Home  > McDonnell Douglas AV-8B “Harrier II Plus” 製作記(Hasegawa 1/48)<飛行機プラモデル製作<2019年7月号


McDonnell Douglas AV-8B “Harrier II Plus” 製作記
(Hasegawa 1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


AV-8B Harrier II Plus (1/48) Hasegawa Box Artより

実機紹介

 F-35Bが岩国基地へ配備され、日本では既に見られなくなったAV-8B ハリアーIIですが、米海兵隊では2028年まで使い続けるということです。今回の製作事例で紹介するAV-8B ハリアーIIプラス は、ハリアーIIに夜間攻撃能力を付与したAV-8B(NA) ナイト・アタック・ハリアーをベースにレーダ搭載型に改良された、ハリアーIIの最終バリアントです。一番の特徴は、延長され太くなったノーズで、その中にはヒューズ・エアクラフト社製のAN/APG-65 パルス・ドップラー・レーダが収められています。元々F/A-18レガシー・ホーネットに搭載されていたこのレーダは、ハリアーサイズの機体には重量ペナルティがあったのですが、
プラナーアンテナのサイズを小型化するとともにAV-8B(NA)でエンジンが推力を増したペガサスF402-RR-408へと換装されていたことから搭載が可能になりました。このレーダの装備により、従来のハリアーIIの爆撃システム、ARBS(Angle Rate Bombing System)に比べて対地攻撃精度が向上し、また対空目標に対してもAIM-120の運用能力が付与されたことにより、見通し外目標への対処が可能となり、防空任務まで役割を広げることができるようになりました。またナイト・アタック・ハリアー同様GEC社製のFLIR(Forward Looking Infra-Red)センサーを機首上部に装備するとともに、AN/AAQ-28 LITENING II ターゲティング・ポッドの搭載も可能となり、全天候性が一層向上しています。


AV-8B Harrier II Plus (1/48)

キット紹介

 さて今回製作したキットですが、ハセガワが2004年にリリースした1/48スケールのハリアーIIプラスです。当時1/48のハリアーIIのキットは、1980年代後半にモノグラム(現レベル)からリリースされたAV-8Bくらいでした。そこへいきなり最新型のAV-8B+がリリースされたのですから、飛行機モデラーにとっては大変喜ばしい出来事でした。箱を開けるとまず目に飛び込んでくるのが、精緻な彫刻のされた多くのパーツと、透明度の高いクリアパーツでした。モノグラムのキットに比べると、部品点数がやたら多いという印象でしたが、それは後続してリリースされる米海兵隊のAV-8B(NA)やAB-8B、またRAFのHarrier GR.5/7/9を見越した設計からだったのでしょう。 このキットのデカールには米海兵隊のVMA-231 “Ace of Spades”の隊長機とVMA-223 “Bulldogs”の機体の2種類が付属していましたが、作例ではVMA-223の機体を選択しています。
キットには外装品として300gal.のドロップタンク2本、AIM-9Lサイドワインダー・ミサイル2発、AN/AAQ-28 LITENING IIターゲティング・ポッド、そしてGAU-12 25mmガンパックが付属していました。またガンパックを取り付けない場合の胴体下面のストレーキやセンターライン・パイロンも付属しており、いろんな搭載形態が楽しめるキットでもあります。作例では他のキットからウェポンを流用し、実機の写真を見ながらインストには無い搭載形態にしてみました。


 このように、製作しながら楽しめるキットでもあるのですが、一つ大きな欠点に気づきました。それは主翼の形態です。よく見ないと分からないかもしれませんが、主翼が逆ガルになってしまっていることです。確かに実機を正面から見た場合、主翼半ばにある補助輪の収納部付近で前縁のラインが折れ曲がっています。 これは翼断面形状の変化によって生じているもので、主翼が逆ガル翼のように折れ曲がっているのではありません。同社の1/72のキットでは正しい形状をしているので、とても残念に思いました。修正するにはリスクもあるので、今回はそのまま完成させることにしました。

製作

 今回の製作にあたっては、本体のハセガワのキット以外にコクピットのディテールアップ用として、eduald製 エッチングパーツ(FDFE271)を使用しています。まずは主要部品をランナーから切り離し、パーツの合い具合を見ながら仮組してみました。 他のバリアントとの部品の共通化を図るためパーツが細かく分割されています。それにペガサスエンジンの大きなファンやコクピットを組み込んでから胴体の接合をしなければならないので、塗装も含め全体工程を考えました。それでは順を追って紹介していきます。


