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飛行機プラモデルの製作

English Electric ”Lightning F.6” 製作記(Airfix 1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


English Electric Lightning F. Mk6 (1/48) Airfix Box Art より


 今回紹介する作品は、2年半前に製作したエアーフィックスのライトニングF.Mk6です。最近、エアーフィックスの新しい赤箱で再版されていますが、作例のキットは2001年頃に入手したものです。1/48のF.Mk2AとF.Mk6のコンバーチブルキットで発売されたもので、発売当時に買いそびれ、偶然見つけた中古品を手に入れることができました。F.Mk2AはF.Mk2の機体をF.Mk6仕様に改造したもので、F.Mk6の生産後に改修されているため、新造機ではないものの最新バージョンと言えるのかもしれません。どちらのタイプに仕上げるかは悩ましいところですが、ボックスアートのようにオーバーウィングタンクを取り付けてみたかったので、F.Mk6の方を選びました。 マーキングは、英空軍に最後まで残ったライトニング飛行隊の一つ、RAF Binbrookに配備されていた第11飛行隊所属機で、解散する直前の司令官、ジョン・スペンサー中佐の搭乗機(XR728)に仕上げることにしました。F.Mk6の外形的特徴は、先端の角ばった大型の垂直尾翼、航続距離増大のため増積された胴下タンク、外翼後退角が少し浅くなったキャンバー付の主翼、近接戦にも対応するため搭載された胴下タンク前部の30mmアデン砲、そして主翼上面に取り付け可能なオーバーウィングタンクではないでしょうか。エアーフィックスのキットはこれらの特徴を余すことなく表現した優れたキットだと思います。



English Electric Lightning F.Mk6 (Airfix 1/48)

実機紹介

 米国の戦闘機を見慣れた私の目には、英国の戦闘機が何故か新鮮に映ります。その個性的な形状がそうさせるのかもしれません。イングリッシュ・エレクトリック(EE) ライトニングもその一つで、冷戦時代を代表する戦闘機として長く英国空軍の主力戦闘機の座に君臨しました。しかしこの機体が、英国製の最後の単座戦闘機となるとは誰もが予測できなかったことです。 ライトニングは、三角翼を思わせる鋭い後退角と、アフターバーナー付のロールスロイス製Avon 301Rエンジン2基を縦型に配置した独特の形態により、マッハ2を超える最大速度と50,000ft/minの上昇率を実現させました。本機は、試作機を含め総計339機が生産され、英国空軍(RAF)の他、サウジアラビアとクウェートの空軍でも採用されています。



 英国のジェット戦闘機の開発を遡ると、ナチスドイツとほぼ同じ時期にジェットエンジンの開発に成功したのですが、ドイツ機のような革新的な機体を手にするには至りませんでした。この流れは戦後にも引きずられ、ミーティア、ヴァンパイア、アタッカーといった機体が生み出されたものの、プロペラ機の性能を若干上回る程度のものでした。そのため、1946年には航空機生産省から後退翼戦闘機に対する要求仕様書が出され、ホーカー・ハンターやスーパーマリーン・スイフトへと繋がっていきます。さらに1947年5月、EE社はマッハ1.5の研究機の研究契約を獲得し、1948年の末にはライトニングの形態に近い研究機の形態が明らかになります。軍需省はこの設計結果を見て、翌年には試作機2機をEE社に発注しました。これがP.1Aです。 P.1Aの初号機は1954年8月4日にボスカム・ダウンで初飛行に成功しますが、この年の頃には米国でもF-100が、ソ連ではMiG-19が出現し、世の中は超音速機実用化時代への移行が始まっていました。P.1は初飛行の7日後の8月11日には早くもマッハ1.02を達成し、その能力の片鱗を見せつけました。しかしP.1はアフターバーナーの無い、サファイア・エンジンを搭載していたため、その後のマッハ2を超える速度要求の達成には、更にパワフルなアフターバーナー付のエンジンの採用が不可欠となりました。そのため英空軍は、2機のP.1を高速戦闘機実現に向けた研究機へ改修し、P.1Aとし、さらに高速実用機の試作機としてP.1B 3機を発注することを決めたのです。このP.1Bがその後のライトニングの原型となります。


