Home > 今月のハイライト>連載 世界の名作発掘(第12回) アカデミー1/72「Mig-23M」

連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第12回)

アカデミー1/72「Mig-23M」

by 鳥巣 Torisu           /    

<初めに>

 寒かった冬も過ぎ去り短かった桜の季節を越え新緑の香る薫風の季節になりました。モデラー諸氏は聖地静岡ホビーショウーへの作品制作に励んでいる所でしょうか、追い込みに励む気持ちは解りますが眩しい新緑の季節部屋に籠ってばかりではベストコンデションを保てないので時には息抜きに外へ出掛けしょう。新緑の公園の中で飲むビールは格別です(笑)



<実機解説>

1950年代末期各国のジエット戦闘機開発チームではM2クラスの戦闘機の開発及び運用のメドが立ち次なるトレンドを模索していた。
 冷戦時における航空作戦におけるイベントとしては核兵器を相手国に投下するのが最たるものではあったが核ミサイルが戦列化されるとメインイベントは開戦初頭における航空基地への侵入攻撃へとシフトした。
 このような戦略の変更を受けて滑走路を攻撃されても脇の芝生や残った滑走路の一部を使い作戦行動が可能なVTOL機やSTOL機の開発が新しい航空関係者の間で新しいトレンドとなり新たな技術開発が繰り広げられた。
 当時のソ連でもミグ設計局が機首に大型のレーダーを持ち胴体両側にエアーインテークを設け胴体にリフトエンジンを搭載しミラージュⅢに似た形状のSTOL機「23-01」を試作したが飛行中は単なる邪魔物にしかならないリフトエンジンが災いし14回の試験飛行を行っただけで開発は中断された。
 中断されたリフトエンジン方式の替りに短距離離着陸のアイデアとして浮上したのが可変翼機構であった。
 直線翼で離陸すれば滑走距離を短くでき、後退翼にすれば高速を出せる一石二鳥の技術であるが複雑な機構や機体の重心位置の変化等西側の開発チームでも頭を抱えていた技術では有ったが1965年以降アメリカで可変翼機として初飛行の成功を収めたF-111の技術情報が様々なチャンネルを通じてソ連に入ってくると軍部はミグ設計局に可変翼機開発の指示を与えた。
 
 これを受けミグは開発を中断した「23-01」の機体に可変翼を取り付ける作業に取り掛かったが思ったほど簡単には行かず機体は新たな設計の物となり共通点はコクピット周りからレドームへと続く機首部の形状のみとなった
可変翼の採用で主翼の取り付け位置は肩持ちしきとなりエアーインテークもベトナム戦争で撃墜されたF-4の物を回収したものを参考にした可変ランプの物を採用しスムーズに超音速飛行への移行が可能な機体になった。
 開発名が「23-11」と変わった可変翼機構の試作機は1969年に初飛行し名称もMig-23となり様々な飛行試験を終えて1972年にMig-23Mとして多くの機体がソビエト空軍の戦術戦闘機として配備が開始された。

当然ワルシャワ条約機構やソ連と友好関係にある中東やアジア・アフリカ諸国へも輸出がされたが俗にモンキーモデルと呼ばれる本国の機体より性能の劣る機材を装備した機体が当初引き渡されたが1977年以降は本国仕様と同じ性能を持った機体が引き渡されるようになり21世紀になっても東欧の一部の国やアフリカでも使用が続けられている




<実機への誤解>

リビア上空でF-14に撃墜されたりゴラン高原上空でIDFのF-15に散々な目に会わされたりして可変翼機なのに空戦に弱い戦闘機と言うイメージが付いてしまったミグ23ではあるが、そもそもF-14のように空戦機動の為に可変翼を取り入れた機体では無く着陸性能の向上や航続距離の延伸の為に採用した可変翼であるため(だからマニュアル操作の理由も納得できる)空戦機動を高めるために可変翼を採用したF-14と比べて評価するのは酷ではないだろうか
 翼を最大後退角にした時の加速性能はF-4を凌駕すると言われ、低空での最高速度はMig-29より早く適切な地上管制の指示の下では侮りがたい戦闘機と言えるであろう
 
性能
全幅   13.965m(主翼拡張時)
      7.778m(主翼後退時)
全長   19・795m
総重量  20.670kg
最大速度  2.490km(12.800m)
航続距離  2.200km(内部タンクのみ)
武装   R-23レーダー ホーミングミサイル
     R-60赤外線ミサイル
     Gsh-23・23mm機関砲2門
エンジン R-29-300搭載
推力   12.200kg(アフターバーナー使用時)   



