Home> 連載 世界の名作発掘 「F-4M」ブリテッシュファントム」 (マッチBOX 1/72)


連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第51回)

「F-4M」ブリテッシュファントム」
(マッチBOX 1/72)

by 鳥巣 Torisu




 

<実機解説>

 イギリス空軍は1950年代から運用してきた「ホーカーハンター」の後継機としてハリアーの発展改良型のVTOL戦闘攻撃機P1154を計画していたが1964年の政権を取り戻した社会保障の拡充を目指す労働党政権によって他のプロジェクトと共に闇に葬り去られた。その替わり経費削減の名目でイギリス海軍が導入したアメリカ製のF-4ファントムⅡに英国製エンジンと装備を施したF-4K型の空軍仕様を導入せざる負えなくなってしまった。
 導入に辺り空軍機には不要な海軍機装備を外して低高度で地上攻撃任務に必要な無線機材や20mmバルカンや偵察ポット用の取り付けラックや配線を追加した機体を「F-4M(正式名はファントムFGR.2)」として採用した。

 1967年の初飛行から1969年まで118機生産され1969年に本国のカニングスビー基地での実戦配備を始め西ドイツに展開しているRAFG(在独英国空軍)へと配備されていった。1970年代後半になるとライトニングの退役や戦術攻撃機のジャギャーの配備が進みF-4Mは地上攻撃任務から防空任務へとシフトし冷戦の終了を後継機のトーネードF3と共に見届けて1992年10月に静かに退役した。

諸元
F-4K(海軍型)
全長:17.5m
全幅:11.7m
全高: 4.9m
最大離陸重量: 26t
エンジン:RR・スペイMk202ターボファンジエット
推力 ミリタリー:5.556Kg×2
   リヒート :9.305kg×2
最大速度 M 2.2(高度11000m)




<キット解説>

 マッチBOX社が1970年代後半頃発売したキットです。
このころには伝説となった「運河彫り」と言われている太い凹モールドが全体に施されています。
海軍のK型、空軍のM型が作れるコンパチキットで海軍及び空軍用の専用パーツが付属しています。
3色整形の製品で空体空ミサイル2種類・1000ポンド爆弾・マトラ対地ロケット弾・戦術攻撃や防空用の20mmバルカンポット・偵察ポット等英国仕様のF-4必需品のアクセサリーパーツ完全同封更に搭乗ラダーまで付いてくるサービス満点なキットです。
前脚が伸びた海軍機型も作れるように専用の前脚も付属していてどの仕様で作るか悩んでしまうキットでも有ります(笑)
細かい所を見るとコクピットはバスタブ式の簡略だったり尾部のベント管が無かったり垂直尾翼に謎のフインが付いていたりと五月蠅い方が見ると頭を抱えてしまいそうですが発売当時としては唯一マトモに見えるブリファンのキットなので笑い飛ばして作りましょう。
デカールは空軍が2種類(No6と41SQ)海軍は定番のNo892SQ(空母アークロイヤル運用)の計3種がチョイスされています。

箱絵裏塗装図

製作

<コクピット>

 バスタブ式のコクピットに座席と操縦かん及びパイロット2名の4点構成で非常にシンプルです。当時のマッチのスタンダートな構成です。座席の形は全く違いますがストレート組みがこのコーナーの趣旨なのでそのまま使いました。
コクピット内部と機体内側をMrカラー72番エアークラフトグレーで塗り座席はジャーマングレーで塗った後と並行して塗装したパイロットを乗せてコクピットの組み立ては終わりです。


<胴体と翼の組み立て>

<胴体と翼の接合>

 コクピット作業が済んだら次は胴体と翼の組み立てです。
胴体の合わせは良い方ですが貼り合わせ時にちょっと段ズレが出来たのでラッカーパテを盛り付けて修正しました。
但し胴体左右と下面が分割されている関係で一部大きな隙間が生じたのでプラ板を差し込みパテ盛り修正もしました。
主翼や水平尾翼も合わせが良く軽く棒ヤスリ等で接着面を削り合わせました。
 ファントムは胴体形状がエリアールールと言う括れた(コークボトル型)形なので古いキットですと必ず胴体と主翼の接合箇所に隙間が必ず発生します。マッチのキットもしっかりと大きな隙間が発生したので周囲をマスキンテープで養生してパテを盛り修正しました。
その代り水平尾翼は大きなツバで胴体の開口部に取り付ける組み立て方なのでガタ付も少なく楽に組めました。
ブリファン特有の大きくなったエアーインテーク部品の取り付けも良くて取り付け部の所が実機同様のパネルラインと重なるので何も直さずに取り付けました。