 P.1Bは順調に試験飛行を重ね、その間非公認ながらもマッハ1.72の世界速度記録も樹立します。順調な仕上がりの結果量産前ロットの20機のP.1Bが生産され(これらのP.1Bは後にF.Mk1に改称されますが、前線部隊への配備はされえず、研究試験部門での使用に留まります。)、続いて量産型の19機のライトニングF.Mk1の生産が始まり、その後改良を重ね、新造機としてはF.Mk1が28機、F.Mk2が44機、F.Mk3が70機、F.Mk3A(F.Mk6の暫定版)が16機、F.Mk6が39機生産されています。また仕様改修の行われた機体も多く、44機のF.Mk2の内31機が後にMk.2Aに、5機が輸出用のF.Mk52へ、1機がF.Mk3へ、そして残りがF.Mk3Aへと改修されました。さらに、F.Mk3の9機とF.Mk3Aの16機がF.Mk6へと改修されています。 一方、練習機として生産された複座型としては、T.Mk4が22機(内2機は試作機)、T.Mk5が22機あります。これらはRAF向けですが、さらにサウジアラビアとクウェートの空軍向けに46機のF.Mk53と8機のT.Mk55が生産されました。F.Mk53はF.Mk6とほぼ同じ仕様の戦闘機ですが、主翼のハードポイントを増やし、ロケット弾ポッド等の装着が可能となり、マルチロール戦闘機仕様となっています。



 さて、RAFでの運用ですが、ライトニングは防空用要撃戦闘機としての任務遂行のため開発された機体であり、昼間戦闘機のホーカー・ハンターと全天候戦闘機のグロスター・ジャベリンから英国全土の防空任務を引き継いだ後、1964年までに英国内の防空戦闘飛行隊は、全てライトニングで固められることになりました。またその後、海外派遣部隊もライトニングに編成替えが行われました。こうしてしばらくはライトニングの全盛時代が続くことになりますが、1968年にRAFの改革が進められ、1969年に入ると戦闘爆撃任務にF-4ファントムの飛行隊の編成が始まり、さらにジャギュアの導入が始まるとライトニング飛行隊の縮小が始まります。 戦闘爆撃機として導入されたジャギュアはファントムのミッションに替わり、ファントムが防空ミッションを担うようになったのです。そして1974年9月のライトニングOCU(転換飛行隊)の解隊を皮切りに、ライトニングの前線部隊が次々と解隊されていきました。解隊された飛行隊は全てファントム飛行隊に転換され、RAF Binbrookの第5飛行隊と第11飛行隊、そしてLTF(Lightning Training Flight)のみが、それぞれ1987年12月31日、1988年4月30日、1987年4月30日まで生き残り、ライトニングのRAFでの生涯に終止符を打ったのです。

製作

 今回の製作にあたっては、エデュアルドのエッチングパーツを使用して、コクピットやエンジンノズルなどのディテールアップを図りました。デカールについては購入してから時間が経過していたのでキット付属のデカール使用には不安がありましたが、使ってみると問題なく使用でき、改めて海外のデカールの品質の高さに驚いた次第です。かなり細かなステンシルまで準備されており、これで十分でした。  製作に移る前に、どういう手順で組み立てていくか、自分なりに考えてみました。気になる箇所は、インストにも書かれている錘をどのように入れるのかという点と、機首インテイクリップ部を段差無く組み立てるかの2点でした。いろいろ考えた結果は以下の通りです。では、製作の過程についてご紹介していきます。まずは胴体に詰め込むものから始まります。


1.コクピット

 コクピットはシンプルな構成で、バスタブ式のコクピットに計器盤とコントロール・スティック、スロットルレバー、そして座席を取り付けるだけです。計器盤もデカール方式です。組み込めばこれでも十分だと思いますが、今回はエデュアルドのエッチングパーツでディテールアップしてみました。(写真1)まだ座席は組み込んでいません。10円玉と比べるとどの程度の大きさか、分かっていただけると思います。 (写真1) コクピット


2.インテークダクト
 次にインテイクダクトですが、ライトニングは、インテイクは機首に1個所しかありませんが、インテイクダクト内で流路が2つに分岐され、縦型に2基並べたエンジンに空気が導入されます。キットでもこのダクトがモデル化され、ストレートに延びる下側のエンジンの圧縮機が覗けるようになっています。 またダクトには前脚の収納部もモールドされています。(写真2)がダクトの部分で(写真3)が圧縮機のフロントです。この圧縮機がダクトの丸穴に収まります。


