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特集 グラマン ジェットファイター

Grumman F9F-2 “Panther” 製作記(Hasegawa 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


F9F-2 PANTHER (1/72) Hasegawa Box Photoより


 パンサーで思い出すのは、ウィリアムホールデン主演の映画「トコリの橋」です。少し古い映画ですが、朝鮮戦争を題材にしたこの映画には、F9Fパンサーがふんだんに出てきます。 空母からの離発艦シーンやトコリの橋の攻撃シーンなどが印象的でした。今でもDVDで見ることができます。

完成したVF-123のF9F-2



 さてこのパンサーですが、朝鮮戦争で活躍し名声を得ますが、開発には紆余曲折がありました。実はグラマンがベアキャットに続いて開発に取り組んだグラマン初のジェット戦闘機XF9F-1は、4発複座の夜間戦闘機でした。この案で米海軍の提案要求に応じるのですが、残念ながら双発複座のダグラス案(後のF3D-1 スカイナイト)に敗れます。しかし何が功を奏するかは、分からないものです。 競争に敗れたグラマンの設計陣は、改めて単発単座の昼間戦闘機にチャレンジします。当時適当な米国製エンジンがなく、彼らが選んだのは、推力が5,000lbに達していたロールスロイスの ニーン・エンジンでした。モックアップ審査などを終え、XF9F-2が姿を現したのは1947年2月のことです。そしてその年の11月21日、グラマンのテストパイロットの手により初飛行が行われました。この試作機にはパンサーの特徴となる翼端タンクは付いていませんでした。その後、F9F-2として量産化されると翼端にタンクがつけられ、エンジンはP&Wがライセンス生産したニーン・エンジンに換装されます。


 海軍は国産のエンジンの採用に前向きで、XF9F-2の2号機は、当時推力4,000lbに達していたアリソンJ33に換装され、XF9F-3となります。その後F9F-3として量産にされますが、F9F-2の567機に比べると僅か54機で生産を終えています。それはパワー不足ゆえの結果でした。 パンサーはその後燃料搭載量を増やすため胴体を延長、垂直尾翼を僅かに高くし、エンジンをアリソンJ33のパワーアップ型J33-A-16に換装したF9F-4へと進化し、さらにF9F-4の機体にエンジンをJ48-P-8(ロールスロイス テイ・エンジンをP&Wがライセンス生産したもの)に換装したパンサー最終生産型、F9F-5へと発展していきます。なお派生機としては、写真偵察型のF9F-5Pが36機生産されています。

完成したVF-123のF9F-2



 さて作品のF9F-2ですが、ハセガワから1980年代にリリースされた古いキットです。発売当時は凹彫のパネルラインで好評を博しましたが、現在のプラモ製造レベルから見るといろいろ注文が出てくるかもしれません。 しかし1/72スケールでは、ホビーボス以外は見当たらず、現在でも店頭で見かけることができるこのキットは貴重な存在と言えます。今回は発売当初のキットをストックから引き出し、組み立ててみました。いろいろ難点も見つかりましたが、完成すれば、F9F-2 Pantherでした。

製作

 このキットには、米海軍の第123戦闘飛行隊、米海兵隊の第115海兵戦闘飛行隊、そして米海軍のアクロバットチーム”ブルー・エンジェルス“のデカールが付いています。インシグニアの白がしっかり出ており良質のデカールでしたが、残念なことに艶消しになっていました。何故なんでしょう?
仕方なく、手持ちの古いデカールですがマイクロスケールNo.72-206 F9F-2 Pantherの中から、キットと同じVF-123のデカールを使用することにしました。
 キットは、パネルラインが綺麗な凹彫の仕上げになっており、透明パーツの透明度も高く好感の持てるものですが、製作してみて機首のボリュームが少々少ないように感じました。
下面のエアブレーキは開閉状態が選択でき、作例では開状態にしています。なお搭載兵装としては、5インチロケット弾6発が付属しています。

F9F-2 Panther Hasegawa(1/72)



 機体は、左右の胴体パーツを貼り合わせ、4門の20㎜機銃の付いた機首部を取り付けた胴体に、左右一体となった下面パーツと左右の上面パーツを貼り合わせた主翼を、下方から組み込む構成です。水平尾翼は左右別々の一体成型で、垂直尾翼の左右から取り付けます。 左右のインテイクは別パーツとなっており、胴体と主翼を接合した後、主翼付け根に嵌め込みます。仮組の結果、各接合部に若干の段差や隙間の出ることが分かりました。そこで、塗装は胴体と主翼を組み立て、接合部を整形したのち行うことにしました。


 胴体の組み立て前に、まずコクピットとエンジン排気管を取り付けなければなりません。 そこで胴体パーツのコクピット内壁と後部胴体内壁とを、それぞれグレーFS36231(Mr.カラーC317)と黒鉄色で塗装しました。
(写真1)

写真1 胴体内壁の塗装



 また、コクピットのバスタブも内壁と同じグレーで、計器盤は艶消しの黒を塗ります。次に、計器盤とサイドコンソールにキットのデカールを貼り付けました。(写真2)どっちみち組み立てると外からはあまり見えないため、1/72スケールではこれで十分です。
コクピットにはグリップを艶消し黒で塗った操縦桿を取り付けておきます。
シートは塗装だけして後で組み込むことにしました。(写真3)