<キット解説>

 韓国アカデミーの製品で日本国内では1990年代に入荷されるようになりました。当初は韓国旅行のお土産や独自のルートを持っているお店でしか購入できませんでしたが最近は年に数回定期的に日本に入ってきているので普通の模型店でも購入することが可能です。
但しあまり数が入ってこないようなので見つけたら即購入することをお勧めします
他にもMig-27やA-10・SR-71等低価格で良質なキットが発売されています

この製品は某国内メーカーのMig-23のキットを凹モールドに治したデットコピーの印象を受けるのですが全体的にカッチリした感じです
部品数も可変翼機にしては少なめでミサイルも2種類入っています
キャノピーの透明度は良いです
インストにはソ連のほかシリアのマーキングが書かれていますが何故か入っているのはレッドスター仕様のみと言う不思議なキットです

胴体パーツ

主翼などのパーツ

箱絵

制作

<製作開始・コクピット>

コクピットの床・座席・計器パネルの3点で構成されるシンプルな内容です
計器パネルは何故か機首方向の奥深い所に取り付けるので完成後は全く見えません(泣)
 全体をMrカラーWW2イギリス機体内部色で塗りました
実機同様にコクピットの視界は悪く外から殆ど中は見えないので座席にパイロットを乗せるだけで十分でしょう
 今回パイロットは別の機体へ転換訓練中なので乗せませんでした

<胴体と翼の取り付け>

<エアーインテークの取り付けと可変ランプの形状の修正>

一体成型の胴体下面に可動式の可変翼を付けます
翼を取り付けるダボが若干キツイ感じがしますが遊んでいるうちにゆるくなってくるので加工せずそのまま取り付けました。胴体上面部と接合する部分に丁寧に接着剤を塗り主翼が固定しないように慎重に胴体上下面を張り合わせます
輪ゴムでしばり一晩置いたら先に組んだ機首部を後部胴体に取り付けます
この機体の特徴の一つであるエアーインテークの前に取り付けられている可変ランプの形状が実機にくらべて少し形状がヌルかったので思い切って可変ランプ上下の先端部を切り飛ばし0.5mmプラ版を取り付けてシャープな三角形に見えるように加工しました。
この修正を加えるだけでも見栄えが良くなります
 可変ランプの修正とインテークを取り付けたら機体に発生した隙間や段ズレ個所をタミヤのポリパテを盛り付けて綺麗に整形します
 整形が終わったらクレオス#1200のサーフェンサーを吹き付けて消えたパネルラインを彫り直して基本工作は終了です

<脚の取り付け>

実機の複雑な脚周りを良く再現されていていますが組立は特に難しく有りません。ただし注意する所は主輪に取り付けるカバーの角度と向きが分かりにくいので実機写真を見ながら作ることをお奨めします

<塗装とマーキング>

ミグ23は迷彩を施した機体が多いのですが今回の作例ではシンプルなグレー単色の機体に仕立てました。 
 Mrカラーの332番と334番をブレンドした色を全体に吹き付けMrカラー305番でシャドウー吹きをしたあと先のブレンドした色を重ね塗りしました。グレー1色の塗装ですがシャドウー吹きの演出でメリハリの付いた良い感じの機体に出来あがりました
マーキングは恐らく演習時の識別用に塗られた白い帯を持つポーランド空軍仕様です。
ジャンクデカールの中に有ったドラゴン社のミグ15のデカールにポーランドのマークが残っていたのでそちらを使用しました。大きさも丁度良いです
 年季が入っていたデカールなのでタミヤ製マークフイットを使用して定着させました



<完成>

<参考資料>

ピトー管やアンテナを取り付けた後ミサイル(形がチョット寝ぼけていますが)等を取り付けたらMrカラーの「光沢クリアー」を吹き付けて完成です

ミグシリーズの中でもミグ23のキットは殆どなくましてや凹モールドの物は他にズベズタ社の製品が有るだけです。
アカデミー製品の中では初期の製品ですが完成後のプロポーションの良さに感激します。
日本国内での流通量が極めて少ないので見かけたあなた即買いです
後悔はしないですよ
今月も貴重なアカデミー社「Mig-23」を制作する機会を与えてくださった編集部に感謝です。
文林堂 世界の傑作機No92「Mig23/27 フロッガー」
インタネットによる海外サイトからの資料写真の収集




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Vol.17 2010 May.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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