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連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第9回)

エッシー1/72 AC-47「スプーキー」

by 鳥巣 Torisu           / 
   
<初めに>
 本格的に冬将軍の大攻勢のなかモデラー諸氏は如何お過ごしでしょうか
足元は冷え指先は動かず寒くて窓も開けられず過酷な環境(我が家だけ?)での制作活動お疲れ様です。
 そんな寒さを吹き飛ばす為に今回は熱いジャングルからの使者を紹介します

<実機解説>
アメリカ合衆国は1963年に勃発した所謂「トンキン湾事件」以降北ベトナムへの空爆(ローリングサンダー)開始と共に大量の地上軍を南ベトナム軍への支援に導入した。
 これに対して開放戦線側はゲリラ戦術を用いて米軍施設への夜襲を繰り返した。これに業を煮やした米軍当局は空からゲリラを掃討する為に名機C-47「グーニーバドー」の胴体左側に口径7.62ミリの銃身を6本束ねたGAU-2Aミニガンを3器搭載したAC-47「ガンシップ」を開発し毎夜襲撃してくる解放戦線の上空に投入し必殺のシャワーを浴びせた。
 その姿はさながら火を吐くドラゴンの姿でありゲリラ側の士気を消沈させるには充分であった。
 しかし対空火器が解放戦線側に装備され対抗処置を取ると元々非武装の輸送機であるAC-47に損失機が出始め さらにホーチンミールトでの輸送トラック攻撃には能力不足と感じられて 1967以降後継のAC-119「シャードゥ」に任務を譲り静かにその姿を消していった。
 初めてベトナムでAC-47を見たパイロットは
「誰だ、こんなオンボロのスプーキー(亡霊)みたいな機体を持ってきたのは!」と呆れて発したスプーキーという言葉がこの機体に乗るパイロットの気持ちを良く代弁している(苦笑)



<キット解説>

今回の作例はエッシー1/72「AC-47ガンシップ」です
同社が数多く出しているDC-3のバリエーションキットです
実はこのキットの存在はサークルの会員から譲って戴くまでは知りませんでした。同じタイプのキットがイタレリ社からも発売されていますが全くの別物です。
モールドはオリブドラブ色に整形されていて見にくいのですが全体に凹モールドでフラップや方向舵などは梨地モールドではふ張り表現したりと、かなり手が入っています。
 胴体にはパネルラインが細かく再現されています
 これをクドイか良く入っているかは個人の趣味の分かれるところでしょう
箱絵 

胴体パーツ

主翼などのパーツ

制作

<コクピット>

まずコクピットとキャビン内部のミニガンを組立てます
各計器類はデカール再現です
コクピットフロアーとキャビンに下地塗装としてMrカラーのカーキグリーンを塗ります
その上から機体内部色を塗りました
塗装が乾いたら計器パネルのデカールを貼ります
デカールの剥離防止の為にマークセッターを使用して貼り付けました。
 座席のディテールやコクピットの感じは良いのですが胴体を組み上げると殆ど見えなくなる所がちょっと勿体ないです。
ここは過度な再現をするよりパイロットを置くだけで十分でしょう




コクピットができたらこの機の最大の売りであるミニガンの組立と取り付けに入ります。
3つある内2つは外からは銃身しかみえませんがガン本体も塗装しました
本体はグランプリホワイトで塗った後エナメルの黒でウオッシングして仕上げにタミヤ「ウェザリングマスター」のマッドとサンドを使い汚し表現を施しました。
ここで一番注意する個所はミニガンの組立です
キットのままですとミニガンを固定する台の高さが少々ありすぎて銃身が窓の上部から突き出している形になってしまいます。
実機は窓の真ん中に銃身が付き出ているのでこのキットを作る方がいらしたら高さ調整を行う事をお勧めします
作例はキットのままで修正はしませんでした。
それと銃身が細くて折れやすいので作業中に直接触らないようにマスキングテープ等で保護しましょう。
私は作業中に折った挙句紛失してしまいました。
今回の作例では非常手段としてイタレリ社のAC-47からミニガンの銃身を移植しました。
結果的にはこちらの方の銃身が太くて見栄えが良くなった作品となりました。
ミニガンを床に取り付けたら胴体左右パーツの接着です

