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 ニ式水戦(ヨーデル 1/72)

  by 加藤 寛之



 ヨーデルというメーカーにスケールモデルの会社という印象はないけれども、じゃあ何が中心の会社といわれても思い出せない。このキットの実に素晴らしい箱絵は本Web誌の「日本航空史」で紹介してあるので、今度は箱から出して作ってみた。

 箱の横をみると、「ニ式水戦」のほかに「零戦52型」「隼1型」があったようだ。平野克己『20世紀飛行機プラモデル大全』(文春ネスコ、2004年)によれば、透明キット版がありそれは1/75表記らしい。今回作るキットは1/72表記だから、途中で社会事情に配慮して1/72になったのだろう・・・ということは、LSの零戦シリーズと同時期に販売されていた推定できる。私が通った模型店でヨーデルのニ式水戦を見たことがないので、問屋の流通ルートが違っていたのか、店主が仕入れなかったのか、いずれかだろう。



  さてこのキットだが、細かいパーツが作りこまれたパーツ群は、上述3種のキットで共通らしい。プロペラは3枚のものと2枚のものがあり、脚関係や落下タンクとともに、選択して使うことになる。そこには透明キット版のためらしいパーツもある。型式によるパーツ選択は現代のバリエーションキットに近い発想だが、脚柱やタイヤが零戦も隼で共通なのだから次元が違う。
 胴体と主翼は、零戦52型とニ式水戦で共通とみられる。ニ式水戦のキットなのに、胴体には尾輪があって、シッポも伸びている。胴体前部には単排気管のモールドがある。実機のニ式水戦と零戦52型ではカウリングの形は全く違うが、このキットはどちらでもない独自の共通パーツらしい。主フロートは短くて細く、支柱は不思議な形だ。



 主翼は当然のように先端が丸く短縮された52型仕様。不思議な造形の20mm機関砲の銃身が伸びている。脚庫の心配は無用で、もともとノッペラボー。脚柱を挿す穴と翼端フロートを挿す穴の両方から、選択使用する。 翼端フロートは・・・使える。
驚きは風防でエンビ製。形は酷いが、ちゃんと切り抜いてある。



 作り方解説は無意味だから書かないが、作ってみたら胴体>主翼>主フロートと徐々に右に傾く。胴体と主翼の取り付け部分が左右で段差があり、主フロート取り付け部分も偏っているらしい。どうしようかと思ったが、それもキットの特性だと思ってそのまま作った。段差と隙間は改善、翼関係はヘロヘロの各前縁・後縁をまっすぐに整形し、各翼のフィレット部分をそれなり程度に整形した。
アンテナ支柱は風防に穴をあけて伸ばしランナーで作り直し、ピトー管は真ちゅう線で新造した。
 実際にはプラの性質なのか劣化なのか細いパーツが折れやすく、ペラは3枚のうち2枚が折れた。フロートの後方支柱は最初から折れていた。そんな修理をしつつの組み立てだ。



 塗装は灰色にした。日の丸デカールは上側面を濃緑にする仕様だが、使えるとは思えない。そこで塗装の手間が少ない灰色にしただけのこと。それに灰色ならば主翼前縁にオレンジを塗らなくて済むので、主翼の薄さがめだたないと判断したこともある。 機首はカウルフラップのモールド部分から黒にすると異様に長くなってしまうので、カウリングのパーツだけ黒くした。風防ワクなんかクタクタになってしまったが、まあいいや。デカールはそのあたりにあったものから日の丸6枚を貼っておいた。



 無事に完成した。間違いなくニ式水戦に見える。
 とはいえ、LSのキットと比べたらこれを買う人はいなかったろう。買ったところで、パーツはバリだらけでガタガタ、穴はキツキツかユルユル、エンビの風防はどうして接着したのかと思うし、図にあるアンテナ支柱の穴はない。子供に完成出来ただろうか(出来たところで尾輪付きだし)。現代の優良キットとは方向性が異なる難式組立術と「これでイイや」と思えるユルい心を持てた今だからこそ完成できたといえる。
 このキットで、ちゃんと塗装までした完成品が模型誌に紹介されたことは、これまでにあったのだろうか。もしかしたら、今回が最初で最後の晴れ姿かも知れない。




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