Home  >MiG-21PF (マッチボックス 1/72)を作る  飛行機プラモデル製作特集1

特集 ロシア、東欧現用機

MiG-21PF (マッチボックス 1/72)を作る
MiG-21PF (Matchbox 1/72)

by  田口博通 Hiromichi Taguchi




 現用機というには かなりにキツイが、MiG-21 は東側の主力機として君臨した期間が長く、機会があれば、一度 作ってみたかったのは、このマッチボックスの1/72 MiG-21PF後期型。
 というのは、以前、2010年11月号で加藤寛之 さんのマッチボックス Mig21MF の銀色の機体の作品写真を初めて見て以来、ずーっと気になっていたからです。記事の中の 「とりあえず、MiG-21ですね」というのは、どのくらい MiG-21 に見える程度なのか、怖いもの見たさというか、真近で見てみたいと あなたも気になりませんか?
 
 恥ずかしながら告白すると、マッチボックスが日本に上陸した後、1975年ごろと思いますが、興味本位で このMiG-21キットを購入したことがあります。しかし、一度箱を開けて中身のパーツを見て、無言で さらっと そのまま封印して ストックの底に深く眠りについたままにしてありました。
 その後、どこのプラモクラブの展示会でも完成品を見た記憶がないので、発売されたものの「作り人」さえなく、歴史上からも消え去ったプラモデルかと思っておりました。
 唯一 25年前になりますが、モデルアート 1991年4月号MiG-21特集で、マッチボックスMiG-21PF の迷彩塗装の完成作例が載っていました。MiG-21以外には見えませんが、エアインテークがスマートすぎ、その細い機首に、さらに低く長いキャノピーがめりこんでいました。 記事の中では やはり冒頭に  「出来の方はというと・・・・余り多くは語るまい。そう、マッチボックスのキットはそのままストレートに楽しむのが一番正しいのだ。きっと。」と 書かれていました。この文章 記憶にあるあるという方もおられるはず。時代もそういう評価だった訳です。
 この頃を思い返すと 忙しい合い間のプラモ作りで、価値観も「向上志向」でしたから、「ストレートに楽しむプラモデル」は眼中にありませんでした。 むしろ、フジミからシリーズで揃いつつあった72決定版MiG-21を全タイプ揃えたい夢 全開でした。 (完全に妄想でした・・)
 そんなこんなで マッチボックスのMiG-21は、いずれ、処分されるキットの一つとして、頭の中からも消し去られてしまっていたのです。
 

マッチボックスMiG-21PF後期型の部品一式、箱絵、箱裏塗装図



 上の写真はそのマッチボックスキットの全景。
製作前の「まな板の鯉」の記念写真 というところでしょうか。
 我が家に40年に渡り長く保存されてきたのは、1973年に初版としてリリースされた MiG-21PF 後期型で、これぞMiG-21のイメージだというソ連とチェコストバキアの銀色機体のデカールが付属したもの。 (嵩張らないように箱もばらして、フリーザー用密閉ビニール袋に入れて段ボール箱にありました。)
 
 このマッチボックスのMiG-21は 80年代中頃だったと思いますが、PFからMFに金型改修され フィンランド空軍とエジプト空軍の迷彩塗装のデカールが付属して再発売されたと記憶しています。(もちろん、買っていません。)

 さて、部品点数は写真の通り、今時のキットに比べると少なく、荒いタッチの細いスジボリ、カラフルな2色成型ですが、透明スタンドと箱裏の塗装図も親切に付属しています。
 リサーチ不足のためか、設計者にはそう見えたのか、インテークリップ直径は小さく、機首が細い。キャノピーは そこそこの透明度だが、膨らみが全然たりず、細長い。要するに機首がかなりにスマート。胴体後部も長く、各部の吸気口などのモールドも甘く、吸気口の形にもなっていない。
 ざっくり断じると B級キットです。
 
 「これを作る時間があれば、もっと良いキットを作った方が良い。」と判断される方も多いことでしょう。
 しかし、正確さだけがプラモデルの評価の基準だったのは遠い前世紀の話で、 21世紀は教養と寛容の時代。些細な事を理由に作らないのは 「新しい楽しみ」を知るチャンスを逃がすようで、あまりにもったいない。人生の経験としてB級キットも味わってみるのも、悪くないことだと思います。
 