(写真2) エアーインテイクダクト 
(写真3) 圧縮機フロント部


 またインテイクダクトの前方中央にはセンターコーンが取り付くハウジングがあります。実機ではこの中に火器管制レーダが収められますが、モデルでは(写真4)のように錘の一部を収納しました。
センターコーンとハウジング部のすり合わせを行い、隙間が出ないようにします。そしてセンターコーンは全体をグリーンで、先端をクロームシルバーで塗装しておきます。(写真5)

(写真4) インテイクダクト内に収納した錘の一部
(写真5) センターコーン


 センターコーンの取り付けは後の工程で行います。インストではここでインテイクリップ(写真6)を取り付けることになっていますが、そうした場合、インテイクダクトの内側で段差が出てしまう可能性があり、手順を変更することにしました。
 まずインテイクリップを組み立て終わったダクトと接着し、内側の段差をなくします。その後胴体に組み込み、胴体とインテイクリップ外面との段差を修正することにしました。
こうすれば、多少の手間もありますが、塗装を終えたインテイクダクトの内側の修正は無くなります。組み立てが終わったインテイクダクトが(写真7)です。
なお、インテイクダクト内側と圧縮機ファンは銀で、またインテイクリップ内側はクロームシルバーで予め塗装しておきます。


(写真6) インテイクリップ
(写真7) 組み上がったインテイクダクト


3.エンジンノズル部

 胴体後部のエンジンノズル部は、アフターバーナー、エンジンノズル、そしてノズルフェアリングとから構成されます。アフターバーナーにノズルを取り付け、胴体に組み込んでからノズルフェアリングを取り付けるという手順になります。エンジンノズルにはエッチングパーツを用いたのですが、出来上がった外径がノズルフェアリングの穴より大きく、ファエリングの穴を随分削ることになりました。(写真8)外表面はピカピカ光っているのでクロームシルバーで仕上げ、内側には焼き鉄色を吹き付けています。エンジンノズルは苦労して嵌め込んだものの、完成するとほとんど見えないという結果になりました。 (写真8) エンジンノズル


4.胴体
 キットはF.6とF.2Aのコンバーチブルキットになっています。そのため、機銃の種類と位置が異なるため、そのパーツをまず胴体の左右パーツに貼り付けます。F.6は30㎜のアデン砲が左右各1門、胴下の大型タンクの前半部に収納されています。 今回はF.6を製作しますので、このパーツを選んで左右の胴体パーツに接着、整形しました。左右の胴体パーツが揃ったところで、コクピット、インテイクダクト、そしてアフターバーナー部を胴体に組み込みます。(写真9)

(写真9) 胴体内への部品の組み込み



 また(写真9)の段階では未装着ですが、コクピット後方の隙間にも錘として小径の鉛球を詰め込みました。結局センターコーンを含め、(写真10)の量の錘を詰め込んだことになります。 (写真10) キットの機首部に装着した錘の鉛球


 左右の胴体の接着部が固まったところで、接合部の整形をしていきます。まずはインテイクリップ部と胴体外形との段差の修正です。段差のある部分にポリパテを盛って乾燥後整形します。(写真11)  リップの内側は塗装済みのためしっかりマスキングしておきます。整形後の状態が(写真12)です。整形が終わったリップ部は、クロームシルバーで塗装します。


(写真11) インテイクリップ部の段差修正前
 
(写真12) インテイクリップ部の段差修正後



 次にウィンドシールド取り付け部の段差修正です。胴体側が少し幅広のようです。両面テープでウィンドシールドを仮止めし、胴体の取り付け部を削っていきました。(写真13) (写真13) ウィンドシールド取り付け部の段差修正


 修正後、別途製作してあったグレアシールド部(写真14)を計器盤の上に取り付け、マスキングしたウィンドシールドを接着します。(写真15)
(写真14) グレアシールド
(写真15) ウィンドシールドの取り付け


 そして最後がアデン砲の砲口部の工作です。まず真鍮パイプを機銃の砲身として胴体に埋め込みました。厄介なのは砲口部のガス抜き部です。この部分はやや複雑な形をしています。図面がないので、写真を見ながら寸法を推定し、プラパイプを輪切りに加工して部品を作りました。ガス抜き板の傾きが微妙に変化しているのがやっかいなところです。それを(写真16)のように並べて接着し、それらしく整えました。 (写真17)は左舷の砲口を見たもので、砲口のセンターがガス抜き板の穴のセンターと一致するように調整しています。しかし苦労した割には、完成後はほとんど目に入らずがっかりです。

