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96式艦上戦闘機 (日本模型(ニチモ) 1/72)
by
加藤 寛之
このキットは田宮模型「彩雲」と同じ『プラモ・ガイド 1966』(酣燈社)の「新キット紹介」で紹介されている。私はこの本で初めて、キットの存在を知った。私が住んでいるところには、模型店が2件あったのだが、この96艦戦を見たことはなかった。日本模型(ニチモ)の銀河や飛燕、ムスタング、スピット、フォッケ、F86Fなどは棚に並んでいたから、わざわざ仕入れなかったとも思えない。理由は今もわからない。
初めて見たのは充分に大人になってからだと思う。やっと出会えた、次はいつになるか、そんな焦りだけが購買意欲となって、在庫がたまってしまった。それでも日本模型がプラモデルから完全撤退してしまった今となっては、「買っておいてよかった」と思っている。その在庫から1個取り出して、組んでみた。
このキット、実機写真や図面と見比べると、だいぶ違う。それなのに似ている不思議な製品だ。特に主翼は秀逸で、翼断面形にダルさが見られず、翼端にまで神経を使っている。翼厚は楕円翼にあわせて変化させ、それが両手を広げたようにピ~~ンと先端まで伸びている。後縁も嬉しいほど薄く造られている。垂直尾翼もまた薄く造ってあり、カッコ良い。
カウリングはころっと丸く、いかにも96艦戦らしい造形だ。プロペラは付け根が細すぎるとは思うが、プロペラっぽい薄さで造っている。ピトー管は折れてしまいそうに細い。「飛行機って、こういうものだ」という主張が明確な製品だといえる。もちろん古い製品なのでダメな部分も少なくないのだが、それは作る人が修正すればよい。
さて組み立てだが、特に説明する必要がないほど構成は簡単だ。反面、部品には接着面の荒れ、バリや小さな湯流れ不良が目に付くので、組み立てには丁寧な事前処理が欠かせない。
内面を紺色に塗った胴体を貼り合わせる。合せは背中を主とし、ズレは下面にもってくる。風防前パーツも付けて強度をだす。計器盤や床板は、下部の切り欠きから入れられる。別パーツのラダーはバランスウェイト部分の位置が合わないので切り落とし、垂直安定板側に移しておく。
風防は胴体と合わない。欠損もある。前方にあるパーツの角を丸め、欠損部はちょっと削っておくとだいぶ改善する。細かい削りあわせをしても残る大きな隙間は、水性ボンドを流して埋める。乾くと半透明なので目立たないし、色を塗ればさらに気にならなくなる。
主翼は、上反角がつく部分の翼弦方向にあるカバーがおおげさなので、切り取って薄いプラ板に置き換える。後縁に僅かな湯流れ不良はあるが、貼り合わせれば目立たない。エルロンの波形が後縁まで届いているので、後縁の上下を軽く均してきれいにみせる。その過程でエルロンにあったタブを削り取ったのだが、再生工作を忘れてしまった。
タイヤを覆う涙滴状のカバーは、タイヤ部分の切り欠きが不自然なので、裏からプラ板をあててそれらしく整形する。タイヤは切って半円状にし、塗装後に下から差し込めるようにする。脚柱部分も直線的な側面形状に整形する。
フラップは開状態で固定した。プラ板で台座をつくり、後から接着した。
それ以外は、パーツを調整して組みました、と書いておけば良いと思う。
全体を塗った色は、銀にクリアーオレンジを加えたもの。この混色は筆跡が出やすいので、筆で叩いた塗る方法をつかった。塗り終わるちょっと前で作業をやめ、残ったムラを面白みとする。ちょっと赤すぎたかも知れないが、色の違いが分りやすくてイイや、と思うことにする。細部の色は流用できる色はそれを使い、いつもの色数の7割程度に抑えて簡便に済ませた。キットデカールを貼って完成とした。
手軽に作ろうと決めていたので、1日で完成した。その間に寝食はもちろん、ゆっくりとお風呂に入り、映画も見にでかけ、テレビの正月特番も見た。それで僅か1日、本当です。このくらいの時間で出来ると、プラモデルは気持ちがいい。
追記:
童友社の「96艦戦」のキットは、ホビーボスの成形品だ。完成した姿はニチモのキットによく似ている。細かいところも、欠点のいくつかもそっくりだ。しかしスパッツは改善され、強度や成形に不安があったプロペラは丈夫になっている。主翼は味わいをそのままに後縁の湯流れ不良をなくしてある。
まさにニチモの遺伝子で現代的に再生された更新版といえる。それに気づいたとき、私はすぐに1個購入した。開発のどこかでニチモのキットを愛した人がいたのだと思う。ニチモの96艦戦は、そんな特異な伝統継承が行われたキットだ。
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