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連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第14回)

 F-84Fサンダーストリーク (イタレリ1/72)

by 鳥巣 Torisu           /    

<初めに>

 梅雨のまっただかの中モデラー諸氏は如何お過ごしでしょうか
神奈川は梅雨になっても雨が長続きせずぐずついた厚い雲に覆われており時折強いにわか雨の日々が続いております。気候が熱帯に変わりつつあるのを感じています
しとしと降られるよりはドバッと降った方が気持ち良いのですが大雨に見舞われている地域の方にはとんでもない話ですね

今月は修好を変えていつもの誰も知らないキットではなく店頭では見かけるけど完成品は見ない名キット、イタレリF-84Fを紹介します



<実機解説>

P-80に次ぐジエット戦闘機として開発されたリパブリックF-84「サンダージエット」はその大きな搭載量を生かした戦闘爆撃機として朝鮮戦争では勇名を轟かせたが戦闘機としては後退翼を持つミグ15に劣り早々にB―29の護衛任務を解かれ地上攻撃の任務に専念することとなった。
実はリパブリック社は後退翼の利点に着目しておりサンダージエットの試作機が初飛行する直前にドイツから入手したと思われる後退翼の技術を用いた新型戦闘機を空軍当局に提案したがWW2直後の軍縮期で当局は初め関心を持たなかったがF-86が後退翼を採用して成功したのを見て再度リパブリック社の後退翼を取り付けたF-84性能向上型に関心を寄せた。
さらにメーカー側が提示した既存のF-84の生産設備の55%が流用可能でコストを抑えられ最大速度は1.180キロ・搭載量は現行生産型のF-84Eの倍の3.600kgに向上した性能に魅力を感じ1949年にYF-96Aの名で試作を承認した。
 YF-96は既存のF-84Eに40°の後退翼を取り付けられ1950年6月に初飛行を行った。
 最大速度1、059km・10,670mまで14,8分もかかる始末だった。この結果を知った空軍は失望した。
 リパブリック社は低性能の主因はエンジンのパワー不足の為であり強力なエンジンに換装すれば目標達成は可能と食い下がったが空軍による同機の開発優先順位は大きく引き下げられてしまった。
しかし1950年5月に勃発した朝鮮戦争で状況は一変する
大きな航続距離と搭載量を持つ戦闘爆撃機の必要性を認めた空軍はYF-96をYF-84Fに改称して本格的に開発する事を決定した。
ここで機体の名前をF-84Fに改称した理由は予算の掛かる新規開発の機体では無く既存の機体からの発展型であり時間もコストも押さえられると議会に説明し予算を獲得するために用いた手法である。
 
1951年2月14日に初飛行したその姿は直線翼機のサンダージエットとの共通性はキャノピーとエアーブレーキそして機体フレームの一部のみとなり当初メーカーが強調した直線翼型との共通性は55%と言う利点は消滅していた。初飛行をしたF-84Fであるがちょうどアメリカのジエットエンジン開発の混乱期に当ってしまい巧くマッチングするエンジンが見つからずさらに空軍から指定されたライトJ-65-W(英国製サファイアエンジンのライセンス型)の安定供給までに長い時間が必要になったことに加えてエルロンの効き不足やその他機体システムの不調等で開発時間が延び実戦機として認められ部隊配備が決定されたのは1954年5月であった。
 部隊配備されたF-84FはSAC(戦略航空団)を初めTAC(戦術航空団)やANG(州空軍)等へ逐次配備されたが第一線部隊での運用は短くANGを除いて1960年までにTACではF-100・101等に交代しSACもB-52が実戦化されると機体をTACに譲り第一線部隊から静かに消えていった。
アメリカ本国での活動はANGを除いて短い期間で終わってしまったが軍事援助としてNATO諸国に配備されたF-84Fはその搭載量と長い航続距離を生かし西ドイツの450機を初め多数の機体が長い年月間第一戦機としてベルギー・オランダ・イタリア・ギリシャ・トルコで運用された。
またNATO脱退前にフランスが調達したF-84Fは1956年のスエズ動乱で唯一実戦投入を記録している