写真2 コクピット
写真3 シート


 塗装を終えたコクピットや排気管を組み込み、胴体を接合します。このとき、機首部の隙間に錘を3g程度入れておきます。ウィンドシールドの前方平面ガラスの下面が直線になっているためか、胴体に乗せると左右に隙間ができます。またウィンドシールドから機首にかけてのラインが少々直線的に思え、この部分にパテをもって整形しました。(写真4)  また計器盤の上方にガンサイトのモールドがありましたが、削り取りました。次に主翼の上下パーツを貼り合わせ、前後縁や翼端タンクの接合部を綺麗に整形します。そしていよいよ胴体と主翼の結合です。インテイクも主翼付け根部に接着します。このとき、インテイクの内側を銀塗装しておきます。(写真5)がインテイク部のパーツです。胴体と主翼の接合部も整形しておきます。残るは水平尾翼の取り付けですが、水平尾翼は塗装後に取り付けます。塗装作業を考えてのことです。


写真4 機首上面の整形部
写真5 内面塗装を施したエアインテイク部品


 機体塗装の前に、ウィンドシールドとキャノピーをマスキングします。そしてセミグロスブラックで下地塗装し、ウィンドシールドは機体に接着、キャノピーは閉状態位置に両面テープで仮止めします。またウィンドシールドの接着前に、透明プラ板で作ったガンサイトのハーフミラーを削り取ったガンサイトの位置に取り付けておきます。 また脚柱やアクチュエータの摺動ロッド部をクロームシルバーを塗り、乾燥後にマスキングをします。脚扉やパイロンなどの機体部品も塗装の前に整形しておきます。これで、塗装準備が完了です。


 パンサーは、機体表面だけでなく、脚柱、脚収納部、脚扉の内側もシーブルー1色で塗装されており、塗装としては楽な部類です。そこで一挙にグロス・シーブルーFS15042(Mr.カラー特色 WWII米海軍機標準塗装色の中の1色:C365)を吹き付けました。次にインテイクリップ、主翼、尾翼の前縁、翼端タンクの先端を銀塗装します。垂直尾翼の前縁は緩やかながらも曲線になっているのでタミヤの曲線用マスキングテープを利用しました。銀塗装の塗料には前述のとおり、フィニッシャーズのファインシルバーを使っています。なかなか感じがいいです。 乾燥後は尾翼のラダーと翼端タンクのマーキングです。この部分はマイクロスケールのデカールを使用せず、マスキングして黄色FS13538(Mr.カラーC329)を吹き付け、小さな黒星にはキットのデカールを使用することにしました。黄色の塗装を終え、マスキングを外した状態が(写真6)です。これで機体の塗装はほぼ終了です。

写真6 塗装を終えた機体



 次にデカールを貼ります。ラダーと翼端タンクの黒の星のマークは、前述のとおりキットのデカールを使っています。 キットのデカールもマイクロスケールのデカールも30年を過ぎたものでしたが、グンゼのMr.マークセッターを使いながら無難に貼り終えることができました。(写真7)、(写真8)

写真7 デカールを貼り終えた機体上面
写真8 デカールを貼り終えた機体下面



 ここまで来るとウィンドシールドやキャノピーのマスキングを剝がしたくなるのですが、もう少しの辛抱です。デカールを貼った後はデカール保護用のクリアでオーバーコートをするのですが、その前に小物の塗装が残っています。 車輪や、アレスティング・フック、ピトー管、ロケット弾などを塗装します。ロケット弾の色はインストには先端のみ赤と書いてありますが、箱絵は先端部と尾翼部分も赤になっています。恐らく箱絵の方が正しく、それを従って塗装しました。

 さて次は、仕上げのクリア塗装ですが、その前にまず水平尾翼を取り付けます。クリアは半艶クリアにしました。Mr.カラーのスーパークリア半艶です。シルバリングを起こしたところは焦らずにクリアを塗り重ねていきます。クリア塗装の後、機首の20㎜機銃を焼き鉄色で、また翼端タンクの外側にある翼端灯をクリアレッド(左舷)、クリアブルー(右舷)で塗ります。そして最後は、キャノピーの内枠塗装です。キャノピーのマスキングを一旦剥がし、キャノピーの内枠を残して再度マスキングし、艶消しの白を吹き付けました。(写真9) 写真9 出来上がったキャノピー

完成

 ウィンドシールドのマスキングを外し、塗料の漏れ込みを確認します。漏れ込んだところは、爪楊枝の先で軽くこすりながら塗料を落とし、コンパウンドで軽く磨いてやりました。
そして最後に、個別に塗装した脚、脚カバー、エアブレーキ、翼下のピトー管、アレスティング・フック、ロケット弾、そしてキャノピーを取り付ければ完成です。
(写真10~12)
 マクダネルのF2H-2バンシーとともに実戦で初めて使用された米海軍のジェット戦闘機として歴史に名を遺したパンサーですが、後継機として出現するF9F-6~8クーガより生産機数が少数で終わったのは、”より早く、より高く“が求められたジェット戦闘機黎明期の時代の潮流によるものでしょう。

写真10 完成したVF-123のF9F-2


写真11 完成したVF-123のF9F-2


写真12 完成したVF-123のF9F-2


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