Home  >ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦 リットリオ (ピットロード 1/700)> 艦船モデルの製作>2020年10月号


  ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦 リットリオ
 (ピットロード 1/700)

  by 寿



・ヴィットリオ・ヴェネト級と言えば大戦中イタリアを代表する戦艦で日本で言えば大和級、ドイツならばビスマルク級といったその国の威信を背負った船でもあります。



 日本じゃイマイチ知名度低いけれどヨーロッパ界隈では名の知れた船で、フランスでは対抗してリシュリュー級を造っちゃたりドイツはH級戦艦の設計変更したりイギリスはタラント空襲で重要な目標の一つにしてたりします。戦後ではソ連が「それよこせ」ってゴネたりもしてるしね。



 高い火力と重防御おまけに高速と攻防走の三拍子がそろった優れた戦艦なのですが面白いのは本によって評価が真逆なこと。
曰く「鳴り物入りの水中防御がスカタンで砲の命中率も悪く舷側装甲帯の範囲もまた不完全」
曰く「散布界が若干広いが高初速15インチ(381ミリ)砲の威力は高く活動範囲を地中海内と限定したお陰で高速と重防御を両立し得た堅艦」



 他にも水平防御が不完全だの航続距離が短いだの対空性能がお粗末だのぼろくそに言われる一方、設計年次や周辺他国の状況を鑑みれば高い要求を高い次元でまとめ上げた銘艦と評されたりホント落差が激しい。いったいどれが正鵠射てるのよって思わず首を傾げちゃう訳ですがこれは単純に視点と論点とが違うだけという気がします。良いところに注目する者と悪いところに注目する者との差といったところじゃないですかね。




 意図的にダウングレードさせたところを欠点とあげつらったり明かな技術的未熟さを仕様と言いきったりするのは論外ですが、それ以外に無意識で「受け容れ難いか否か」という感情が評価を分けているだけのような気がします。それは技術的なものだったり属している国だったり作られた背景だったり見かけそのものだったり単純な偏見だったりもう色々と。



 評価者はみな公平たらんとしているだろうけどやっぱりそーだよな~好きなものがあれば嫌いなものもあらあな。人間同士だって似たようなもんじゃ。出会った瞬間にシンパシー感じる相手も居ればコイツとは未来永劫馬が合わんと直感的にクる相手も居るしね。




 だから「どっちが正しい」ぢゃなくって「それぞれのものの見方」と割り切っちゃた方がいいかもしんない。清濁合わせ呑むだけの懐の深さが社会人としての嗜み。完全無欠の工業製品なんて無い訳だし好きこそものの哀れなりけりであります。そーいやあばたもえくぼって言葉もあったよな~



 まぁ色々言われちゃってるけれどやっぱり実力的には欧州トップクラスです。レーダー抜きならリシュリュー級はおろかキング・ジョージ5世級やビスマルク級ともいい勝負するかも。(ネルソン級はちょっとアレだし日本やアメリカは別枠ね)でも夜戦はカンベンだな~逐次実装されたとはいえレーダー先進国と真っ向から闘うのは危険だよ。マタパン沖海戦の二の舞演じそうだし。でも一度は見て見たいでしょ?ずらっと並んだ欧州戦艦郡ってやつを。実際は有り得なかった状況もプラモならば再現可能なのであります。



 そんな訳で強くてかっちょええヴィットリオ・ヴェネト級二番艦リットリオを作っちゃった。予算成立はリットリオの方が先だったので外国じゃリットリオ級って言われてるらしいけど此所は日本だしね。ネームシップは後のお楽しみじゃ(ヴェネトが手に入らなかったという切実な理由もある)。そんな訳でまずは一隻、一隻ですよ。ライバルのダンケルク級やリシュリュー級とも並べて見たいしフッドやレナウン、レパルス或いはクイーンエリザベス級と並べるのもいいかもしんない。目指すは我が家の地中海艦隊成立だ~



   しかし惜しむらくは1/700のイタリア艦船が揃えづらいってところだね。レジンキットで捜せば有るのかもしれないけれどお値段がなぁ。ピットロード(あるいはトランペッターか?)やアオシマ辺りで出してくれないかしらん。
PS:ラテン系の重巡や軽巡、駆逐艦郡を強く強く希望する!特にフランスのデュケーヌ級とか

製作の詳細

(写真1)建艦開始。乾ドッグの中央にキールを敷いて、って訳にはいかないけれど取り敢えず船体と主砲なら小一時間もあれば出来ちゃう。しかし長いのはこれからじゃ。


(写真2) この小物パーツの多さよ。主要構造物が出来上がってゆくと完成が日毎に早まってゆくような気がするけどそれは錯覚、明らかなる錯覚じゃね。むしろ船としてのシルエットが見えてからが本当のスタートなのだと身を持って知りましたです、はい。


(写真3) 戦中イタリアの船は大型艦から小型艦艇まで紅白斜めストライプを航空味方識別帯としてましたからそのように。デコボコ部分の直線マスキングってのは中々に苦痛だよ。



