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誌上個展

ベンツW154-M163仕様  (W163 (1939) リバイバル 1/20)

by 田口博通 Hiromichi taguchi

  Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 
どうぞあわせてお楽しみ下さい。

  2016年11月号から始まるビンテージ・ガレージ 第4シーズンは、国内外メーカーから発売されているビンテージレースカーを主に取り上げています。
 今月登場するのはイタリア リバイバル社の1/20 ベンツW163(1939)です。
 しかし、メルセデスベンツの公式サイトによると「メルセデスW154-M163仕様」と呼ぶのが正しいようです。
 メルセデスメンツW154は1938年から1939年に使われたグランプリレーシングカーですが、1939年にエンジンがM163に換装されており、戦前最後のシルバー・アローとなったスーパーチャージャー付きV型12気筒3000ccエンジンを搭載したモンスターマシンでした。
1938年フランスグランプリとドイツグランプリで優勝を飾っています。
 リバイバル社のキットは、イタリア職人的に作られており、精密な構成ではあるが、部品はラフ。製作者が自分の技量でカバーする必要がある といったタイプの模型です。
 このリバイバルのキットはABSプラスチックボディの他、シャーシーはダイキャスト.。サスペンションは金属部品、その他要所にゴム製部品とマルチマテリアルでエンジンやシャーシーは精密に出来ています。
 上級者向けキットといえる内容で、なかなかに作りごたえがありますが、入手難が残念です。

 もともと イタリアの模型メーカーだったリバイバル社は、倒産して無くなった訳ではなく、現在はドイツに籍を移して「リバイバル・ドイチュランド」となって存続しているそうです。



REVIVAL(リバイバル) W163箱絵 

MERCEDES-BENZ W154-M163 (1939)

実車について

 メルセデス・ベンツW154は1938年から1939年のグランプリ・シーズンで実戦投入され、1938年のヨーロッパ選手権を制したグランプリ・レーシングカーである。ルドルフ・ウーレンハウトにより設計されている。
 1938年シーズンは過吸なしノーマルでは排気量4500cc, スーパーチャージャー搭載は3000ccに制限するというAIACRのレギュレーション改定があり、それに合わせて W154が新設計された。
 レースは興業ビジネスなので主催するAIACRの意図は 5700ccのベンツW125が強すぎ1937年シーズンのような常勝が続くとグランプリが面白くなくなり、客足もにぶってきたので、レギュレーション変更で もう一度 シャフルして活力を取り戻そうということであったようだ。
 W154は2963 cc M154エンジンを搭載したが、シャーシーとサスペンションはほとんどW125の流用だった。
 リアサスペンションはド・ディオン式で、左右のリアホイールを平行に固定する鋼管を利用した非独立懸架式だった。
 油圧式のリアダンパーはコックピットから調整可能なように設計されている。
 W125の5700ccエンジンに比べて減少したパワーを補うため、W154はW125の4速MTに比べて一段多い5速のマニュアルトランスミッションを搭載した。

1939年のグランプリ・シーズンに参戦したW154はシャシー設計は1938年のものと同一だが、新開発のM163エンジンに置き換えられている。

 戦績は1938年シーズンはフランスグランプリとドイツグランプリで優勝を飾った。
 しかし、1939年はヨーロッパは戦雲ただよい、第2次大戦が始まり、グランプリレースも中断されてしまったのである。

(写真) W154(-M163)実車 (www.supercars.net より引用)


(写真) ベンツW125実車記録写真 (www.supercars.net より引用)

製作

 マルチマテリアルで部品点数が多く、慎重に組んでいく必要がある。細かいビス留めの部分が多いのだが、プラスチックで強度が足らない場合は、ビス留め後、瞬間接着剤で強引に固めてしまう。 また、サスペンション部は設計に不備があり、キングピンが外れやすいので、上下からビスで留める方法に変更したほうがよい。


