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飛行機プラモデルの製作

 PZL P-23B カラシュ (エレール 1/72)

by 寿




 ポーランド産の、(一部で)非常に有名なヒコーキ「カラス」であります。
・・・・カラス、やっぱりカラスですよ、うん。正式な発音は「カラシュ」と言った方が正解らしいのですが、ワタクシ寿的には「カラス」なのであります。長年慣れ親しんだ呼び方は例え間違っているのだと判っていても中々に抜けないものなのであります。
ちょっと古い本だと「カラシ」だったり「カラシェ」だったりしますが、最近ではカラシュで落ち着いているようです。いやはや外国語の日本語化というのは難しいもんですなぁ。




 思えば本国とは違った呼び方をされている工業製品というのは身近にありふれているものでありまして、例えば文房具のホッチキスなんぞも本来は製造された会社の名前で、戦車も作っていたあのフランスの「オチキス社」のこと。英語読みのまま日本に入ってきて、しかも会社名がそのまま道具の名前として定着したちゃったようですね。

 他にもクルマのBMWだってCMなんかじゃ「ビーエムダブリュー」って言ってるけど、本国のドイツ発音なら「ベーエムヴェー」だし、ヒコーキの「イリューシン」は「イリユーシン」だし、一昔前の「パンテル」戦車は今では「パンター」戦車な訳なのであります。零戦だって我らモデラーは「レイセン」って呼んでますけど、実は戦時中でも「ゼロセン」って呼んでいたらしいですし。(みんながみんなそうだった訳でもないでしょうけどw)




 まぁ何が言いたいのかといえば、「此所は現代の日本なんだからどー呼んだっていいぢゃん」、「みんなが誤解なくそれと判れば問題ないでしょ」と。
そんな訳でカラシュはカラスで問題無いのであります。これはカラスなんですよ。カラシュかもしれないけどカラス。うん、間違いない。




 そーいやこのキットはエレール製だけど、昔の模型誌には「ヘラー社」って紹介されてたなぁ。他にも「イタレリ」は「イタラエリ」だったしねぇ。
 ちなみに、カラシュというのはポーランド語で鮒(ふな)という意味らしいです。うーん、文化の差と言ってしまえばそれまでだけど、軍用機に付けるニックネームにしちゃあ随分と牧歌的な気がする。ホントのところどうなんでしょ?

製作の詳細

(写真1)ポーランドのIBG社から新金型でカラス(カラシュ)が発売されちゃって、「そーいえばエレールのカラスがあったな」と思い出してしまったのが今回のきっかけ。対抗意識というかなんちゅうか、動機はそんな感じのデキゴコロであります。
 で、改めてパーツを出して眺めてみると思っていた以上に出来がよろしい。凸モールドとはいえ繊細で翼の後縁は極薄で胴体の形状も実に良い雰囲気。水平尾翼まで二種類入ってるしね。スマン、正直侮っておったよ。

(写真2) 当時のエレールってこんな雰囲気のボックスアートがデフォルトだったよね。今見ると懐古趣味というか(実際古いけど)のんびりしたムードが漂ってくるというか、まぁそんな感じの絵柄が多いですわ。ただ資料が古いせいでボックスアートの機体色はルーマニア軍のもの。ポーランド本国仕様機にオリーブグリーンはなくてポーリッシュカーキ(なんじゃそりゃ)オンリーだそうな。確かにモノクロ写真でグリーンとカーキの見分けは難しいでしょうよ。



(写真3) だーっと機体内部をライトグレイで塗る。インストの指示によればオール銀だけどなけなしの資料を見てもナチュラルメタルには見えないし、ましてや内部にドープを塗るとも思えない。友人に頼んで調べてもらったところ、どーもコクピットまわりは明るいグレイで後部銃座から爆撃手が入り込む辺り(下腹の出っ張ったところだ)が無塗装の銀らしいという返答が。いやー、やはり持つべきものは友人じゃのう。ありがたいこっちゃ。でもそんな労力を無視するがごとく単一色塗ってよしとするワタクシめは相当なもんですな。
 だってその配色で塗ったら後がタイヘンだよ?銀色ってアラが見えやすいし~今回は古いキットをなるたけ手をかけずに仕上げたいし~灰色ならショボい内装が目立たないし~
 そんな訳で機体内部はライトグレイ一色で統一。それが平和への近道じゃ。





(写真4) 内部色を塗ったら胴体貼り合わせて翼をくっつける。ふははは、ここまで来ればコッチのもんすよ。凸モールドが消えようがお構いなしにがしがし削ってパーティングラインを抹消してまいます。消えたモールドなんぞなんぼでも取り返しが効くでのう。この世で取り返しが効かないのは冥土に旅立った者の命くらいじゃ。

(写真5) 凸モールドの再生、とまではいかなくてもナイフでけがけばプラが勝手に盛り上がって擬似的な凸掘りとなってくれる。エレールはプラの材質が柔らかいから更に楽。仮に失敗したとしても凹モールドになるだけで、あとは制作者の気の持ちよう次第ですな。「凸掘りの中に凹掘りがあって何が悪いんじゃい」ってことで。



(写真6) いつものよーにスミ入れを済ませた後に、ミディアムグレイでざーっと下塗り。


(写真7)二回目の下塗りはライトグレイをエアブラシでぷーっと吹く。下塗りの筆目とスミ入れをボカすのが目的で、コントラストは最終色のライトブルーを目指します。



(写真8) 下面が一段落したら上面の塗装をば。オリーブグリーンをベースにするので瓶ナマ(ビールの話では無い)の色を薄めてだーっと塗ってみる。ふーむ、やっぱ予想通りちょびっと暗いねぇ。イメージ的にはボックスアートの色目にもっていきたいのよ。

(写真9) 凸掘りのモールドなのでスミ入れもいつもよりメリハリが肝要。凹掘りなら一度で充分だけど立体的に盛り上がっているから土手の両脇にスミを入れる感じで塗ってみる。




(写真10) ムラの部分に三菱コクピット色をリタッチしてフィールドグリーンでボカしてみると・・・・あ、あれぇ~?思っていたよりも随分と明るい感じに。グレイ、というかRLM02あたりを混ぜた方が良かったかなぁ~




(写真11) ま、まぁこの色も悪くはないよ。エナメルの茶で再度スミ入れ補填すれば彩りも落ち着くだろうし・・・・ってところでデカール貼って細部を塗って出来上がり。も一度塗り直しても良かったけれどエレールのカラスはもう一匹居るからこれはこれで良しということにする。写真で見た展示機のグリーンはもっともっとケバかったから、これでもかなり大人しい部類だろうしね。(まぁ、それが当時の色を完全に再現しているかどうかってことはかなり怪しいもんなんだけれど)
 機銃の銃身やピトー管、そして尾ソリの支柱を真鍮線に変えた以外はまったくのドノーマルの完成品です。いや~すっごくイイキットだよコレ。モノが古いからそれなりに気を使わないといけない部分はあるけれど、凸掘りを嫌がるモデラーも多いけど、でもそれだけの理由で避けて通るなんてもったいない。ちょびっと手をかけてやるだけで、ほ~らこんなにかっちょええ機体があなたのものに。
 最新キットもイイけれど、「若造なんぞに負けてたまるか」という老舗キットの気概に触れてみるのも一興かと。そんなことをふと思ってしまった今回の制作記でありました。


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                    editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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