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特集 エアフィックス

  E.E.ライトニングF.2A (エアフィックス 1/72)

by Windy Wing 2013

 今回は本誌上でも大好評の新生エアフィックス社(以下、エ社)の製品から、
60'Sとして英国で一世を風靡した<E.E.ライトニングF.2A>をご紹介いたします。




 なにはともあれ、新生エ社の赤い箱を開けた瞬間、眼に飛び込んでくるスッキリと切れ込んだ美しいスジボリに、モデラーならば誰しもが心奪われることと思います。その彫り込まれた柔らかい水色の素材は先代からの伝統をそのままに、さらに新生エ社では実機調査を非常に綿密に行い、本キットでも三次元的な主翼のねじり下げを忠実に再現するなど、細部まで的確な造型で再現されているのですから、その製作意欲はいやがうえにもかき立てられてしまいます。
 ここで、どうしても日本人として悲しく語らざるをえないのが、この新生エ社のイギリス国産機を完全網羅せんばかりの愛国的アイテム選択と怒濤の製品開発です。直近では1/48ホーカー・シーフューリーなどがその最たるものかと思われますが、さらには国を越えて、九七艦攻さえもこの会社に求めなければならない状況に、今はただ嘆息するしかありません。




 ところが、「伝統」というものが常に「良き伝統」ばかりを引き継いでくれていればありがたいのですが、残念ながら、同じ程度に「悪しき伝統」までもが残っているのが老舗の老舗たる所以でしょうか。キットはこの美しいパーツからは想像できないほどに部品接合の精度が甘く、ミサイル・ランチャーやベントラル・フィン、そして水平尾翼までもが事実上のイモ付け、機首機銃周囲のはめ合わせは一昔前のキットのそれであり、ましてや、主翼下半角や主脚前傾角が一発で決まることなど、望むべくもありません。
 また、一般に素材の柔らかさと小部品の切れ味は二律背反の関係にありますが、この点でも新生エ社はディテールの表現において、最新の他社キットの後塵を拝していることを否定できません。実際に本キットでもミサイル・パーツがあまりに見劣りするため、今回使用したファイア・ストリークはトランペッター/モノクローム社(以下、トラペ/モノ社)のキットからコンバートしたものです。



 そのトラペ/モノ社製のキットとは、本来ならば両者を完成させてから比較すべきなのですが、パーツの段階で簡単に俯瞰すると、モールドは新生エ社の方が鋭いながらやや画一的で、特に凸の表現に乏しいために、全体にのっぺりとした印象を与えます。加えて、金型表面研磨の手間を省くためでしょうか、ベースに梨地処理が施されていて、特に銀塗装などの際にはこれを削り落とすのにいらぬ手間がかかります。一方、トラペ/モノ社製は最近の中国製品に通例のスミ入れがやや乗りにくそうな凹モールドで、どうしても自分でひと彫り加えたくなりますが、胴体の部分的な凸表現や脚周りなどの細部、そして前述の兵装類にはこちらに一日以上の長があるようです。
 このように、両社いずれも一長一短あり、価格もほぼ同じなので、本機の製作にあたってはユーザーに非常に悩ましい選択が迫られます。望むべくは、さらなる決定版キットの出現ですが、マイナーといってもいい本機のキャラクターではそれも難しく、最終的には「彫り」に対する各人の審美眼によって決断せざるをえないのが実状です。



 本キットに限らず、私の出会った新生エ社の製品たちには「見た目の美しさに惹かれて迂闊に手を出すとヤケドをする」ところが少なからずありました。しかしながら「造型だ、部品精度だ、ディテールだ」という以前に、私は「メーカーとの相性」がモデリングにおける極めて重要な要素であると考えています。その意味において、模型屋の棚から袋詰めのキットを選んでいた時代から、エアフィックス社は私にとっては「なぜかあそこのキットだとうまく作れる」メーカーの筆頭になっています。
 その会社がかくも革新的な再生を果たしえたことを歓びつつ、今後、1/48の複座ハリアーや完全新金型のユーロファイター・タイフーン、そしてグラマラスなバッカニアの1/72リニューアルなど、「エ社」のさらなる邁進に心からの期待を寄せるものです。



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