Home  >North American F-100D”Super Sabre”製作記 (Monogram 1/48)

特集 爆撃機 & 攻撃機

North American F-100D”Super Sabre”製作記
(Monogram 1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)
飛行機プラモデルの製作


North American F-100D (1/48) Monogram Box Art より

 多くのモデラーの方々が、モノグラムやレベルのキットに憧れを抱いた時代があったのではないでしょうか。私もその一人で、中でもモノグラムのキットには、箱の中から現れる精密感に満ちたモールドに魅了されましたものでした。今回の作例に選んだノースアメリカンF-100D スーパーセイバーも、そうしたモノグラム伝説を生んだキットの一つと言えるのではないでしょうか。 確かに現在のプラモの製造技術レベルから見ると、欠点も見えるかもしれませんが、その独特のフォルムは、今なお輝きを放つ作品に仕上げることができるように思います。今回はそんな思いで、このキットで戦闘爆撃機のテーマにチャレンジしてみました。


完成した481TFSのF-100D

実機紹介

 F-100スーパーセイバーは、世界で初めての実用超音速戦闘機としてその名を航空史に残しただけでなく、超音速での運用という未知の世界を切り開いたパイオニアでもあると言えます。米空軍“センチュリー・シリーズ”のトップバッターとして、その開発技術が、その後の戦闘機開発に大きく貢献しています。生涯生産機数は2,000機を超え、米空軍の主力戦闘機の座にもつき、ヴェトナム戦争では戦闘爆撃機としての威力を発揮しました。量産型のバリエーションとしては、単座型がA、C、D、複座型にはTF-100CとF型があります。 B型が見当たりませんが、実はB型とは後にF-107Aとなって3機が試作された機体です。A型は制空戦闘機として採用されますが、C型以降は戦闘爆撃機として採用されました。
複座型の
TF-100Cは練習機でしたが、F-100Fは複座ながら戦闘爆撃機としての能力も兼ね備えていました。この他、ドローン管制機に改修されたDF-100CDF-100F、実験機のNF-100F等のバージョンがありました。また海外では、台湾がD型仕様に改修されたF-100A、トルコがF-100C/F、フランスがF-100D/F、デンマークがF-100D、そしてオランダがF-100Fをそれぞれ使用しています。


 さてF-100の開発ですが、1949年2月に当初はF-86セイバーの超音速化を目指し、ノースアメリカン社の社内プロジェクトとしてスタートを切ります。主翼の後退角が45°であることから”セイバー45“と名付けられましたが、空軍はほとんど関心を示さなかったようです。 しかし、1950年に始まった朝鮮戦争でソ連製のMiG-15戦闘機の出現が、空軍を”セイバー45“プロジェクトに目を向けさせました。そしてノースアメリカン社は、1951年11月1日に試作機YF-100Aの2機の試作契約と11月20日にはその量産型F-100A 110機の生産契約を米空軍と交わしたのです。


 YF-100の開発が進むにつれ、その形態はスレンダーな胴体に鋭角な主翼を備えた、F-86とは大きく異なる機体へと変容していきます。そして計画通り1953年4月24日、試作1号機YF-100A(52-5754)が完成、1953年5月25日にはノースアメリカン社のテストパイロット、ジョージ・ウェルチの手により初飛行に成功します。しかもこの処女飛行においてレベルフライトで音速の壁を破り、その能力の高さを証明しました。試験飛行は順調に進み、その間にも速度記録を更新、1953年10月3日には量産初号機のF-100A(52-5756)が初飛行に成功します。 そして1954年9月には第479昼間戦闘航空団がF-100部隊に改編され、初のF-100運用部隊が誕生します。しかし部隊編成直後の10月、急降下中の機体が空中分解してパイロットが殉職するという事故が起こると、その後も事故が頻発し、11月11日には全機飛行停止が命じられました。原因究明の結果、ロール復元力に問題のあることが分かり、垂直尾翼が増積され、主翼端も延長されます。その後はA型の生産も順調に進み、104号機以降はさらなる改修も加えられ、総計203機が生産されました。


