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F-8D クルーセイダー  (フジミ 1/70)   

by 厚木の助さん        。


 一ヶ月のご無沙汰でございました。厚木の助でございます。そういえば、最近「一週間のご無沙汰でございました」で有名な玉置宏さんが亡くなられました。幼少の1960年代、これといった娯楽の無い中で、毎週歌番組にかじりついて見ていただけに大変残念です。今月取り上げるのは同時代の フジミF-8D クルセーダー。いや説明書には 「クルーセイダー」と表記されておりますので、今回はそちらを使うことに致しましょう。このキット、実は1/70ですので この連載第1回で取り上げたアカデミーF-8Eよりは、ちょいとというか、かなり大きめでございますな。
 フジミのクルセーダーもといクルーセイダーは初期のD型をモデル化しておりまして、その発売は1960年代前半のこと。実機がまだおろしたてバリバリの時代です。モデルアート創刊号に掲載されているというプラモ石器時代の伝説のキットでありますが、いまだ現役なのは本当にご立派。その元気さは水戸のご隠居さんと張り合っております。
 そろそろ齢50を迎えるはずでありますが、 こわごわと組み立ててみますと雰囲気はなかなかよろしい。機首がデフォルメされていいるような気がしますが、まんざら気のせいではないようです。全体のデッサンそのものは、しっかりしているように感じます。
 表面モールドはさすがフジミ。当時のフジミの成型技術は群を抜いておりました。 リベットとパネルラインは繊細な凸モールドです。賛否両論ありましょうが、私目には直球ど真ん中であります。主翼が別体となっていますので、可変迎角状態が再現できます。というよりも、ブーメラン主翼と分離胴体というウルトラホーク状態に相成りますが。 
 今回の製作のために、デビスモンサンをあさり、ウン十年ぶりに引っ張り出してきたのですが、美人も美人。まるで王子様の甘いキッスで目覚めた眠り姫でありました。
 欠点はというと、腰の二丁拳銃のフェアリングがちょっと太めというか形状に難があります。コクピットは初期のフジミ設計なので、ほとんど何もなく、寂しい出来ですが、実機資料も乏しかった50年前の設計としてははこんなものだったのでしょう。
   組み立て説明書

(購入した時は 既に 1/72として販売されていたので、スケールの部分(1/70)が 丁寧にマジックで消されているのが なんとも素朴である。)

実機について

 1952年秋の超音速艦上戦闘機の提案要求に対し、承認されたチャンスボート社の案がクルーセイダーの原型となったXF8U-1です。原型1号機は1955年初飛行し、音速の壁を初飛行で突破する偉業をなしとげております。基礎設計が良かったのか開発は極めて順調に進み、2年後の1957年には量産型F8U-1を装備する飛行隊VF-32が実戦配備に着いています。
F-8クルーセイダーは海軍初の本格的超音速戦闘機となり、1261機の大量生産がされています。
 フジミがキット化しているD型は胴体側面のサイドワインダーランチャーが二股式となり、4発装備できるようになりました。
 また、キャノピー前方にAN/AAS-15 赤外線シーカーを装備し、1962年までに152機完成しております。D型のレーダーはAPG-83であり、まだ昼間制空戦闘能力しかありませんでしたが、発達型のF-8Eでは AN/APG-94レーダーを機首に装備し、全天候能力を持つにいたりました。
 クルーセイダーは運動性能もよく、戦闘機としては極めて優秀で、ミサイルだけでなく機首に20mm機銃を4丁装備し、最後のガンファイターと称されました。 折からのベトナム戦争には前半から投入され、トンキン湾の米空母から主力機として、空対空戦闘だけでなく、対空砲火制圧にも活躍しています。
クルーセイダーが撃墜した北ベトナムのミグは18機にのぼります。
 着艦性能をよくするために、後退翼42度の主翼を離着陸時に油圧シリンダーで持ち上げる可変取り付け角の機構を採用しています。また、発達途中から空中給油能力を付加され、引き込み式の給油プローブのバルジが付加されています。また写真偵察機RF-8GはRF-18の実用化まで長く現役にとどまりました。

