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特集 エアフィックス

SHORTS TUCANO T.1 (AIRFIX 1/72)

by 五六式



 AIRFIXの特集に合わせて,ショート ツカノを製作しました。”塚野さん”って何だかご町内にいそうな名前ですよね。(ツカノとは,南米に生息する大きな嘴が特徴のキツツキ目オオハシ科の鳥の総称) ツカノのキットの評判は,あまりよくなかったのですが,敢えてこれを選んだのは,2018年12月号に掲載されたDHC チップマンクと並べてみたかったためです。←もっと気楽に人生を歩もうよ。

<実機について>

 ブラジルのエンブラエル社が開発,製造したターボプロップエンジンを搭載する練習機EMB-312をイギリスのショート社がライセンス生産したもの。プロペラ機ではあるが,ジェット機の操縦感覚を身につけさせるため,スロットルレバー1本でエンジン回転とプロペラピッチを同時に連動させてコントロールできるようになっている。 ショート社で生産された機体は,エンジンを強力なものに換装,それに伴ってプロペラブレードが3枚から4枚になっている。
現在,ツカノの生産は,終了し,エンブラエル社での生産は,エンジンをより強力なものに換装して,5枚のプロペラブレードを装備するEMB-314スーパーツカノに移行している。

<キットについて>

 初版は,1990年。今回製作したのは,2012年版で赤箱になってリリースされた最初のもの。以後,2013年と2014年にデカール替えのパージョンが発売されています。
 赤箱以降は,キットのできはともかく(旧金型のキットも混じっている),品質のよいデカールがついているので,好きな塗装のデカールがついているキットを入手するとよいでしょう。
五六式が特に,興味を引いたのは,2013年版で,第二次世界大戦当時の塗装を施したROYAL AIR FORCE TUCANO DISPLAY TEAMのもの(1000個限定)です。

<キットの製作について>

 このキットには,白,グレー,赤の三色の機体のデカールも付属していますが,前に作ったチップマンクと並べるために,全面黒のカラーリング(RAFの練習機の現行塗装らしいです。BAeホークも真っ黒です。)で製作することにしました。 好評な最近のAIRFIXのキットと違って,約30年前のものですから,いろいろとアレでした。


① 翼の後縁が厚い
 AIRFIXの伝統芸です。
と言うわけにもいかんので,

垂直尾翼は,接着面を(右側は,特に厚いので表面も。こちらには,凸モールドが無いので助かりました。),主翼と水平尾翼は,表面をがしがし削りました。舵面は,凹モールドなので,表からがしがし削っても簡単にはパネルラインが消えることがありません。後縁をカミソリみたいにしたい人は,カッターなどでパネルラインを復活させつつ満足いくまで,五六式のような凡人は,適当なところまで削るとよいでしょう。


② 垂直尾翼に空いている穴は何?
 水平尾翼の昇降舵の作動肢と垂直尾翼の方向舵のヒンジが入っているようです。(実機写真を見ても,穴があるかどうかはっきり分かりませんでした。)特に方向舵の方は,ヒンジが詰まっているため,真横から覗きでもしない限り,四角い穴から向こうの景色が覗けるような感じではありません。で,以下のように処置しました。 昇降蛇の作動肢  放置(工作してもほとんど見えない)

方向舵のヒンジ  パテで埋めて後からヒンジが入っているようにカッターで彫り込む


③ エアブレーキが・・・
 キットのままだと,胴体下面のエアブレーキを開いた状態で組むことになります。でも,何だか情けない造形なので閉じた状態にして組むことにしました。

1 プラ板をエアブレーキの収納部に貼って底上げし,エアブレーキが落ち込まないようにしてから適量のパテを収納部に盛り,その上からエアブレーキを押し込みます。

2 隙間からパテが押し出てきますが,後からひけてくるので,その分を差し引きつつ余分なパテを取り去り,2〜3日放置します。

※エアブレーキの部品が貧相なのでそのまま閉じた状態にしても情けない感じには変わりありません。そこで,以下のような工作を行いました。

3 表面をならした後,カッターでエアブレーキの輪郭を復活させます。
ライン彫りは得意じゃないので,何もしないより若干情けなさが減じた程度ですが,満足することにしました。下から見なけりゃいいんだから。


④ 主翼周り
 翼端にある妙な段差(ヤマザキパンのランチパックの縁のような)は,実機にもあるようです。

また,翼端灯は,カバーが透明で中に色つきの電球が入っているようです。ここにも上記の段差があって,透明な素材で置き換えるのはちょっと面倒です。そういうことはやめて,銀地にクリアカラーで翼端灯を表現しました。
主翼前縁の小さなフィンは,実機写真にはありませんでした。クローズアップ写真にそれらしきものが見えるような気もするのですが,単なる光の反射なのか,それとも,初期の機体には付いていたのか,実は,ごく小さいフィンが付いているのか,判断が付きません。いずれにしろ,機体のシルエットに現れてこないので削ってしまいました。



実機写真をいろいろ当たると,主翼前縁にライトが付いていることが分かります。主翼上面からは見えず,下面からだけ分かるような形で付いています。 キットには,このライトの表現のための透明部品は付いていません。また,塗装図にもそれらしき指定はありませんでした。ここは,銀を塗った後,白の塗料の上澄みを塗ってそれらしく表現しました。


