Home > グラビア >   米海軍現用機シリーズ No.10  マクダナル ダグラス F-4J  ファントム (エッシー 1/72)

マクダナル ダグラス F-4J  ファントム (エッシー 1/72)   

by 厚木の助さん        。



 厚木の助でございます。プラモ展示会が相次いで開催される秋になりましたが、皆様におかれましては いかがお過ごしでしょうか。
今月は 米海軍戦闘機の真打ち登場 ファントムでございます。 全ての模型誌で語りつくされた感のあるファントムでありますが、主役中の主役ともなりますと 避けて通るわけにも参りますまい。
 1/72海軍型ファントムは1960年代発売の古いレベルB型、ハセガワJ型旧版を始めとして、80年代のエッシー、フジミ、モノグラム、90年代のハセガワ新版に至るまで、数多くのメーカーから発売されております。
 その中から 今回は、エッシーのF-4Jを選ばせていただきました。 エッシー倒産後、まだ、金型流用で他メーカーから再登場しておりません。 
流通していないため、現役キットではないので心苦しいのですが、これだけの有名キットとなると在庫をお持ちの読者も多いはず。必ず将来 どこぞの心あるメーカーから再販されるはずと信じております。しばしおつきあいの程をお願い申し上げます。
 
 このエッシーのキット 1983年の発売でございます。初の繊細な全面スジボリモールドと 見事なスタイルで その後のファントムモデルの方向性を決めた記念碑的キットでありまして、フジミ、ハセガワともこの路線を踏襲しております。
今でもこのエッシー72が決定版というベテランモデラーも多く、ご隠居さんもベストキットの一つだとおっしゃっておりました。「この葵の印籠が目に入らぬか、ええい、ひかえおろう」。ってな 訳で。
 
 もちろん このような時代を代表するベストキットでございますので、私目も都合、6機以上在庫しております。
 さて、肝心のスタイルと申しますと、手元のハセガワのF-4Jと比べて上面から見ますと、コクピット脇の胴体太さがエッシーの方がちょいと太目なことに気がつきます。 エッシーはレドームの直径の太さからエアインテク付け根までスーッと太っていくのに対して、ハセガワは第1風防下でグッと一度絞られているのであります。従いまして、第2、第3キャノピーもエッシーの方が横広に感じられます。
 もっとも、個人的には、機首の感じは モノグラム1/72が実機のイメージに一番近いと感じております。
 



■ 実機について

 実機については、これほどの有名機のため、多くの資料が出ております。webモデラーズ誌上でも N型ですが、実機の詳細生写真が、8月号に掲載されておりますので、ご参考に。
 ここで、厚木の助ごとくが実機について、改めて語るのは 役不足でおこがましいのでありますが、僭越ながら簡単にまとめてみました。
 F-4J型は海軍F-4B型の改良型で、1966年5月に初飛行し、1972年までに522機が生産されました。形態的にはエンジンがJ79-GE-10に換装されたため、ジェットノズルのアイリスがB型と違う長いものになっています。また、タイヤが空軍型と同じ大型低圧の太いものになったので、タイヤを収容するバルジを主翼上面に設けています。FCSがAWG-10に換装されたため、J型からAIM-7Fが搭載できるようになりました。 大部分がベトナム戦争に参戦。北ベトナムへの爆撃やエアキャップに数多く出撃しています。結果、世界最強の米海軍機ではありますが、かわいそうなほど、地上砲火とSAMに撃ち落されております。残存機は約半数でありました。  当時は我が厚木にも 毎週のように多くの部隊が立ち寄っておりました。
 ベトナム戦終了後、250機ほどの残存機が1978年からS型に改修されていますが、J型の時代にもベトナムの戦訓により、機体各部にアップデートが数多く施されたため、アンテナやふくらみが各部に多く見られます。
 S型改修機と、B型改修のN型とが混合して運用され続け、厚木にはVF-151とVF-161が駐留していました。長くオープンハウスの主役で、我が家にもアルバムいっぱいの写真がございます。86年5月に長いお勤めを終え、めでたく本国に帰還され、その後 米海軍でのご奉公を終えたのでありました。


サンディエゴ エアロスペースミュージアムの中庭に戦闘姿勢で飾られているNG112. もちろん追われているのはMIG
カニンガム、ドリスコム組は米海軍唯一のエースであり、NG112は 初撃墜を飾った時の機体。
ミサイルランチャーの先端が赤に塗られているのに注意。サイドワインダーは白で先端が黒に黄色のバンド。
エアインテークに5個の撃墜マークが書き込まれているのは ご愛嬌。


■ エッシーのF-4Jキットについて

 平面形では機首が少し 太めに感じると申し上げましたが、それは他メーカーと比べてのこと。側面形状はレドーム下から前脚庫に続くラインに丸みが不足しているようで、もう少し丸みを追加してあげた方がいいかもしれません。
空軍C型とコンバーチブルになっているため、C型用の機首下IRセンサー部品とJETノズルも付属しておりますから、一見B型に 改造できそうですが、さにあらず。主翼付け根のタイヤバルジはきちんとJ型となっていますので 薄翼のB型に改造することはできませぬ。
 モールドとスタイルを統一するために、同一メーカーで各型を揃えたいというのは基本的な欲求ですが、エッシーで全型を揃えるのはちょっと無理があります。 ゆえに B型を交えてコレクションしたければ、ハセガワかフジミの選択ということになります。
 エッシーの風防は4体に分割されており、開状態にすることもできますが、弱点は 射出座席。実は、シート後ろの射出レールの造作が さも無いがごとく薄いのであります。従いまして、シート後部はプラ板などで追加工作を余儀なくされます。
 また、前席と後席間の隔壁がさらりとありません。男湯と女湯の塀が無いようなものでございますねえ。
この辺は後発のモノグラムとハセガワ新版が勝っております。



