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特集  ヘリコプター

Kaman SH-2F ”Seasprite” 製作記
(Fujimi 1/72 フジミ)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


SH-2F Seasprite (1/72) Fujimi Box Art より


はじめに

 カマン社のヘリコプターには何か惹かれるものがあります。以前紹介しましたHH-43Bハスキーもユニークで特徴のある形をしていました。特にロータシステムが他社のものと一味違います。ハスキーは、並列交差反転式の2本のメインロータを備え、天井に突き出た2本のマスト上でぐるぐる回転する姿に、よくロータ同士干渉しないものだと感心したものです。今回紹介するシースプライトも、ロータシステムに特徴があります。一見4枚のロータは、普通のヘリのものと同じに見えますが、よく見ると各ブレードの後縁に、何やらバランスタブのような小翼が見えます。 この小翼は、サーボフラップと呼ばれ、ピッチコントロール用に取り付けられたものです。このサーボフラップを動かすことで、この小翼に発生する揚力でブレードの後縁を上げ下げし、ブレードのピッチ角を変化させます。一般的には、ロータヘッドに設けられたスワッシュ・プレートを動かしてブレードの根元から捩じり角を与える方法が採用されていますが、そうしたシステムとは異なり、やはりユニークな方法です。



 ここで実機の歴史について少し述べておきます。シースプライトは開発当初は単発の米海軍向けの汎用ヘリコプターで、HU2K-1(後にUH-2Aに呼称変更)と呼ばれました。量産型の部隊配備が始まったのが1962年の12月で、その後出現した、簡易航法装置を搭載したHU2K-1U(後にUH-2Bに呼称変更)と併せ、190機が生産され、ヴェトナム戦争ではレスキューヘリとしても活躍しました。次いでカマン社はエンジンを双発にしたUH-2Cを開発し米海軍に採用されます。この双発型はさらに電子機器がアップグレードしたHH-2D、そして対潜機材を搭載したSH-2Dへと進化しますが、機体の大半は新造機ではなく、UH-2AとUH-2Bからの改修で賄われました。そんな中、1970年に入って米海軍は戦闘艦の攻撃・防御能力向上のため、LAMPS(Light Airborne Multi-Purpose System)という名称で、戦闘艦搭載用の新しい対潜ヘリコプターの選定に入ります。 このシステムの導入で、戦闘艦と対潜ヘリはデータリンクで結ばれ、攻撃・防護範囲が飛躍的に拡大するわけです。そして1970年10月、カマン社のSH-2Dが、初の本格的艦載ASWヘリコプターとして採用されました。その後1973年から1975年の間に大半のD型が、飛行性能を向上したSH-2Fへと改造され、その後長らく部隊運用に供されます。そのSH-2Fは、第一線を退く1993年10月まで運用され、厚木基地でも度々見かけることがありました。シースプライトの最終バージョンはSH-2Gで、ローターブレードの複合材料化や燃費のいいエンジン(GE T700-401)への換装、そしてアビオニクスの改良などが施されました。しかし米海軍向けの機体は、新造機6機とF型からの改修機18機という結果で終わり、その他ニュージーランド海軍向けに5機の新造機を製造して生産を終了しています。


写真は1982年12月28日に厚木基地の周辺で撮影したHSL-37のSH-2F(150157)です。


 シースプライトのキットの方ですが、国産では1970年代にフジミから発売された、1/72スケールのSH-2FとYSH-2Eのみです。残念ながら現在は絶版になっているようです。当時海外製品では、エアーフィックスから1/72が、マッチボックスから1/48のSH-2Fがリリースされていましたが、手に入りませんでした。その後MPCのSH-2F(1/72)を入手したのですが、中身はエアーフィックスのキットでした。しかしこれらのキットも、最近では見かけることはなく、シースプライトのキットは市場から消えるのかと思っていたところ、昨年中国のキティー・ホークから1/48の決定版とも言えるキットが発売となっています。  さて本題のフジミのキットですが、パネルラインが凹彫りで、リベットもなく細部にこだわらない非常にすっきりしたキットです。また窓ガラスのパーツが表から接着できる点は、組み立てる上ではありがたいと思いました。しかし、いくつか欠点もあります。ボックス・アートが素晴らしかっただけに、その通りでないのが残念でした。一番の問題は、ウィンドスクリーンです。シースプライトの前面ガラスは平面ガラスで構成されているのですが、キットは曲面になっています。またウィンドウ類も分厚く、一見するとレンズのようにも見えます。主脚の取り付け位置がきちんと決まらないのも問題でした。しかし全体としてはシースプライトにしか見えません。キットには少し手を加えるだけでストレートに組み立て、塗装でカバーすることにしました。

製作

1.コクピット
 機体の内部はコクピットとその後方の対潜機材が置かれているコンパートメントに分かれますが、キットでは後方のコンパートメントは一切省略されています。確かに扉を閉めるとほとんど何も見えないので不要かもしれません。コクピットもコンソール、座席、操縦桿だけです。主計器盤のデカールは付いていますが中央コンソールには何もないので、他のキットのデカールを流用してそれらしく貼り付けてみました。また座席もあっさりしたていたので、プラペーパーでハーネスを作り、座席に貼り付け塗装でそれらしく仕上げました。1/72のスケールならこれで十分です。機体に組み込むと写真1のようになります。

