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Big プラモデルキット作り倒し (第12回) 
零戦21型 (タミヤ 1/32)  

by     製作  相川荘太郎  
レストア 塗装 田口 博通 

押入れを占領するプラモデルのBigキットを作り倒し バーンとスペースを空けようというBigな連載コーナー。
1/32と限らず、巨大な箱なら なんでも取り出します。
 
 デビスモンサンにモスポールされた可哀想なBigキットが再び、皆様のお役に立ちます。
 6月号でレベルの零戦52型をやっていますので、今月は大きな箱では定評のあるタミヤ1/32の21型に行ってみます。
 今回はちょっと趣向を変えて、レストアにトライということでお届けします。2009年2月創刊号 コラムで 今年プラモデル作りを卒業された相川さんの製作した零戦21型をレストアしていることを書きましたが、その後、目出度く完成相成りました。
 下の写真は これからレストアにとりかかろうという零戦21型です。自分以外の人の作った作品をレストアするのは初体験。 塗装面に埃や油汚れがつき、デカールが剥がれ痛んでいるとはいえ、よく見ると自分ではこんなに精密な追加工は不可能!と感心する箇所が多いのであります。相川さんの魂が宿っている作品に手を入れるのはあまりにも切ない。私にはそんな資格も実力もありません。それで痛んでいる塗装のみ再塗装することにいたしました。
 さて、表面を良く見ると、タミヤ水性新色の灰緑色で塗装してありました。筆者はグンゼカラーを使っているので、このタミヤ水性カラーの上にラッカー塗装というわけには参りません。
 ということで、まずは 塗装のストリップから始めることにしました。まずは、デカールを剥がそうと台所をあっちこっち物色し、強力な洗剤 ウエキのオレンジパワーを「男は黙って」GET。それをシュッと一吹すると、なんと、どろどろと水性塗料の部分だけが溶けてストリップしました。実はオレンジオイルは工業的には発砲スチロールを溶かして、ペレットとして再利用するのに使ったりします。溶解力が強いのです。それにしてもウエキの洗剤には感心しました。プラスチックを溶かさず、水性塗料だけ溶けて剥がれました。

という具合で、レストアを開始しました。

 皆様もデビスモンサンで部品取りに使われている古い作品や飛行場棚の隅に放置された壊れた作品をきっといくつもお持ちのことでしょう。捨てきれない古い作品には製作時の苦労や当時の青春の思い出がいっぱいいっぱい詰まっています。最近は昔と違って、プラ材や接着剤、金属線なども豊富に手に入ります。
 レストアもまた楽し!というわけで、 気にかかっている壊れた古い作品を再び取り出して、ご一緒にレストアを楽しんでみましょう。レストアなった暁には きっと深い満足感に浸れるはずであります。

相川さんから受け継いだ零戦21型(タミヤ1/32)
残念ながら 塗装とデカールなど一部が痛んでいる。

タミヤの水性塗料が使われていたので、ウエキのオレンジパワーを吹き付けて、歯ブラシで水洗し、塗装をべろっとはがした姿。 デカールの糊の下は落ちないので、耐水ペーパーでデカールを削り落とし、再びオレンジパワーを吹き付けて水性塗料をストリップしていった。
キャノピーはマスキングテープで保護するが、それでもコクピットの中にどろどろと水性塗料が入ってしまう。しかたがないので、筆も併用してよく水洗して、落としてゆく。 
 もっとも、このウエキのオレンジパワー洗剤には痛い経験がある。大掃除の時に台所の換気扇ダクトにべっとりとついた油取りに使った際、あまりによく油が落ちるるので嬉しくなって、どんどん洗剤をシュっとやったところ、ホウロウに塗装してある塗膜とホウロウの間に洗剤が入り、気がついたらちりめん状になり、塗膜が剥がれてしまった。過ぎたるはナントヤラ。あれ以来、我家の換気扇ダクトはマダラ迷彩となっている。) 



コクピットの塗装

 水性塗料が落ちれば、充分乾燥させた後、コクピットの塗装にかかります。
コクピットの頭あて後ろは筆が入りません。第3キャノピーをはずそうとしましたが、強固に接着されていて泣く泣くあきらめました。それゆえ その部分は明るい黄緑色になっています。せめてもと思い、透明部品内側を綿棒にコンパウンンドをつけて磨いて透明度をできるだけ復活させました。
 第一キャノピーは接着部をはずすことができたので、コクピット内に面相筆を入れて見えるところだけ、再塗装しました。水性塗料なので、まだらに塗料が剥がれています。
それが、あちこちに廻りこみ、結構すごいことになっておりました。
気を取り直して、床、座席は三菱内部色に白を加え、少し明るくして筆が届くところに塗っています。
「見えるところには筆が届くはず、見えないところは見えないから気にしなくてよい」との強固な信念?に基づき自分自身を説得することが必要です。
 計器板などは暗緑色とハンツヤ黒色。面相筆が入るところにはシルバーと白で計器メモリを筆先でドライブラシして浮き立たせておきました。座席ベルト金具は自分のタミヤ零戦の未完成在庫からコンバート。また、作る時に自作すればいいのだからと自分の心に言い聞かせました。ベルトは紙ではちょっと実感がそがれるので、板鉛で作り変えました。 ベルトは精密感を醸し出す不思議なポイントアイテムだと実感しております。