製作

■ コクピットと胴体

■ 翼

 計器板とサイドパネルはしっかりとデカールがついております。コクピット内部をダークガルグレーに塗り、ウインドシールドをつや消し黒に塗って、デカールを丁寧に貼れば、コクピットはあっというまに完成となります。前述のシートはサードパーティのメタルシートに置き換えるのも安直でよろしいのですが、周囲とのバランスもございます。ここは キットのシートに射出レールを1.2mmプラ板で付加し、機体完成後に搭載するようにいたしました。
 ファントムはテールヘビーの代名詞のような機体ですので、うっかりするとドンとシリモチを着き 恥をかく羽目に陥ります。レドームにはしっかりと鉛オモリを仕込み、工作用油粘土で動かぬようしっかりと固定しておく必要があります。
 ファントムモデルの鬼門は別部品化されているエアインテークと胴体側面とのスムーズなつながりであります。ここは、一つ じっくりと 工作なさってください。エアインテークの可変板はマツタケのかさの部分にあたる部分を切り取っておいて、塗装後の胴体に最後に接着するようにしております。大変楽でお奨めであります。
 もう一つお勧めがございます。レドーム先端部分を硬い透明アクリルか、シンチュウ線で置き換えて、削っておきます。 万一、落下した時にも、レドーム先端がつぶれることが防止できます。だまされたと思ってお試しくださいませ。
 垂直尾翼前縁付け根のエアインテーク部は切り取っておいて、薄いプラ板で作り変えて、シャープにしました。
 また、主翼は後縁をビシッと直線がでるように 耐水ペーパーをカマボコ板に貼り付けたものを用意して、整形します。そして、金属パイプをつぶした燃料廃棄ベントを折りたたみ部付け根に仕込みます。仕込み杖ならぬ仕込パイプであります。実機の廃棄ベントは赤く塗られておりますので、アクセントになります。
 
 主翼上面中央の主脚付け根のふくらみは別部品を接着するようになっています。主翼の中央にありますので、大変目立ちます。ここがすっきりと出来ていることが男前を上げる秘訣であります。接着剤が乾いたら、気長に整形いたしましょう。また、上面やフラップに若干ひけなどがありますので、サフェーサーで埋めておきましょう。
 水平尾翼は前縁スリット付のJ型用の部品を使いますが、上下面の三角補強板が上下面にモールドされております。
実機ではというと 新品同然の時は上下とも補強板無し。 ちょいと くたびれてきたら、上面の補強板をまず追加。更に使い込んで年増になってきたら下面に補強版を追加するといった具合であります。それを知っておけば、この機体には補強板がついている、ついていないなどという細かいことでアタフタする必要はないのであります。



■ 塗装

■ 脚など細部

■ 完成した佇まい

 J型の典型的な塗装スタイルはハイビジであります。昔は下面のホワイトから先に塗装しておりましたが、 最近は逆に 上面ガルグレーを先に全面に塗装し、その後マスキングして 下面と可動舵面をホワイトで塗装するようにしております。その方がホワイトがきちんと発色するように感じております。
 塗装は一度は作ってみたかったエース機ショータイムNG100, コンステレーション時代のVF-96機といたしました。 カニンガムの初撃墜機ショータイムNG112のお姿をサンディエゴ博物館の中庭で見てから、どうしてもVF-96機にしたかったのであります。
 エッシーのキットデカールにも付属しておりますが、マイクロにCVW-9のCAG機NG100があったので、消化のために使わせていただきました。
 ところで、カニンガムが1972年5月10日にエースになった時の搭乗機、本物の5800, NG100はSAMに撃ち落されてトンキン湾の底に今も沈んでおります。残存していれば、博物館に飾られたものを! 全く残念でございます。
 ホイルハブはきちんと海軍型になっておりますので、ご安心のほどを。
注意点ですが、主脚引き込み用のアクチュエーター(補助支柱)は 主脚側を先にきちんと接着しておいて、接着位置を現物あわせで 行う必要があります。さもないと、主脚が内股になってしまい、かっこ悪いこと この上なしであります。
 脚カバー断面はこの時代には珍しく、赤に塗られていないものが多いようです。また、各部アンテナ、ランプ、センサーなどはお好みに応じて、とりつけるようにいたしましょう。ウンチクが楽しい至福の時間であります。
 今回の武装はどれにしようかと迷っているうちに時間切れとなり、結局クリーン状態での出撃となってしまいました。選択肢が多いほど選べない、経済学者が申します「決定回避の法則」だとか、
 
 
 やはり ファントムはファントム。とうに退役してしまったとはいえ、何機作って並べても ファントムは王者以外には見えません。
 佇まいは戦闘機の王者の風格 そのものであります。
 リアルタイムでファントムと同時代を経験して良かったと つくづくと思うのであります。

今回はこんなところで、失礼つかまつります。厚木の助でございました。





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Vol.10 2009 Nov..       www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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