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特集 ハセガワ

川西 E7K2 九四式二号水上偵察機
(Hasegawa Gartex 1/72)

by 大山 盛幹



 Hasegawaの九四式一号水上偵察機のキットは1970年に発売されて以来、デカール替えやカタパルトとのセットで現在まで販売されている息の長いキットです。今回の九四式二号水上偵察機は九四式一号水上偵察機のパーツを利用しGartexブランドで1994年に発売されたもので、現在でも全スケールを通して九四式二号水上偵察機の唯一のキットです(他メーカーから発売の予定はあるようですが)。



 九四式号水上偵察機は川西航空機の自社設計による初の制式軍用機で、1934年(昭和9年)に制式採用された日本海軍の水上機です。当時の同種の機体と比べて抜群に航続力・安定性・操縦性に優れており、それまでの水偵の後継機なっただけでなく、夜偵の任務もこなすことができ、1935年(昭和10年)から太平洋戦争末期まで長きに二わたって運用されました。生産は1934年(昭和9年)~1940年(昭和15年)にかけて、川西航空機が各型473機、日本飛行機で57機生産され、合わせて530機が生産されました。初期の機体は広廠九一式水冷エンジンを搭載していましたが、1938年(昭和13年)に性能向上のため三菱瑞星空冷エンジンに換装した機体が作られました。この改造により実用性はさらに向上したため、1938年(昭和13年)に九四式二号水上偵察機(E7K2)として制式採用され、これに伴い従来の機体は九四式一号水上偵察機(E7K1)となりました。九四式水偵は1935年(昭和10年)から巡洋艦や水上機母艦の主力搭載機となった他、各地の基地にも配備され、偵察・船団護衛などに活躍しました。太平洋戦争開戦時にはさすがに旧式化していましたが、後継機の零式水偵が十分に行きわたらず基地航空隊では相当数が使用されていました。戦争後半にはさすがに偵察任務からは退いたものの、哨戒や船団護衛・連絡などで終戦まで利用されました。末期には香川県の詫間航空隊からの琴平水心隊をはじめとして特攻機として利用された機体もありました。



 九四式一号水上偵察機のキット発売当時、モデルアートに一号水偵を二号水偵に改造する記事が掲載されており、これを参考に二号水偵を製作したことを記憶しております(中学3年生の時でした)。Hasegawa Gartexのキットはレジン使用のため万人向けとは言えませんが、記事のように改造しなくとも二号水偵を作ることが出ることはうれしいことです。さて、このキットは、カウリングを含む胴体がレジン、エンジン、プロペラ、消炎排気管そしてフロート支柱等がメタル、風防が塩ビで、翼、尾翼、フロート等は一号水偵のプラパーツを使用するようになっています。



 さて、製作ですが、素材がレジン、メタル、プラですので、接着は瞬間接着剤を使用します。このため入念な仮組や摺り合わせが必須です。カウリング直後の胴体断面が角張過ぎている感じですが、修正が難しいため、手を加えていません。通信員席直後のアンテナカバーはプラ板積層から削り出し、機銃はFinemoldsのメタルパーツに置き換えました。複葉機製作の時にネックとなるのが、張線と木目の塗装だと思います。作例の張線は#60のナイロンミシン糸を使用し、一番安直な貫通式で取り付けました。貫通式は上下主翼の張線取り付け箇所を0.3㎜のドリルで穴を開けておき、そこにミシン糸を通して固定する方法です。当然、上翼下面、下翼上面は先に塗装しておき、上翼上面、下翼下面は、ミシン糸を伸ばしランナーのくさびで固定し、穴を整形した後に塗装します。



 次に木目の塗装ですが、最近は木目用のテンプレートやデカールが発売されていますし、色鉛筆で木目を書く等の方法もあります。木製プロペラは木材積層からの削り出しが多いのですが、作例では一枚板の削り出しをイメージして塗装しました。その方法は、まず、プロペラ全面をオレンジで塗装し、その上にレッドブラウンをかすれるようにおいていきます。完全に乾いたのちにエナメル系のフラットブラックでウォッシングします。こうすると、落ち着いた木材の雰囲気になります。
 展示台のカタパルトですが、Hasegawaからもカタパルトのキットが発売されておりますが、Fujimiの「呉式二号五型射出機」のキットの方が新しく押し出しピン跡があまり目立たないため、カタパルト本体はFujimiを、台座は甲板の雰囲気がよかったのでHasegawaを使用しました。



 デカールは、キット付属の物を使用しました。塗装は、1939年(昭和14年)水上機母艦「千代田」艦載機です。
資料は、航空情報別冊「太平洋戦争 日本海軍機(1972年)」、丸メカニック№36「九四式号水上偵察機(1982年)」、世界の傑作機 №47「日本海軍水上偵察(1994年)」、そしてモデルアート臨時増刊№565「日本海軍水上機(2000年)」を使用しました。


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