 NATOに配備され欧州では長きに渡り運用されてきたF-84Fではあるが日本人に馴染みが無いのはアメリカ空軍での主任務が有事の際ソ連やワルシャワ条約機構加盟国への戦術核による攻撃である為、唯一の被爆国である日本へF-84Fが飛来した時の反応を考慮して当局がアジア太平洋地域への配備を躊躇ったのではないかと推測される



<キット解説>

 パーツはランナー2枠にシンプルにまとめられています
イタレリのジエット機のキットの中でも古参の部類に入り同時期のレシプロ機と比べるとかなりアッサリした印象を受けます
モールドは凸モールで表現されていてプラの材質は柔らかめです
キャノピーは傷は無くデカールは新規に印刷されているのか滲みもなく綺麗です。

箱絵
胴体パーツ

デカールとキャノピー

制作

<コクピット>

いつものようにコクピットから組立てます
コクピットは座席・計器パネルとガンサイトの土台を合わせたもの・パイロットで構成されています。
計器パネルはどちらかと言うとガンサイトの土台として彫刻されているのでメーターパネルは再現されていません。プラ板を土台に貼り付けてジャンクデカールからミグ29のメーターのデカール部分を切り取ってそれらしく再現しました。ここは外から覗きやすいので腕に自信の有る方ならデテールアップをしても宜しいでしょう。
L字形の座席を胴体に取り付けパイロットを乗せたらコクピットの組立作業は終了です



<胴体と翼の取り付け>

機首部を張り合わせたら先に組み上がったコクピットを胴体後部に取り付けます。機首部に重りを入れるスペースが無いのでコクピットパネルと座席の下に重りを入れました
主翼と尾翼を仮付けをして尻もちが着かないのを確認したら翼と水平尾翼を固定します。
 固定したら胴体に発生した隙間や段ズレをポリパテを盛り付けて整形します
ポリパテが完全に乾いたら#400・800・1000・1500で削り整形します。ここで凸モールドも一緒に削ります


<サフ吹きとモールドの再現>

凸モールドの削り残しが無かったらクレオスの#1200缶サフ(グレータイプ)を吹き付けて1日程乾燥させます。
乾燥させたらインストや資料本を参考にパネルラインを彫り直します
実機は小さなアクセスパネルが多いのですがスケールが72と小さいので大きなパネルラインしか再現しませんでした。


いつもはモデラーズの肉厚のマスキングテープを使うのですが今回はタミヤ製6mm幅のマスキングテープを使用しました。薄いので曲面に馴染みやすくて扱い易いのですが薄い為力を入れ過ぎるとテープから刃が外れてしまいラインが斜めになったり他の個所を傷付けてしまうので一回でラインを引こうとせず数回に分けて引くと綺麗に引けます


<塗装>

パネルラインの彫直しが終わったら塗装です
インストの指定ですと
機体下面 ライトグレー
機体上面 ニュートラルグレー
迷彩   ダークグリーン
と指示されていました
この通りに塗ると非常に暗くて地味な機体に仕上がるので
写真等の資料を見て判断した結果

機体下面 MrカラーNo324
機体上面 MrカラーNo37「グレーバイオレット」
迷彩   MrカラーNo120「ライトグリーン」 
で塗りました。
機体上下の基本塗装を済ませたらパネルラインに沿って「タイヤブラック」をシャドウ吹きを施してメリハリを付けました。
迷彩のライトグリーンを塗り翼端とエアーインテークを赤く塗り分けたら塗装は終わりです



<デカール貼りと仕上げ>

デカールを貼ります糊が弱いのでマークセッターを塗りしっかりと貼り付けました。
一晩置き、上からクリアーを吹き付けてマーキング作業は終了です
クリアーが乾いているのを確認してからキャノピーと脚、燃料タンクを取り付けて完成です。
マーキングは
ルフトバッフェ「JB032(1962)」第32戦闘爆撃航空団仕様です

今回も店頭では見かけるが完成品を見る機会が殆ど無いイタレリ1/72F-84F「サンダーストリーク」を作る機会を与えてくださった編集部に感謝です










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Vol.19 2010July.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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