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イギリス博物館めぐり(その18)
ロンドン科学博物館

小柳 篤司    コヤナギアツシ       . 

今月のイギリス博物館めぐり(その18)は、ロンドン、サウス・ケンジントンの科学博物館のリポートです。
 ロンドンの科学博物館は地下鉄サウス・ケンジントン駅から徒歩で約10分程度で行けるので、今迄のイギリス旅行でも日程に入れました。2010年7月のイギリス旅行ではケンブリッジからサウサンプトンへ行く途中でロンドンを経由しましたが、丸一日移動だけに費やすのは勿体無いので、7/11(日)はロンドンの科学博物館に行きました。
 館内で重いトランクを引き摺りながら写真は撮れないので、博物館地下のクロークに荷物を預けました。クロークの使用料は1ポンドから3ポンド程掛かります。
 ロンドンの科学博物館は日本なら上野の科学博物館の技術史部門を取り出した博物館に相当し、自然史部門は自然史博物館が担っています。博物館は入場料無料ですが、アイマックスシアターや特別展等のイベントは有料です。
 入口から入って真っ先に目に入るのは、産業革命を起こしたイギリスを象徴する巨大な蒸気機関です。単に骨董品を並べただけで無く、ピストンやコンロッドの動きを見せています。吹き抜けのホールの床には自動車や蒸気機関車が展示され、天井にはアブロ504練習機、ロッキード10エレクトラ、VTOL実験機等の航空機が吊るされています。
 航空部門は博物館の三階で、ここにもスピットファイア、ハリケーンが展示されていますが、イギリスの博物館では珍しく有りません。ここの見所は、北大西洋を横断したビミー爆撃機、シュナイダー・トロフィー・レースで優勝したスーパーマリンS6B水上機、イギリス最初のジェット機グロスター・ホイットルE.28/39等、歴史的偉業を成し遂げたイギリスの飛行機です。残念ながら航空部門内部はまるで洞窟の様薄暗く、しかも窓際は逆光になるので撮影に不向きです。
 科学博物館内を隈なく観て回るには一日では足りませんが、航空に関連した部門だけ観るなら半日でも充分でしょう。

写真(1)アブロ504K "Avro 504K biplane"
第一次世界大戦前にイギリスのアブロ社が開発した練習機で、イギリス海軍、空軍の他
世界各国で採用されました。


写真(2) ロッキード10Aエレクトラ "Lockheed 10A Electra"
第二次大戦前にロッキード社が開発した双発旅客機です。1937年7月、世界一周飛行中
に行方不明になったアメリカの女性パイロット、アメリア・イアハートの乗機も同系列です。


写真(3) ロールスロイス・フライング・ベッドステッド "Rolls-Royce Flying Bedstead"
 VTOL機開発の為の実験機です。2基のロールスロイス・ニーン・エンジンを鉄骨の枠
に載せた様な不細工な姿で「最も危険な飛行機械」と言われましたが、実は動的浮力も
静的 浮力も使わない画期的な航空機で、本機の研究成果が後のVTOL機開発に生かされ
ました。VTOL機の開発史で忘れてはならず、これが無ければハリアーが生まれなかったでしょう。


写真(4) ショートSC.1 "Short SC.1"
 VTOL実験機ですがフライング・ベッドステッドより飛行機らしくなりました。胴体の
中央部にリフトエンジン4基、後部胴体に推進用エンジン1基装備し、1958年5月に
垂直離陸に成功しました。柱の間の壁面に貼り付けられた状態で展示されているので、
写真撮影には不向きでした。


写真(5)ブレリオ単葉機 "Bleriot monoplane"
第一次世界大戦前にフランスのルイ・ブレリオとレイモンド・ソルニエ(注:後のモラン
ソルニエ社の創立者)が設計した単葉機です。
 同型機は1909年7月25日に設計者のルイ・ブレリオ自身の操縦で、世界初の飛行機に
よるドーバー海峡横断飛行に成功しました。


写真(6) アントワネット単葉機 "Antoinette monoplane"
第一次世界大戦前にフランスのレオン・ルババッスールが設計した単葉機です。
 ブレリオ単葉機と同時期にユーベル・ラタムの操縦でドーバー海峡横断飛行に挑みま
したが、エンジン不調で海面に不時着した為に目的を果たせずに終わりました。


写真(7) フォッカーE III戦闘機 "Fokker E III"
第一次世界大戦中にドイツのフォッカー社が開発したEシリーズ単葉機は、機銃をプロ
ペラの間から前方に発射出来る同調式機銃を装備した世界初の戦闘機で、連合軍から
「フォッカーの懲罰」と恐れられました。科学博物館に展示されている機体は、最も
代表的なタイプのE IIIです。


写真(8) ロイヤル・エアクラフト・ファクトリー S.E.5A "Royal Aircraft Factory S.E.5A"
第一次世界大戦中にイギリスの王立航空工廠が開発した、イギリス初のイスパノスイザ
液例エンジンを装備した戦闘機です。展示されている機体は第一次大戦後に民間に払い
下げられ、煙幕で空に文字を書く宣伝飛行に使用されました。


写真(9) ビッカース・ビミー "Alcock and Brown's Vickers Vimy biplane"
第一次世界大戦中にイギリスのビッカース社が開発した双発爆撃機ですが、開発が遅れ
た為に実戦に参加しませんでした。科学博物館に展示されている機体は、第一次大戦後
の1919年6月に、オルコック大尉とブラウン中尉が搭乗して、ニューファンドランド島
からアイルランドまで飛行し、初の大西洋無着陸横断飛行に成功しました。


写真(10) デ・ハビランドDH60Gジプシーモス "De Havilland DH60G Gipsy Moth"
第二次世界大戦前にイギリスのデ・ハビランド社が開発した複葉機モス・シリーズは、
軍用練習機や民間の自家用機等、幅広い用途に用いられました。
 科学博物館に展示されているDH60Gジプシーモスは、1930年に女流飛行家エミー・
ジョンソンが、イギリスからオーストラリアまで女性として初の単独飛行を行なった時の乗機です。


写真(11) スーパーマリンS.6B水上機 "Supermarine S.6B Seaplane"
後にスーパーマリン・スピットファイアを設計する天才設計家レジナルドGミッチェル
技師が、第二次世界大戦前に設計した水上機レーサーで、1931年に開催された最後の
シュナイダー・トロフィー・レースに入賞してイギリスに栄冠をもたらしました。


写真(12) メッサーシュミット Me 163 コメート」Messerschmitt Me 163B-1 "Komet"
第二次世界大戦中にドイツのメッサーシュミット社が開発した、航空史上初そして
唯一のロケット戦闘機です。


写真(13) グロスター・ホイットルE.28/39 "Gloster-Whittle E.28/39 jet aeroplane"
フランク・ホイットル技師が開発したジェット・エンジンを搭載し、1941年5月15日に
初飛行したイギリス最初のジェット機です。2年前の1939年8月27日にドイツのハイン
ケルHe178が初飛行していた為、E.28/39は世界初のジェット機になりませんでした。


写真(14) ホーカーP.1127 VTOL実験機 "Hawker P.1127 VSTOL Experimental Aircraft"
1960年に初飛行しハリアーの一族直系の先祖になったVTOL実験機で、既に基本形は出来
上がっています。展示されている機体は原型1号機です。


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