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特集 時空を超えたプラモデル

    BELL UH-1B IROQUOIS (タミヤ 1/100)  

by 五六式

 今月の第2特集は,”時空を超えたプラモデル”ということで,時間を50年ほど遡ってタミヤのミニジェット機シリーズからUH-1Bを作ってみました。

<実機について>

 アメリカのベル社が開発,製造した多用途ガスタービンヘリコプター。ベトナム戦に大量に投入され,兵員輸送,救難,対地攻撃などで活躍した。(F.コッポラ監督の”地獄の黙示録”にも登場。ま,血塗られた一族やね。)
B型は,陸上自衛隊でも採用され,H型を経て現在も,その発展型のUH-1J(ほとんどが富士重工業(現・SUBARU)で改設計されているイロコイ一族の異端児)が現役で活躍中。



<キットについて>

 初版は,1969年4月,(←49.5年前,四捨五入すると,50年前だ!!)五六式が中坊のときに定価¥100で発売になっています。当時のキットや完成品は,もう手元にないので20数年前に秋葉原で見つけたブラジルタミヤ製の逆輸入品を製作しました。ちなみに,ブラジルタミヤ製のミニジェット機シリーズでは,本キットがシリーズ第1作になっており,当時のお値段は,¥450でした。 “Web モデラーズ“2018年7月号のプラモガイド再録(1970年 その10)にモノグラムの1/24スケールキットと一緒に紹介があって,絶賛されていましたが・・・。キット自体の古さと,ブラジル製ということと,経年劣化とで大変なことになっていました。

部品点数は,約70,そのうち,武装関係が30です。



〇 まずは,ポジティブに優れた点から
・箱絵は上田信氏によるもので,情報量が多く,塗装やディテールアップの手がかりとして役に立ちます・・・というか,役に立ちすぎて完成が遠くなります。
・同時代の他の大きなスケールのUH-1のキットと比べても,こちらの方が実機によく似ています。( 個人の意見です。)ミニジェット機シリーズで最初に100万個生産に達したというのも頷ける話です。
・現在のキットと比べると,部品の合いが悪いのですが,当時としては,非常に高精度です。
・計器盤のメーター類が説明書に印刷されており(ブラジル版では,デカールに入っています。),ディテールアップ無しで操縦席周りが精密に表現できます。


X 次は,困った点
・押し出しピン跡の凹凸やひけが多く,製作に入る前にこれらの処理に時間を喰われました。主ローターハブの裏の押し出しピン跡は,塗装後に見つかって泣く泣く修正後に再塗装しました。
・プラスチックが固くて,押し出しピン跡の処理やバリ取りに時間がかかります。細かい部品も折れやすく,操縦桿の部品は購入した4個のうち,3個が折れていました。尾部のスキッドもすぐに折れるので全て金属線で自作したものと交換しました。もちろん,ランディングスキッドも油断するとバキバキ折れます。補強のために金属線を入れると,金属線が入っていない部分から折れます。
・ブラジル版なので,説明は,ポルトガル語と英語です。24連装ロケット弾ポッドを装着するときのブラケットには,17番の部品を使うのですが,ポルトガル語と英語の説明文では,その部分の説明がどうもそのような表現になっていないようです。
・対戦車ミサイルの搭載方法もよく分かりません。3連ミサイルランチャーとブラケットを,同時に現場合わせで調整しつつ本体に接着するのが正解らしいです。五六式は,先にブラケットをがっちり接着したのでランチャーに上反角が付いてしまいました・・・涙・・・。

・水平尾翼は,胴体を接着するときに挟み込みで組み込みますが,水平尾翼に凸モールドのごついのが入っていて,これが,胴体側の穴を強引に押し広げながら固定されるという仕組みになっています。当然,接合部には目立つ隙間が空くことになります。

<製作について>

 この際なので,ストックしていた在庫4個を同時進行で製作することにしました。部品数は4倍ですが,塗料や工作材料や工具などを調達する手間は1個分と同じなので量産効果が出るのではないかという甘い考え。2機は,塗装の楽なアメリカ陸軍機,2機は,蛍光オレンジの帯が入っている(塗装するとき,余分に一手間も二手間もかかる)陸上自衛隊機で仕上げます。 中学生のとき,好印象だったので楽勝と思っていたら,実際に作業に入ると,手強いところだらけでした。経年変化のためなのか,タミヤブラジルで使っているプラスチックの質ゆえか,なかなか部品が切れず,削れず,工作しにくいことこの上ありません。組み立てや塗装に入るまでに,かなりの時間を費やしました。

