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特集 1/72

HAWKER HURRICANE (HASEGAWA・AIRFIX・ARMA HOBBY1/72)

by 五六式(TYPE-56)



 今回は,”1/72”の特集に合わせて,新しめのハリケーンのキットを3つ作り比べてみました。どのキットも一長一短ですが,製作してみなければ分からないあれやこれやをまとめてみました。

<実機について>



 1935年に初飛行,1937年に運用が開始されたイギリスの戦闘機。今までのホーカー社の複葉戦闘機の構造を踏襲(同社のフューリー複葉戦闘機とハリケーンの胴体や垂直尾翼などの外観は,よく似ている。)しつつ,単葉化と引込脚の採用によって速度性能を向上させている。

 最初期のMk.Ⅰは,プロペラが固定ピッチの2翅で主翼が羽布貼り構造と,古典的な機体の特徴を残していたが,後の改良で,プロペラは,可変ピッチの3翅に,主翼は全金属製にと,近代化が進んだ。しかしながら,Mk.1の最大速度は,521km/hで,空冷エンジンを装備する一式戦闘機隼Ⅰ型よりわずかに勝っている程度であった(Mk.ⅡやMk.Ⅳは,一式戦闘機隼Ⅲ型より遅い)。

<キットについて>

●ハセガワ HAWKER HURRICANE Mk.ⅡD FOX HUNTER(1996)
 たとえて言うなら,みんな知っている近所の気立てのよいお姉さん。


 初版(1995)は,Mk.Ⅰ後期型。パーツの追加と差し替えでMk.ⅠやMk.Ⅱの各型をバリエーションキットにて再現出来るよう,共通の胴体部分にMk.ⅠやMk.Ⅱの機首を取りつける構成となっています。初版発売から四半世紀経過していますが,ハリケーンの近代的なキットの先鞭と言えるものです。

 このキットは,Mk.ⅡCのキットに40mm機関砲ポッドの部品を追加したもので,ユーザー自身が20mm砲の撤去などの加工をしてMk.ⅡD仕様に改修するようになっています。

 各所に合わせの辛いところがありますが,今回採り上げた三種のうち,一番早く飛行機の形になりました。結果として,一番組みやすいキットと言えるでしょう。


  ●AIRFIX HAWKER HURRICANE Mk.1(初版2013)
 たとえて言うなら,若々しいけれど,ちょっと脇が甘いドジっ娘。


 AIRFIXとしては,4代目のキットです。 羽布張りの主翼のMk.1を再現し,初版は,2翅プロペラの前期型を再現するものです。後に,3翅プロペラの前期型の機体のキットもデカールと箱を換えて(部品は共通なのでデカールさえ用意できればどちらも製作できます。)リリースされました。

 2翅プロペラの前期型は,後部胴体の下面にストレーキが付いていないものと付いているものとがあり,本キットでは,両者の形状の違いを再現するためのパーツを用意しています。そのため,後部胴体は3分割となっています。

 ハセガワ版に比べてコクピット内や脚庫の構造を詳細に再現しています。


  ●ARMA HOBBY HAWKER HURRICANE Mk.1trop.(2019)
 たとえて言うなら,才能があるんだけれど,ちょっと性格が”アレ”な美女。


 金属製主翼のMk.1を再現する初版(2018)のデカール替えキット。気化器の防塵フィルターを装備した機体の,塗装バリエーションが楽しめるようになっています。

 パッケージやパーツを見ると,つい,買いたくなってしまう魔性のキットです。他に,エッチングパーツや塗装マスクを加えたキットも出ています。

 ハセガワやAIRFIXのキットをよく研究した上で,組み立てやすさや解像度を向上させることを目指したキットのようです。が,・・・確かに,目指しているし,改善の跡も見られはするのですよ・・・詳しくは,次項を参照・・・涙・・・。ARMA HOBBYの社員の人たち,自分らのところのキットを組んでないやろ?

