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誌上個展

スター・ウォーズの世界【番外編】
         ~最後のデス・スター物語~

by Windy Wing 2013


<スター・デストロイヤー/メガドック・イン>



初代デス・スターは自らの愚かしさを嘆きながら銀河の藻屑と消えた。しかし、その第一級戦犯たる黒兜の司令官はその責を負うどころか、このデス・スター暴発の原因を「反乱軍兵力の過小評価」という前線指揮官の戦略的失策に転嫁し、銀河皇帝に対してより強大な<デス・スターII>の建造を進言する。かくのごとく、自身の失敗を好機に変えて、むしろさらなる権力強化へと繋げるこの奸智こそは、いつの時代も支配者が絶対的に要求される基本的資質であることに変わりはない。


<デス・スターII/ホログラフィック・モニター>




一方、反乱軍総司令部ではこの(第一次)デス・スター攻略戦について、第三国の観戦武官らの見解も交えて精密な戦後検証が重ねられ、本作戦における敵要塞の爆壊と一少年の発射したプロトン魚雷とは、実際には何の因果関係もないことを完全に把握していた。しかしながら、この少年を神格化することによる一般兵士の士気高揚を企図した司令部はその公表を控え、むしろ都市伝説ともいうべきひとりの少年の行動をあたかも史実であるかのごとく喧伝したのは、後に反乱軍が公開した記録映像が示すとおりである。
それでも、上級幹部たちの間では、これら一連の経緯を知ることによって初めて、自軍の作戦前情報収集活動の拙劣さを深刻な課題として共有しえたこともまた事実である。そしてその真摯な反省は、帝国軍のエンドア衛星軌道における新たな戦闘要塞建造の報に接した際に、その設計図奪取のために展開させた部隊の規模に端的に表されている。なお、現在までのところ、この<デス・スターII>の設計図入手にまつわるボサンの諜報活動はなお最高軍機に分類され、その詳細は不明であるが、これもローグ・ワン部隊の記録同様、その全容が明らかになる日もそう遠くはないと思われる。


<反乱軍航空打撃群/ハイパー・スペース侵攻>




かくて入手された設計図を基に構築された機動要塞中核部反応炉打撃計画に従って、反乱軍は田舎貴族の特攻隊長を先頭に第二次デス・スター攻略戦に突入、ここに完勝を収めるに至る。とはいうものの、所詮は付け焼き刃の情報収集能力しかないこの寄せ集めの軍隊においては、軍属・民間人、あるいは地上支援・実攻部隊を問わず、その間でついにデータリンクという概念が発想された形跡はない。
いかに通信妨害下の作戦行動であったとはいえ、そこで「行けばなんとかなる」「彼らなら何とかしてくれる」と繰り返す呪文には戦略も何もあったものではなく、最終的には、その存在さえ踏査できていなかった土着の小熊族を道化のドロイドの作り話によって欺き、実は彼ら純朴な原住民には何の益もない戦闘に多大なる犠牲を強いることによって勝ち得た戦果であった事実は、反乱軍の正史上、いまだかつて論評されたことはない。


<デス・スターIII/残照>


  二度にわたる巨大戦闘要塞の喪失によりその勢力を大きく削がれた帝国軍は従来の大艦巨砲思想からの脱却を余儀なくされた。すなわち120km、あるいは160kmもの直径を持つ巨大要塞の単機建造計画から、直径20km程度の小型要塞<デス・スターIII>を宇宙航路惑星軌道上の要衝ごとに複数配置する、という戦略上の大転換を迫られたのである。しかしながら、皇帝と総司令官を同時に失ったその痛手は予想以上に深く、連戦連勝に沸く反乱軍が打ち出す実動部隊とサイバー攻撃隊の共同作戦「フリーフォール・リゾルブ」により、これら小型要塞群はことごとく各個撃破され、帝国軍はついに徹底的な軍縮と莫大な賠償金の支払いを約した銀河協定への調印のやむなきに至る。
この屈辱に耐えながら捲土重来を期し、かの巨大戦闘要塞の小型化において培った技術の結晶たる新型機動攻撃兵器「バッタリング・ラム・キャノン」がつかの間の春を謳歌する反乱軍を完膚なきまでに打ち砕くその日まで、我々はなお、今しばしの時を待たねばならない。


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