<胴体の接合と翼の組立>

胴体の前後の合わせは良いです。
ここでの難所は胴体の内部フロアーを取り付けです
胴体右側にミニガンを取り付けたフロアーを取り付けるのですが最後尾の辺りが上側に沿っていて隙間が出来ました。
今回は幸いなことに左側後部貨物扉が後から取り付ける仕様になっていて多きく開口されているのでこの場所を利用します
フロアーを胴体内部右側に付けてある程度固定できたら左側胴体を貼り合わせます。この時点でフロアーの最後尾が浮き上がっています。
 そこでクリップを用いて上側に沿っているフロアーと開口されている貨物扉を挟み圧着させます。制作時間短縮のため瞬間接着剤を流し込み硬化スプレーを吹き付けて接着しました。はみ出した瞬着は紙ヤスリで削り落しました。
 フロアーパーツーが固定できたら胴体左右部品の接合後の処理です
胴体左右の接合部に段差が生じましたので余計な所にポリパテが付かないようにマスキングを施してポリパテ修正を行いました。
胴体に盛り付けたパテが乾く間に翼の組み立てです
中央部・左右外翼上下のパーツ構成になっています。
貼り合わせで隙間やズレは殆ど見られませんでした。ただ中央部と外翼の接合部に若干の隙間が出たのでここもパテ修正をしました。
 胴体のパテ修正が終わったら翼との接合です
ここでも飛行機制作では避けては通れない胴体のフィレット部と翼の接合部分の隙間の修正作業が有ります
 ここは最初に多めの接着剤を付けて隙間を減らす作業をします。
有る程度隙間が埋まりましたら周囲にマスクキングをしてポリパテ修正を施します。
 このキット古い製品にしてはあまりパテ修正をする個所は少なく当時のエッシー社の技術水準の高さを垣間見ることができます。
 パテ修正を終わりエンジンやカウリング等のパーツを付けクレオス#1200のサフを機体全体に吹き2日程乾燥させたら
 ポリパテ修正作業で消えてしまったモールドを彫直し塗装に入ります

<塗装>

実機は特殊戦専用機カラーの機体上面を茶色をベースに薄い緑と濃い緑を用いたアジアンスキーム(俗に言うベトナム迷彩)で迷彩され機体下面は夜間飛行を考慮した艶消しの黒で塗装されています。
 まず機体上面の塗装作業に入ります。
 基本色の茶色にMrカラー#310を使い機体の上面全部に吹きつけます。
一晩程乾燥させ塗装が乾いたら次に#303の明るいグリーンを塗ります。
 今回あの迷彩の境界を他の色と混ざらないように綺麗に塗るにはどうしたら良いかと自分なりに考えました。
 考えた結果
 ハンドピース用に希釈した緑を面相筆に含ませ迷彩のガイドラインを手で書く、と言う簡単な方法に落ち着きました。
 迷彩パターンを型紙で作りそれを貼り付けて迷彩を塗り分けるのが一般的な手法ですが
 逆に境界線がクッキリとしてしまいオモチャぽぃ仕上がりに成りやすいで私はこの手法を避けました。
 実機は迷彩の境界がボヤケているのも多いのでベトナムの空気を感じるためにもフリーハンドで迷彩を施しました。
303でガイドラインを書いたらノズルを絞り境界線から内側に向けて吹きつけます。塗料の濃度はちょっと薄めすぎたかなと思えるぐらいが綺麗に塗料が乗ります。303で迷彩の緑を塗装し終えたら次に309の濃い緑でさらに塗り分けます。
 この時もベースの#310との境界線に当るラインをハンドピース用に薄めた#309を書きます。書き終えたら#303同様内側に向けて塗装します。
 ベース色にオーバースプレーした緑は#310を重ね塗りで消して実機写真等を見ながら整えていきます。だいたい三色迷彩が終わったら下面の艶消し黒を塗ります。
 翼の上面前縁と後縁及び水平尾翼上面をマスキングします
仕上げに汚し塗装を施すのであえてセミグロスブラックを使い艶のある黒で塗装しました。
 先ずノズルを絞り細吹きでボカシ塗装をフリーハンドで加えながら胴体下面を塗ります。ある程度良い感じになったら主翼と水平尾翼の下面を塗装します。
 3色迷彩と機体の下面色を塗り終えたら黒のエナメル塗料でウオッシングを加えました。
 茶系でウオッシングするよりは黒の方がこの3色迷彩では汚れ具合が表現し易かったです。

 



<デカール貼りと仕上げ>

さて塗装も自分のイメージ通りにできたらデカール貼りです
流石にデカールは長い年月が経っていたので使い物にならなかったのと、どうしても「スプーキー」のマーキングをしたかったので15年近く前に購入したスーパースケール社の「ガンシップ」デカールからチョイスしました
ちなみにこのAC-47の他にもAC119「シャドーウ」やAC-130「スペクター」等のベトナムガンシップのマーキングが入っていてお買い得でした。(全機揃えるのは夢だとしても)
 デカールを所定の位置に貼り付け完全に乾いたら各種アンテナやプロペラを取り付け仕上げの汚しにタミヤ「ウェザリングマスター」のサンド&マッドを使い機体全体に汚しを施して若干の銀のハゲチョロも付け加えて完成です。
 
今回の作例にその存在を知らなかったエッシー社「AC-47」のキットを制作する機会を与えてくださった編集部に感謝です。
今回の制作には多くの資料本を参考にしました。
参考資料
デルタ出版「ベトナム戦争Vol 2」
モデルアート社「ベトナム航空戦Vol 1~3」
航空ファン別冊「ベトナム航空戦」
同朋社出版「NAM・狂気の戦争の真実」
大日本絵画「ベトナム航空戦」
大日本絵画「スケールアビエーション誌 Vol 68ベトナム航空戦」
その他
インターネットで海外サイトから実機画像の入手等










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Vol.14 2010 Feb.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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