Home  > キ36 九八式直接協同偵察機(立川)> フルスクラッチビルド & ソリッドモデルの製作>2020年5月号

フルスクラッチビルド & ソリッドモデルの製作

  キ36 九八式直接協同偵察機(立川)

  by 小山新一



(1)実機について
 陸軍が偵察機を3分し、直協、軍偵、司令部偵に分けた最初の直協である。正式機種名に「直接協同」とあるように、地上の歩兵部隊と協力し合い、敵情偵察、弾着観測などを目的として開発された。ときに支援爆撃も行ってくれる、地上軍にとっては頼りになる飛行機であった。
 操縦性もよく、操作も楽で、太平洋戦線全域で使われ、「チョッキョ」の愛称で呼ばれ地味な任務をこなした。連合軍のコード・ネームはIda(アィーダ)である。

完成(パイロットはモデルカステン製)


(2)図面
 「ホビージャパン」誌1975年1月号掲載の、1/48図面を使用した。作者は先年亡くなられた、航空機図面の第一人者渡部利久氏である。
 打ち明けて言えば、私はこの図面で「九八直協」なる飛行機を知ったのである。そして「いつかこの図面をもとに、この飛行機の模型を作りたい」と思ったのだ。それほどに渡部利久氏の図面は精緻で、実機の全容を十二分に伝えていたと言っていい。
 時は流れ、フジミが本機の1/72キットをバリエーション展開で開発、販売した(1983ごろ)。九八直協」、九九高練、民間型ともに作ったが、小スケールのゆえかどこか物足りなかった。軽快でスリムなイメージはよく再現されていたが、渡部氏が図面で余すところなく表現した本機のボリュームが不足だと感じさせられた。
 一方で、この完成度の高い図面から正しく立体化できるのか、不安もあったが木取りからスタートする。

木取り


(3)工作
①胴体・主翼・エンジンなど
 機体のアレンジは、前に作った「二式中練」と同じなので、似たようなパーツ割りになった。二式中練のときは、主翼を内・外翼を別々に作って接着したが、九八直協は左右一枚にし、内・外翼の折れ曲がりは上・下からノコを入れて曲げる方式にした。前作キ64で経験済みの手法である。
 コクピット部をノコとノミで抜き、中をくり抜くのもいつもの通り。構造材をプラ板で貼り付け、並行して小物を作っていく。直協らしい装備として、後席の機銃もそれらしく作った。
 記し忘れるところであった。手持ちの朴の角材が底をつき、今回初めてヒノキを用いた。数年前わが家をリフォームした折の廃材である。
 ヒノキは硬くて削りにくいと、モノの本にあったので心配したが、朴材と変わりなく削れた。オマケといっていいだろうか、削ったりノコで引いたりするたびに、ヒノキのいい香りがして楽しめたのである。

機首とコクピットくり抜き


小物あれこれ


 機首部をくり抜き、エンジンを作る。このあたりも、星型に切ったプラに銅線を巻いて冷却フィンを作る、いつもの古典的手法である。ちなみに、エンジン「天風」と書いてあまかぜと読むのが正しいそうな。

エンジン


内装後のコクピット部を胴体にもどす


②キャノピー
 キャノピーもいつもの通り、木型を胴体とすり合わせながら削り、瞬間接着剤で固め、水ペーパー⇒コンパウンドと磨き、ピカピカに仕上げる。
テスト・ショットをしぼり、微調整ののち本ショットをしぼる。大きなキャノピーが特徴なので、第2風防をスライド可動にしたが、合わせに一苦労した。

キャノピーの木型と本ショット


(4)塗装
  機体の隅々まで点検・修正ののち、クリアー・ラッカーを筆塗り、乾燥後ペーパーがけ、のちクレオス1000番のサフェーサー缶を吹く。のち、水ペーパー1000番⇒1200番で仕上げる。かくして仕上げ塗装(マーキングと迷彩)になるが、今回は下地の灰緑色、日の丸ともに筆塗りで行った。歳とともにマスキングが面倒になってきたゆえか。
 エア・ブラシを使ったのは暗緑色の迷彩のみ。蛇行迷彩にしたかったが、手持ちの「プロ・スプレーMkⅡ」では無理なので、ムラあり現地応急ふうにした。このあたり、私は「物語を作ってごまかす」ことにしている。つまり、「第八直協隊」(尾部部隊マーク)の他の機体には、こんな塗装もあったはずと、それらしい物語を作ってしまうのだ。今回さらに、あとで筆塗り補正を余儀なくされたが、これも被弾した箇所の外板を、現地スタッフが刷毛で補修したことにしている。

サフェーサーを吹く 


(5)完成
 今まで作ったソリッドの中で、思い入れの強い機体だけに、意に満たぬ箇所も少なくないのだが、何とか完成させることを得た。すべてのパーツをゼロから作ったのだという自負と満足感は、プラモデルでは味わえぬものがある。
このソリッドと並行して、プラモデルも4機ほど完成させている。プラモデルの手軽さ(精密過ぎて作りにくいものもあるが)も捨てがたいのである。
 これからも、「プラモデル、時たまソリッド・モデル」でいきたい。








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