写真16 アデン砲のガス抜き板 
写真17 ガス抜き板の調整


 ここまで工作が終わったところで、下面タンクの前半部や、砲口パネル、エアブレーキの内部など、メタル部分をトーンの変えた銀塗料で塗装しました。


5.主翼、尾翼
 主翼は上下貼り合わせでフラップとキャンバーの付いた下面前縁部が別物になっています。水平尾翼と垂直尾翼は一体成型という構成です。主翼は、前縁部パーツを貼り合わせる際に若干の段差が生じるのでフィットチェックが必要です。組み立て後胴体に取り付けますが、胴体との接合部との間で、上面側は段差、下面側は若干の隙間ができます。しかし下面側の隙間には目をつむり、上面の段差だけを修正しました。(写真18) またフラップは可動ですが、今回は固定しています。垂直尾翼も塗装前に胴体に接合してしまいますが、胴体との合いは見事です。ただ根元にあるエアースクープが開口していないため、ピンバイスなどを使って開口、整形しました。(写真19)

(写真18) 主翼取り付け部の段差の修正 (写真19) 垂直尾翼エアースクープ部の開口


6.塗装とデカール貼り
 製作するNo.11SQの機体は、胴体と翼の上面がダーク・シーグレー、胴体の下がメディアム・シーグレー、翼の下面がRAFバリーグレーとグレー3色で塗り分けられています。これらの機体色を塗る前にまず、銀やクロームシルバーなど、メタル色を塗装した部分をマスキングします。そして最初に垂直尾翼先端をセミグロスの黒で塗ります。  乾燥後(写真20)のようにマスキングし、一番色の薄いRAFバリーグレー、メディアム・シーグレー、そしてダーク・シーグレーとマスキングを重ねながら吹き付けていきます。塗装を終えてマスキングの一部を外した状態が(写真21~23)です。

(写真20) 垂直尾翼先端の塗装とマスキング
(写真21) 機体色塗装後の機体上面

(写真22) 機体色塗装後の機体下面
(写真23) 機体色塗装後の機体側面


 塗装が終わるとデカール貼りです。エアーフィックスのキットには細かなステンシル類も付いており、これらを貼り付けていくのが実に大変な作業となりました。特にラインのデカールが結構多く、切れないように気を使いました。 結構年数の経ったキットでしたが、デカールは生きながらえ、発色もまずまずです。貼り付けの際多少シルバリングを起こしましたが、クリアのオーバーコートでかなり救うことができました。


7.小物類 の製作、最終組み立て、そして完成
 アンテナ類など小さな部品が数多くありますが、ここでは代表的なものだけ紹介します。(写真24と25)が主脚と前脚です。脚柱と車輪のハブは銀で、シリンダー部をクロームシルバーで塗っています。(写真26)がエジェクションシートです。細かく塗り分けエッチングパーツのシートベルトなどを取り付けると、それらしくなりました。(写真27)がキャノピーです。キャノピーを開状態にするため、内側も塗装しています。 エッチングパーツのリアビュー・ミラーなどを取り付けていますが、キャノピー頂部のアンテナからの同軸ケーブルを自作し、取り付けました。外部搭載品は、ライトニングF.6特有のオーバーウィングタンクとファイアーストリーク・ミサイルを搭載することにしました。(写真28)が完成したオーバーウィングタンク、(写真29)がファイアーストリーク・ミサイルです。ミサイルは良くできていました。


写真24 主脚
写真25 前脚


写真26 エジェクションシート
写真27 キャノピー


写真28 オーバーウィングタンク
写真29 ファイアーストリーク・ミサイル


 最後に水平尾翼と以上に紹介した小物類を取り付ければ完成ですが、組み立てで厄介だったのは主脚の取り付けでした。一見よくできた脚ですが、ストラットの取り付けヒンジ部がなく。ストラットを取り付けようにも位置が決まらず、写真などを参考に取り付けることになりました。この辺は改善の望まれるところです。 しかし出来上がるとそんな苦労も忘れてしまいました。(写真31~34)が完成したライトニングF.6です。

写真31 完成したライトニングF.6(XR728)


写真32 完成したライトニングF.6(XR728)


写真33 完成したライトニングF.6(XR728)


写真34 完成したライトニングF.6(XR728)





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