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Big キット作り倒し (第1回)

 Fw190D-9  (ハセガワ 1/32)

田口 博通 Hiromichi Taguchi


実機について

 フォッケウルフFw190D-9は中高度戦闘機であったFw-190Aシリーズの空冷エンジンから 液冷ユモ213A-1エンジンに換装し、高高度性能を向上した戦闘機です。これにより、高度6000m以上でもP-51ムスタングに対抗できるようになりました。 D-9の初期量産300機はF,Gシリーズと同じフラットなキャノピーを装備、後期型はガーランドハウベと呼ばれる膨らみを増したキャノピーを装備しています。最後期型は木製の大型垂直尾翼のものになっています。

キットの印象

 第1回で取り上げるのは ハセガワ1/32 Fw-190D9です。
 1/32を簡単に組めるコンセプトで設計されたキットだけあって、パーツ点数が少なく、表面はリベットもなく、凹パネルラインだけのあっさりキットです。 部品の合いは良く、1/32といえども、1週間でストレスなく組むこともできるでしょう。

 今回リベットを全面に打ち込みましたが、それでも2週間で完成しました。まさに新時代の楽キャラ32キットです。
 昔のビッグキットや最近のトラペ32はエンジンが内臓されているのが定番で、それも楽しみの一つでしたが、このキットはシンプルで、液冷エンジンJumo213は内臓されていません。
 しかし、エンジン補機部が再現されていて、主脚収容部裏側からのぞきこめるようになっています。マニアぽいというか、ある意味 ヘン○○的ではありますが・・。
キャノピーはフラットなタイプとガーランドハウベの両方が入っていて、塗装により選択可能となっています。

付属マーキングは作例では地味なものを選びましたが、別売りデカールがイーグルカルなどから発売されています。
32を ずらっとならべて派手に楽しみたいというのは、以前では 見果てぬ夢でしたが、このような楽なキットが発売されるとそれも夢ではなくなります。  それでは製作に入ってゆきましょう。

修正点と追加工作

 よくできたキットでも プラ成型の限界もあり、ここを修正もしくは追加工作すれば という箇所がいくつかあるもの。特にビッグキットではプラの強度では持たない部分があり、そのような箇所を金属線などであらかじめ補強しておきます。

(1) 垂直尾翼上アンテナ柱
 プラで出来ているため、製作の途中で折ったりして 後で泣きを見ますので、3mm幅くらいの金属板で作り直します。(写真1)
 3mm幅0.5mm厚くらいの金属板を鉄道模型店や東急ハンズなどで探します。

 具体的な方法は、胴体貼り合わせ前に金属板の幅に合わせて、垂直尾翼裏側のアンテナ支柱部のプラスチックを細いやすりで溝状に掘り込んでおきます。
金属板には 先端にドリルで0.5mmの孔を開け、それからアンテナ形状に削りだします。垂直尾翼に埋め込む部分は強度を保つため、20mmくらいの長さをとっておきます。接着は、瞬間接着剤を使います。
(写真1)アンテナ 
(先端に孔を開け、形状を削りだす途中のもの)


(2) カウルフラップ
 カウルフラップが開いた部品を選択する場合は プラ成型の限界もあり、縁が若干厚いので、裏側からカウルフラップ後縁を薄く削りましょう。目立たないところですが、後で結構気になる箇所です。

(3)エルロンタブ、エレベータータブ
主翼後縁を成形するのに邪魔になるし、強度上の問題もあるので、一度削り落とし、プラ板か薄い金属板で作り直し、最終段階で接着します。
(写真2)カウルフラップ部分


(4)主脚
 カバーの形状はいいので、縁を削ってもっと薄くします。
また、脚ブレーキパイプは金属線とパイプで作ります。
主脚は胴体に角度を持って取り付くようになっています。製作中に接合部の断面から折れ、後で1mmシンチュウ線で修理する羽目になりました。この胴体との接合部には最初から金属線を埋め込むとよいでしょう。

(写真3) ブレーキパイプ
(写真4)主脚


(5) エンジン補機部
主脚収容部のエンジン補機部のカバーがはずれていて見えるという設定になっており、補機の部品がついています。 下面からはちらっと見える程度なので、ていねいに塗りわければ十分だと思います。
資料を元に、パイピングを施してもいいでしょうが、完成が遠くなるのでほどほどに。