 続くC型は主翼の強度を強化し、ハードポイントを6か所設けるとともに、MA-2低空爆撃システムが標準装備となり、戦闘爆撃機として能力が強化されます。また空中給油プローブも追加され、重量も増加しますが、エンジンを出力の大きなJ57-P-1に換装したため、速度は反って速くなりました。C型は476機生産されますが、D型の出現で順次一線を退き、他国の空軍やANGへと散っていきました。
またC型は空軍のアクロバットチーム“サンダーバーズ”でも採用されたのは言うまでもありません。
 D型は単座型の最終バージョンで、1955年から生産の終了する1958年までの間、総計1,274機が量産されました。またD型は本格的な戦闘爆撃機で、超音速用のオートパイロットMB-3が初めて搭載され、投弾、離脱が自動化されています。さらに形態的には、C型に比べ垂直尾翼がさらに高くなり、主翼後縁付け根部の後退角を無くし、主翼面積も増積されました。F-100の固定武装は各型ともM-39 20mm機関砲4門ですが、C型では通常爆弾、戦術核爆弾の搭載が可能となり、D型ではさらに、自衛用のAAM-9Bや対地攻撃用のAGM-12A ブルパップ等、ミサイルの運用も可能になりました。


完成したMonogramのF-100D “Super Sabre”(1/48)

製作

 モノグラムのキットは部品点数が少なく、比較的短時間で形にできるのですが、作り始める前によくよく考えておく必要があります。このキットでは胴体が上下分割で、左右一帯となった主翼上面に左右の下面を接着し、上下胴体に挟み込んで組み立てます。これに機首部のエアーインテイクと尾部の排気ノズルを取り付け、垂直尾翼を取り付ければ機体のアウトラインは出来上がります。水平尾翼は胴体上面と一体成型です。ところが、インテイクのダクト部がコクピットと一体になっているため、胴体の組み立て時にはコクピットを入れておかなければなりません。また胴体上下の合わせ目は決してぴたりと接合させるのが難しそうです。 そんなことを頭に入れて製作の手順を考えるのが、最初の作業となりました。また少し太めの凸のパネルラインを筋彫りするかどうかで悩みました。結局、上面はリベットを除き筋彫りに、見えない下面は極力筋彫り作業を最小限に抑えることにしました。キットには、ヴェトナム戦争当時、南ヴェトナムのビエンホア航空基地に駐留した第486戦術戦闘飛行隊の機体のデールが付いていましたが、部隊マークの色が違っていることもあり手持ちのマイクロスケールのデカールを利用し、同じく南ヴェトナムのタン・ソン・ニュット航空基地に駐留した第481戦術戦闘飛行隊の機体、”Pretty Penny”に仕上げることにしました。


F-100D  481TFS Pretty Penny

1.事前準備
 事前準備とはパネルラインの筋彫りです。上述のように、機体上面はリベットを残しPカッターで筋彫りしていきました。胴体の上下貼り合わせ面は、先に彫ってしまうと上下のラインが合わなくなることもあるため、その部分は接着・整形後としました。 気のめいる作業ですが、辛抱強くやるしかありません。翼は平面なのでまだいいのですが、曲面の多い胴体は失敗もあり、途中で投げ出したくなりました。


2.コクピットとインテイク
 とりあえずの筋彫りが終わると次はコクピットです。前述のように一体成型されたコクピットは、インテイク・ダクトと一体成型されているため、インテイク部分も一緒に仕上げます。インテイク・リップは別部品で、コクピットを胴体に組み込んだ後取り付ける指示ですが、ダクト内部に段差を生じる可能性があります。機体を組んでからインテイク内の段差をとる作業は大変ですので、まずインテイク・ダクトにリップ部を接着することにしました。 まずはダクトの上下を接着します。次に胴体上部、インテイク・リップ、そしてダクトを仮組し、胴体とインテイク・リップの接合部に極力段差ができないように位置決めします。(写真1)その位置でインテイク・リップとダクトを接着してしまいます。胴体から外した状態が写真2の状態です。ダクト内部には段差が生じていますので、コツコツ整形していきます。



写真1 インテイク部の仮組状態

写真2 インテイク・リップとダクトの接着後の状態


 整形が終われば、コクピット内部や計器盤、スティックなどの塗装です。主計器盤やサイドコンソール等、キットのコクピット内部品はどれも精密に彫刻されています。 内部はグレー(FS36231)で、計器盤やサイドコンソールの盤面はマット・ブラックで塗り、計器の目盛などは白鉛筆を滑らせて浮き上がらせました。(写真3、4)



写真3 塗装後のコクピットの内(ステックは塗装後接着)