 AIRFIXと同じく,Mk.ⅠとMk.Ⅱは,別キットとなっています。


 左からハセガワ・AIRFIX・ARMA HOBBY

 同じ機種の計器盤なのにこんなに違う・・・。どの部品も位置決めは簡単ですが,セットしやすさについてはハセガワが頭1つリードしています。

※2010年初版のAZ MODELのキットも発売されていますが,入手していません。

<製作>

  ●ハセガワ HAWKER HURRICANE Mk.ⅡD FOX HUNTER


 シンプルですが,必要十分。操縦席や計器盤の合わせがびたりと決まります。

ただ,水平尾翼の取り付けが緩いのが難点です。貼りやすくて発色のよいエアロマスターのデカールが付いています。でも,塗装図に,右側面のものがありません。他のキットの塗装図を参考に迷彩パターンを描き込みました。

 機首や気化器の防塵フィルターの取り付けが悪く,削り合わせが必要です。防塵フィルターの部品の,胴体との接着面には,段差があるので均しておきます。それでも隙間があくので,接着するときに,固定するまで指で圧着し続けます。防塵フィルターを装備しない塗装図2の機体には,気化器のインテーク(部品A1)を付けなければなりませんが,組み立て説明図には記述がないので注意が必要です。

 主翼上面のパネルラインが塗装図と違っています(Mk.ⅡB以前のパネルラインが示されています。)が,キットの方が正解。Mk.ⅡCの20mm砲4門は撤去しますが,外側の20mm砲があったところには,7.7mm機銃があります。

 イギリス機の砂漠迷彩の下面色、エイザーブルーは,Mr.カラーでは,特色セットにしかありません。タミヤのアクリルにはなく,ハンブロールにはありますが,扱いや入手がやや難しく,あまり手を出したくありません。Mr.カラーの特別色とVicカラーを入手して試し塗りをし,色味を確かめましたが,実機のカラー写真の印象と異なっています。

 仕方がないので,ガン×ムカラーに箱絵の色と似た色があったので使ってみました。納得がいかない場合は,ドライブラシやウォッシングで色味を調整すればよいでしょう。

 マーキングにもよりますが,主翼下面のピトー管は,デカールのラウンデルを貼った後に取りつけるようにすることをおすすめします。ラウンデル上にピトー管の根元が来ることがあるからです。これは,イギリス機全般(ラウンデルが大きい)に言えることです。


  ●AIRFIX HAWKER HURRICANE Mk.1

 キットは,3つのタイプを作れるように部品をそろえているので,使わない部品は,早めに取り除いて部品のつけ間違いを防ぎます。

 主翼の上下部品のはめ合わせがきついのでダボを削って対処しようとしましたが,これは,悪手。はめ合わせはきついですが,これは,途中で変化する主翼の上反角を再現するために,必要な措置でした。力業とパテ盛りで無理矢理接着するのが正解。


 シートは,実機通りに内部フレームに接合するようになっていますが,接着代があまりに小さくて位置が決まりにくくなっています。仕方が無いので,接合部をコクピットを覗いたときに死角になるところでゼリー状瞬間接着剤を使って補強しています。がっちり固定していれば,後からパイロットを押し込んでも大丈夫です。


パイロットがいれば,シートベルトとかごちゃごちゃしたものは不要となります。

 脚庫につける部品B2とC1は,干渉し合いがちなのでB2を接着したら,接着剤が固まらないうちにC1を接着して,位置を調整するとよいでしょう。

 タイヤは,自重変形タイプです。取りつけ角度が決まるようにパーツの合わせが工夫されています。

 デカールは,3つのキットのうち一番貼りやすかったです。


  ●ARMA HOBBY HAWKER HURRICANE Mk.1trop.

 脚庫の箱組は,AIRFIXのキットの組みにくさ(部品が多くてぐらぐら)を解消するためにツーピースでがっちり組めるようになって・・・いません・・・涙・・・。ダボの嵌合がうまくいかず接合面が開いてしまいます。ダボは,切り取って,主翼の方をゲージにして箱組みします。


 操縦席周りは,フレームまで再現していてわくわくします。枠だけに・・・。フレームを受ける穴が小さいので小径ドリルで広げておきます。やったね!ところが,このフレームが干渉してあちこち組み立てに不都合が生じるのです。

 計器盤の下に付く三角トラスのフレーム(部品8)は,計器盤が邪魔をして取りつけられません。この部分は,組み立てたら見えなくなる部分なので干渉するステーをまるごと切除します。海外の製作動画では,何ミリかずらして接着している人がいました。

  シートは,AIRFIXのキットと同じく,位置が決まりません。AIRFIXと同様に処置します。

 散々苦労して操縦席周りを組み立てたと思ったら・・・主翼が胴体に組み込めません。主要部品だけで仮組みをしたときには,そんなことがなかったので内装の部品が干渉しているようです。仕方がないので,少しずつ干渉していると思われるフレームの下端を少しずつ切り詰めたりフロアを削ったり胴体の主翼との接合部を削ったりしてやっと主翼が接着できました。それはもう,無残なものですが,コクピットをのぞき込んでも切り詰めたところは全く見えません。次に作るときは,フロッグの古いキットみたいに脚庫をふさいで,コクピットにふたをしてパイロットの頭だけ接着してやるからな!ぷんすか。


