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 カーチス SB2C-4 ヘルダイバー (アカデミー 1/72)

by 田口博通 

 アカデミーから数年前に発売されたヘルダイバー、皆様も作られたでしょうか?新金型設計で、3D-CAD設計の威力を発揮した新世代のプラモデルキットです。韓国キット恐るべし。部品点数は透明部品も入れて、75点と多くはないのですが、精密なコクピット内部のモールドなど 出色の出来です。
全面 スジボリで、テイストとしては、ハセガワのアベンジャーを精密にしたような印象です。1/72ヘルダイバーは古いエアフィックス、アオシマ、マッチボックスしかなく、スタイルやディテールなど大きな不満がありました。そこに、アカデミーから決定版登場となったわけです。
 説明書は 3D-CADモデルにそのままシャドー処理をした図を使っており、香港、中国製のAFVキットでよく見かける形式です。韓国語が読めなくても、図だけで理解できますので、なんとか組み立てられます。また、カラー説明は5カ国の対照表がついていてありがたいことにMrカラーのナンバーを基準としていますので、わかりやすくて助かります。



実機について

 カーチスSB2Cヘルダイバーは第2次大戦後期対日戦で活躍した艦上爆撃機です。艦上爆撃機とは水平爆撃でなく、通常は急降下爆撃機のことをいいます。1938年、米海軍のSBDド-ントレス後継機開発プログラムにカーチスから応募したのが、XSB2Cでした。
 スタイルはカーチス前作の複葉SBCを単葉にし、引き込み脚としたようなスタイルそのものです。空母のエレベーターサイズ制限のため、胴体が短くズングリとしたスタイルとなりました。残念ながら、基本設計の悪さから、2000馬力級エンジンを積んでいるにかかわらず、安定性不足、揚力不足、失速速度高すぎなど多くの問題を抱え、制式化にあたって800箇所以上の設計変更を余儀なくされています。
 基本設計、つまり筋の良さというのは軍用機の場合、非常に重要で、1944年に同様の急降下爆撃機をダグラスのエドハイネマンが基本設計案をまとめていますが、そちらが名機スカイレーダーとなりました。ご存知のようにスカイレーダーは基本設計の良さから30年の長きに渡ってNAVYで使われています。
 一方、ヘルダイバーは戦争のさなかでもあり、すぐ他に使える機種もなかったこともあり、問題もかかえながら、7000機以上の生産がされています。長所は、航続距離があり、ロングレンジ攻撃に使えたことと、爆弾の搭載能力でした。胴体下部の爆弾倉に1000ポンド(454キロ)までの爆装が可能で、主翼に20mm機関砲2門、コクピット後部に7.7mm旋回機銃2丁を装備していました。
SB2C-4は主翼下面にロケット弾懸架8コが追加され、。急降下時のバフェット防止のため、フラップ兼用のダイブブレーキはSBDドーントレスのように小穴が多くあけられました。一部の偵察用途に用いられた機体にはSB2C-3E同様に翼下にAN/APS4迎撃レーダーの八木アンテナを装備したものもありました。
ヘルダイバーの初出撃は1943年ラバウル空襲で、その後、マリアナ、フィリピン攻略戦に活躍しました。
SB2C-4は1,945年から登場し、主に沖縄、本土空襲などに参加しています。
戦後はスカイレーダーが配備されるに従い、ヘルダイバーは急速に第一線からしりぞいて10年も使われず姿を消しました。


製作

 まずは、ここを作らないと前に進めないコクピットの工作からスタートします。
爆弾倉天井が前操縦席床を兼ねています。バルクヘッド、コンソール、各種レバーなどを取り付けて行きますが、部品点数が多いので、組み立てを楽しめます。どんどん形になっていくのは楽しいものです。シートが出色の出来ですので、ベルトを板鉛で追加してあげましょう。 後部の銃座も48並の出来で、丁寧に組み立てるだけでかなりの精密感を楽しめます
 胴体内部はMrカラー351 機体内部色(ジンクロ1)で、サイドコンソールや機器類はつや消し黒にグレーでドライブラシしておきます。
 実機がどうだかは別として、赤や黄色でボタン類をアクセントをつけながら塗るとよいと思います。
 胴体左右接着前に着艦フックを仕込むように指定されていますが、完成までに折りやすいので、可動をあきらめ、最後に取り付けるほうが楽です。また、垂直尾翼後縁も少し薄く削っておくとシャープになります。
 ついでに、カウリングも開状態のカウルフラップの後縁をカッターナイフのエッジを立てて薄く削ります。



塗装

 主翼は翼のつけねも含め、平面形がよく出ています。上下を接着後、表面のディテールを崩さない程度に後縁を削っておきました。翼端はそりあがりが3次元的に表現されているのが 現代のキットというところでしょうか。前縁スラットは開閉選択式となっていますが、閉じる場合は レールを削り取る必要があります。閉状態としましたが、きちっと合いました。

 水平尾翼も後縁を薄く削っておきますとシャープになります。
 後縁を削ったりしてモールド表面に多少ともキズが残っていますので、面倒でもMrカラーサーフェーサー1000で下塗りしておくことがお奨めです。
 キットには4種のマーキングデカールが付属していますが、その中からシャングリアの尾翼電光マークを選びました。全面 グロスシーブルーの艶々塗装です。説明図ではMrカラー365が指定されていますが、以前作ったアベンジャーと色を揃える必要もあり、No71ミッドナイトブルーを使いました。この色も乾燥後 FS595色見本チップと照合すると、FS15042相当でした。



小物をつけて完成

 キャノピー枠は透けを防止するために、一手間かけてつやけし黒で下塗りしてから上面色で塗装しておきました。ピトー管は0.3mmの洋白線で、またアンテナ支柱は金属線で換えました。脚関係のモールドも良く、ジンクロで塗装しました。爆弾倉扉は閉まっているのが普通ですが、せっかく爆弾を仕込んだので、開けてみました。プロペラはカフスも含め、良い形をしていると思います。 完成すると、駐機姿勢もそれらしく、ずんぐりヘルダイバーが出現しました。アベンジャーとドーントレスはハセガワから決定版が出ていて、1/72ヘルダイバーは穴だったのですが、これで3羽ガラスが埋まりました。
 韓国プラモデルメーカーは進歩が著しく、日本キットのコピーの時代をとうに過ぎ、3D-CADを駆使した魅力的なキットがどんどん出現してきました。ディテールは問題ないので、後は全体のデッサンということになります。
これからが大いに楽しみです。


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