エンジン
 下はエンジンの組み立て図の一部だが、これを頼りに、合いの悪い部品を削りあわせながら、接着していく。イタリアのミニカー職人になったような気分である。 エンジン本体はグリーン、補機類はシルバー、黒、スーパーチャージャー類は艶消し黒とした。



エンジン部品
エンジン本体を組む

排気管と過給器部品
組みあがり、塗装後のエンジン。


シャーシーの組み立て
 シャーシーはダイキャスト部品、前後サスペンションはダイキャストとABSプラスチック部品から構成されている。
このシャーシーの組み立てが、リバイバルのカーモデルのハイライトといえるだろうか。
 

シャーシーを組み、前後のサスペンションとエンジンを組み込む。



リアサスペンション
 このキットは実車のド・ディオン式のリアサスペンションが見事に再現されている。左右のリアホイールを平行に固定する鋼管を利用した非独立懸架式だった。

 下のシャーシーの組み立て図でわかるように最後部の鋼管部品はABS樹脂製でデフレンシャルギアボックスの中にスプリングを入れ サスペンションされる。金属部品を介して、リアホイールにネジ留めされるのだが、ネジ留めの強度が弱く、すぐはずれやすい。ここが一番の組み立ての難関だ。筆者はリアサスペンションは可動をあきらめ、強引に瞬間接着剤で固めてしまった。

シャーシーの組み立て図


シャーシーに組み込んだエンジン



下回りの完成
 エンジンとラジエーターをつなぐホースはゴム製になっている、防火壁部品を組み込み、タイヤを装着すると、下まわりが出来上がる。 これだけで飾っておきたいほどの精密感が醸し出される。

写真は完成した下回り。


ボディの塗装
 ボディ部品は接着整形後、サフェーサーで下塗りし、 、フィニッシャーズカラーCLKシルバーを吹き付けた。ベンツと言えばこのシックなシルバーが一番のおすすめだ。 デカールを貼り、慎重にクリアを吹いて、充分に乾燥後、実車用のカルナバカーワックスを布につけて磨き、塗装完了とした。



コクピットと排気管
 下回りにボディを組み合わせる。コクピットは計器板、ハンドル、シート、ウインドーなど小物が多いので、適宜 修正しながら 組んでいく。計器はデカール表現になっている。   エンジンにつながる排気管はサイドボディを装着しないとつなげることができない。といって排気管を接着してしまうと、サイドボディを取り外すことができなくなる。それで、排気管は0.5㎜真鍮線で後付けでつなぐことができるように加工した。



精密なコクピット

完成

 ラテン的ラフさのあるキットなので、やすりは手放せないが、手を動かし続ければ、意外と早く完成ができた。
1/20なので完成すると、かなり大きい。
日本のカーモデルには無いイタリアの芸術的な香りがするカーモデルとなったと思う。
現在では見られないフロントエンジンのグランプリレーサーというのも魅力的だ。





ベンツW154 その後

 1939年に第2次世界大戦が勃発し、メルセデスベンツW154が活躍するはずだったレースも中断されてしまった。ドイツが敗戦し、ベンツも大きなダメージを受け、この戦争のどさくさでW154は全て失われてしまったと考えられていた。
 しかし、大戦後 しばらくして、シャシー番号9のW154がなんとチェコで奇跡的に発見されたのである。
  このW154はアメリカのレースチームオーナー ダン・リーにより どうやってか購入されている。
 そして再整備を受けたこのW154は1947年、同チームのデューク・ネイロンがドライブし「インディ500」に出走を果たしたのだ。
 残念ながら決勝レースでは119週目にアメリカで交換したピストンのトラブルでリタイアに終わっている。
 しかし、この奇跡的に蘇ったシャシー番号9のW154はオーナーを変えながら、しぶとく1957年の「インディ500」まで出走をしている。

 そしてこのW154に鼓動を合わせたように、ドイツ本国ではベンツが不死鳥のように再生を遂げるのである。




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