 とはいっても、在庫に手を付けるのは勇気がいることだと思うので、まずは、御用とお急ぎの用の無い方は ご一緒に疑似体験をお楽しみ下さい。
 

まずは完成の姿から

マッチボックスMiG-21PF 後期型 側面



 上の完成側面写真は、確かに機首がスマート。実は、これでも、低い沈み込んだキャノピーは接着時に1mm厚くらいのプラ板を敷いて、持ち上げているので、幾分マシになっているはずですが・・・
 
 下の写真では、胴体後部も長く、スマートにみえるが、とりあえず MiG-21 以外には見えない。
 組み立ててみて 感心したのは、各部品のフィッティングはそこそこ良く、少年でも ちゃんと組めるみたいなこと。実機との正確さよりも、「組み立て玩具としてのプラモデル」としてこのキットを見れば、確かに成立しているように感じます。

それでは製作へ
 


製作

胴体

(1) まず、胴体は、簡単な座席がついているだけなので、座席を接着した後、左右を流し込み接着剤で接着する。合わせは良いので楽です。 (2)機首部品は別になっているので、左右を合わせて筒状にして、その中にシリモチ防止のオモリ(パチンコ玉2個を粘土で固める。)を仕込んで、胴体に接着。
(3) ショックコーンと一体になっているエアインテークリップをそのまま、胴体に接着。
(4)これで長い胴体はとりあえず完成。

 (5) この後部に垂直尾翼とベントラルフィンを垂直に注意して接着すれば、胴体基本形は完成です。


主翼

 主翼は、実機が薄翼のため、上下1枚もののモールド品になっていて 楽。適当なパネルラインがあるだけですが、運河彫りでないことに感謝し、
前縁と後縁をやすりでしっかりと薄く削ってやりましょう。これだけで、ジェット戦闘機らしい雰囲気になる(ような気がします)。
水平尾翼も同様に後縁を薄く削ってやります。


 胴体に翼を接着する時に、隙間なく ぴったりとはまるのはご立派。主翼は正面から見て、3度の下半角をつけてやります。水平尾翼は実機は昇降舵が無い全翼可動(フライングテール)なので、このキットのままで正解。  翼がついて 飛行機の形になったら、1日おいて接着剤が乾くのを待ち、接着部を耐水ペーパーで均します。




機首

(1) 幼児の安全のためか、ショックコーンの先端はブツギリになっているので、大人はここで、やすりで尖らしてやりましょう。エアインテークは手の施しようがないので、そのままで放置しました。
 コクピットは座席があるだけの簡単なものですが、昔のキットはどれもこんなものだったので、形はお気楽でも座席があるだけ有り難やと思えば、幸せな気分になれます。
(2) ここでキャノピーを合わせてみると、機首にキャノピーが食い込んで、ますます低くなり ガックリします。ここだけなんとかすれば、多少雰囲気が違ってくるはず。
 ということで、キャノピー接着部前方に細切りのプラ板を敷き、底上げをすることにしました。同時にグレアシールドがないので、プラ板を曲げて追加しました。
(3) コクピット内に細筆をつっこんで艶消しグレーで塗り、座席もODと艶消し黒で塗れば、それなりに見えるから不思議。
グレアシールドと計器板は艶消し黒で塗っておきます。
(4) プラ板でキャノピー前方を1mmくらい持ち上げているため、キャノピーをかぶせると、当然胴体との間に隙間ができます。マスキングテープで透明部を保護してから、隙間をパテで埋めて、めだたなく修正してしまいます。
(5) パテ成形完了。マスキングテープを丁寧に剥がして、胴体上面のスムーズな流れを感じたら、それで良しとしましょう。もともと「完全」という解はありえないので程々に。

