Home > ジャガーEタイプ (グンゼ 1/24)> ビンテージガレージ > 2018年7月号

誌上個展

JAGUAR XK-E (ジャガー Eタイプ) (グンゼ 1/24)

by 田口博通 Hiromichi taguchi

  Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 
どうぞあわせてお楽しみ下さい。

 2018年4月号から再開したビンテージ・ガレージ 第5シーズンは、国内外メーカーから発売されている1950年代から1960年代のビンテージカーを主に取り上げています。
 今月登場するのは 1991年にグンゼから発売された 1/24 ジャガーXK-E(ジャガーEタイプ)ロードスターです。グンゼがキット化したのは 1964年にマイナーチェンジされた1シリーズ 4.2リットルのロードスターモデルです。
 このキットは、1980年代に発売されたグンゼハイテックカーシリーズを元に エンジンレス廉価版として再発売された一連のスポーツカーシリーズの一つでした。
 廉価版のスタイルモデルへと変更されたため、金属パーツが廃され、シャーシーやタイヤホイルがプラ製となり、誰でも簡単に組めるようになっていました。
  既に絶版なのが残念ですが、ジャガーEタイプのロングノーズの特徴が良く表現された、大変プロポーションの良い魅力的なキットです。



 箱絵 

ジャガーXK-E(Eタイプ)

実車について

 1961年にデビューしたジャガ―Eタイプは美しいロングノーズフォルムのモノコックボディ、チューブラーフレームに4輪独立懸架、4輪ディスクブレーキと当時の最も進んだテクノロジーを駆使したスポーツカーで最高速度240km/hをマークした。
 マルコム・セイヤーによりデザインされたボディはオープン2シーター(ロードスター)とクーペの2種があった。
エンジンは3.8リットル直列6気筒DOHCでデビューし、マイナーチェンジで4.2リットルにアップされ、最終的には5.3リットルV型12気筒SOHCが搭載された。
 1961年から1975年まで販売されたジャガーEタイプは、流麗なデザインと卓越した性能を持ち、それでいてライバル車よりも安価であり、英国車ではあるがアメリカでは大ヒットとなった。

(ジャガーE クーペ 実車写真)(wikipediaより引用)



(ジャガーE ロードスター 実車写真)(株ワイズ中古車情報より引用)

製作

 ハイテックシリーズよりも廉価版は部品点数が少なく構成され直されているため、非常に組み立てやすくなっている。組み上げるだけならば、1日あれば充分だろう。

ボディはボンネットと後部ボディーに分割されている。
簡略的に一体成型されたボディ下部

 軟質プラスチックで成形されたタイヤ、シート、ドア内貼りなど 簡潔にまとめられたシャーシーとコクピット部品

ボディとシャーシーの塗装

 ボディは厚みがあるので、光の透けを気にする必要はないが、念のため裏面を艶消し黒で塗装した。その後、フロントカウルと後部ボディをマスキングテープで裏から貼り一体にして、塗装の準備をする。
ボディにはMrカラー69 グランプリホワイトを吹き付けた。


シャーシー

 ボトムシャーシーにエンジン下部やコクピット部品を接着し、艶消し黒で塗っておく。
マスキングして、ボディと同様にMrカラー69 グランプリホワイトを吹き付けた。



その後、リヤアクセル、排気管を組み込む。
実車はフロントがダブルウイッシュボーンにトーションバー、
リアは2本ずつのショックアブソーバーとコイルスプリングを備えた変形ダブルウイッシュボーン
の4輪独立懸架だが、一体部品化して簡潔に表現されている。


コクピット

 計器ボードのメーターはデカールなので、メーター枠だけシルバーで塗装する。   廉価版のワイヤホイルはプラスチックのメッキ部品となっているので、艶ありブラックを薄く溶いて塗り、陰影を強調している。



ドア内貼り、シート、後部座席を組み込む。
フロントガラスは手芸用ボンドで接着した。



最終組み立て

 フロントガラス枠には、ハセガワトライツールのミラーフィニッシュを貼った。
 また、ヘッドライトのメッキモールはデカールでは実感が低いので、ミラーフィニッシュを使っている。
 また、バンパー部品のランナー跡をミラーフィニッシュで補修しておいた。
前後部バンパーの水平が完成後もっとも目立つので、注意して固定する。
ライトなど小部品を取り付けて、組み立て完了となる。

