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特集 架空

 逆ガル紫電と双戦と

  by 寿



 二機ともちょー昔に作った機体です。軽く十年以上は前の作品でへたすると二十年近く経つんじゃないかしら。詳しい完成年月日は不明です。ホントは「架空」の投稿に間に合わせるべく新たな機体を作ってたのですが間に合いませんでした。面目な~い。その機体は完成次第その内にってことで今回はコイツらでお茶を濁すわけであります。
 
 今の目から見ると塗装とかめちゃヘタなんだけど一度作ったものは誰かに見て欲しいと言うのはモデラーの性だよね。まったく業が深いのう。色も含めて細々とした所はちょっとアレだけど「嘘ヒコーキ」としては割と良くできたと自画自賛しております。いつかヨンパチでリベンジしたいなぁと考えているのですがそのいつかが来るのは「いつ」なのか。それはまさに神のみぞ知るといったところですな。うーん未来への予定リストは増える一方じゃ。なかなか減らんのう。




逆ガル紫電:1/72 タミヤ紫電改造



 中翼のせいで脚が長くてそれにまつわる不具合が多かった紫電。それを解消する為に低翼化したのが紫電改だけどそんなら逆ガル化するのもアリじゃね?って考えたのが始まり。なんと言っても見た目がかっちょええからね。でもふつーに考えたら空力的にも工数的にもデメリットの多い形式に変更するってのはちょびっとありえんよ。特に日本の場合は、ね。真っ当な設計者なら迷わず低翼化ですわ。
 でもいいの。ご飯とデザートは別腹と言うように現実と妄想も別腹じゃ。コッチの方がプロペラの直径も大きく出来るし四翔ペラにしたしね。がんがん回してぐんぐん進むぜ。300ノット(約時速600km)オーバーなんて屁のカッパだ!



 そもそも日本機ってペラの性能に拘らなさすぎだよ。翼型も古いし軽量化を目指す余り推進力を犠牲にしちゃってる機体がなんて多いことか。(その一方で日本機としてはでっかい雷電のペラは諸外国もびっくりの「重量級」なんですけどね)

 
 初期トラブルの多かった誉エンジンも強風後期型のまんまの火星として稼働率もある程度考慮したという妄想だけど雷電と同じエンジンなのでトラブルと無縁とは言い難いですな。戦時中当時の状況を考えれば誉って選択は決して悪いものでもなかったし。でもこれを作った時のワタクシめは火星エンジンに傾倒していたのでこんなスタイルになりますた。



そんな訳で寿的妄想機「逆ガル紫電」はポスト雷電ポスト紫電改なのであります。きゃ~逆ガル素敵!翼下のガンポッド最高!ペラもでっかくて「どうだ~」って感じっすよ。
 でもまぁホントに完成して活躍出来るかはまた別の話なんだけど。(きっと雷電以下の顛末しか出て来ないだろうナ)




双戦:1/72 ハセガワゼロ戦改造

 そもそも双戦ってのは川又千秋氏の架空戦記「ラバウル烈風空戦録」に登場したゼロ戦の双発型であります。「ラバウル~」は完結しないままフェードアウトしちゃったけれど後年「翼に日の丸」と改題補筆されて角川文庫から上中下の三巻となり出版されております。いやぁ~完結するまで長かったよ。一時期は未完のまま消え去るのかと思ってたしね。
双戦は作品の初頭で主人公が駆る「高性能戦闘機」として活躍する機体であります。凄いね、大戦劈頭に登場する二千馬力級戦闘機だよ。双発機だってーのに単発の敵戦闘機を千切っては投げ千切っては投げ。確かに爽快なんだけど「ちと無理があんじゃね?」と仄かな疑問も湧いてきたりなんかして。しかしまぁかっちょええのでこれはこれでよし。



 機体の方は21型を基本にして機首とエンジンナセルを作っております。つぶしたキットは21型ゼロ戦二機で一機は基本形、もう一機はエンジンカウルを流用してます。風防は搾り出して作ったけれどあとはただの切った貼ったの作業で終了。主脚は「東海」からパクってきちゃった。もったいね~、でもいいの。東海も別の思惑があるんだから。
 小説の中ではゼロ戦の機首とエンジンナセル部分のみが新造パーツで後は全部ゼロ戦の部品を流用して作った、とありますが日本の設計者が空冷エンジンに合わせたぶっとい胴体をまるっと使うとは思えません。なので胴体中央部からスリムにして機首は当然新造、その他も無理がありそうなので色々といじっております。



