Home  > Mitsubishi T-2 特別仕様機(Hasegawa 1/72)>特集 陸海空自衛隊>2021年12月号

特集 陸海空自衛隊

Mitsubishi T-2 特別仕様機(Hasegawa 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)

MITSUBISHI T-2 JASDF (1/72) Hasegawa Box Artより


 航空自衛隊の超音速高等練習機T-2との初めての出会いは丁度半世紀前の1971年10月、小牧で開催された国際航空宇宙ショーでのことでした。まだロールアウトして間もない機体は展示されるでもなく、ハンガーの中に置かれていました。金属の地肌に機首と主翼、そして垂直尾翼がインターナショナルオレンジで塗られただけの姿でしたが、とてもスマートな機体に映ったのを憶えています。この時はまだXT-2という名称でしたが、その後正式採用され、部隊配備、そしてブルーインパルスにも採用され、多くの人に親しまれました。誕生して半世紀が経った今、T-2もすでに退役し、過去の機体となってしまったのですが、F-1支援戦闘機にも発展したこの純国産機は、国産初の超音速機として日本の航空史上に残る機体になったと言えるでしょう。今回はFS-T2改(後のF-1)の試作機に改修されたT-2特別仕様機をハセガワの1/72スケールキットで製作してみました。 

実機紹介

 航空自衛隊の超音速ジェット練習機XT-2の試作1号機が初飛行に成功したのは、1971年7月20日のことでした。導入にあたっては輸入案も持ち上がりましたが、当時の防衛庁長官の一言で国産開発に決定された経緯があります。開発にあたり防衛庁(現防衛省)からは「戦闘機への転用が可能であること」という要求があったため、練習機としては珍しく当初から火器管制装置(FCS)やM61バルカン砲の搭載が計画されています。またエンジンについては最終的に英仏共同開発のジャギュア用に開発されたRRチュルボメカTF40アドーア双発に決定しました。

試作機は4機が製造され、三菱重工での社内試験の後防衛庁に納入され、岐阜の実験航空隊(現航空実験団)にて各種試験が約2年間にわたり実施されました。試験は非常に順調に推移し、11月19日の30回目の飛行で音速を突破し(M1.03を記録)、超音速機の仲間入りを果たしたのです。そして昭和48年8月29日付でT-2と制式化され、翌年の昭和49年7月28日には部隊使用承認が下り、昭和50年3月末付で松島基地の第4航空団傘下に臨時T-2訓練隊が発足し、部隊での運用が動き出しました。

 一方前述のとおり、T-2は計画当初から次期支援戦闘機(FS-X)への転用の路線が敷かれていたことから4次防計画でFS-T2改の名称で68機の導入が計画されていました。このため、昭和47年にはFS-T2改の基本要目が決定され、翌48年から細部設計が始まったのです。そしてT-2量産2号機(通算6号機:59-5106)と3号機(通算7号機:59-5107))が試験用のフライトベッド機に改修されました。この2機の機体はT-2特別仕様機と呼ばれ、機体形状はT-2と基本的には同じですが、後席の座席などは取り外され計測装置が設置され、キャノピー内側には金属カバーが設けられました。また垂直尾翼先端には円筒状の後方警戒レーダ装置(RHAWS)が取り付けられました。さらに単座機になったことから、前席コクピットの計器レイアウトも変更されています。これらの2機は、7号機が昭和50年6月3日に、また6号機が6月7日に初飛行し、航空実験団へ引き渡されました。その後、6号機が飛行特性や飛行性能の試験評価、7号機が火器管制装置の機能・性能や射爆撃性能の試験評価に供せられました。この2機による技術・実用試験の結果、昭和51年11月12日に部隊使用承認が下り、FS-T2改が「F-1」の制式名称を与えられたのです。

T-2特別仕様機 Hasegawa (1/72)

製作

 手元に古い1/72のキットが残っていたので何とかしようと仮組を始めてみると、案外精度よく部品が組み上がるので完成させることにしました。しかしデカールは使えそうにないので、デカールだけハセガワさんに部品請求し新しいものを取り寄せました。新しいデカールは再版されたキットのもので、手元のキットのものと少し異なるようですが、何とかT-2特別仕様機にはできそうです。折角なので、細かなアクセスドアなどは無視し、パネルラインを彫り直すことにしました。胴体、主翼、水平尾翼の順に筋彫りを進めていきました。筋彫りが終わると、彫った部分のかえりを#600程度のサンドペーパで落とし、その後#1000程度で面を平滑にしていきます。最後に部品のフィットチェックを行います。ここまでが事前の作業です。それほど大きなキットではないので、組み立ててからの塗装を基本とします。そのため胴体内へ組み込む部品は塗装まで済ませ、組み込んだ後全体塗装に進むことにしました。以下、各部の工作過程について紹介します。

1. コクピット
 コクピットはバスタブ式の簡単な作りで前後席の計器盤とコントロールスティックを取り付けるだけです。T-2特別仕様機は前席だけで、後席は計器も無いのですが詳細な構造が分からないため、作品ではコクピット内をエアークラフト・グレイで塗って、主計器盤、サイドコンソールともデカールを貼ってしまいました。(写真1)写真を撮り忘れてしまったのですが、エジェクションシートにはシートベルトだけ追加し、塗装後組み込みました。
(写真1) コクピット