F-8J: 最大速度 M1.48
固定武装 20mm砲 X 4
ミサイル AIM9 4発
エンジン P&W J-57-P-420


製作

 コクピット

 胴体

 コクピットは床板もなく、座席をピンに接着するという石器時代の構成になっています。そのため、今回はバスタブ型のコクピットをプラ板とプラ棒で自作しました。1月号のハセガワA-7コルセアと同じ構成ですので、そちらをご参照ください。
 内部をダークガルグレーに塗り、サイドコンソールは余りデカールから流用。計器板はキットオリジナルを使用。計器、スイッチ類を白と赤で丁寧にちょいちょいとやればほぼ出来上がりの雰囲気となります。
 シートはさすがに抵抗のしようもなくお手上げでありまして、ハセガワクルセーダーからスカウトし、板鉛でシートベルトを追加させていただきました。
 胴体は厚めの成型で丈夫。かなりの重さとなり、テールヘビーのため、機首にしっかりとおもりを仕込みます。今回はバスタブコクピットを自作しておりますので、その下と足りない量はコクピットの後ろに詰め込みました。
 着艦フックは胴体左右接着時に挟み込むようにすると可動できるようになっておりますが、塗装の都合もあり、最後に接着するように変更しました。
 胴体接着部を整形する際には 凸リベットですので、モールドを極力つぶさないように注意して作業しますと、後でオリジナルの雰囲気を充分楽しめます。後々のお楽しみは大事にいたしましょう。


 主翼

 

 主翼は左右一体、上下2枚貼りあわせ式のごくシンプルなものながら、きちんと下反角がついているところはさすがであります。胴体とのつながりはスムーズで修正しなくてもGOODな感じで、フジミ技術陣の面目躍如というところでありましょう。今回は主翼を胴体に接着せず、簡易的に 可変迎角の可動を楽しむようにいたしました。水平尾翼は1枚もの。リベットのモールドがちょっとうるさいので、軽くペーパーで落としておきます。差込部のベロもしっかりと大き目のものなので、安心して接着できます。
 機首レーダースキャナーと胴体とのつながりは修正せずともばっちりとつながり 気持ちが盛り上がります。これに対してテールコーン部品と胴体のつながりが少し悪いので、上下左右の中心がきちんと出るように注意して接着することが必要です。
 胴体尾部の安定フィンは、塗装後に接着するか、塗装前に接着するか迷うところですが、全体のバランスを考えると先付けというところでしょう。こういうフィンは後々壊しやすく、ガックリときますので、接着ピンをシンチュウ線で置き換えて強度を増しておきますと安心です。

塗装

 塗装はハイビジのみ。
上面 ガルグレー FS16440
下面 ホワイト FS17875
のいでたちで、毎度のことながら、グンゼのMrカラー特色シリーズを使っております。
 
上面のガルグレーを先に全面に塗装し、下塗りもかねました。実機の現役時代の機体表面はウレタン塗装で 使い始めは かなりのツヤがあります。フラップ上面の塗り分けは何を思ったのか勘違いしまして、内側分割部をガルグレーとしてしまいましたので、後の祭り。皆様は参考にはされないでください。
今回の翼前縁はホワイトを入れ、ダルシルバーコートとしました。
  空気取り入れ口リップはレッド。キットのデカールには AG232が付属していましたが、デビスモンサンに保管していたため、寄る年波でさすがに使えませんでした。キットの大きさに合う別売りデカールもさすがにありませんので、キットデカールを型紙に手書き決行と相成りました。 USスターも普通ならば別売りデカールとなるところですが、ちょうど 1/70に合う大きさが見つけられなかったので、これも久々に手書きしました。
 

細部

 二股ミサイルランチャーの発射レール部が薄いので、ハセガワミサイルセットから、発射レール部のみ流用加工して置き換えました。ついでに胴体との接着ピンも金属線で置き換えました。ミサイルもハセガワミサイルセットのものを使っています。本来はスケールが1/72なので ちょっと小さめのはずなのですが、取り付けてみますと 不思議にバランスがとれております。これはどうしたことでしょう。
ミサイルもイモ付けだと心もとないので、接着ピンを仕込みますと安心の強度が確保できます。
 
脚柱はホワイト。主脚扉は上下で塗り分けになっています。扉断面はREDです。REDの塗り分けは細筆で息を止めて行いますが、危うく窒息しそうになりました。


完成した佇まい

 完成しますと 当時、乏しい資料で設計したことが見て取れますが、さすが日本人。いい仕事をしております。いかにも飛行機らしくて、バランスが取れております。見立てがいいですね。
当時のフジミの設計者に敬服です。

 昨年作ったアカデミーのE型と並べてみますと、ちょっと大きめのお姉さん。完成した佇まいは 60年代の設計キットでありますが、強さを感じる美人です。
その強さは「風と共に去りぬ」に主演したビビアン・リーというところでありましょうか。最新のアカデミーE型をアジアン・ビューティとすると フジミのD型キットは 古き良きアメリカの強さを体現しております。

今回はこんなところで、失礼つかまつります。
厚木の助でございました。 


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Vol.15 2010 Mar..      www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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