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 ミグ25RBT (ICM 1/48)

  by 寿



 お気楽にパカスカ作っているのはひじょ~に楽しいのですがやはり年に一回くらいは本腰入れて作りたくなるもんです。年一回の腕試しというかマイルストーンというかまぁそんな感じですよ。たまには全力でやんないと本気の出し方忘れちゃうしね。
 そんな訳で今年のお題はミグ25であります。この時期ともなれば静岡ホビーショウを視野に入れてってのもあるし何と言ってもデッカイしね。どど~んと押し出しのイイ機体で「どうだ~」って言いたい訳であります。結果が伴うかどうかは別としてw



 さてミグ25と言えばベレンコ中尉の亡命事件が真っ先に思い浮かぶのですがこれも若い方々には「むかしむかしあるところに」で始まる物語でしかないみたい。ソ連の消滅やベルリンの壁の崩壊はおろか「天安門事件って何ですか」と訊かれるくらいだしなぁ。
時間の流れってのは容赦ないよ。ミグ25函館強行着陸が新聞の一面を飾った朝の事は昨日のことのように思い出せるっていうのに。我ながら年を取ったもんだと思わず遠い目をしてしまうのであります。



 しかしあの頃のソビエトは恐かった。今のロシアや中国も恐いけれどそんな比じゃなかった。アメリカのプロパガンダに煽られてたってのもあるけれど「何だか良く分かんないし正体不明」ってところが怖さに拍車をかけてたからね。恐すぎて思わず恐いもの見たさに走っちゃうくらいだったから。
特にあの頃は毎日のようにミグ25の事ばっかり報道するもんだから近所のおばちゃんすら井戸端会議でミグミグ言ってた。にわかミグファンもそこいら中に居てガキんちょ同士でもどんだけミグを知っているのかどうかで仲間内のヒエラルキーが上下する時期がありましたよホントに。大人も子供も白熱してたよなぁ。色んな意味で。



 でもこの事件のお陰でハセガワからは速攻で1/72のキットが出た。出ちゃったのよ。それまでのソ連機のキットって極めて限定されてたからびっくりですよ。「マッハ3の秘密兵器(でもステンレスと真空管で出来てる)がこんなに早く!」てな感じで。
新鋭のアメリカ製ヒコーキに比べれば随分と野暮ったいテクノロジーだなと鼻先で笑うと同時に「そこがいい」と妙な燃え方もしてました。今にして思えば相当にひねくれたガキんちょで「素直にかっちょええと言っとけ」って話ですよ。色々とマスコミに毒されてもいた訳です。まぁ今も大してかわんないけれど。



 そーゆー訳であの頃の熱く滾る魂を今此所に、なのです。ICMがわたしの為にキット化してくれたミグ25を今作らずに何時作るのかーって感じですよ。コイツはケロシンと鉄臭い排気炎をまき散らす共産圏の雄。ミサイルさえも振り切ってしまうマッハ3の怪物。ピカレスクの輝きを放つ悪意の英雄なのです。
ミステリアスでデカくて強くておっそろしい存在なのです。正義の味方が求めているのは巨大な敵役なのであって愛とか平和とかじゃないのです。こーいった実に分かり易いワルイヤツなのであります。清く正しい者が倒すに相応しい悪のカリスマなのであります。善悪問わずきょーれつな個性というものは人を引き付けて止まないのであります。



 そんな訳で惹かれちゃうのは仕方がない。仕方がないんだよ。必然なんだ、うん。
 誰しもそんな体験あるよね?
 鉄のカーテンに隠された赤い星。それは危機感や畏怖と共に妖しい魅力をまとう忘れるに忘れられない存在だったのでありました。


製作の詳細

(写真1)今回作っちゃったのはコレ、ICM謹製のヨンパチミグ25。ちなみにこの機体は偵察型だけどベレンコ中尉が乗ってきたのは迎撃型のミグ25P。だもんで「え~あんだけ前振りしといてなんでソッチ?!」とか言われそうだけどいいの、R型は前から作りたかったの!
 それはそれとしてなかなか良い感じのボックスアートです。構図もシブい。暁の離陸か夕刻の帰還かどちらかだと思うけどい~感じ。そそる~製作意欲もモリモリですよ。おーし作ったるぞー。

(写真2) いつも通りコクピット周辺から。この機内色が中々に厄介な色合いで指定色どおりに塗ったらめちゃケバいんですわ。今回も下地にGSIクレオスの三菱系機内色を塗って以前ミグ21を作ったときに調合した色をオーバーコートしてます。計器盤もいい感じのモールドなんでちまちま塗り分けてこれで良し、ですわ。