  赤く印をつけたところは,干渉し合っているところなので様子を見ながら削りました。黄色で印をつけたところは,穴を広げないと部品(排気管とラジエーター)が取りつけられません。

 尾翼は,非常に凝った部品構成で,水平尾翼の取り付け角がピタリと決まります。でも,垂直尾翼が接着できん・・・。取り付けのためのほぞと溝の幅が合っていないからです。垂直尾翼の方の接合部を削って溝の幅と合わせてやるとびっくりするほどの精度で接着できます。

 翼端灯は,オプションの透明部品をつけることが出来ます。透明部品には,バルブの部分にクリアーレッドやクリアーグリーンを点せるようにへこみが付いています。非常に小さい部品なのでゲート跡(アンダーゲートになっています。)の加工が難しいです。今回製作した3つのキットを並べると,この部分で他のキットを大きく引き離しています。

 塗装図に示されているのは,3つともひょっとこ型の防塵フィルターの付いたタイプで部品もランナーの枠のど真ん中にしっかり鎮座しています。しかし,組み立て説明書の何処にも防塵フィルターのことが書かれていません。ちなみに,この防塵フィルター,機首下面にぴったりと吸い付くように接着できます。

  デカールは,品質はよいのですがフィルムが薄くステンシル類を貼るのならば,扱いに注意が必要です。五六式は,潔くステンシル類は省略しました。また,キット単体では,塗装図①の機体しか再現できません。②と③の機体は,国籍マークが足りないので他から調達するか手書きするか・・・汗・・・(五六式が作ったのは塗装図②の機体。デカールを貼る段階で足りないことに気づき,焦りました。足りない分は,ハセガワのMk.ⅡDの余りから調達しました。)。同じキットを二つ持っていれば,お互いの余剰分で補完し合えます。←二つ以上買えということか?

 タイヤは自重変形タイプですが,AIRFIXのように取り付け角の調整がされていませんし,説明もありません。ラジエーターの取り付け部にも部品の干渉があります。排気管の取り付け部も穴の寸法が合っていません。アンテナポールもキットのままでは差し込めません。尾輪も・・・以下略。このように,いちいち部品を組み込むたびに仮組みと調整が必要です・・・涙・・・。胴体左右や加工後の部品は驚異的な精度で接着できるのに,一体どういうこと?国産メーカーなら,テストショットのレベルでしょう。

<完成>



AIRFIXのキットの長所がよく分かります。ARMA HOBBYがそれを踏襲し,主脚の取り付けを改善しています。もうハセガワには戻れないかも・・・。プラモ創生のころ,この部分は,凹んですらいませんでした。


  ●ハセガワ HAWKER HURRICANE Mk.ⅡD FOX HUNTER
 トップコートで致命的な失敗をしたのに奇跡の復活。


装甲車両を攻撃するため,大口径の機関砲を装備しているタイプです。


ハセガワのキットは,3つのうち一番羽布貼り構造の表現を強調しています。


写真では分かりにくいですが,機首先端ののフェンスは,プロペラのピッチ変更機構から漏れたオイルを防ぐためのものだそうです。


   ●AIRFIX HAWKER HURRICANE Mk.1
 主脚の作動肢を組み込むのは至難の業。


最初期のレトロな2翅プロペラの前期型。三角錐のスピナーがいい感じです。


主翼が分厚いので速度が出ませんでしたが,生産性が高く,頑丈だったそうです。塗装のむらを減らすためにもう一層塗り重ねたかったのですが,やり過ぎるともっさりするので仕方なく断念しました。


主翼裏側の白黒の塗り分けは,味方識別のためのもの。格好いいけれど,塗装の手間は3倍です。 


  ●ARMA HOBBY HAWKER HURRICANE Mk.1trop.
 散々手間を取らせたのに,しれっと完成している・・・怒・・・。


ラウンデルの中心に赤丸が無いオーストラリア空軍の機体です。


迷彩塗装じゃないので真っ先に出来上がるはずだったのに・・・。


 V7476号機は,大戦を生き延び,時期によってRAF式の迷彩塗装,RAAF式の上面グリーンなどの多彩な塗装バリエーションがあるようです。


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