 写真4 主計器盤


 インテイク内を先に塗装しますが、銀塗装の前にインテイク上面に収められているレーダ・アンテナのレドーム部をセミグロス・ブラックで塗り、レドーム形状に沿ってマスキングし銀塗装しておきます。 ここまで来ると胴体の接合に進みたいのですが、その前にまだ作業が残っています。


3.胴体と主翼
 次に胴体内部の塗装を行います。まず胴体上面パーツのコクピット内をグレー(FS36231)で、コクピット前方のグレアシールド部をマット・ブラックで塗装します。(写真5) そして写真5にも見えるコクピット左側面の開口部に取り付ける弾倉部を塗り分けます。(写真6)


写真5 コクピット内部の塗装 

写真6 コクピット左舷部の機関砲弾倉部


 さらに胴体下面パーツに彫刻された脚収納庫内、左舷機関砲収納部、エアーブレーキ内部、主車輪収納部を塗装しますいずれも精密に彫刻されています。
内壁部はオリーブドラブを吹き付け、乾燥後、油圧配管、ケーブル、そして機器類をエナメル塗料で、面相筆を使って塗り分けていきます。(写真7)



写真7 胴体下面の脚収納部などの塗り分け状態

 主翼は上面が一体成型になっています。(写真8)そしてその裏側にも油圧配管の彫刻があり、こちらも上下を貼り合わす前に塗装をしておきます。要領は胴体部と同じです。 貼り合わせ後、下面から見た主脚収納部が写真9です。下面を貼り合わせる際には、胴体との隙間にも注意を払う必要があります。



写真8 上面から見た主翼

写真9 下面から見た主脚収納部


 さてここからが、工作のメインイベントです。まず主計器盤、弾倉部、コクピット/エアーインテイク部の順に、胴体上面パーツに接着します。そして主翼を挟んで胴体上下パーツの接合です。接合部の合いは良くありません。またモールドにうねりのような窪みも見られます。 修正は後ほどにして先に進みます。この後胴体後部のエンジンノズル部を取り付ければとほぼ機体全形が出来上がります。垂直尾翼は取り付け部分の隙間調整だけ行い、塗装後に取り付けることにしました。


 貼り合わせた胴体は、接合部に段差ができたり表面に窪みがあったりで、ポリパテの出番です。ポリパテが乾燥したら整形です。モールドをできるだけ落とさないように、場所によってはマスキングテープを使って紙やすりで形を修正していきます。 その後、彫残した上下胴体貼り合わせ部のパネルラインを彫込みます。写真10がコクピット付近の修正個所です。コクピットや弾倉部が収まっています。写真11は胴体後部接合部の整形箇所です。まだ少し紙やすりで削った跡が見えます。



写真10 コクピット付近のポリパテ修正部 

写真11 胴体後部接合部の整形箇所


これで機体全体の形状がほぼ出来上がりました。(写真12)


写真12 ほぼ機体全体の形状が出来上がったF-100D


 次は塗装ですが、その前に主翼上面の境界層制御板を先に取り付けておきます。

塗装後の接着は位置決めも難しいので塗装前に位置を決め、流し込み接着剤でしっかりと固定しておきます。


4.塗装
 機体はメタル地ですのでシルバー塗装です。すでに塗装を終えた部分をマスキングし、シルバー(Mr.カラーの8番)を機体全面に吹き付けました。さらに主翼と尾翼の中央パネをルシルバーと焼き鉄色の混合比4:1の金属色で塗り分けました。後部胴体のアフターバーナー部分の外皮は耐熱合金となっているため、スーパーシルバーと黒鉄色の混合色で塗ってみました。本当は焼けた金属色にしたかったのですが、次回チャレンジしてみます。上面で残るのは、エアー・タービン排気口扉の前にあるADFアンテナレドームです。これをマット・ブラックに塗ります。 ここまで塗り終えた状態が写真13です。また、胴体下面にもいくつか塗り分け部分があります。機関砲の砲口周りを焼き鉄色に、また通信アンテナや電波高度計のレドームをマット・ブラックで塗ります。(写真14) 写真にはありませんが、キットの前縁スラットは別パーツとなっています。スラットはフィニッシャーズのファインシルバーで塗り、少し輝きを与えてみました。取り付けは最後になるので、塗装の終わったスラットは少しの間寝かせておきます。