(写真3) うん、まぁこんなもんじゃね?キャノピー付けたらほぼ見えないしね。

(写真4) デッカイ機体なのでプラのランディングギアじゃあちょびっと不安。ICMのプラって弾力があるのはいいんだけど妙に柔らかくって心配なんですわ。ホントはメタル製にしたかったんだけど手に入らなかったので泣く泣く真鍮線で補強。ピンバイスのキリが届く目一杯の所ダンパー付近まで穴掘って突っ込んでます。まぁフロントギアはこれで何とかなるかなぁ。


(写真5) ミグ25ってめっちゃテールヘビーなもんだから正直尻餅が恐い。無荷重で展示されている博物館の実機なんて尻餅防止のつっかえ棒があったりするしね。だもんで「これでもか」ってくらいにオモリ入れてます。これでもちょびっと心配だけど機首が長いから何とかなるべぇ。いわばシーソーとかやじろべえと一緒じゃね。

(写真6) インテークはグロスブラックを吹いた後にシルバーをぷー。勿論当然ランナーに付いたままなのはいつもの通り。ゲート部分のリタッチなんて組んだ後で充分じゃ。


(写真7) まずは機首と胴体を合体。うーんやっぱ長いね、機首。長過ぎじゃね?ま、いいけど。以前に比べればパーツの精度は随分と向上しているけれど基本ICMのキットって合いが良さそうで微妙に合わないから仮組みとすり合わせを繰り返してから接着です。パーツの厚みを余り深く考えてないところもあるしね。(まぁハセガワとかでもたまに見る)プラが柔らかいので力技が効きやすいからさしたる苦労はないけれど昔っからこうだもんよ?これってひょっとするとポリシーとかなのかなぁ~

(写真8) このキット最大の懸案事項ランディングギア。取り敢えずこの状態で補強出来そうなところは1ミリの真鍮線突き刺してます。タイヤの保持はこれでいいとしても問題は後脚そのものだよ。


(写真9) 色々考えた挙げ句見えにくい部分(「見えない」じゃないところがミソ)に延長の真鍮線を貫通させて保持することに。実機にはこんなロッド無いけれど強度には替えられないもんね。後で黒く塗っときゃわからんだろ。まったくメタルだったらこんな苦労しなくて良かったのに(ぶつぶつ)。

(写真10) 気を取り直してノズルの製作に。三つに分割されたノズルリップは繊細精巧でテンション上がりますぜ。今回ノズルや機体後部の無塗装部分はメタル系のカラーを使わずに再現するってゆーのがテーマ。だもんでまずはフラットブラックで塗った後に白っぽいグレーをぷーと吹いときます。このとき塗りツブしは厳禁じゃ。この後に地色を残しつつちまちまと塗り重ねてゆくことになるのです。



(写真11) 三重になっているアフターバーナーフラップの最外縁部は固定式とかいう記事があるけれどキチンと三段とも可動するそうです。実際駐機状態じゃ極僅かに外側へ開いているのだとか。(キットは固定のまんまだけどそれでいいと思う。動いても遠目じゃぜんぜん分かんないレベルだし)しかもそれぞれ材質が違うらしくって灼けた色があからさまに違うのよ。一番奥まったフラップなんて緑青みたいな色になってるしね。最初は緑青色の部分を再現したんだけれどどーにも悪目立ちするんで取り止め。今回は印象重視で黒っぽく塗りつぶしてます。
 一番外側と真ん中のリップはフラットブラックの下地の上にウッドブラウンとライトグレーを混ぜた色を吹いた後にクリアブルーを吹くとちょびっと緑がかった色合いに。も一度その上からウッドブラウンでドライブラシかけてます。

(写真12) アホみたいにでっかい主車輪は自重変形に加工。ま、いつもの定例業務じゃ。繊細なサイドモールドが消えちゃうけれど気にしな~い。



(写真13)機体の形が整ったら寿スタイルのスミ入れ開始。こうしてみると刺青みたい。繊細なモールドを余さす再現を目指すのです。ICMがせっかく頑張ってくれたんじゃ。手は抜けませんがな。ついでにノズル周囲を黒で塗って翼の後縁も透け防止に濃い目のグレイで塗っとく。このカミソリみたいに薄いパーツはこのキットの目玉のひとつ。じつに素晴らしい。最近のトレンドらしく色々なメーカーでこの手のぺらぺらパーツが何気なく再現されていて嬉しい限りであります。

(写真14) 白とウッドブラウンを半々で混ぜた色をパネルラインごとに塗ってまいます。ノズル付近は白っぽいグレーね。


(写真15) 取り敢えずこの段階でニュートラルグレーを平筆塗り。筆塗りムッシュむらむらじゃ(←0点:え~?!)この筆ムラが後で大事な仕事をしてくれるのよ。

(写真16)黒ベースの上に薄めたグレーを塗って更に白っぽいグレーでボカしちゃう。後はセミグロスでコートすればこんなもん。文字にすれば簡単だけどここまで来るのに色々と試行錯誤しちゃったのよ。苦労したけど金属が焼けてくすんだ色合いにはまだほど遠いのう。精進せねば~