4機分の主要部品が小さいタッパーに入ってしまいます


ミサイルランチャーをつけない機体は,胴体横にあいている穴を埋めます


計器盤のデカールは,台紙ごと直接コンソールに貼りました。 時短,時短。


キットのままだとランディングスキッドの取り付け部がキャビン内に露出するので見えなくなるよう追加工作しました。ランディングスキッドの部品は,大変折れやすく,修正にたくさんの時間を費やしました。
機体の下面は,見たくありません・・・涙・・・。


 デカールは,経年劣化のため,貼ろうとするとバラバラになります。
そこで,別売りデカールで有名なMICRO SCALEの製品LIQUID DECAL FILMを使ってみました。"TO SAVE OLD DECALS"とか書いてあります。
使い方は,簡単。筆でデカールの表面にさっと塗って15分ほど待つだけ。筆むらも乾燥させている間に消えます。

 タミヤのデカールが堅かったのか,LIQUID DECAL FILMを使うとそうなるのか,デカールが局面になじみません。
GSIのマークセッターもマークソフターもいまいち効かないので水に溶いた木工ボンドで強引に貼り付けました。当然,シルバリングもバッチリ出ます。

一番楽な対処法は,シルバリングの出る方向から見ない,写真も撮らないことです。

そうも言っておれんか・・・。

 国籍マークは余白をカッターで切り離してから使うことで,ARMYの白文字やシリアルナンバーは,余白を機体色で上塗りしてシルバリングに対処しました。
まぁ,自分の技術からすると,全部手書きするよりはましです。


 ローターを固定する部分の接合が,ゆるゆるで角度が決まりません。ネットで検索した画像の中に三面図があったので,それを参考に角度を決め,ゼリー状瞬間接着剤で固定しました。


  武装がたくさん付いているのはよいのですが,ミサイルランチャーの接続方法が分からないし,24連装ロケットポッドの部品は,1番,目に触れる部分にアリジゴクの巣のような大きな穴がドカーンとあいているし,7連装ロケットポッドの部品の接合面は,平面が出ておらず,組み立てると歪にゆがんだロケットポッドになるしという塩梅です。 また,武装には,左右の区別がないので,ミサイルと7連装ロケット弾ポッドについては,気をつけていないと右側だけ2つ作ってしまったなどということが起こります。

武装は,アメリカ陸軍機に載せて,自衛隊機は,非武装にすることにしました。自衛隊機,とんでもなく目立つ蛍光オレンジを塗っているんだもの。そんな格好で戦闘はできんじゃろ。(一時期,ロケット弾ポッドを装備していたこともあったそうです。)



 テールスキッドは,あっさり折れました。金属線を芯にしてつけ直すと,金属線の入っていないところから折れました。で,心も折れました。仕方がないので,4機とも,古くなったギターの弦を折り曲げて作った部品と交換しました。

操縦桿の部品も4機分のうち3機分がバッチリ折れていました。ディテールはよいのですが,脆い,脆い。折れた部品の代わりに,いまいち似ていないけれど,金属線を曲げてそれらしいものを取り付けました。苦労したのに透明部品を組み込んで屋根をつけると,さっぱり見えなくなりました・・・涙・・・。努々,折れた部品をくっつけて再生しようなどと思わないことです。


 キャビンのドアは,別部品になっています。細かいことを気にしなければ,ドアを開けた状態にもできます。というか,タミヤさんが私たちをそうするよう嗾けているようです。ただ,ドアを開けると,透明部品の取り付け用の爪が目立ったり,その爪がドアを浮かせたりするので今回は,見送りました。ちなみに後ろの席を赤で塗るように指定がありますが,誤りです。赤は,シートのクッションの色のようです。クッションを紙粘土などで作って追加するなら,それに赤色を塗るのはよいでしょう。
ウィンドウは,水性の酢酸ビニル樹脂の接着剤(木工ボンドと同じもの。精密作業のためにノズルの先が細い。)でつきます。前方下面を覗く窓は,楊子のお尻の部分に両面テープを貼り付け,それを取っ手にして本体に接着しました。前面の風防は,仮組みの段階でどこが接着面になるかをよく確認しておくとよいでしょう。