破損部分の修理

 レストアの中心はやはり破損部分の修理ということになります。この辺は実機と同様です。
 
 エンジンカウリングをはずし、エンジンのピストンロッドの折れた部分を金属線で取り替え、エンジンは資料を見ながらシルバーと黒で再塗装しました。シリンダーはシルバー説と黒説がありますが、今回はシルバーで塗装した上にエナメル黒でスミイレとしました。集束環はシルバー塗装にしてアクセントとしました。
 カウリングはカウルフラップが薄く加工されていたので、それをそのまま生かしています。 
 
 脚出し指示棒(赤)が動かなくなっていたので、主脚も含め、動くように修理しました。脚カバーが一部紛失していたので、プラ板で作り変えました。
 主翼エルロンのマスバランスが折れていたので、プラ板を削って作り直しました。エルロンにイモ付けしたのではまた破損するので、接着基部に0.5mmシンチュウ線を埋め込み強化しておきました。
 エルロンの動作ロッドカバーはブラ棒をそれらしく削り、シンチュウ線と組み合わせ作ります。
 
 胴体機銃下が素抜けになっていたのですが、手の入れようもなく、パスしました。
 アンテナマストは残念ながら折れていたので、3mmの金属棒を叩いて延ばし、取り替えました。
 
主翼折りたたみ部のエッチング部品が外れてぶらぶらしていたので、3Mの多用途強力接着剤と瞬間接着剤を併用して修理しました。
 ところで余談。この3Mの多用途強力接着剤ですが 至極便利な接着剤です。脚、脚カバー、アンテナなど小物の接着には 粘度の高い接着剤を一般的に使いますが、筆者はプラスチック用でなく、この3Mの多用途強力接着剤(合成樹脂系)を使用しています。固着までに時間の余裕があり位置決めに便利で、脚カバーを胴体に「いもづけ」する際にも威力を発揮します。動かぬ固定が必要な場合は、多用途接着剤で仮止めし位置決めしてから瞬間接着剤で固めます。ホームセンター、スーパーの日用品コーナーで購入できます。
 このゴム系接着剤で位置決めして瞬間接着剤で固定するテクニックは 35年前くらい前、東京に出てきたころ、初めて参加したソリッドモデルの合同展示会のセミナーで有名なプロソリッドモデラーから教わりました。当時はコニシのゴム系接着剤(ボンドG)しかなかったのですが、その後、3Mから透明な良質な多用途強力接着剤(合成樹脂系)が発売され、決定版となりました。さすが3M。マスキングテープも糊残りせず抜群で 特に接着剤はまだまだ日本製品はアメリカ製に かなわないようであります。
  
3M 多用途強力接着剤(合成樹脂系)






再塗装

 いよいよ再塗装です。とりあえず、キャノピーとエンジン、主脚をマスキングテープで覆います。
 タミヤの零戦は外版継ぎ目やリベットの彫りが深く、魅力的です。それを生かすべく、スミイレをするのが普通ですが、今回は違うトライをすることにしました。
動翼と外版継ぎ目線、主要なリベット部分にまず、黒っぽい色としてグンゼNo116ブラックグレー(ドイツ機内色)を吹き付けます。 その上にグンゼカラーの明灰白色をパネルラインを残しながら吹き付けています。パネルラインの彫りが深いので、中まで上面色が入らず、以外と良い感じにパネルラインやリベットを残すことができました。 乾燥後、スミイレは油彩のローアンバーを使ってバランスを見ながら、下面の機銃パネルや動翼付近に行いました。 
 カウリングはおなじみグンゼ特色のカウリング色を使っています。青が入ったブラックで良い色です。
 主脚収納庫、主翼折りたたみ断面は 考えた末、青銀(メタリックブルー)で塗りましたが、緑系機内色でもよいのかもしれません。主脚カバーも一度はずして、脚柱とカバーを青銀で塗装してから、再度取り付けています。尾輪も再塗装しました。
 各部ライトの透明部はコンパウンドで磨き、透明赤、透明緑で 面相筆で息をとめて塗装しました。

プロペラとスピンナーもシルバーとつや消しブラックで再塗装し、主要なパーツの再塗装はほぼ完了で、マーキングへと進みます。




マーキング

真珠湾攻撃の飛龍機 AI-101にすべく、在庫の余りデカール帳をあさったところ、往年のスワローモデル21型のデカールを発見したものの、残念ながら黄ばみが進行していて、結局手書きすることに。デカールを型紙代わりにして、マスキングテープを切り抜きラッカー赤で塗装しました。
 胴体赤帯、日の丸、主翼日の丸ともマスキングテープを切り抜いて吹きつけしましたが、以外と簡単に出来ます。
 赤色は、朱色っぽくしたかったので、グンゼ68番レッドを使っています。主翼フラップ上の細い赤線はテープを細切りにして、丁寧にマスキングし、筆で塗装しました。
 最後にアンテナ空中線を張り、各部のアラを面相筆で丁寧にタッチアップしてゆきます。吹きつけ塗装はこのタッチアップが以外と大事で、出来上がりを大きく左右します。タッチアップよければ 終わり良しとか。



主翼フラップ上の警戒赤ラインもテープでマスキングして手書きする


レストア完了

 タミヤ零戦21型がフェニックスのように甦りました。
一部にレストアしきれない部分もありましたが、ちょっと目には新品と遜色なさそうで満足しております。世の中、完全を求めても無理というもの。80%以上できれば良しとすれば、気持ちも軽くなるというもの。 と自分自身を説得しております。。
 タミヤの1/32零戦は精緻なリベットが模型という造形としてはすばらしいと思います。次回、相川さんにお会いする機会にぜひお持ちしてお見せしたいと思っております。




 

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Vol.13 2010 Jan.        www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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