<サフ吹きとパネルラインの彫り直し>

 各作業時にパテ盛り修正した箇所を紙ヤスリの#400・1000・1500と削り仕上げに#2000で全体を整えた次にクレオス#1200のグレーサフ缶を吹き付けて一晩乾燥させます。 乾燥が確認できたら消えた胴体や主翼のパネルラインを彫り直します。
いつも通り大きくて目立つ所だけを彫り直しています。


<塗装とマーキング>

 カラーは典型的な下面バーリーグレー・上面ダークシーグレーにダークグリーンの英国空軍機迷彩です、1950~1990年代初めまで艦載機や防空専門以外は基本的に変化していません(恐) 使用した色は大量にストックが有った 上面Mrカラー331「ダークシーグレー」 下面Mrカラー334「バーリーグレー」 迷彩Mrカラー330「ダークグリーン」 の基本3色のみです。 先に下面色の334を塗り乾燥後上面の331を塗ったのちパネルラインに沿ってジャーマングレーをシャドゥ吹きし更に331をオーバースプレーしました。迷彩のダークグリーンはハンドピース用に希釈した塗料を筆に含ませて迷彩のガイドラインを描いてから中ら外へ向けてハンドピースで塗りました。 最後に機首部の黒やエンジンノズル及び周辺の金属色の塗り分けを施して塗装は完了です。 味付けとしてエナメルのスミ入れブラックを機体全体に流し全体のトーンを抑えました。 (マーキング)
今回は地味な機体の多いブリファンの中でもチョット明るめな白いラウンデルを描いたNo41SQの物をチョイスしました。
マーキングが明るめだった理由の他にオマケパーツに入っている偵察ポットを取り付けるためにはこのマーキングを選ぶしか有りませんでした(笑)
経年劣化及び保管状態が悪くてデカールを保護している紙が茶色く変色しデカールから剥せなくて一部のデカールが使えませんでしたのでジャンクデカールを流用してマーキングを施しました。
最初から国籍マークと部隊マークや機体No及び最小限のコーションマークしか入っていないので「72サイズだし細かいコーション類は貼れないし見え無いし」と割り切りキット付属の物だけを貼ってマーキングは終わりです。
 



<装備品と足回りの取り付け>

 機体製作の待ち時間の間に塗装と組み立てを済ませた脚と装備品を取り付けます。
足回りは実機同様にゴッツイ作りでしっかりと取り付けることができます。日本や米国メーカーの様な細かいデテールは有りませんがビキナーでも簡単に組める所が好感を持てます。
装備品のロケット弾の形は見ると萎えてしまいますがこのマトラ社のロケット弾のストックは無かったのでキットの物を使います。それに比べて偵察ポットのデキが良いと言うのはマッチ社の拘りでしょうか?




<キャノピーの取り付けと仕上げ>

 ファントムのキットの中では発売が1970年代後半と思われますがキャノピー(前部シールド部)の形が潰れていている所がこのキット最大の難点でしょう。 それ以外は良い感じなのですが、諦めて胴体とフイットするように削り乗せました。
最後にオリジナルブレンドした「半光沢クリアー」を全体に吹き付けて完成です。




 以前からマッチのブリファンは作ってみたいと思っていましたが絶版品なのと完成品を見る機会が無かった(覚えていない)のですが たまたま中古ショップで箱無しボロボロ袋詰めの処分品を格安で入手できたのでこの機会に完成させることが出来ました。
このキットを完成させる機会を下さった編集部に感謝です。
 参考資料

文林堂 世界の傑作機No82
      「F-4ファントムⅡ 輸出型」


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