⑤ プロペラが・・・
 4枚のブレードが貧弱で,形も大きさも揃っていません。スピナーのはめ込みがきつくて一旦押し込んだら外せなくなりました。おまけに塗装もややこしいし・・・。
これ,全く五六式の責任じゃないので放置。だらだらと塗装してデカールを貼ってトップコートをかけておきました。
プロペラの機体への取り付けは,後付けにします。ポリキャップを使うことも考えましたが,安易に瞬間接着剤でシャフトを少しだけ太らせて取り付け穴との摩擦でプロペラは回せるけれどぽろっと落ちないという感じに調整しただけです。


⑥ 座席とキャノピー
 塗装すると,座席をコクピットに取り付けるとき,はめ込みがきつくなります。干渉する部分を少し削って調整するとよいでしょう。相変わらず,パイロットのフィギュアは,いい感じです。パイロットが入ると,コクピット部の塗装のアラが覆い隠せるので助かります。それに,別売りのシートベルトを買わなくてもいいしね。 キャノピーと胴体との間に若干の隙間ができます。マスキング後,キャノピーを胴体に接着し,パテで隙間を成形しました。

⑦ おもりを機首に7g
 組み立て説明書にさらっと書いてありますが,そんな隙間はありません。重さを明記してあるし,何も書かないよりは,遙かに良心的ですが・・・。
「ふざけんなよ!!」
「お前,やって見ろよ!!」
と毒づきながら,釣り用の鉛のおもりをペンチで叩いたり潰したりして加工し,詰め込みました。


写真のように詰め込んで,ようやく5gです。試しに釣り合いを見てみると,なんとかバランスが取れていました。組み立て中,不安でしたが,最後の最後にプロペラを取り付けると,やっと前脚のタイヤが接地してくれました。
脚部に負担がかかるので,完成後は,脚部を浮かせて保管する必要があります。


⑧ 主翼の取り付け
 そのまま組むと,主翼上面とフィレットの間に段差ができます。実機の主翼には,上反角がついているので,そのように主翼を固定すると段差が目立たなくなります。多くのプロペラ機の主翼取り付け時の問題は,上反角をつけることによって解消します。

1 主翼の上面の部品をフィレットに下面の部品を胴体下面にがっちり接着して数日放置します。
※X-WING FIGHTERみたいです。

2 翼端からつけ根にかけて主翼部品の上下を接着していきます。

3 主翼のつけ根近くに,寸法違いから来る隙間ができるので,あらかた接着できたら固まるのを待って隙間を埋めます。
隙間は,胴体下部と主翼下部の接合部にもできます。プラ板やゼリー状瞬間接着剤とパテを併用して隙間を埋める事により,経時によるひけを抑えました。


⑨ エキゾーストパイプ
 これ,パイプじゃないよ・・・。排出口が開いていません。

小径ドリルで穴を掘り,カッターで穴を拡大しながら縁の形を整えました。

取り付け部の分割が悪く,不自然なラインが入るので,塗装前にパテを使って成形しておきました。この部分の塗装は,製作の最終段階にするしかありません。失敗すると,今までの苦労が水の泡に・・・涙・・・


何とか,無事に塗り分けられました。

⑩ 胴体背部アンテナ
 胴体背部アンテナには,正体不明のロッドが付いています。案外,目立つので金属線で追加しました。
塗装図では,胴体下部のアンテナを全て白で塗るように指定していますが,実機写真を見ると,一番大きなブレードアンテナ以外は,黒いようです。


⑪ デカール
 貼りやすいデカールですが,100ヶ所以上貼らなければなりません。台紙の厚みと同じくらいの寸法のマークやステンシルも多数あるので手こずりました。貼っているうちに無くなってしまうような小さなマークやステンシルなんて,初めから付けてくれなくてもいいんですよ・・・。


※ 50枚ほど貼った状態

ラウンデルの発色をよくするために白いデカールを先に貼るようになっています。


※ ほぼ貼り終えた状態 

 上の状態から1日おいて,更に5時間以上作業しています。作業前と,一体どこが違っているというのでしょうか?遠目には,さっぱり分かりません。

一部のデカールは,基本塗装と艶が違う部分を表現しているのでトップコートをかけた後に貼り付けました。
ウィンドゥの縁の白枠のデカールを貼るのは,まさに苦行。事前にいくつかに分割した方がよかったかもしれません。きっと,経年で剥がれていくのだろうなぁ・・・。

<完成>




 記事には書けないようなミスや不満も多々ありますが,とにかく完成しました。
修正したいところもいろいろあるのですが,満足する仕上げにするためには,もう一つキットを潰してしまわないとどうにもなりません。欲を出して泥沼に陥るより,きっぱりと諦めて次回作の礎にする方がよいのでしょう。
 本キットは,いろいろ手間がかかるキットですが,1990年代のキットだけに美点もいくらかありました。
・背中から垂直尾翼にかけてのラインが魅力的
・実機の取材がしっかりしている
・操縦席のコンソールやシートのできが70年代のキットとは大違い
・脚庫の扉の裏側の表現が立体的
・ホイール周りの彫刻がはっきりしていてタイヤの塗装が大変楽

それに,ツカノの1/72スケールのインジェクションキットと言えば,AIRFIX一択だしね。



自分的には,ツカノに関しては,これで決着です。もし,AIRFIXがこれの17倍組みやすい改訂版を出してくれたら,買ってしまうかもしれませんが。



前作のチップマンクと並べてみました。



RAFの黒い練習機のキットは,あと2個あります。連作したいところだけれど,マンネリに陥るのも嫌なので今年中は,手を付けずに他のものを作る予定です。


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