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Walkaround Photo P-8A Poseidon

by Kiyoshi Iwama

飛行機実機写真


 長らく米海軍の対潜/哨戒任務を担ってきたP-3C オライオンの後継機として開発されたボーイングP-8Aポセイドンは、3年前に部隊配備が始まり、2013年11月29日にはIOC(初期作戦能力)を取得しています。一方南シナ海では、中国の海洋進出で緊張が続いており、米海軍はIOCを取得したばかりの本機を、その数日後の2013年12月1日には沖縄の嘉手納基地への派遣を開始、12月中旬にはVP-16 “War Eagles”のポセイドン6機が嘉手納に揃い、哨戒任務を開始しました。 これらのP-8Aは、6ヶ月ローテーションでフロリダ州NASジャクソンビルの第11哨戒偵察航空団隷下の飛行隊から派遣されているもので、現在は、VP-45 “Pelicans”の機体が派遣されています。そのP-8Aが去る5月2日、米海軍厚木航空施設のスプリング・フェスティバルにて公開展示されました。先日南シナ海を哨戒中に、中国海軍から退去勧告を受けたのも嘉手納から発進した同飛行隊の機体と想定されます。


 このP-8Aは、ボーイング737-800ERXの胴体と737-900の主翼を組み合わせた機体ですが、翼端には当初計画のblended wingletではなく、777や787と同じraked wingtipが採用されています。また機体各所にアンテナやセンサーが装着されており、民間型機よりは幾分いかめしく見えます。 さらに外からは分かりませんが、両エンジンに取り付けられた発電機は民間型の2倍の電力を供給できるものに変更されており、多数の電子機器の消費電力に対応するための処置が採られています。



写真1. 2013年12月4日に撮影した、NAS Jacksonvilleから嘉手納に派遣される途中、僚機のP-8A(168439)とともに厚木で給油し、嘉手納に向け厚木のR/W01を離陸するVP-16のP-8A(168433/LF433)


 丁度この日は、3月末付で海上自衛隊厚木航空基地の第4航空群第3航空隊へ初の実戦部隊配備となった日本の新鋭哨戒機P-1も並んで展示されたこともあり、両者の比較もできました。大きさはほとんど同じくらいですが、外観的にはエンジンが4発のP-1に対し、P-8Aは双発、P-1には潜水艦捜索用の磁気探知機(MAD)のブームが尾部に大きく突き出しているのに対し、P-8AはMADブームらしきものがお尻から突き出ているだけで、実際には重量軽減のためMADは搭載されていません。確かに計画時の図と比べると、このブームの長さは短くなっており、他のセンサーが収納されているのかもしれません。 勿論MADだけで潜水艦を見つけるわけではありませんが、索敵能力の低下につながらないのか、少々心配にもなるところです。しかし、ポセイドンはP-3やP-1のように低空飛行による海面上索敵活動はそのミッションに含まれていないとのことですので、運用思想が従来の哨戒機とは少し異なるのかもしれません。それでも、長時間の洋上偵察ミッションは含まれており、空中受油装置をコクピット天井付近に備えていますが、海軍伝統のホース・アンド・ドローグ方式ではなく、空軍のフライイング・ブーム方式に対応したものになっています。


 プラモの世界でも、ハセガワから早速1/200スケールでVP-16のデカール付キットが発売されました。 小さなキットですので、それほど細部にこだわる人はいないかもしれませんが、ここにご紹介する写真が、製作時の参考になれば幸いです。



写真2. “NAF Atsugi & JMSDF Spring Festival 2015”にて地上展示された、沖縄から飛来したVP-45 “Pelicans”のP-8A(168440/LN440)。来場者と記念写真に収まる8人のクルーたち。



写真 3. 斜め後方から見たP-8A
 ウィングチップの傾斜が緩やかであることが良く分かる。またMADブームと思しきテイルブームが尾端に申し訳なさそうに出っ張っているが、磁気センサーは入っていない。また胴体後方下面にソノブイの射出口が見える。



写真 4.  P-8Aの後部胴体
 コモン・データリンク・アンテナのフェアリングと、その下にソノブイの射出口が見える。(赤枠で囲まれている)P-8は従来のP-3とは異なり、機内に円筒型のロータリー式ソノブイランチャーを備えており、機内で装填できる。その前方が爆弾倉



写真5. 主翼端部のウィングチップ
 最初にも述べたように、翼端はレイクト・ウィングチップとなっている。航法灯やフラッシュライトの形状が良く分かる。



写真6. P-8Aの尾部
 詳細不明なブームの下にAPUの排気口があり、その下には、ESMアンテナ、そして赤外線対抗装置であるAN/AAQ-24 DIRCM (Directional Infrared Countermeasure)用のミサイル警報装置AN/AAR-54とレーザ・ターレットが見える。



写真7. 尾部のセンサー類
 写真6で紹介した、DIRCMのレーザ・ターレットGLTA(Guardian Laser Transmitter Assembly)の詳細。ミサイルの赤外線センサーにレーザを照射して目潰しをする。


写真8. 垂直尾翼部  写真9. 垂直翼先端部の拡大写真
 垂直尾翼には、VP-45のニックネーム”Pelicans”に因み、爆弾を抱えたペリカンが描かれている。写真9はその先端部を拡大したもので、アンテナや放電索の配置が良く分かる。チップ部のアンテナフェアリング内にはインマルサットの衛星通信アンテナが収められている。



写真10. CFM 56-7Bターボファンエンジン



写真11. 左翼エンジンナセル
 エンジンに取りつく発電機の容量がB.737-800の2倍になっていると先に書いたが、そのため写真11に見るようにエンジンナセル左側に膨らみができ、民間機のナセルと異なっている。



写真12. ポセイドンの機首
 ノーズレドームの先端部に積層材のパターンが見える。この中には、AN/APY-10マルチモードレーダのAESAが収納されている。このレーダは、航法/気象レーダモード、SAR(合成開口レーダ)モード、ISAR(逆合成開口レーダ)モード、潜望鏡探知モードなどの機能を有する。



写真13. 前脚と機体下面
前脚は前方に引き上げられる。前輪ハブは白で塗られている。また胴体下面にも多くのアンテナが見える。



写真14. DIRCM用ミサイル警報装置AN/AAR-54
 同じ装置が機体の各所に取り付けられており、この装置は写真13に見える、前胴部に装着されているもの。



写真15. 後胴部下面にあるアンテナフェアリング
 電子情報収集用のアンテナが収められているものと思われる。発熱量が大きいのか冷却空気取り入れ口が前方に設けられている。



写真16. 左主脚
 主脚は内側へ引き込まれる。B.737同様、P-8Aにも主輪のカバーはなく、そのためハブのカバーは機体と同色のグレーに塗られている。



写真17. 主翼下面のハードポイント
 主翼のハードポイントは左右それぞれ2箇所あり、この位置にウェポン搭載用のパイロンが取り付けられる。



写真18. 中央胴体下面
 右舷の主脚収納部後方にもブレードアンテナが見える。



写真19. 前部胴体上面に設置されたSATCM用アンテナ
 左右各2箇所、合計4枚の平面アンテナが、少し角度を持って設置されている。バンク時にも衛星を捕獲するためか?



写真20. P-8Aを側面から見る
これまでに紹介したアンテナ等の配置が良く分かる。天井にはブレードアンテナが林立する。


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Vol.82  2015 June     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
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