Home  > キ61Ⅱ改 三式戦闘機「飛燕」(水滴風防型)(ソリッドモデル 1/48)> フルスクラッチビルド & ソリッドモデル>2021年2月号

フルスクラッチビルド & ソリッドモデルの製作

キ61Ⅱ改 三式戦闘機「飛燕」(水滴風防型)
(ソリッドモデル 1/48)

  by 小山新一


(1) 図面と資料

 プラモ創成期、飛燕のプラモデルは、圧倒的に2型改が多かった(ミドリの1/28 走る飛燕をのぞく)。日本に唯一残っていた実機が2型改であったためであろう。マルサンの1/50と1/100、ニチモの1/120と1/70タミヤの1/50等々。
 この流れを変えたのが、オオタキの1/48とグンゼ・レベルの1/32であった。以降、新規開発されるプラモデルは、みな1型となった。1型の方が、塗装のバリエーションが圧倒的に豊富なことが、理由だと思う。派手なマーキングが多く、箱がえデカール替えでの売り上げ増加が見込めるわけだから。この「流れは1型」を、私は「穴」ととらえた。木を削って、苦労して1型を作っても、今どきのハセガワ、タミヤの飛燕に、細部や表面モールドでかなわない。だが、2型なら、1/72で幾つかのキットはあるが(アオシマ、ファインモールドなど)、1/48はない。しかも手元にはモデルアート社刊行の「飛燕修復の記録」がある。かくて私は、私にゴーサインを出したのであった。
 図面もこの書に収められた1/48の5面図をコピーして使った。ほかに、手持ちの「世傑」など、数種の資料・図面を参考にした。

(2) 制作

 いつもの通り、主要パーツの木取りから始める。胴体、主翼の左右、水平尾翼の左右、垂直尾翼、キャノピー(木型)ほかである。写真は、それらパーツを機体配置の通りに並べ、重ねてみたが、子供の積み木のようだ。丸棒(径3cm)は、スピナーとタイヤになる。
 並行して、小物を作るのもいつもの通り。計器盤、照準器、各種レバーなどである。キ-64のときも思ったが、ハセガワかタミヤの1型のキットの、コクピット内パーツぶんのランナーを、模型店経由で取りよせてもらえばラクなのに・・・。しかしながら、ここは「100パーセントてづくり」にこだわり、がまんする。

主要なパーツ(木取)


削り出した機体の全容


   記し忘れたが、胴体は今回も朴材が手に入らず、わが家のリフォーム時に大工さんにもらったヒノキの角材を用いた。胴体を削るときは、したがってヒノキのいい香りがしたのも、前作98直協と同様だった。削っているうちに、ファスト・バックの胴体の高さが足りなくなっていることに気付く。部材を継いでも良かったが、ならばと最後期の水滴風防のタイプに方針を変更する。このあたり、手作りのソリッドゆえの気楽さか。もっともこのため他の資料から、水滴風防タイプの図面を探したりする手間がかかってしまった。
 その風防は、木型に瞬間接着剤をしみ込ませ、ペーパーとコンパウンドでピカピカに磨きあげ、プレスする。今回は0,5㎜厚の塩ビ板を使った。

(3) 仕上げと塗装

 形になった機体全体を、800⇒1000⇒1200と水ペーパーの番数をあげて磨いていく。細かいキズはこの段階で、パテなどで修正する。磨き終わったらクレオスの缶入りサフェーサーを、2~3回にわけて吹く。仕上がりに問題がなければ、スジボリに入る。あせらず少しずつ進めるが、目立たぬ機体下面から始めるのがコツか。
 仕上げ塗装とマーキングは、作っている間もいろいろ考えて悩んだ。2型後期の場合、写真で確認できるのは56戦隊の、上面ダーク・グリーン(または茶褐色の説あり)、下面銀しかない。これも悪くはなかったが、吹きつけでやるとマスキングなどめんどくさい。そこで、前記モデルアート刊「飛燕修復の記録」の、ファスト・バック修復機が全面無塗装銀で、尾翼に試作ナンバーを示す17を記しているのにならい、試作19号機とした。架空といえばそうだが、ありそうな塗装であり、ナンバーでないかと思っている。
 この塗装にしたおかげで、塗装はすべてクレオスの缶スプレーで出来た。機体の銀、日の丸の赤、機首上面のつや消し黒、そして今回模型店で見つけた「味方識別色オレンジ・イエロー」である。この色は筆塗りだとムラになり易いので、大いに助かった。
 それでもマスキングは大変であった。エア・ブラシ派の人たちは、こんなめんどくさい作業をよくもやっているものだと、改めて感心する。

制作途中の冷却器


脚柱とタイヤ、尾輪


クリアラッカーを塗った


サフェーサー仕上げの状態

(4)完成

  かくて、キ-61Ⅱ改の水滴風防装備機(にしか見えない)モデルが完成した。昨年8月7日に木取り、今年1月3日完成だから5か月弱。前作の98直協より一か月ほど長くかかったのは、ファスト・バックからティア・ドロップタイプの風防装備に変更したこと、さらに有名機ゆえ、モデラー諸氏のアラさがしを意識したためである。といいつつ、デッチ上げで工作した箇所もあちこちあるのだが。
 完成度はともかく、「100パーセント手作り」を今回もつらぬいたことを、私は少しばかり誇りに思っている。・・・実は尾翼の試作機番号「19」は、出来合いのナンバー・デカールを使っている(手描きがめんどくさくなって、つい)。したがって、99パーセントの手作りと訂正するべきであろう。

 (注)完成写真に登場するフィギュアは、モデル・カステンやタミヤ、ファインモールド製の寄せあつめです。











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