 最初は胴体や主翼もエンジンに合わせたバランスに延長したんだけれど、じつはこれが屠竜とクリソツな大きさになってしまって自分でもびっくり。あかんねこれは。これじゃ屠竜と似たり寄ったりの機体になっちゃうよ。てな訳でサイズはゼロ戦とほぼ同等として作り直しております。だからこの機体はまるっと一機分の双戦の屍の上に出来取るのよ。

 で、ここでちょびっと誉エンジンのことを。
 戦闘機と言えばエンジン、エンジンですよね。どんなに優れた設計の戦闘機でもエンジンがスカだったらスカな戦闘機にしかなりません。否、なり得ないと断言してもいいかもしんない。大戦中の日本製戦闘機を妄想すると、信奉するにしろ否定するにしろ大概誉エンジンの影がちらつくことになるのであります。



 史実上誉は戦争後期の最優先生産エンジンとなりました。日本において量産ベースに乗った唯一の二千馬力エンジンと言って良いんじゃないかしら。あとちょっとで二千馬力ってエンジンはいくつかあったけどね。試作型もたくさんあるけどどれも量産まではいってないですし。
 故障率が高いとの悪評があるけれど生産工数が栄と大差なく(むしろ川崎で作ってた栄系より少ないくらい)ブースト圧と回転数を押さえれば準二千馬力エンジンとしてそこそこ使えていたから軍部が一押ししてたのも納得いきます。そもそもハイオク仕様のエンジンに86オクタン突っ込んだらそりゃ異常燃焼おこすわな。今みたいな電子制御の燃料供給装置とかないんだし。
 中島のエンジニアは設計前に軍部へ100オクタンのガソリンを供給出来るかと問い合わせ「問題なし」と返答されたので高ブースト高回転での高出力化に踏み切ったのだとか。なので中島を責めるのはお門違いだけど、開戦直前とは言え燃料事情を平時のつもりで断言しちゃった軍関係者は見通しが甘かったと言わざるを得ないかも。やっぱね、兵站ちうものは事を起こす前から真剣に考えないと後々自分の首を絞めるということじゃね。(まぁ技術者にありがちな「暴走」があったことも否めないんだけれどね)



 そんな訳で最初は相当にスカタンなエンジンだったようです。けどそれでもどうにかこうにか扱い方のツボどころが分かってきて逐次改良を重ねたお陰で初期トラブルも解消。何とかモノに成りそうな所まで持ってきたんだけれどその頃にはもう敗戦が目の前。末期の粗製濫造も拍車をかけて結局本来の性能がほとんど出せず仕舞いでした。
 よく三菱の烈風が誉からベンチテストに使ってた自社製のハ43に換装しそこで初めて要求された性能を満たせたと言われてるけれど、プロの手で入念にセッティングされたエンジンと量産ラインに乗せられたエンジンとを同列に語るのはフェアじゃないんじゃないかなぁ。ハ43だって量産品ともなれば新型エンジンにつきものの初期トラブルに見舞われる筈で実際に運用したら誉の二の舞のよーな気がするんだけど。ハ43の元となった名機金星エンジンだって最初は不具合出まくりだったしね。



 熟成ってのは時間かかりますよ。トラブルシューティングとその解決ってのは経験と基礎工業力がもろに出ますから。農業国から工業国へと移行する過渡期の日本にはちと荷が重かったのかも。産業革命に百年乗り遅れたツケは大きいって事ですね。それが良いことなのか悪いことなのかはさておいて。 
 人でも物でも実績が全てです。どんなに優れた工業製品でもそれ単品では真価を発揮することはなく使用される情勢や状況如何でどうにでも変わってしまいます。誉エンジンが昨今でも色々と言われてしまうのも優秀な素性にも拘わらず不本意な結果しか出せなかった事実を惜しむ気持ちと、現実を見据えず背伸びし過ぎて失敗したのだと自嘲する二つの感情がせめぎ合っているからではないかと思うのです。


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