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誌上個展

<日本航空史>あいこく1号はどんな色?

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム



 「愛国」は日中戦争から太平洋戦争当時に国民の献金で購入して日本陸軍へ納入された軍需品につけられた愛称である。海軍は「報国」と名付けた。陸軍の「愛国」飛行機第1号は、ユンカースK-37だ。
 井田博『日本昭和航空史 日本陸軍愛国号献納機』(モデルアート社、平成13年)の表紙絵になっているし、実機についても詳しく書かれている。
 この機体のプラモデルはないので大きな心配ではないのだが、同誌p.14とp.30、31の写真は背景の木や駐機している飛行機の感じからみて同じ時の撮影だと思うが、p.14とp.30は明暗も塗りこみの感じも、全然違って見える。p.64の図面では「上面は暗緑色、茶褐色の塗り分けで、下面は無塗装の銀であったと思われる」とあるが、これらの写真では“そうでしょうかね~”くらいにしか判断できないし、加えて塗り分けパターンは写真と表紙絵とで相違しており、下面銀と推定されても写真ではわからない。



 掲載の彩色絵葉書は当時のものと考えられるが、迷彩は上面の緑色系、茶色系ともに濃淡があるので、2色でなく4色で刷られている。一見すると資料性が高そうだが、垂直尾翼の文字をみると明らかな加工がなされていると思われるし、胴体の日の丸の位置もだいぶ怪しい。もとは写真かもしれないが、加工が過ぎてもはや絵になっている。これではとてもではないが「この色が正しい」と言いきれないのだが、当時は不自然でなく受け入れられていた色であったことも確かであろう。せめて緑系と茶系の4色なのかといえば、挿絵でこれとだいぶ異なる色調のものがあることも白状しておく。
「じゃあ、どうするの?」となるが、そこはプラモデルがない気楽さで、「よく分らないのよネ」で済ませておきたい。あまり真剣になり過ぎないことが大切だと思う。




 オマケといいながら長文になるが、「あいこく1」の文字に注目してもらいたい。現代人にはあまりにも普通で気付きにくいのだが、この時代にもかかわらず左から右に書いてある。おそらくこれは文字と数字の組み合わせであったので、そうしたのだと思う。戦前は右から左へ書いたことが多いにしても、文字に数字やアルファベットが入ると、ごく普通に左から右へと書いている。右から読むか、左から読むか、その場で各自が判断していたのだ。だから、「あいこく1」の書き方が特別であったのではない。前掲『日本昭和航空史 日本陸軍愛国号献納機』にはいろいろな愛国号の写真が紹介されており、これらをみると3号以降は「前から後ろ」で書いてある。 献納の数字が1ケタのうちはこれで問題ないが、数字が2ケタになってからも数字だけは胴体左右に関わらず通常の書き方になっている。さらに垂直尾翼の機種名はすべて左から右へ書いてある。その結果、胴体右側は、「愛国○(献納者名)」は前から後ろへ、○に入る数字は通常に、垂直尾翼の機種名は後ろから前へ書いてあったことになる。その場で各自が判断するのも大変だ。
 愛国1号は人気があったのだろう、写真や絵葉書の種類は多く、今でも入手しやすい。




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