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誌上個展

<日本航空史> 百式司令部偵察機

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 「百式」だから、制式年はゼロ戦、ゼロ観、呑龍と同じなので、相当に小型でカッコいい飛行機だ。3年前制式の「97式司偵」時代は固定脚か引込脚かで迷う時代で、その証拠に97式艦攻の中島製1号・3号は引込脚でと三菱製2号は固定脚だが、性能差はほとんどない。それなら実績があり整備の手間がなくて、燃料タンクも置きやすい固定脚にも実用価値がある。この時代の進歩は急速だ。
今回は、旧LSの2型改造練習機を作ったのに合わせて百式司令部偵察機を選んだ。
『航空ファン』1978年5月号によれば、2型改造練習機の教官席は後方の高い席で、この特異な形は主翼の桁が胴体内を貫通していたことによる。昭和18年11月に設計開始、昭和19年4月試作完成、70機の改造完成が昭和19年6月とある。制式時期からみて昭和18年11月は遅いが、この機種をこなせるパイロットがいなくなったのだろう。2か月で70機改造終了は実に迅速だが、本当に70機も造る?
百式司令部偵察機は、相当に外観仕上げが良かったようだ。『航空ファン』1974年9月号で長谷川一郎氏は「国防館だか修遊館がかの前に置いてあった100偵などは、パテ仕上げの下地しっかり、上塗りツルツルのワックスかけの、というピカピカの芸術品のごとき飛行機」とある。百式司偵の仕上げは、刈谷正意『日本陸軍 試作機物語』(光人社、2007年)p.177 に「この塗装法は一般の方法と違い、金属仕上げ塗料の中にパテを溶解して吹き付けたもので、塗料の伸びが非常によくてワックス掛けの必要もないほど」とある。では、普通はワックスを掛けたのだろうか。4型試作機はパネルラインに沿って幅広の筋があり、これはパテの痕跡ではないかと思っている。仕上げの程度は製造時期によって違うのか、写真をみると機体によっていろいろに見える。
2型では灰色の機体が多いが、モデルアート社『モデラーズ・カラー』(昭和47年)にはダッグエッググリーンのような「乳灰青色」が紹介されており、「100式新司偵がもっとも多くこの塗装で活躍したものである」とある。当時の彩色絵葉書を紹介するが、これは単純な灰色だ。刷ってから70数年経過しているし、そもそも正確な色再現が怪しいので、「灰色ですね」くらいに理解するのが妥当かもしれない。
 長谷川一郎氏といえば、氏の作画である『世界の傑作機』旧版№130の中綴じ見開きの2型の塗装図を見てほしい。パイロットの頭上は青いガラスになっている。そう思って『世界の傑作機』の写真をみると、そんな感じに見えるものがある。長谷川一郎氏は戦中から飛行機模型を自作していた人なので色には関心があったし、戦後は沢山の方に実機の話を聞いていたので、独自情報を持っていたのかもしれない。
こう書いてくると、練習機の色解釈を含め、色だけでもサッパリ分からない。結論は簡単で、だれも分からないのならば、むしろ安心して自分の信じる色を塗ればよいのではないか…というところで、さらに色の情報。



  彩色絵葉書1:カラー写真ではないので色再現は不充分と承知の上で見てほしい。機体は灰色、スピンナーとホイールも灰色。アンテナ柱は黒。「機体が灰色なんて当然」と思ってはいけない。オレンジが定説のゼロ戦の練習機でも、灰色説は古くからある。今回のテーマ、百式司偵2型改造練習機のオレンジ色だって、情報はどこからきたのか。


  彩色絵葉書2:胴体に日の丸がないタイプ。胴体の黒帯は怪しい色再現。アンテナ柱の位置に注目。


 写真1:これはよく見る写真。掲載写真では区別できないかもしれないが、頂部のアンテナ柱は流線型のカバーよりもやや明るく感じる。単に写り方の差なのか違う色なのか、判然としない。垂直尾翼の低い位置と水平尾翼の前下方には、注意書きが見える。翼端灯はカバーが着色されている


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