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P47D サンダーボルト(レベル 1/32)
by 小山新一
(実機について)
日米で大戦後期に実用化にこぎつけた、2000馬力級空冷エンジンの代表格は、わが中島の誉(ハ45)とP&W R2800であることは、異存のないところだろう。これらを搭載した戦闘機の代表として、中島疾風と、P47サンダーボルトをあげるのも、妥当な選択だと思う。
出現時、わが疾風はいっとき米軍機と対等以上の性能をほこったが、エンジンの不調による稼働率の低さなどに悩まされた。誉エンジンのトラブルは、終戦まで解決できぬままであった。
ひきかえ、P&W R2800 とP47はどうであったか。大直径の大らかな設計のエンジンなどとやゆされながら、そのおかげで無理がなく、誉が悩まされた多くのトラブルとは無縁であった。リパブリック社の設計陣は、この信頼性の高い大直径のエンジンに合わせ、当時の常識では考えられない、大型の戦闘機を設計、実用化にこぎつけた。自重で比較すると、P47D-25 4.5トン、疾風2.7トンである。その上にP47は初めから排気タービンを装備し、すぐれた高々度性能を与えられていた。このあたり、内燃機関を発明し、それを使いこなしてきた西洋の工業技術の伝統、そして裾野の広さを感じざるを得ない。
前方からみた右側面
あんなダンプトラックのような、図体の大きい戦闘機が使い物になるのかとは、わが日本の戦闘機パイロットからでた、嘲笑にも似た批評であったが、この大型の機体が不得手なのは、ドッグ・ファイトのみ。それは避ければいいし、一撃離脱に徹した戦法で向かってこられれば、恐るべき敵となった。
燃料タンクもコクピットも、十分な防弾装置で堅固によろわれた本機は、未帰還機が少ない戦闘機として、パイロットからの信頼があつかったという。
後方からみた左側面
(模型の製作)
なぜ、レベルの1/32なのか。在庫処理などではなくて、他社製品にはない魅力のためだ。それは、機体全体にびっしりとモールドされた凸リベットにほかならない。
実際のところ、実機の写真をみると胴体も主翼も、リベットは殆ど目立たない。前期のレイザー・バックに多かった、オリーブドラブとニュートラル・グレーの迷彩のせいかといえば、そうではない。後期の無塗装銀にして、そうなのだ。だから、レベルの凸リベットはデフォルメになるのだが、これが、たくましいP47にぴったりだと思うのは、私ばかりではあるまい。
リベットが強調されるよう、青い縮緬の上で
1970年代のキットのこととて、合わせの悪いところもあるし、コクピット内など、再現度が物足りない部分もある。それらを、修正できるところは修正し、ムリなところはあっさりとオミットしつつ組む。そうやって組み上げたP47Dであるが、名門レベルの底力というべきだろう、個性的で迫力ある完成形をみせてくれる。
ボックスは「スミソニアン」のタイトルが入った、完成写真を使ったもの。デカールは黄ばみもなく、きれいだったので使ってみた。軟化剤の助けを借り、何とか貼れた(カウリングの黄と黒は筆塗り)。ただ国籍マークは、迫力の凸リベットのおかげで、完全密着とまではいかなかった。
ボックス
パイロットはあまりできがよくないが、機体の大きさを示すために、搭乗してもらった。
あと1キット、尾部が白と赤に塗られた、派手な塗装のオリジナル・ボックスも所持しているが、こちらはデカールが黄ばんで使えない。そのうち、何とか完成させたいとは思っている。
コクピット周辺のアップ
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