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特集 プラモデル温故知新

  零式水上観測機(タミヤ 1/50)

by口博通 Hiromichi Taguchi



 タミヤのリジェンドキット1/50零式水上観測機が購入後40年経過して、やっと完成しました。古くから指摘されているように偵察席キャノピーが大きいなど、いくつかの欠点はあります。
 しかし、出来上がってみると実に堂々としています。翼面の表面彫刻や胴体の詳細なリベットなど表面ディテールも冴えています。1960年代の製図板と人力のならい旋盤で金型を彫ったプラモデル黎明期のキットですが、現在でも通用するオーラが発散されているように感じます。




 タミヤ零観は今から52年前の1967年発売です。私が入手したのは、モーターライズが廃止されたホワイト箱版で、1970年代半ばのことだったと記憶しています。郷里高松から上京後、当時自由が丘にあったおもちゃ屋兼模型店で購入したと思います。
 その後、いつのまにか絶版となっており、ハセガワから1/48新キットが発売されたのは2009年3月(webモニューキットレビュー参照)で、タミヤリジェンド発売の実に40年後のことでした。絶版タミヤ零観しかない状態が続いていた時期は、中古店で希少プレミアムがついていましたが、現在は落ち着いているようです。
 なかなか手をつけられなかったのは、希少なキットを作るのがもったいなかった訳ではなく、白状すると、欠点を厳しく指摘する模型誌の評など雑音に惑わされていたに他ならずでした。
 タミヤ1/50では2013年に透明彩雲を作っています。透明彩雲は完成すると深い満足感がありました。それでは生きているうちにタミヤリジェンド1/50シリーズ完食プロジェクトをと思い立ち、その第2弾として、零観を作ろうと今年3月、在庫から掘り出しました。
 ハセガワから新キットがリリースされた現在では、邪心を捨て、タミヤらしさを残すことを念頭にできるだけストレートで作ることにしました。欲張らず、翼間張り線も上下主翼間のめだつ箇所のみ張ることにしました。そう決めると迷いなく 工作が進みました。
 とはいえ、操縦席キャノピーが初期型形状なので、これをエンビ板で絞り直すと完成がおぼつきません。それで、カウリング上のエアインテークを削り落として、初期型として作ってみました。
なんとか、今月の特集に完成が間に合いました。

箱絵

工作

 下は胴体とフロート部品ですが、タミヤの金型技術は1960年代からずば抜けており、リベットや外板などのディテールも素晴らしい表現でした。 金型技術者の丁寧な仕事が光ります。
「いい仕事 してるね!」


 モーターライズが廃された後のエンジンは少ない部品で上手に複列141気筒エンジンが再現されており、シリンダヘッドは別部品化されて実感を高めていました。 エンジン前面は簡略化された表現ですが、プロペラスピナーに大部分が隠れますので、ストレートに組むので充分でしょう。

 コクピットと計器板もごく簡単な表現です。板鉛でシートベルトだけ追加しました。  計器板と機銃は艶消し黒で塗り、銀でドライブラシという昔日の雰囲気としました。


 操縦席と後席の床段差も表現されています。計器板は接着シロがほとんどないので、ショックでポロッとはずれるとやっかいなので、裏側にプラ棒で接着支えを追加しました。
 カウリングは裏から光硬化レジンで埋めておき、ザックリとやすりで落とします。カウリング上面の機銃口は丸メカを見ながら、きちんと開口しておきます。


 零観はテイルヘビーなので、主フロート前部におもりを忘れずに詰め込んでおきます。釣り用鉛おもりを工作用粘土で固定しました。



 フロートの欠点としては、主フロート支柱がV字型に一体簡略化されています。
下のように切り離して、金属線でピンを追加し、固定しました。

塗装

 複葉機のエアブラシは、マスキングが大変なので、筆塗りしました。この10年くらいは面相筆を主に使っています。
下面明灰色はMrカラーNo35を筆塗し、乾いたら、周囲を細切りしたテープで丁寧にマスキングしておきます。
 同じくMrカラー暗緑色を筆塗していきます。1回目は濃淡が目立ちますが、数回、方向を変えながら塗り重ね、塗装の淡い箇所が目立たなくなれば、完了です。

主翼前縁 黄橙色と主フロート前部の赤帯は細切りにしたテープでマスキングしておき、発色を良くするために艶消し白で下塗します。 下塗りが乾いたら、No.58 黄橙色、No.3赤を筆塗し、塗装は完了です。


 デカールはかなり古くなっているのでバラバラ事件が心配で、マイクロ リキッドデカールフィルム(デカール修復液 右写真)をさっと塗って補強しました。最近は国産の「デカールフィクサーという商品がハイキューパーツから発売されています。
 
 翼間張り線は0.5mm真鍮線を現物合わせで張りました。偵察席キャノピーは背高なので削りましたが、まだまだ削り足りなかったようです。
マイクロリキッドデカールフィルム ハイキューパーツのデカールフィクサー

完成



 タミヤの古いキットですが、完成すると バランスも良く、零観らしさに溢れています。実際に作ることで感じることも多く、 1960年代のタミヤの人達の意欲とその人知れぬ苦労にも触れることができました。温故知新 良い言葉だと思います。1960年代当時のプラモデルとしては最高水準にあったのではないでしょうか。
おそらく、今後、中国メーカーから零観の新キットが出ることがあってもこのレベルには達しないでしょう。
 ハセガワの新零観キットも良いキットでしたが、精密にスケール再現をしようとする設計者の意欲と設計結果とのギャップがありました。カウリングが3分割で歪易く、組み立てるには骨が折れる。コクピットや、上下翼支柱などにも、組みにくい部分があり、もう少し設計上の配慮があれば、組み易くなったのに惜しかった。(ニューキットレビュー参照)
 



 温故知新 これからも、古いキットを作ることで、少年時代にかなえられなかった夢をかなえつつ、プラモライフの 幅を広げていきたいと考えています。




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