1.  中・後胴部の組み立て
 キットの構成を考えると前胴部と中・後胴部を別々に組み立て、中・後胴部にペガサスのエンジンファンを取り付け、その後ドッキングしてインテイクリップを取り付けると、機体形状が出来上がると考え、まずは中後胴部から組み立てていくことにしました。ハセガワのキットの構成では主翼を後で組み込むことはできないので、ここでは写真1、2にあるように主翼まで含み一気に組み上げます。上面を撮った写真1を見ると主翼の逆ガルが分かります。 この逆ガル以外はハセガワの主翼の方がモノグラムより良くできています。下面を撮った写真2で分かるように、コアンダ効果を得るために大きくドループした翼下面後縁部を見事に再現しています。また補助輪の収納部も一体で整形されているため、組立が容易です。それでも部品点数が多いため合わせ目には気を使いました。例えば写真3は尾部のクローズアップですが、*の部分が別パーツです。この写真にはありませんが、これに垂直尾翼が付きますが垂直尾翼は3つのパーツから成っています。

(写真1) 組み上げた中・後胴部の上面

(写真2) 組み上げた中・後胴部の下面


(写真3) 尾部の部品分割



2. コクピットの組み立て
 後胴部に続くのは前胴部ですが、その前に前胴部に組み込むコクピットを組み立てます。キットのコクピットはMFDの配置された主計器板やサイドコンソールに計器やスイッチ類が細かく彫刻され、塗分けるだけでも十分ですが、主計器盤はエッチングパーツでディテールアップしました。そのため折角の彫刻も削り落とすことになりました。しかしサイドコンソールはエッチングパーツがないので塗装で対応しました。まずコクピットのパーツや内壁部をグレー(FS36231/Mr.カラー317)で塗装し、HOTASのグリップやサイドコンソールの盤面を艶消しの黒で塗装しておきます。 次にエッチングパーツの計器板を貼り付けていきます。エッチングパーツにはディスプレイや計器のガラス部分がないため、0.1㎜程度の透明シートを切り取って、表示面や計器面の上に接着し、その上からディスプレイや計器盤の表面パーツを接着していきます。こうして出来上がった主計器盤が(写真4)です。またコクピット部のサイドコンソールはスイッチやダイヤル類などを筆で細かく塗っていきました。仕上がったものが写真5で、これらを組み立て、HOTASなどを取り付け完成したコクピットが(写真6)です。

(写真4)主計器板

(写真5) コクピット



(写真6) 完成したコクピット(座席は未装着)



3. 前胴部の組み立て
 前胴部の組み立ては、出来上がったコクピットを定位置に固定し、左右を貼り合わせレドームを取り付けるだけですが、インテイクの内面を構成する後部はインシグニア・ホワイト(FS17875/Mr.カラー316)で塗っておきます。このとき別部品のインテイクリップの内側も同色で塗装しておきます。そして塗料が乾燥した後、胴体外面色との塗分け部分にマスキングテープを貼ります。(写真7) この後インテイク内面部分を全面マスキングし、グレア・シールドとレドームを接着すれば、前胴部は完成です。このときキャノピーやウィンドシールドとの仮組もしっかりやっておきます。

(写真7) コクピットを組み込んだ前胴部



4. 機体全体の組み立て
 エンジン圧縮機ファンの写真を撮り忘れたので言葉で説明するしかないのですが、ファンの部分はモノグラムのキット同様、インテイクダクトと圧縮機ファンとが一体成型されており、塗装後中胴部に組み込みます。塗装ですが、ファン部は黒鉄色とシルバーの混色で塗装し、エナメルの黒の墨入れ塗料をファンブレード間に流し込みました。インテイクのダクト部はインシグニア・ホワイトです。 ファンを取り付ける前にまず、(写真1)の様に組み上がった中後胴部に主翼の肩の部分と主翼付け根の大型化したLERX(Leading Edge Root Extension)を一体にした部品を取り付けます。(写真8の矢印の部品)ところがこの部品が胴体側とうまく合わず、凹彫のパネルラインが消えないように気遣いながらサンドペーパーで調整し、ようやく(写真8)の様に組み上がりました。

(写真8) LERXを取り付けた中後胴部


 (写真8)の状態の中後胴部にエンジンファン部、垂直尾翼、前胴部、そしてインテイクリップ部を取り付けていくと機体の外観が出来上がってきます。(写真9)

(写真9) ほぼ組み上がった機体


 しかし、インテイクリップ部とインテイク部の合いは今一つで段差が生じます。しかたがないのでサンドペーパーで段差を削っていきました。(写真10)  あとはコクピット後方にあるいくつかのエアースクープを取り付け、もう一度全体的にサンディングを行い、機体の塗装へと進みます。胴下に2枚のストレーキがあるのですが、先に取り付けるとマスキングが厄介そうで、ストレーキは後付けにすることにしました。