<箱絵にあるディテールを追加します。>

1 テールローターの後ろにあるホイップアンテナを金属線で追加しました。

2 テールローターの付け根にある航法灯をゼリー状接着剤を少し垂らして再現しました。

箱絵を見ると,あるのは分かるのですが,正確な位置が分かりません。実機写真を検索してもよく分からないし,D型などの発展型の写真を見ても,各部の部品の配置が微妙に異なっていて参考になりません。では,発展型のAH-1の画像は・・・と調べてみると・・・。あっちゃ〜。テールローター付近が改設計されていてUH-1Bとは似ても似つきません。
1/72や1/48などの大スケールキットの画像を見ても,この航法灯は省略されており,さっぱり参考になりません。
結局,民間型のBELL 204Bの動画に,テールローター付近がよく分かるものがあったので,それを参考に工作しました。1/100スケールなので,あくまでも雰囲気だけのものです。


3 機種のアンテナを追加しました。



アンテナの付け根のロッドにゼリー状の瞬間接着剤をつけ,治具を使ってメタルリギングに押しつけます。

次に,ハサミでアンテナの長さを揃えてロッドの先の円錐をゼリー状瞬間接着剤を盛ってそれらしく再現します。
アンテナの数は,8本。作業は単純ですが,直角を出したり寸法を揃えたりと精度が要求されるので,根性のない五六式にとっては拷問のようでした。もう,このアンテナは,二度と作りません。キットも,今回で全部捌けちゃうわけだし。


4 機種下面にライトがあります。

円いデコシールを貼って再現しようと思っていますが,最小のものでもオーバースケール気味なので,とりあえず貼っておき,もっと小さいものを見つけたら貼り直します。
5 あら,箱絵には,ワイパーも描いてあるよ。

このキットと同じくらいの大きさに見える距離にある自動車のフロントウィンドゥを見ると・・・ワイパーなんて見えん・・・。観測されないものは,存在しないのだ。えっへん。←シュレディンガーのネコ

(イタレリの1/72スケールのキットでは,風防の部品にモールドされています。)




 とりあえず,2機完成しました。焦るとろくなことがないので,自衛隊機は,ぼちぼち仕上げます。
エンジン部の赤いラインは,デカールに無いので塗装で再現します。(赤を塗る→ラインの部分だけマスキングテープを貼る→オリーブドラブをスプレーする→マスキングを剥がす)
天井の窓は,クリアグリーンのようです。コピックで感じのいい色があったけれど,塗りむらがひどく,結局,タミヤのアクリルでさっと塗りました。塗料の瓶を振って撹拌すると,気泡が次々に出てきてそのまま固まるのでクリアグリーンは,撹拌用のスティックでそっと撹拌して使うとよいでしょう。

ミサイルランチャーの取り付け角がおかしいです。万歳しています。納得いかんです。



<陸上自衛隊機について>

 さて,自衛隊機のサーフェイサーがけにかかる前に,ふと,説明書の写真を見ると・・・。

テールブームについている取っ手のようなもの(部品番号30)が,無い・・・!!これは,VHF航法アンテナ(VHF navigation aerial)だそうです。

説明書に載っている完成写真を見ても,・・・無い・・・!!

組み立て説明書には,このことについての記述が一切ありません。ポルトガル語云々ではなく,おそらく,日本版のキットの説明書の原文にも記述が無いと思われます。

古〜いモノクロの自衛隊機の写真を見ると,このアンテナがついていませんでした。ちなみに,アメリカ陸軍のB型には,あるものとないものがあるようです。(完成品の写真を見ると,フジミの1/50スケールキットには,このアンテナの部品がありませんでした。)このことから,B型の初期の機体には,アンテナがついていなかったと推測されます。また,就役当初にはなかったけれど,何年か使用するうちに初期の機体にも追加されたということもあったかもしれません。このアンテナは,C型以降には標準でついてい.るようです

仕方がないので,部品番号30のための取り付け穴を伸ばしランナーを差し込んで塞ぎ,半日放置しました。これで,1日完成が遅れました。世の中には,気づかない方が幸せなことも多々あるものです