(写真17) 機体色は古い写真じゃ一見無塗装(もしくはシルバードープ)に見えるけれどその実ガルグレーっぽい色だったりします。元はバーリーグレーらしいんだけど野外駐機している際に日に焼けちゃった感じ。だもんでこれを再現してやろうと色々試してみたんだけれど結局キットの指定色が一番良い感じだという結論になって上吹きは薄めたバーリーグレーに。ぐるっと一周回ってふりだしに戻っちゃったよ。まぁそういうこともあらあな。
 下地の筆ムラはなるべく残すように吹いてます。適度にボカせばムラさ加減が濃淡となっていー味になってくれるのよ。わたくし寿の魂が一番こもるところじゃね。全部筆でやれって言われて出来んくもないけどめっちゃ時間喰うし。時間は有限、ちうことは寿命も有限ちうことじゃからのう(逆かな?)時間は大切だよ?生きてる内にしかプラモは作れないしね。結果が似たようなもんなら便利な道具は使い倒すのが一番であります。

(写真18) 機首のアンチグレアはタイヤブラックでぺたぺたと。でも後で気が変わってグレーをたくさん混ぜたセミグロスブラックで塗り直しますた。移り気ですんまそん。だって実機のこの部分が思いの他に黒くて艶っぽいんだもん。ちょっとエッチな色合いじゃね。

(写真19)キャノピーのシール部分はレドーム色で。実機写真じゃ思いっきりピンク色だけどこれって耐熱シリコンか何かかなぁ。

(写真20) タイヤといいドロップタンクといい戦闘機とは思えぬ破格のサイズの装備品は流石ソ連、いや合理性を重んずるスラブ民族と言うべきか。デカい、デカ過ぎるよ。爆撃機の装備品かってサイズですよ。ハスラーよろしくミッションポッドだと言われても納得しそうな大きさだ。そういやミグ25って初期のB-17(尾部銃座の無いタイプ)の全長越えてるんだっけ。機体がデカいからタンクもデカい?そりゃ理屈は判るし複数のタンクぶら下げるよりは確かに合理的な判断なんだろうけどそれでもなぁ~
 ま、それはそれとして。機体の影になる部分はシャドーを落としてます。単に上塗りせず下地のみとしただけなんだけと別に良いよね。どーせ見えないし。

(写真21) 上塗りを済ませれば後はもう一気呵成に。エナメルでのスミ入れ済ませてそれを溶剤で色々アレしてデカール貼ってトップコート吹いてタイヤだのピトー管だの放電策だの小物を付けたら出来上がり。今までの長い道のりが嘘のようなあっという間のフィニッシュであります。今回は特に色で悩んだからのう。紆余曲折のあった作品にしては唐突な幕切れ感じゃ。
 が、ただ一点。コーションデカールの色合いがケバいのは納得いかないんですけどぉ~実機はインシグニアも含めてもっとシックな色合いなんですけど~ICMだけじゃなくって近隣のメーカーも似たような色合いのデカールだし~ちょっとその方面の方々の色彩感覚を疑いたくなるんですけどもぉ~

(写真22)  ひょっとして東欧やドイツ近辺やイギリスやら年間好天に恵まれない土地の方々には「ケバさは偉い」的なものがあるんでしょうかね。(太陽光薄いから濃い色ステキみたいな)何だか欧州のモデラー方の完成品を見る度にそんな思いが脳裏を過ぎったりもするのです。
 とはいえそれは些細な事じゃ。(むしろ展示会場とかじゃちょっとケバいくらいが丁度いいかもだし)完成したんだから無問題。めでたいことであります。執拗なまでに穿たれたリベットや見事なプロポーションは文句ないしね。手こずる部分もあるけれど基本良質なキットだし丁寧に作りさえすれば迫力のあるステキ肢体のミグ25が出来上がるという次第であります。作って良かったと思える瞬間だよ。完成万歳!


(写真23) ICMのキットなのでICMのロゴ貼ってみました。どーせ誰も気付かないだろーしささやかなお遊びってことで。(カジキマグロのミグ21のときもカルトグラフのロゴ貼ったけど誰も気付かなかったしね)

(写真24)裏面の方が上面よりも押し出し感あるってのもどうよ?でもソ連機なんで仕方がない。共産圏てのは地味でタフってのが彼らの望んだキャラクターだからね。目立つこと、否、贅沢や華燭は敵なのであります。

(写真25) 地味だけど良い感じに仕上がったノズル。このノズルだけでもコレを完成させた甲斐があったよ。

(写真26) 20トンの自重と14トン以上にも達する莫大な搭載燃料(自重の約75%!常識的な戦闘機はだいたい自重の半分、離陸重量の1/3くらい)を支える主脚。ある意味ミグ25の全てを体現する部分だあね。アホみたいなサイズのバルーンタイヤも不整地での運用を前提とした為なんだとか。


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Vol.139 2020 March.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
           editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー
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