写真1 機体内に収めたコクピット



2.胴体の組み立て
 胴体には主脚を収納するスポンソンや、外装型燃料タンク、MADバード、魚雷などを搭載するパイロン類、レーダ高度計のアンテナ、スモーク・マーカー、ソノブイ用受信アンテナなどが取り付くのですが、いずれも小部品で塗装後の接着は作業が厄介なため、予め接着して塗装することにしました。 接着後、継ぎ目の段差やモールドのひけをパテで修正するとともに、実感を損ねる分厚い排気管の肉厚を削り込みました。さらに実機には機首にフラッド・ライトが付くので、ライトを埋め込む穴をピンバイスで錐もみしておきました。(写真2)もう一箇所、写真にはありませんがエンジンのインテイクも実機のイメージと異なるため、追加加工しています。


写真2 組み立てが終わった胴体


3.小部品
 ここでは2、3の追加加工を施した小部品を紹介しておきます。まず主車輪です。径を小さくしたかったのですがタイヤをこれ以上削るのは難しく、あきらめました。そして外側の車輪には、プラ棒で作ったホイールナットとタイダウン用の金具を取り付けました。(写真3) 
写真3 主車輪


 2番目はAN/ASQ-81(V)2 MADセンサーのお尻に付く円盤型の翼ですが、空気抵抗を低減するために穴が開いているのですが、ピンバイスで再現してみました。(写真4) 一部失敗して穴が大きくなってしまいました。しかしこのスケールなら目をつむりましょう。  3番目はレスキュー用ホイストですが、キットでは真っ直ぐな支柱が突き出ているだけなので、まず支柱を作り直し、フックを自作して取り付けました。(写真5)

写真4 MADバード用翼

写真5 レスキュー用ホイスト


4.塗装
 まず胴体の塗装です。機体全体はエンジングレイに塗りますが、その前にテイルロータの後縁部を水色に、そしてエンジンインテーク部を銀色で塗装し、塗料が乾いたところでマスキングです。(写真6) そして前面にエンジングレイを吹き付けました。(写真7)

写真6 エンジングレイ塗装前のマスキング 
写真7 エンジングレイの塗装


 この後はまたマスキングを施しながら、テイルブームの黄色の帯、機首のアンチグレア塗装、脚収納部の白、そして排気管の金属塗装(黒鉄色)と、面倒ですが段階を追って塗っていきます。 黄色の帯はデカールがあるのですが、うまくフィットしないと判断し、塗装で済ませることにしました。(写真8)


写真8 エンジングレイ後の塗装


 胴体の最後はコクピットの下にある捜索レーダ用のレドームです。タンの色で塗装して所定の位置に取り付けますが、キットには位置決めの基準になるものがありません。 写真や図面を見ながら寸法出しをして接着です。万一のことを考え、このパーツは木工用ボンドで接着しました。(写真9)


写真9 捜索レーダ用レドームの取り付け


 次はロータ関係です。メインロータの色は、実機写真を見てもいくつかの種類が見られます。私はローターブレードがグレイ、前縁がエロージョン防止の金属コーティング、翼端が黄色という塗装にしました。テイルロータはブレードが黒で翼端が白と赤で塗り分けられています。これも塗装で表現しました。(写真10)
写真10 テイルロータ


 テイルロータマストの左右に付く水平安定板とその支持棒もデカールを使用せず、塗装で表現しました。これもデカールがうまく貼れないとの判断と、実機の赤と黄色の縞模様がデカール以上に細かいという理由からです。 写真11は、周囲のデカールを貼り付けた後に撮影したものですが、水平安定板と支持棒を機体に取り付けた状態です。


写真11 赤と黄色の縞模様に塗り分けた水平安定板


 最後に搭載物です。燃料は機体と同色です。Mk46短魚雷は実機の写真を見て写真12の様に塗装しました。 中央の金属バンドはアルミテープを細く切って貼り付けています。


写真12 Mk.46 短魚雷


 厄介だったのはMADバードです。先端が黒で胴体と翼を赤と黄色を交互に塗り分けます。(写真13)写真で見ると大きく見えますが、キットのそれは全長が高々20mm程度です。
写真13 塗装の終わったMADバード


5.デカールの貼り付けと仕上げ
 以上述べてきた作業が完了すると、次はデカール貼りです。作品完成度を決める重要な工程です。キットのデカールはオーバースケール(例えば”NAVY”の文字等)のものがある一方で、部隊マークなどがなく、別売のデカールを探しましたが手に入れることができませんでした。止む無く手持ちのMPCのキットのデカールも使用することにしました。いずれも30年を超える代物です。それでもフジミのデカールは少し黄ばんではいましたが、しっかり貼ることができました。 一方のMPCのものは糊が死んでしまっていたうえにフィルムが厚いため、マークセッターを使用したにもかかわらず、シルバリングを起こしてしまいました。乾燥後、デカールの保護とシルバリングの修復を兼ね、かなりの量のつや消しクリアを吹き付けたのですが、シルバリングを完全には解消することはできませんでした。


 残るはクリア・パーツです。キャノピー部は前面のウィンドスクリーン部と天井部が別パーツとなっています。まず天井ガラスの内側からクリアグリーンを吹き付け、乾燥後、ウィンドスクリーン部、天井ガラス部ともガラス部分をマスキングし、胴体と同じエンジングレイで塗装しました。最後にウィンドスクリーン部にモールドされているワイパーをつや消しの黒で筆塗りして完了です。 その他のクリア・パーツには塗装の必要はありませんが、コクピット両サイドのバブルガラスと右舷にある見張り窓は内側から肉を削り、レンズ効果の低減に努めましたが、それほどの効果はなかったようです。最後に3項で紹介した小部品、クリア・パーツ、そしてロータを取り付けて完成です。いろいろ欠点はありますが、組み上がってみるとシースプライトです。


写真14 完成したSH-2F シースプライト(大きさをが分かるように10円玉を置いてみました)


写真15 完成したSH-2F(右舷側)


写真16 完成したSH-2F(左舷側)


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