!!・・・製作中にランディングスキッドが折れました。回復不能です。

1機脱落しました。南無〜。

アンテナやローターなどの細かい部品は,すでに完成しているので,ネックは,オレンジの識別帯だけだなぁ・・・。この塗り分けだけで,かなりの手間を要します。

オレンジの識別帯の塗り分けラインは,説明図を見てもよく分かりません。側面図と平面図とで識別帯の幅が違うんだもの。説明図の完成写真で雰囲気は分かるんだけれどね。実機写真や文藝春秋社の”田宮模型全仕事3”の本キットの完成写真を見ると,側面図の塗り分けラインの方が正解だと思われます。
オレンジの塗料は各種ありますが,タミヤのTS-96蛍光オレンジ(レプソルカラー)が,艶ありながら近いみたいなのでこれを使いました。試しに厚紙に吹いてみると,さっと吹いただけでは黄色にしか見えません。何回か吹くと,本来の発色が得られるようです。オレンジを塗る全ての部品を同時に仕上げないと色味が揃わない可能性があります。実際にスプレーしてみると,なかなか発色しないし,乾燥にかなり時間がかかりました。失敗すると,リカバリーにまたたくさんの時間を要します。バイクを製作しているモデラーさん達は,みんなこのようなやっかいな塗料と付き合っているのでしょうか?この蛍光オレンジ,ちゃんと乾燥させてつや消しトップコートをかけると,よい感じになります。




自衛隊機が,ここまで進みました。写真にすると,アラが隠れるのでいいなぁ。
この時点では尻餅をついていますが,機首におもりを仕込まなくても座席や風防などを組み込むと,着陸姿勢に戻ります。
蛍光オレンジは,見る角度や光源の色温度によって違う色に見えます。どうしても塗膜が厚くなるので,仕上げが難しいです。


 尾部のVHFアンテナの有無で,アメリカ軍機との違いが分かると思います。この自衛隊機のみ,後々のメンテナンスのため,ドアの部分を両面テープで留めてあります。先に完成した2機は,完成後に窓が内側に脱落して,泣く泣くドアを流し込み接着剤で剥がして修理しています。この経験を踏まえ,こちらの方は、簡単にドアを剥がしてメンテナンスができるようになっています。また,現段階では,天井は,載せたままです。 この後,マスキングし損なったところのレタッチをしてデカールを貼り,トップコートのつや消しで全体の調子を整え,細かい部品を取り付けた後,仕上げをします。完成まで最短で2日はかかると思っていたら,4日かかりました。すでに1機クラッシュしているので,そこから予備のデカールやパーツが調達できて気持ちが楽になりました。




 アメリカ陸軍機には,激しくシルバリングが出たので,陸上自衛隊機では,それなりに対策を施しました。とにかく,マークセッターもマークソフターもさっぱり効かなかったので,水で台紙から離れたデカールの裏面を水溶きした木工ボンドに漬けて強引に貼り付けました。 結果,凹凸の無い平面では,シルバリングが出ませんでした。テールにあるシリアルナンバーJG-1528を貼るところは,どうにもならないのでデカールの糊が乾燥した後,シルバリングが出ているところの上から機体色を塗って対処しました。



3機そろい踏みです。
中坊のときには,オレンジ色を発色させるために白を先に塗るという知恵が無かったので,自衛隊機をうまく完成させることができなかった・・・と遠い目になる・・・。

<時空を超える>

 このキットの初版発売当時には無かった様々な工具や材料が,製作を支援してくれました。
これらが無ければ,完成に漕ぎ着けなかったでしょう。

・チタンコートされたカッターの刃
・精密ニッパー
・精密ピンセット
・流し込み接着剤・・・昔は,ラッカーシンナーで代用
・瞬間接着剤
・プラサフ
・調色された各種塗料
・LIQUID DECAL FILM・・・当時は,プラモの歴史が浅かったのでそもそも必要なかった。
・マークソフター&マークセッター・・・同上
・マスキングテープのいいやつ
・トップコート
・メタルリギング
・インターネット
 反対に,このキットの初版発売当時にはあって,今はないものもいくつかあります。

・現役バリバリのUH-1B
・航空情報プラモガイド
・近所の模型屋さん・・・現在,一番近いのは,家から5km。次は,25km。
・本キットの店頭在庫
・例の白くて三角なタミヤのスタンド
・日本の模型メーカーのニッチ・・・ニッチが空いていると,バンバン新製品を出せるョ。
・余命・・・命短し,製作せよ,おっさん♪



 資料を参照し,豊富な工具や材料を駆使して(・・・に使役されて)手間暇かけて完成度を上げる現在と,何も考えずに爪切りでパーツを切り離して,接着剤のはみ出しも気にせずに組み立て,貼り損なったデカールは気にせずに,反射よけのつや消し黒のところだけマジックで塗って満足した中坊のころと・・・。 う〜ん・・・人の幸せとは・・・。



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