フロントガラス枠には、ハセガワトライツールのミラーフィニッシュを貼っている。
 

ヘッドライトカバーのメッキモールはミラーフィニッシュを貼りカットした


完成

 完成したジャガーEは低い車高で実に魅力的だ。
水平にすっと伸びたスタイルは世界のどこにもないもので、さすが英国車である。




ジャガーEタイプ その後

 ジャガーはアメリカ市場で成功し、イギリスの外貨獲得に大きく貢献した。創業者のウィリアム・ライオンズは1956年、イギリス王室より「ナイト」の称号を授かっている。
 この頃からジャガーEタイプがアメリカで大ヒットした1965年までがジャガーの全盛期だったが、1966年にウィリアム・ライオンズはさらにビジネスを拡大しようとして、大きな経営判断上のミスをする。
 
 それは、1966年にイギリス最大の自動車会社ブリティッシュ・モーター・カンパニー(BMC)と合併し、ブリティッシュ・モーター・ホールディング(BMH)となったことである。 
 マネーゲームの典型のようで よさそうに見えたこの合併だったが、 ところが、大企業病が蔓延していたブリティッシュ・モーター側の主要モデルの販売不振から、1968年にBMH自体が経営不振に陥ることになるのだ。
 それに対してイギリス労働党政権はBMHをレイランド・モータースと合併させて国有化し、1968年にブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーション(BLMC)を発足させた。
 
 そしてジャガーはそのBLMC傘下となり、長い「冬の時代」に入る。
本来は高級車メーカーであるはずのジャガーは、作業員のレベルがBLMCの平均に下げられることになり、またこの時代のイギリスで多発した労働運動の激化により著しい品質低下に陥った。
 そして、最大マーケットのアメリカで「よく壊れる車」とのレッテルを貼られる事態になって行った。
 スタイルの旧式化も否めず、1970年代に入ると、更にオイルショックの荒波を被り、燃費の悪いスポーツカーには全くの逆風だった。販売台数の減少により、ついにジャガーEタイプのクーペは1973年末、ロードスターは1975年2月に製造中止となったのである。 


ジャガー さらに その後

 さて、ブリティッシュ・レイランドはまさしく国有の弱者連合で 
Austin(オースティン)、
Morris(モーリス)、
MG, Triumph(トライアンフ)
Rover(ローバー)
Jaguar(ジャガー)
Coventry Climax(コヴェントリー・クライマックス)
Land Rover(ランドローバー)
Leyland(レイランド・モーターズ)
を統合していた。
 同級車種での競合ブランド・モデルを過剰に抱え込む状況となったため、ブリティッシュ・レイランド社内で競合するモデルが多数生じ、非効率はより強まってしまった。
 このような状況化では経営状態悪化には歯止めが利かず、外国自動車メーカーとの提携や、ブランド売却を続けながら縮小・解体されて行き、遂に2005年に、最終的な存続会社となっていた「MGローバー(MG Rover Group)」が倒産したことによって消滅した。

ジャガーの復活と さらにその後

 その中でジャガーは1979年に新たな経営トップとして社外からジョン・イーガンを招く。
イーガンは生産体制や経営の改革に着手し、日本企業並みの品質管理(QC運動)やリストラを推し進めた。すぐに結果となって表れ、ジャガーの品質は改善し生産台数も回復した。
 そしてその後の1984年、保守党のマーガレット・サッチャー首相による民営化政策によって、ジャガーはBLMCから抜け出し、再び民営化された。
 抜本的な体質改善に成功したジャガーは、Eタイプの後継として投入されていたXJSも、1980年代後半になってやっとアメリカ市場を中心に人気車種となった。1986年には完全な新設計となるXJ(XJ40)をデビューさせる。
    
        XJS (1/24 ハセガワ)

  XJ-SC V12 カブリオレ (1/24 ハセガワ)

 また、1985年からは世界耐久選手権(WEC)に参戦し、1986年にはXJR-8でシリーズチャンピオンを獲得、さらにXJR-9LMで31年ぶりに1988年のル・マン24時間レースに優勝し、かつての名声を取り戻すことに成功した。

