塗装に仕上げます。胴体延長部には赤白赤のRVGバンドを巻き、胴体側面には司令官記号を記入します。
 先ず主翼上面の国章、RVGバンド、スピンナーの白部分の吹きつけを行います。塗料はMrカラーを使用します

 ハーケンクロイツ、バルカンクロイツおよび胴体側面の司令官記号のマーキング用テンプレートです。名刺の裏側に正確に記入して、デザインナイフで切り抜きします。
 これの使用方法ですが、白又は黒塗料を吹きつけた後にします。
所定位置に粘着力を殺したセロテープを貼り付け、その上にこのテンプレートを当てて鉛筆でなぞって罫書きします。


 テンプレートを左主翼上面に当てている状態です。
右翼はテンプレートを使用して 罫書きが終わった状態です。


 テンプレートを使用して罫書きした主翼上面のバルカンクロイツを デザインナイフで慎重に切り抜きマスキングします。
 なお胴体延長部のRVGバンドは 白になる部分に6mm幅に切ったセロテープを巻きつけておきます。

先ずRVGバンドの赤色を吹き付けします。
つまり先に白色を塗装してマスキングしてある部分の両側が 赤色になります。

 赤色が乾燥したら、マスキングしてあるセロテープを剥がします。


次にRVGバンドの赤白赤の幅がそれぞれ6mm幅になるように、セロテープでマスキングします。そして胴体、垂直尾翼、主翼下面の国章及び司令官記号を記入する部分に少し広めに黒色を吹きつけします。


 黒塗装が乾燥したら、主翼下面のバルカンクロイツ、胴体のバルカンクロイツ及び司令官記号、垂直尾翼のハーケンクロイツのマスキングをします。
 主翼上面と同じように 粘着力を殺したセロテープを貼り付け、テンプレートを使用して罫書いた後、デザインナイフで切り取ります。
 司令官記号は白縁付きになっているので、マスキングしたところに白色を吹きつけします。
 なお前後しましたが、主翼上面のバルカンクロイツは白縁のみで 主翼下面と胴体は黒縁のみです。そして垂直尾翼のハーケンクロイツは 縁なしの黒色のみになっています。


 白色が乾燥したのでマスキングを剥がすと、くっきりと黒色のクサビとバーが顔をだします。次にセロテープの粘着力を殺して 記号の上に貼り付け、デザインナイフで慎重に細い縁取りをつけて切って マスキングします。これで全ての国章、司令官記号、RVGバンドのマスキングができたのでいよいよ塗装にかかります。


上塗り塗装

 先ず下面色のRLM76を塗装ですが、翼下面のみならず 胴体および翼上面にも塗装しておきます。


 上面色はRLM75グレイバイオレットと RLM74グレイグリーンの塗りわけで、境目は ぼかしになっています。
 先ず フィレット部に合わせて切り抜いた厚紙でマスクして、塗料が胴体側面に飛散しないようにして、RLM75から吹きつけします。主翼と胴体の下面はマスキングテープでマスクしておきます。
 RLM75が乾燥したら、塗りわけパターンに応じて厚紙を切って、両面テープを使って少し浮かしてRLM75部をマスクして、RLM74を吹きつけします。
 胴体上面も RLM75と74を慎重に吹きつけし、胴体側面と垂直尾翼にRLM75でインクスポットを吹きつけます。


マスキングを剥がしました。


最終組み立て


 脚まわりを取付けました。車輪カバーは未取付です。


 脚まわり、排気管、300ℓ増槽、機銃、アンテナなどの付属品を取付ました。脚収納部が見えます。


 付属品を取付けて、バルクホルン司令官の愛妻クリステルをキャビン左側面に記入しました。
これでようやく完成です。

完成

左前側面


右前側面

 胴体右側に2箇所、左側に1箇所 燃料注入口があり、小さな3角形のマークがあります。
オクタン価87が記入されています。


完成機






作者 故福田和氏 プロフィール

(2008年11月)第17回彩雲会展での お元気だった福田和さん


名前     福田 和
生年月日  昭和16年5月21日
出身地    旧満州国奉天市

モデル歴 

 昭和29年ごろビニールの袋入りのキットを買ってソリッドを初めて作りました。ソリッドモデル製作の楽しさを知り今まで製作が 続いていますのでモデル暦は50年余りになります。
 昭和40年に彩雲会に入会しましたが私の作品はすべてドイツ空軍機でスケールは1/50に統一しています。あと何機ドイツ空軍機がつくれるか、体力、気力そして視力が続く限り制作を楽しみたいと思っています。



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Vol.75 2014 November.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
             editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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