写真13 全体塗装の終わったF-100の機体


写真14 塗装の終わった機首下面


 機体の大物部品としては垂直尾翼が残っています。垂直尾翼も、銀2色で塗り分けた後、先端をエアクラフト・グレーに、そしてその前縁にあるアンテナレドームをマット・ブラックで塗ります。 さらに製作する481TFSの部隊マークである、グリーンの三角マークを塗ります。(デカールが付いていなかったためです)塗装が終われば胴体に取り付け、機体はほぼ出来上がりました。(写真15)


写真15 垂直尾翼を取り付けたF-100


5. デカール貼り
 塗料が十分に乾燥すれば次はデカール貼りです。使用したデカールはマイクロスケールのNo.48-80から選んだ、481TFS “Green Crusaders”の機体です。このデカールには国籍マークや”U.S.AIR FORCE”の文字がありません。これらはキットのデカールを使ってもよかったのですが、ブルーの色が少し薄く感じられたので、エアロマスターの48-718のものを使用しました。 マイクロスケールのデカールはかなり古いものでしたので、使えるのか心配でしたが大丈夫でした。流石です。しかし機関砲収納部などは機体側とカバー側にデカールが跨るため、切り取りに苦労しました。(写真16)


写真16 デカールの切り取り部


デカールを貼り終えた機体が写真17です。


写真17 デカールを貼り終えた機体




6.その他部品
 その他の部品としては、座席、風防、キャノピー、脚、脚カバー、パイロン、ドロップタンク、ウェポンなどがあります。ウェポンとしてキットに付属していたのはAGM-12ブルパップミサイルと延長信管付Mk82 500lb通常爆弾でしたが、作例ではブルアップミサイルの代わりに、ハセガワのウェポンセットから500lbスネークアイ爆弾をセレクトして取り付けることにしました。 座席にはシートベルトも彫刻されており、塗り分けるだけで出来上がります。また主脚にはブレーキ作動油の配管までモールドされており、丁寧塗り分ければ実感あるパーツが出来上がります。写真18~ にこれら部品の一部を紹介します。



写真18 塗装の終わった主脚

写真19 塗装の終わった主輪扉


写真20 塗装の終わった前脚

写真21 塗装の終わった座席


写真22 キャノピー

写真23 ドロップタンク


 キャノピーにはリアビュー・ミラーを自作して取り付けました。またドロップタンクは凸のパネルラインをそのまま残しています。合わせ面の箇所では少し苦労しましたが何とかなりました。


7.完成へ
 デカールの貼り付けも終わった機体や部品は、スーパークリアの半ツヤでデカール保護のコーティングを施しました。その後動翼の可動部やパネルラインへの墨入れ、若干のオイル汚れ、排気の汚れなどを加えていきます。次に風防、主脚、前脚、主脚扉、前脚扉、エアーブレーキ、ピトー管、アレスティングフックなど小物を取り付けます。機体への小物部品の取り付けが終わると主翼に前縁スラット、下面に空中給油プローブ、パイロン、そしてドロップタンクや爆弾を取り付けるのですが、ドロップタンクを取り付けたところで、キャノピーを閉状態にして記念写真撮影。 (写真24)キャノピー開状態で固定しまうと撮れない写真です。上述の空中給油プローブですが、キットには直線状のものとS字型のものが入っていますが、作例ではS字型のものを取り付けています。F-100Dの無塗装に派手なマーキングを施した時代の機体は直線状のプローブを備えていたのですが、ヴェトナムへ派遣された機体はS字型のものに変更されたようです。


写真24 完成直前のF-100D


 いよいよ最後の組み立てです。爆弾類と「Remove Before Flight」タグの完成写真を撮り損ねてしまいましたが、これらをパイロンに取り付けて完成です。「Remove Before Flight」タグはデカールがありましたので、これを利用して製作しました。プラペーパの表と裏からぴったり合うようにデカールを貼り、乾燥後タグの大きさにプラペーパを切り出し、周囲を赤でタッチアップするとタグが出来上がります。 この先端にピンバイスで0.3mmの穴を開け、吊り下げワイヤーにする0.2mmのアルミ線を通して完了です。タグは爆弾を搭載しているパイロン4個所と前脚の安全ピン取り付け箇所にぶら下げました。これで少しリアル感を出すことができたと思っています、如何でしょうか?

写真25~26が完成した481TFS所属のF-100Dです。


写真25 完成した481TFSのF-100D


写真26 完成した481TFSのF-100D


  Home>North American F-100D”Super Sabre”製作記 (Monogram 1/48)

Vol.92 2016 April.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
           editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

プラモデル模型製作特集1

TOTAL PAGE