XJR-8 (1/24 ハセガワ)



XJR-9LM (1/24 ハセガワ)



 しかし、その後 再びの暗転が待ち受ける。1989年に、ブランドイメージを高く評価したフォードグループが、25億ドルでジャガーを買収し、フォードの傘下に入ることとなる。
 しかし2000年代に入り、フォードグループ自体の深刻な経営不振から、フォードは2008年にインドのタタ・モーターズにジャガーおよびランドローバーを約23億ドルで売却した。
 そんな訳で現在のジャガーはインド資本傘下となってしまっている。
 1970年代以後、イギリスの自動車メーカーの多くが市場淘汰と企業買収ゲームに翻弄された。「ローバー」や「トライアンフ」、「MG」などかつてジャガーと同様にブリティッシュ・レイランド傘下だったほとんどが壊滅に至っている。
 
 その中で、ジャガーも企業買収される度に暗転を繰り返しているが、現在はインド資本傘下となりながらもイギリス系の高級車・スポーツカーブランドとして存続しているしぶとい例となっている。

 
 なお日本では「ジャガー・ランドローバー・ジャパン株式会社」により販売活動が続けられている。

(参考および引用 wikipediaなど)


ビンテージ・ガレージ バックナンバー
5th
シーズン
2018年5月号 第24回 マツダ コスモ スポーツ L10B (ハセガワ 1/24)
2018年4月号 第23回 Team Lotus Type49B 1969 (エブロ 1/20)
4th
シーズン
2017年2月号 第22回 ベンツW154-M163仕様  (W163 (1939) リバイバル 1/20)
2017年1月号 第21回 ダットサンSR311 フェアレディ (フジミ(旧日東) 1/24)
2016年12月号 第20回 スカラブ Mk.4(モノグラム 1/24) 
SCARAB Mk.4 (MONOGRAM 1/24)
2016年11月号 第19回 マクラーレンM8A 1968(タミヤ 1/18)
  Mclaren M8A (TAMIYA )
3rd
シーズン
2016年2月号 第18回 ポルシェ356Aスピードスター (トミー 1/32)
PORSCHE 356A SPEEDSTER(TOMY 1/32)
2016年1月号 第17回 ブガッティT55スーパースポーツ(バンダイ 1/20)  
Bugatti model 1932 type 55 Super Sport (Bandai 1/20)
2015年12月号 第16回 フェラーリ 250 テスタロッサ(ハセガワ 1/24)
Ferrari 250 Testa Rossa (Hasegawa 1/24)
2015年10月号 第15回 シトロエン DS19 (エブロ 1/24)
CITROEN DS19 (EBBRO 1/24)
 
2015年9月号 第14回 フォルクスワーゲン カルマン・ギア 1963年型 (GCIクレオス 1/24)
 Volkswagen Karmann Ghia 1963
2015年8月号 第13回 メルセデス ベンツ 300SL (タミヤ 1/24)
Mercedes Benz 300SL (Tamiya 1/24)

2nd
シーズン
2014年12月号 第12回 オースチン ヒーレー 100-6 (レベル1/25)
AUSTIN HEALEY 100-SIX (Revell 1/25)
2014年11月号 第11回 リンカーン・フューチュラ(レベル1/25) 
LINCOLN Futura (Revell 1/25)
2014年10月号 第10回 メルセデス・ベンツ540K(モノグラム1/24)
MERCEDES-BENZ540K (Monogram 1/24)
2014年9月号 第9回 デユーセンバーグ・モデルSJ(モノグラム1/24) 
DUESENBERG SJ (Monogram 1/24) 
2014年8月号 第8回 ド・ディオン・ブートン (1904年型)(ユニオン 1/16)
DE DION BOUTON 1904 (UNION 1/16 )
2014年7月号 第7回 アルファロメオ2300 トゥーリング(1932)(ブラーゴメタルキット 1/18)
ALFA ROMEO 2300 TOURING(Burago Metal Kit 1/18)
1st
シーズン
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)


  Home>ジャガーEタイプ (グンゼ 1/24)> ビンテージガレージ > 2018年7月号

Vol.119 2018 July.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
           editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」



Vintage garage

製作記事


TOTAL PAGE