(写真10) インテイクリップ部の段差の修正


5. 機体塗装
 機体の塗装は、グレー3色のロービジ塗装です。キットのインストには、胴体と主翼及び水平尾翼下面がグレー(FS36375)、胴体上面と垂直尾翼、及び水平尾翼上面がグレー(FS36320)、主翼上面とレドーム上面がグレイッシュブルー(FS35237)とありますが、いろいろ調べるとグレー(FS36320)がグレー(FS36231)、グレイッシュブルー(FS35237)がグレー(FS36118)のようなので、そのように変更して塗りました。 塗装は明るい下面のグレーをまず塗って、マスキングして次のグレーという風に塗り上げていきました。(写真11)が最後のグレーを塗る段階でのマスキングの様子を示したものです。少し醜いですが、こんな感じです。

(写真11) 上面グレーのマスキングの様子


グレー3色塗装が完了し、マスキングを外した状態が(写真12)です。

(写真12) グレー3色塗装を終えた機体上面


また下面から見た状態が(写真13)で、インテイク部の塗分けの状態や、機首の塗分けの様子が良く分かります。

(写真13)塗装の終わった前胴部下面

デカール貼り

6. デカールの貼り付け
 機体のデカールはこの状態で貼っていきます。ハセガワのデカールはフィルムが厚いのか、マークセッターを使いましたがなかなかなじみませんでした。また塗装がロービジのため、ステンシルの文字なども見え難く、貼るのに苦労しました。(写真14)はデカールを貼り終えた前胴部です。 インテイクのマークや国籍マークも貼ってあるのですが、かなり見づらいのが分かっていただけると思います。特にインテイクのマークは補助空気取り入れ口の扉にも掛かっており、これを切り取る作業も一苦労でした。

(写真14) デカールを貼り終えた前胴部


そしてデカールを貼り終えた機体上面が(写真15)、下面が(写真16)です。

(写真15)  デカールを貼り終えた機体上面
(写真16)  デカールを貼り終えた機体下面

7.  その他機体部品・外装品の紹介
 次に、機体に後付けするパーツの一部を紹介しておきます。
  (写真17)、(写真18)は前脚と主脚です。塗装して軽く汚しを付けただけです。
前脚に付く前照灯は、クリアパーツのライトの背面をクロームシルバーに塗り、インシグニアホワイトを重ねて塗っています。

(写真17) 前脚
(写真18) 主脚

 (写真19)はエジェクションシートです。ベルトはエッチングパーツを使用しました。
(写真20)もエッチングパーツで製作したHUDです。小さくて組立には手がかかりましたが、機体に取り付けるととてもリアルです。

(写真19) エジェクションシート 
(写真20) HUD


 後はパイロンに取り付けた兵装類ですが、(写真21)はAIM-9Lサイドワインダー・ミサイルです。これはキットの付属品ですが、翼厚も薄く良くできています。
(写真22)は他のキットから流用したGBU-38 JDAMです。また(写真23)はセンターパイロンに取り付けるAN/AAQ-28 LITENING IIターゲティング・ポッドです。キットにはデカールが無かったので手持ちのデカールを貼ってみました。一応ジンバルは回転可能に仕上げていますが、駐機中は収納状態が一般的です。

(写真21) AIM-9Lミサイル 
(写真22) GBU-38 JDAM

((写真23) AN/AAQ-28 LITENING IIターゲティング・ポッド


8. 完成へ
 デカールを貼り終えた機体にクリア塗料でコーティングします。写真で見るハリアーはほとんど艶のない状態が多いので、デカールの保護も兼ね、つや消しのクリア塗料を吹き付けました。最後にパネルラインへの墨入れと多少の汚しを加え、ウィンドシールドやキャノピー、水平尾翼、排気ノズル、補助輪、そして7項でも紹介した機体部品や外装品などを取り付けて完成です。(写真24~28)が完成写真です。  主翼の課題は残りましたが、完成すると見事なハリアーIIプラスです。初リリースから15年が経ちましたが、未だに1/48スケールではこのキットを凌ぐキットは現れていません。

(写真24) 完成したVMA-223のAV-8B Harrier II Plus


(写真25) 完成したVMA-223のAV-8B Harrier II Plus


(写真26) 完成したVMA-223のAV-8B Harrier II Plus


(写真27) 完成したVMA-223のAV-8B Harrier II Plus


(写真28) 完成したVMA-223のAV-8B Harrier II Plus




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