(6) 機銃、ループアンテナ、ピトー管の金属化
 プラスチックでは弱かったり、太すぎる部品は 強度とシャープさを兼ねて、作り直しましょう。

 機銃はキットの部品を参考に、しんちゅうパイプを組み合わせて作り直します。脚収容部の中でもよく見えます。

また、ループアンテナは0.3mm径洋白線を丸めます。

 ピトー管は しんちゅうパイプと0.5mm径洋白線を組みあわせて作ります。
(写真5) 主脚収容部とチラッと見えるエンジン補機部分

リベット追加

 リベットうちはサフェーサーを塗装した後の方がやりやすいので 全面を1000番のサフェーサーで塗装し、十分換装させた後、リベットうちを行います。
 図面を見ながら、鉛筆でリベットラインを下書きします。
透明プラ板で長さ10cmくらいのテンプレートを作っておくとやりやすいでしょう。この下書き線の上にリベットを打ってゆきます。
最近使っている道具ですが、 左から 「カルコ」 「リベットルーレット」「ナナコ」です。


カルコは ホームセンターで購入しました。ピンの材質ができるだけ硬いものの方が使いやすいようです。1本200円程度。

リベットルーレットは3本組で売っていますが、一番最小のピッチのものが使いやすいようです。

ナナコは 通販で購入したもの。先がへこんでいて、○リベットを打つことができます。径が違うものが12本組で元々は彫金用の道具とのことです。
リベットルーレット


 ナナコ


(写真6) リベットラインを追加した主翼下面 (黒い部分)

塗装

 塗装は、パネルラインとパネル部で微妙なグラディエーション表現をするために まず、パネルラインとリベットラインの上を 暗めのダークグレーで先に吹き付けておきます。そして、このダークグレー部分を少し残すように パネルの中に 機体色をエアブラシで吹いてゆきます。
下面のRLM76ライトブルーは Mrカラー特色の117番を使いました。
パネルラインのダークグレー部を少し残すように パネルの中をエアブラシで吹いてゆきますとグラディエーションがつきます。最後に全面に薄く同色を吹きつけ、グラディエーションをなじませると、上品になります。

(写真7) 翼下面

(写真8)胴体下面 


(写真9) パネルラインにグラディエーションがついた 下面

上面のモットリング塗装

 RLM82 ライトグリーンはグンゼ特色122番を、また RLM83 ダークグリーンは特色の123番を使っています。
今回は主翼上面と胴体上面をフリーハンドでエアブラシで塗り分けました。
主翼を吹く時には胴体付け根にどうしても塗料のエアがまわって、塗料が胴体についてしまいますので、付け根辺りをマスキングテープでカバーしておきます。
そして薄い色、濃い色の順で吹いてゆきます。
胴体上面も同様です。

胴体側面のモットリングは やはりこの2色を使ってエアブラシで吹いてゆきます。
先にライトグリーンのモットリングを吹きますが、一つの斑点をその大きさのままいきなり吹くのではなく、エアブラシを絞って、小さい斑点の集合として吹くほうがやりやすいようです。
具体的には、エア圧を絞って、ごく小さい斑点を 5つか6つ吹いて、一つの斑点にします。すると、大きさや形を自由にコントロールできます。
そのライトグリーンの上に重なるように 薄く、ダークグリーンで小さい斑点をつけて行きます。
斑点が大きくなりすぎた場合はあわてず、後で 下地のライトグレーをからませるように吹いて修正します。結果的にいい按配になればいいので、気楽にやってみましょう。

 3日くらいしっかり乾燥させた後、油彩のローアンバーを薄くしてスミイレをしておきましょう。エルロンなどの可動部には濃い目で流します。



デカール

 Mr.マークセッターを使うと キットデカールでも 非常によくなじんでくれるようで、お気に入りで使っています。
デカールの周りの透明部は乾燥後 できるだけカミソリで切り取っておきましょう。念のためにマークソフターで密着させます。
 その後、デカールの保護のため 全面にフラットクリアを吹き付けておきます。

小物取り付け

 主脚は写真を見ながら取り付け角度に注意しながら接着します。主翼下アンテナ、ループアンテナなどを慎重にとりつけます。
プロペラはブラックグリーンに塗装、排気炎の汚れはパステルを使いました。

完成

 翼40cm近い完成の姿はさすが迫力があり プロポーションもよく、脚をふんばった姿には なんともいえない凛とした佇まいがあります。 グリーン2色の迷彩とモットリングがあいまって、誰にでも素晴らしい完成品が楽しめますので、ぜひトライしてみてください。




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Vol.1 2009 Feb.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
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