塗装

 ここは、当然のことながら、ソ連機の銀塗装を狙いたいところです。 とはいっても、トーンを落としたシックな銀塗装は機体工作に相当手をいれておかないと難しいので、安直なギラ系銀塗装でいくことにしました。
 まず、2色成形なので、サフェーサーでの下地作りが最低限必要となります。
 機首のショックコーン、垂直尾翼上、ベントラルフィン前部に艶消しダークグリーンを厚めに吹いて、テープで丁寧にマスキング。その後で、全面にMrカラー28 黒鉄色を下塗りに吹きました。
 その上に機体色となる8番シルバーをムラ気味にエアブラシで吹き付けています。そうすると、パネルラインの部分が少し、黒鉄色が残り、金属感が増大するような気がします。




 排気口部と動翼は細切りのテープでマスキングして、排気口外版は焼け鉄色で、動翼は、単調さを避けるため、少し黒を加えたシルバーを面相筆で上塗りしてアクセントをつけておきました。  




 これで、デカールの周りの余白部をカミソリで丁寧に切り落とせば塗装完了。ちなみにシルバー塗装上への デカール保護のためのクリアーの上塗りはシルバーの艶が変わってしまうので難しい。  それで、古いデカールはマイクロのスーパーフイルムで補強しておいて、タミヤの新発売デカール糊をたっぷり使って、後日浮かないようにしっかりと固着しておく必要があります。




脚と脚扉

 主脚、前脚とも細いので、接着強度をかせぐために、機体に接着して落ち着いてから、塗装。脚扉も同様です。   脚扉はイモ付けとなっているので、接着強度がそのままでは確保できません。前脚は脚庫もないのだから、アルミテープでヒンジを作り、補強して接着してみました。


アンテナ類

 アンテナなどをシャープに作り変えておけば、機体形状がどんなものでも(お気楽でも)、人の目には多少は精密に見えるという経験から、視線をごまかす目的で、各部のアンテナを 0.3mm径洋白線で作り変えてみました。  胴体下の燃料タンクを装備しようとしたら、ほとんど地面にすれてしまいそうだったので、軽く断念。それで、胴体のタンク架穴を透明スタンドが入る大きさに広げ、完了としました。
(1)垂直尾翼上のアンテナ
(2) 機首下のアンテナ
(3)胴体上部のアンテナ(金属線から削り出し)
(4) 機首ピトー管 0.8mm径真鍮パイプと0.3mm径洋白線の組み合わせ。 箱絵は機首リップ下についているが、PF後期型は機首リップ上面中心線上にあるのが普通。

完成

 マッチボックスのMiG-21PF 見事に完成となりました。 キャノピー前部以外は手を入れているわけではないので、基本的にはストレートに組んだということになります。   変なもので、この数日、完成写真を撮るために、その辺に飾っておいたら、目の方がこの形に慣れてしまい、長くスマートな全体フォルムに対する違和感が無くなってしまいました。
 で、どこかおかしいのかもしれないけれども、結構かっこいいんじゃないの とも思えるように。




 さて、 好意的に考えると マッチボックスのMiG-21は 実機を広角レンズで撮影した写真を元に設計者が図面を引いた可能性があるのかもしれません。
 
 例えば、Webmodelers 2013年9月号の百里基地祭レポートでは機体全景を1枚に収めるために、展示機エリアのF-15,F-4は50mmレンズでは収まりきれないので、広角側一杯で撮影しているから、機首が ぐっと伸びて撮影されています。(写真9,10)
 一方、列線に並ぶ機体を望遠側一杯で撮った(写真1,2)は、機首の長さが短く、フォルムが若干違うことに気づかれると思います。
 
 T-4 では(写真7 望遠一杯)と(写真11,展示エリア 広角で撮影) で、機首の長さなど機体フォルムのバランスが違うことが読み取れると思います。 
 それで、今回の完成模型は望遠側で距離を取って撮影してみました。なるほど、少し 写真では見た目が修正されているようです。

 とはいっても、このマッチボックスのMiG-21 なかなかに 各部がお気楽な形をしており、やはり 正統的なB級プラモ。 しかし、どんなものでも、完成すれば、達成感もあるし、作る過程も それなりに楽しいことを実感します。
 今回はプラモ作りだけでなく、撮影までも すっかり楽しませていただきました。

 






  Home>MiG-21PF (マッチボックス 1/72)を作る  

Vol.83 2015 July.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
           editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

プラモデル模型製作特集1


TOTAL PAGE