2. 胴体主翼
 (写真1)のコクピットと内部を白で塗装した前脚収納部を組み込んで胴体左右のパーツを接合します。さらに主翼と左右のインテイクを取り付けますが、インテイクは取り付け前に内側を白で塗装しておきます。次に4つのクリアパーツから成るウィンドシールドとキャノピーを両面テープで機体に接着しますが、これらも取り付け前にプレキシガラス部をマスキングし、ウィンドシールドは黒、キャノピー部はエアークラフト・グレイに塗っておきます。この4分割されたクリアパーツのフィット具合は、この時代のキットとしては頗る良好でした。これで塗装前の作業は完了です。(写真2)  

(写真2) 機体の塗装準備を終えた状態


またこの作業中にキットを落として、ピトー管を折ってしまったので金属パイプと金属棒で作り直し、機首部を整えました。(写真3)
(写真3)  再製作したピトー管

 次に胴体・主翼部の塗装です。まず、ジェット排気口周辺の耐熱金属部の金属塗装を焼鉄色+銀色の混合塗料で行いました。乾燥後その部分をマスキングし、機体全体をライトガルグレー(FS16440)で塗ります。次にマスキングして機首部、主翼ストレーキ部、垂直尾翼をインターナショナルオレンジ(Mr.ColorのC79、シャインレッド)で塗装し、主翼端と垂直尾翼端を蛍光オレンジ(Mr.ColorのC173)で塗りました。さらにマスキングして機首レドームと垂直尾翼先端の後方レーダ警戒装置のレドームをセミグロスブラックで、またウィンドシールドと機首上面の防眩部を艶消しブラックで塗装、最後に主脚とエアーブレーキの各収納部を白で塗装しました。(写真4~6)

(写真4) 機体の塗装(1)


(写真5) 機体の塗装(2)


(写真6) 機体の塗装(3)


3. 水平尾翼
 水平尾翼は筋彫りも終えているのであとは塗装だけです。水平尾翼は翼の中心線から前半が耐熱金属色、後半が白色、耐熱金属部の中央部にアルミの地肌、翼端に蛍光オレンジといった配色となっており、小さな翼ですがマスキングしながらコツコツ塗っていきます。(写真7)が塗装を終えた水平尾翼です。 

(写真7)水平尾翼


4. その他パーツ
 主なパーツを紹介しておきます。(写真8)が前脚、(写真9)が主脚(左)です。主脚柱にはランディングライトがモールドされていますが、ライトの部分をバイスで削り取り、内部をクロームシルバーで塗装してウェーブのH・アイズ3ミニのクリアパーツを埋め込みました。 

(写真8) 前脚

(写真9) 主脚(左)

 (写真10)が排気ノズル。それなりにモールドされています。(写真11)が機体に取り付ける直前、プレキシガラス部のマスキングを外したウィンドシールドとキャノピーです。右端に写っているのは、後席キャノピーの内側に取り付ける金属カバーです。

(写真10) 排気ノズル 
(写真11) キャノピーとウィンドシールド


5. 搭載兵装
 キットに入っていたXAMS-1とAIM-9Bサイドワインダーを搭載することにしたものの、どちらもあまり出来が良くなく整形に時間を要しました。XASM-1はインターナショナルオレンジと黄橙で塗分け、ブルーのラインを入れました。レドームの色は浜松基地広報館に展示されていた色を思い出し、それらしいオリーブドラブを塗って誤魔化しています。AIM-9Bは訓練弾の色が分からず、入間基地で目にしたF-104Jが搭載していた訓練弾の配色にしました。本当にこんな塗装のAIM-9Bを搭載したという確証はありません。
(写真12)がXASM-1、(写真13)がAIM-9Bの訓練弾です。

(写真12) XASM-1
(写真13) AIM-9B訓練弾

6. デカール貼りと仕上げ
 新しいデカールはいいですね。スムーズに貼ることができました。(写真14)
但し、エンジンタービン線の貼り付けには少し手間取りました。その後艶消し塗装部だけをマスキングし、機体全体に半艶のクリアーで保護塗装を行い、軽く墨を入れました。最後に脚や脚カバー、エアーブレーキ、ウィンドシールド、キャノピー、そして兵装類を取り付ければ完成です。しかし最後にミスが見つかったのです。最初に部品のフィットチェックをしたと書きましたが、1箇所だけ抜けていました。下面から見た(完成写真19)で分かるように主脚カバーが少し胴体から浮いてしまいました。前脚扉がぴったり合ったので手抜きをしたのかもしれません。T-2/F1の脚カバーは地上では閉じているので胴体にピッタリ嵌らなければなりません。機会を見て修正したいと思っています。 

(写真14) デカールを貼り終えた状態


 そして(写真15~19)が完成機の写真です。古いキットですが基本形状が良く出来ているので、完成した形は満足のいくものでした。また部品点数が少ないため形にするには時間がかからず、最近のキットには無いストレスフリーでの製作を楽しむことができたようです。但し、塗装には思った以上に時間を要してしまいました。

(写真15)  完成したT-2特別仕様機


(写真16)  完成したT-2特別仕様機


(写真17)  完成したT-2特別仕様機


(写真18)  完成したT-2特別仕様機


(写真19)  完成したT-2特別仕様機


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