(写真4) 小物パーツ郡の製作開始であります。取り敢えず対空砲をずらずらっと作ってみる。でも作ってて気付いたのは艦船模型で大物パーツってのが実はマイノリティで主要工作はこれらチマチマしたパーツ郡だということ。これらが少しずつ少しずつ積み上がっていって船は初めて船となるのであります。この時分ではこの先に伸びる長い長い道のりにまだ気付いておりませなんだ。


(写真5) エッチングが同梱されておりましたので下地色を塗っておきます。プライマーはGSIクレオスのMr.メタルプライマー改。

(写真6) 筆塗り用のやつですがラッカーシンナーで溶いた後にエアブラシでぷー。

(写真7) 下地色はまぁツヤ消し黒でいいや。



(写真8) 煙突開口部の網部分がエッチングになっているのは嬉しい配慮。一番目立つ所じゃからのう。ただドーム状に盛り上がっているのでエッチングもその通りに曲げるのですが指で曲げるのは少し危険。だもんで押し曲げ用の簡易冶具を作ってみることに。
 リューターで木片にくぼみを付けて


(写真9) 網パーツを置いて

(写真10) 筆の柄でくいくいっと押し曲げてみる。


(写真11) するとこのたうり。え、大して違いは無い?いやいやそんなことはありませんぜお客さん。このびみょーなカーブが煙突部分の繊細なラインを補填していてですな・・・・

(写真12) 救命ボートを塗っていきます。これだけで20隻もある。ちなみに露天甲板用に用意されている小型艇の総数は40隻以上。排水量四万五千トンオーバーの軍艦として標準的な数なのかどうか寡聞にして知りませんが正直「ちょっと多くね?」と言いたい。


(写真13) 6344:まぁ文句言ってもしゃーない。地道に塗っていきますかね。ジンクロメイトイエローを塗った後にサンドイエロー塗ってベルト部分を明るいグレーでぺたぺた。

(写真14) 6345:後部マストはプラ材じゃちょびっと太いので真鍮線に置き換えてます。はんだゴテでじゅっとくっつけて出来上がり。簡単でいいのう。


(写真15) 6348:塗ったボートや小型艇は逐次塗料皿に集めとく。無くしたら「ショック!」だからね。こんなん自作する気力なんて毛頭無いよ。

(写真16) 6349:塗り終わったボートはぺたぺたとくっつけていく。この段階になってようやく楽しくなってきた。


(写真17) アンカーチェーンは折角モールドが有るのでドライブラシで塗って候。アフターパーツのチェーン使っても良いけれど今回は「ほぼ」ストレート・フロム・ボックスがテーマなもんんで塗り一本槍じゃ。お金も掛かるしね。エッチングパーツも同梱のヤツなのでレギュレーション違反している訳じゃ無い。マストの真鍮線は、まぁその、大目に見て頂戴ってことでw

(写真18) マスキング剥がしたらこんな感じ。うん悪くないんじゃなぁ~い?自画自賛だけど。



(写真19) 副砲なんぞのスミ入れもざっくりと塗った後にちまちまと落としてゆきます。

(写真20) 機銃のほうもやっぱりちまちまと。何だかちまちま攻撃ばっかじゃのう。艦船模型はちまちま工作を積み上げたちまちま集大成で出来とる。集中力が保たないもんだから途中休憩ばっかり。お陰で時間掛けてる割りには進捗状態がイマイチじゃ。


(写真21) エッチングを折り曲げるのにつまようじは必須。ミニプライヤーと共に駆使して慎重に折り曲げてまいります。指じゃ迂闊に触れないからね。



(写真22) 触っても大丈夫なパーツを全部付けたら細部リタッチを開始。艦橋の窓枠も一緒に塗っとく。エッチング部分を着けるのは出来るだけ最終工程にしたいもんです。マストと共に「触るな危険」的な箇所の最右翼じゃからのう。


(写真23) 色々在ったけれどともあれ何とか完成であります。馴れてないってこともあるけれど艦船プラモは目と肩にクるわ。その分満足感も一塩だけど。 

 うーんしかしかっちょええねイタリア戦艦。すらっとしててスタイリッシュ。特に紅白航空識別帯の目立ち度数はグンバツです。他の国には無い(有り得ない?)カラフルさで素敵。流石はデザインの国イタリア。これが地中海の盟主、ローマ帝国末裔の余裕ってやつでしょうかね。
 確かにド派手でよく目立つから味方航空機の誤爆は防げたかもしんないけれどそれは敵にしてみてもそう。海の上じゃ撃って下さいと言わんばかりのオメデタさ加減で格好の目標にもなった筈です。恐らくそのせいでしょう大戦末期には塗装面積が減らされてたりしますが、根本的に悔い改めるというような事は無く結局最期までこのちんどん屋的な色合いのまんまでした。
暗灰色一色ウルトラ地味な日本の艦艇やシースキーム的な青系迷彩塗装を塗りまくったアメリカの艦艇とは真逆の方向性であります。そんなに味方の誤爆が恐かったのかなぁ。
 ひょっとして姉妹艦ローマがフリッツXの直撃喰らって沈んだのもこれが遠因なんじゃないかしらん。沈没こそ免れたもののリットリオ(攻撃を受けたときには改名してイタリアだった)もしっかり喰らってたしね。


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